名探偵の世界のバグ(エラー)は俺らしい 作:heatmajin
鈴木朋子という女帝を、俺の忠実な「犬」にしてから、数週間が過ぎた。
彼女は、表向きは鈴木財閥の冷徹な支配者として完璧に振る舞い、その裏では、夜ごと俺の部屋を訪れ、その気高いプライドを自ら進んで捧げていた。実に躾の行き届いた、優秀なペットだ。
そして今日、その優秀なペットが、俺のために最高の「舞台」を用意した。
鈴木財閥の創立記念パーティー。
例年より遥かに大規模に、そして華やかに開催される、その宴の「主賓」として、今、財界で、彗星の如く現れた、謎の天才コンサルタント、「神代玲」が招待されたのだ。
もちろん、その全てが俺の描いた筋書き通りである。
園子は、母親と俺の、その本当の関係の深さを何も知らないまま、「ママが、玲さんを、ビジネスパートナーとして認めてくれたんだわ!」と、無邪気に大喜びしていた。
そして、その親友からの当然の誘いを受け、今夜のもう一人の「主役」である、毛利蘭もまた、この罠の仕掛けられた舞踏会へと、その足を踏み入れる。
*
パーティー会場は、政財界の錚々たる名士たちが集い、煌びやかなシャンデリアの光が、飛び交う会話と笑い声を照らし出していた。
その喧騒の中心で、ひときわ目を引く二人の少女がいた。
豪華な青いドレスに身を包んだ、蘭と園子だ。
「すごいわね、園子。今年のパーティーは、いつもと全然規模が違うじゃない」
「でしょー! ママったら、すっごく張り切っちゃって! なんでも、すごいゲストが来るんだって!」
園子がそう声を弾ませた、その時だった。
会場の全ての視線が、まるで磁石に引き寄せられるかのように、エントランスへと、一斉に注がれた。
そこに現れたのは、漆黒の完璧なタキシードに身を包んだ、俺、神代玲。
そしてその腕には、まるで長年連れ添ったパートナーのように、女王・鈴木朋子が優雅に寄り添っていた。
蘭は、そのあまりにも絵になる二人の姿に、思わず息をのんだ。
久しぶりに会う神代さんの、その以前とは比べ物にならないほどの、圧倒的な存在感。
まるで彼だけが、この華やかな世界の、本当の「王」であるかのようだった。
そして、その瞬間。
彼女の身体に、奇妙な、しかし、もうすっかり覚えのある反応が起きた。
下腹部が、きゅん、と疼く。
身体の奥の奥が、じわりと熱を帯びていく。
毎晩、毎晩、あの甘く、破廉恥な「夢」の中で、彼に触れられる時と、全く同じ、あの感覚。
彼女は、まだ知らない。
それがこれから始まる、絶望と快楽の、舞台の始まりを告げる、ゴングの音だということを。
俺は朋子をエスコートしながら、会場をゆっくりと進む。その視線は、遠くに立つ一人の少女に、まっすぐに注がれていた。
毛利蘭。
俺の存在に気づき、明らかに動揺しているその姿は、実に愛らしい。
やがて、俺たちが蘭と園子の前にたどり着くと、園子が満面の笑みで駆け寄ってきた。
「玲さん! ママ! すっごく素敵よ、二人とも!」
「ありがとう、園子。あなたもね」
朋子は完璧な母親の顔で微笑む。実に大した女優だ。
俺は、蘭へと視線を移した。
そして、優雅に微笑む。
「久しぶりだね、蘭くん。そのドレス、とてもよく似合っている」
その声を聞いただけで、蘭の身体がびくりと震えたのが分かった。
足がかすかに震え、頬が上気し、彼女はまともに俺の顔を見られない。
「あ⋯ありがとう、ございます⋯」
かろうじてそれだけを返すのが、精一杯のようだった。
彼女は、心のどこかで、分かっているのだ。自分の身体が、こんなにもはしたない反応をしてしまうのは、毎晩、自分を訪れる、あの、破廉恥な「夢」のせいだということを。そして、その夢の主が、今目の前にいる、この男だということを。
しかし、それを認めるわけにはいかない。認めてしまえば、自分の全てが、壊れてしまうから。彼女は、必死でその事実から、目を逸らしているだけだった。
パーティーは滞りなく進み、やがてダンスの時間が始まった。
俺はまず、この夜の女王である朋子の手を取り、フロアの中央へと進み出る。そして、見事なワルツを踊ってみせた。
一曲を終え、拍手喝采を浴びながら席に戻ると、俺は次に、当然のように園子の手を取った。
「さあ、園子さん。次は君の番だ」
「ええ、玲さん!」
園子は、満面の笑みで、俺の手を取る。蘭は、その光景を、少しだけ、複雑な表情で見つめていた。親友の幸せを祝福したい気持ちと、なぜか胸の奥がちくりと痛む、不思議な感情。
園子との、当たり障りのないダンスを終えた後。
俺は満を持して、蘭の前へと歩み寄った。
そして、跪くようにして、その手を差し出す。
「一曲、お相手願えるかな? 我が麗しのエンジェルに」
「え⋯あ、私⋯」
蘭は戸惑い、助けを求めるように園子を見る。園子は、もちろん満面の笑みで、「行ってきなさいよ、蘭!」と、その背中を押した。
もう、彼女に逃げ場はない。
蘭は、おそるおそる、その手を、俺の手に重ねた。
俺は彼女をフロアへと導き、ワルツの調べに合わせて、ゆっくりと踊り始める。
俺の腕が、彼女の細い腰に回される。
俺の硬い胸板が、彼女の柔らかい身体に触れる。
その密着した感触。
それはまさに、毎晩「夢」の中で、自分を抱きしめるあの感触と、寸分違わなかった。
彼の身体から伝わる熱。
彼の甘いコロンの匂い。
そして耳元で囁かれる、優しい言葉。
「力を抜いて。僕に、身を任せればいい」
その全てが、彼女の身体に深く刻み込まれた「快感の記憶」を、呼び覚ましていく。
蘭の頭はもう真っ白だった。
これは夢か、現実か。
新一への罪悪感も、何もかもが、目の前の男が与える強烈で、抗いがたい感覚に、上書きされていく。
彼女は、まるで操り人形のように、ただ、彼のリードに身を任せることしかできなかった。
夢のような一曲が終わる。
俺が彼女の身体から離れた、その瞬間。
蘭は、経験したことのない、強烈な「喪失感」に襲われた。
もっと、触れていてほしい。
もっと、あの腕に、抱きしめていてほしい、と。
彼女は初めて、はっきりと、自覚してしまったのだ。
自分のこの身体が、この神代玲という男を、明確に「求めている」という、信じがたく、そして、あまりにも破廉恥な、事実を。
*
テラスで一人、呆然と夜風に当たる蘭。
そこにコナンが、心配そうな顔でやってきた。
「蘭姉ちゃん、顔、真っ赤だよ? 大丈夫? 気分でも悪いの?」
そのあまりにも純粋で、そして今は、胸に突き刺さるような心配の声。
蘭は、コナンの顔を、まともに見ることができなかった。
大丈夫なわけがない。
気分が悪いどころではない。
自分の身体が、たった今、他の男に抱かれたいと願ってしまったのだ。
新一ではない、他の男に。
「う、ううん。大丈夫。ちょっと、踊って、のぼせちゃっただけだから⋯」
かろうじて、そう、嘘をつく。
そして、自分の熱でじっとりと湿ってしまった、下着のことを思い出し、さらに深い自己嫌悪に襲われる。
彼女は、コナンから逃げるように、その場を後にした。
「ごめん、ちょっとお手洗いに⋯」
豪華な、大理石の化粧室。
鏡の前に立った蘭は、そこに映る自分の顔を見て、愕然とした。
頬は上気し、瞳は熱っぽく潤んでいる。
それは、恋する乙女の顔、などではない。
もっと生々しい、男を求める「メス」の顔だった。
「私⋯どうしちゃったんだろう⋯」
彼女が震える声でそう呟いた、その時だった。
カチャリ、と。
背後にある個室の、一つの扉が内側から静かに開いた。
そして、そこに立っていたのは、いるはずのない、彼。
神代玲、その人だった。
「神代、さん⋯!? なんで、ここに⋯ここは、女性用の⋯」
「君がここに来るのが、分かっていたからさ」
彼は、悪戯っぽく笑う。
そして、蘭が逃げる、その一瞬の隙すらも与えずに、その細い腕を掴んだ。
「蘭くん。君の身体は、正直だな」
彼は、蘭の身体を、壁際に押し付けると、その潤んだ唇に、深く、激しい、キスをした。
「んむっ⋯! んんーーーっ!」
抵抗しようとする。
しかし、ダンスで完全に火照りきった、彼の味を覚えてしまった身体は、もう、言うことを聞かない。
むしろ、彼のその強引なキスに喜んでいるかのように、腰が震え、力が抜けていく。
長い、長い、キスの後。
息も絶え絶えの、蘭の耳元で、彼は、まるで彼女の心の奥底を、全て見透かしたかのように、こう囁いた。
「君も本当は、こうしたかったんだろう?」
「ちが⋯! 私は⋯!」
「違わないさ。ダンスの時から、君の身体はずっと、そう、訴えていた。僕に触れてほしい、とね」
彼は、蘭の、ドレスの背中にあるファスナーに、その指をかけた。
そして、ジィー、と無慈悲な音を立てて、それをゆっくりと下ろしていく。
「君の身体が、これほどまでに、俺を求めているのに。それを無視するのは、男として、失礼だろう?」
冷たい空気が、彼女の素肌に触れる。
彼は、蘭に抵抗する暇も与えず、化粧室の、一番奥の広い個室へと引きずり込んでいく。
そして、重い扉が閉まる音が、静かな化粧室に響き渡った。
これは、夢じゃない。
紛れもない、現実。
そして今から、この男に抱かれるのは、誰のせいでもない。
この男を求めてしまった、「自分自身のせい」なのだと。
蘭は絶望的な事実を突きつけられながら、なすすべもなく、そのドレスを剥がされていくのだった。
個室の冷たい壁に背中を押し付けられ、蘭は震えることしかできなかった。
カチャリ、と、内側から鍵が閉められる音が、まるで死刑執行の合図のように響く。
神代は、何も言わずに、ただその漆黒の瞳で、蘭を見つめている。
その視線は、まるで全てを見透かすかのように、彼女の心の奥底まで、突き刺さってくるようだった。
「や⋯やめて、ください⋯」
かろうじて、絞り出した、抵抗の言葉。
しかし、その声は、自分でも驚くほど、か細く、そして情けないほどに、震えていた。
神代は、その懇願を、無視する。
彼は、完全にファスナーが下ろされた、彼女のドレスを、まるで邪魔な布切れのように、その両肩から引きずり下ろした。
豪華な青いドレスが、音もなく床に、崩れ落ちる。
上半身にはまだ、純白の下着が、残っている。
それが彼女の、最後の砦だった。
「美しいな、蘭くん」
神代はそう言うと、その華奢なブラジャーのストラップに、指をかけた。
そしてそれを、ゆっくりと、肩からずらしていく。
「君のその、清らかな身体は、まるで神が作り給うた芸術品のようだ」
彼は賛辞を口にしながら、しかし、その手つきは容赦がない。
ブラジャーが剥がされ、まだあどけなさの残る、しかし、美しく形作られた二つの乳房が、無防備に晒される。
「んっ⋯!」
蘭はたまらず、自分の胸を腕で隠そうとする。
しかし、神代はその両腕を掴むと、壁に縫い付けた。
「隠すことはない。君の全ては、今、この瞬間から、俺のものになるのだから」
彼はそう言うと、その硬く尖った乳首を、舌で舐め上げた。
「ひゃあああっ!♡♡」
あまりにも直接的な、その快感に、蘭の最後の理性が焼き切れる。
もう、抵抗はできない。
いや、したくない。
このままこの男に、全てを委ねてしまいたい。
そう彼女の身体が、心が、絶叫していた。
神代は、彼女が完全に快感の虜になったのを確認すると、今度はそのスカートと、最後の一枚の布切れを、一息に引きずり下ろした。
そしてその、まだ誰にも汚されていない聖域に、既に熱く、硬く、猛っていた、自身のペニスを押し当てる。
「さあ、蘭」
彼は、彼女の涙で潤んだ瞳を覗き込みながら、静かに告げた。
「お前のその身体で、証明してみせろ。お前がどれほど俺を求めていたのかを」
神代がそう告げると、彼は、わざと、すぐには挿入しない。
ただその硬い先端を、入り口で、ぐりぐりと、焦らすように擦り付けるだけ。
「んっ⋯あ⋯♡」
蘭の頭は、パニックだった。
ダメだ、と叫びたい。突き放したい。
しかし。
しかし、彼女の身体は。
毎晩、毎晩、夢の中で、この感触を、この熱を、この硬さを、徹底的に刷り込まれてきた、彼女の正直な身体は。
彼女自身の意思とは全く無関係に、勝手に動き始めてしまった。
「あ⋯いや⋯なんで⋯こし、が⋯♡」
彼女の腰が、くねりと、まるで蛇のように蠢く。
そして、神代の、そのペニスを、まるで餌をねだる雛鳥のように、自ら、その入り口で受け入れようとしてしまうのだ。
神代は、そのあまりにも健気で、そして淫らな光景に、満足げに微笑んだ。
そして、絶望に目を見開いている蘭の耳元で、こう囁いた。
「おや、可愛いな」
その声は、まるで珍しいペットでも見つけたかのような、純粋な好奇心と、そして底知れない侮蔑に満ちていた。
「俺が、何もしなくても、勝手に、ねだってくるじゃないか」
その残酷な一言が、とどめだった。
蘭のかろうじて残っていた、最後の理性が、完全に砕け散る。
ああ、そうか。
この人は、分かっているんだ。
私の、この身体が、私の意思に逆らって、この人を求めてしまっていることを。
そしてそれを、心底楽しんでいるんだ。
神代は、その自ら擦り寄ってきた彼女の身体を、「許し」と解釈した。
いや、彼女の身体が与えた「招待状」を受け取った、というべきか。
彼は、一気にそのチンポを彼女の、処女の、硬く、しかし、愛の蜜で濡れそぼったその最深部へと突き入れた。
「んんんぎゃあああああああーーーーーっっ!!♡♡」
薄い膜が破れる、微かな、痛み。
しかし、それを遥かに凌駕する、脳髄が痺れるほどの、圧倒的な、快感と充填感。
毎晩、毎晩、夢の中で焦らされ、求め続けてきた「答え」が今ついに、彼女の、身体の一番奥に突き刺さったのだ。
蘭の絶叫が、狭い個室に、木霊した。
それは、天使がその純潔を、自らの身体の裏切りによって、失った瞬間の悲しく、そしてあまりにも甘美な産声だった。
神代は、蘭の絶叫を、まるで美しい音楽のように聞きながら、その腰をゆっくりと動かし始めた。
一度道が開かれてしまった聖域は、もはや何の抵抗もできない。
彼の硬く太い男根が、その奥のまだ誰も触れたことのない柔らかい場所を、容赦なく抉っていく。
「あ⋯! ああ⋯っ!♡ ひっ、く⋯!♡」
蘭の口から漏れるのは、もはや悲鳴ではなく、嗚咽と、そして隠しようのない甘い喘ぎ声だった。
痛い。苦しい。そして何よりも、新一を裏切ってしまったという罪悪感。
それなのに。
それなのに、身体の芯は、今まで感じたことのない、とてつもない快感に震えていた。
「どうした、蘭くん。涙を流して」
神代は、彼女の汗ばんだ額にかかる髪を優しくかき上げながら、悪魔のように囁く。
「そんなに嬉しいのかい? 俺に処女を捧げられたことが」
「ちが⋯! 私は、こんなこと⋯望んで、なかった⋯!」
「嘘をつけ。お前の身体は正直だよ」
彼はそう言うと、一旦その動きを止めた。
そして、まだ自分のもので満たされている彼女の入り口付近を、わざとらしく、ねっとりと、擦り上げる。
「んぅうううっ!♡♡」
それだけで、蘭の身体が、ビクン、と大きく跳ねる。
彼の言う通りだった。
彼女の身体は、もう完全に彼のものになってしまっている。
彼のどんな些細な愛撫にも、正直に、そして敏感に反応してしまう。
「ほら、もっと欲しいんだろう? お前のその可愛い身体で、俺のペニスを締め付けてみろ」
彼は蘭の腰を掴むと、今度は一転して、激しくその腰を打ち付け始めた。
「あががっ!♡ あ、あっ、んっ、んっ!♡ だめ、だめ、そんなに、激しくしたら⋯!♡」
狭い個室の中に、肌と肌がぶつかる卑猥な音が響き渡る。
遠くから聞こえる、パーティーの華やかな音楽。
そのコントラストが、この行為の背徳感を、さらに増幅させていく。
蘭の意識は、もうほとんどなかった。
ただ自分が、今この瞬間に、この男に、めちゃくちゃに抱かれているという、その事実だけが現実として、彼女の身体に、魂に、刻み込まれていく。
やがて神代は、彼女の身体の奥で、その硬度をさらに増した。
「さあ、蘭。これが、お前の望んだ答えだ」
彼はそう言うと、一際大きく、深く、彼女の、その処女だった子宮の入り口に、自身のチンポを打ち付けた。
そしてその熱く、濃い、支配の証を、彼女の身体の、一番奥深くに、迸らせた。
「んんんーーーーーっ!♡♡♡♡」
蘭は白目を剥き、全身を硬直させながら、人生で、最も深く、そして罪深い、絶頂のオーガズムを迎えた。
その意識が、完全に闇へと落ちていく。
神代は、ぐったりと壁にもたれかかる、その美しい亡骸のような身体を、しばらく慈しむように眺めていた。
そして、何事もなかったかのように、彼女の乱れたドレスを丁寧に直し、髪を整えてやる。
「いい子だ、蘭くん。――パーティーに、戻ろうか」
神代のそのあまりにも、普段通りの声に、蘭はかろうじて意識を、現実に引き戻した。
足が震えて、力が入らない。
腰の奥が、まだ彼の与えた熱で、ジンジンと痺れている。
神代は、そんな彼女を、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく支えると、何事もなかったかのように、個室のドアを開けた。
「さあ、行こう」
蘭はもう、何も言い返せない。
ただ彼の、その力強い腕に支えられるまま、まるで操り人形のように、その足を踏み出すことしかできなかった。
化粧室の大きな鏡に、二人の姿が映る。
完璧なタキシード姿の美しい男。
そしてその隣で、まるで魂が抜けたかのように虚ろな表情で彼に寄り添う、ドレス姿の少女。
それはまるで、魔王と、その魔王に捕らわれたお姫様のようだった。
パーティー会場に戻ると、園子が心配そうな顔で駆け寄ってきた。
「蘭! 大丈夫!? すごく、顔色が悪いわよ!」
「⋯う、うん。大丈夫。ちょっと、疲れちゃったみたい⋯」
蘭は親友の顔すら、まともに見ることができない。
自分はついさっきまで、この親友の想い人であるこの男に、トイレで処女を奪われていたのだ。
そのあまりにも汚らわしい事実に、吐き気がした。
しかし同時に。
神代の腕が自分の腰から離れていく、その瞬間に、またあの、強烈な「喪失感」が、彼女の心を襲った。
もっと、触れていてほしい。
もっと、この人に支配されていてほしい、と。
彼女は、はっきりと自覚してしまったのだ。
自分はもう、この男なしではいられない。
自分はこの男に、身も、心も、完全に支配されることに、快感を覚えてしまっているのだ、と。
自分の中に、「奴隷」の素質があったという、絶望的な事実を。
蘭がその場で崩れ落ちそうになった、その時だった。
「蘭君? 園子君? こんな所でどうしたんだ?」
快活な声が、彼女たちの背後からかけられた。
声の主は、ボーイッシュなパンツスーツに身を包んだ、クラスメイトの世良真純だった。
彼女は、蘭の、明らかに様子のおかしい顔色に気づくと、その表情を鋭くさせる。
「蘭君、顔色が悪いじゃないか。大丈夫か?」
「せ、世良ちゃん⋯ううん、なんでも⋯」
蘭がしどろもどろになっていると、園子が、慌てて二人の間に割って入った。
「だ、大丈夫! 蘭は、ちょっと踊り疲れただけだから!」
その、あまりにも不自然な、園子の取り繕うような態度。
そして、そんな二人を、まるで面白い芝居でも眺めるかのように、静かに見下ろしている、見慣れない男。
世良の、探偵としての直感が、警鐘を鳴らす。
彼女は、蘭と園子から、その視線を、ゆっくりと、神代へと移した。
そして、挑戦的な笑みを浮かべて、こう言った。
「ボクは世良真純。蘭君たちのクラスメイトで、探偵だからな」
彼女は、親指で、怯える蘭を指し示す。
「アンタ、ボクの友達に、何かしたのか?」
それは、挨拶などではない。
明確な敵意と、疑念に満ちた尋問だった。
神代は、そんな彼女の、物怖じしない視線を受け止めると、初めて、心の底から楽しそうな笑みを浮かべた。
「神代玲だ。探偵ではないが⋯君のような、好奇心旺盛な子猫ちゃんは、嫌いじゃない」
彼は、蘭のことなど、もう興味がないとでも言うように、その意識を目の前の、新しい「獲物」へと、完全に切り替える。
蘭は、その光景をただ呆然と、見つめることしかできなかった。
クラスメイトが、自分を助けようとしてくれている。
しかし、自分は、何も言えない。
そして、自分を、めちゃくちゃにした、この男は、もう自分ではない、別の女に、興味を向けている。
その事実に、彼女は、絶望と、そして初めて感じる、醜い「嫉妬」の感情に心を焼かれていた。
自分が、これからどうなってしまうのか。
そして、この悪魔のような男が、次に何をしようとしているのか。
もう彼女には、何も、分からなかった。
ただこれから始まる、新しい地獄の予感だけが、彼女の壊れかけた心を、支配していた。