※この作品はR-18です。

名探偵の世界のバグ(エラー)は俺らしい   作:heatmajin

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第7話:セブンス・エラー:天使は舞踏会で渇きを自覚する

鈴木朋子という女帝を、俺の忠実な「犬」にしてから、数週間が過ぎた。

彼女は、表向きは鈴木財閥の冷徹な支配者として完璧に振る舞い、その裏では、夜ごと俺の部屋を訪れ、その気高いプライドを自ら進んで捧げていた。実に躾の行き届いた、優秀なペットだ。

 

そして今日、その優秀なペットが、俺のために最高の「舞台」を用意した。

 

鈴木財閥の創立記念パーティー。

例年より遥かに大規模に、そして華やかに開催される、その宴の「主賓」として、今、財界で、彗星の如く現れた、謎の天才コンサルタント、「神代玲」が招待されたのだ。

もちろん、その全てが俺の描いた筋書き通りである。

 

園子は、母親と俺の、その本当の関係の深さを何も知らないまま、「ママが、玲さんを、ビジネスパートナーとして認めてくれたんだわ!」と、無邪気に大喜びしていた。

そして、その親友からの当然の誘いを受け、今夜のもう一人の「主役」である、毛利蘭もまた、この罠の仕掛けられた舞踏会へと、その足を踏み入れる。

 

 

パーティー会場は、政財界の錚々たる名士たちが集い、煌びやかなシャンデリアの光が、飛び交う会話と笑い声を照らし出していた。

その喧騒の中心で、ひときわ目を引く二人の少女がいた。

 

豪華な青いドレスに身を包んだ、蘭と園子だ。

 

「すごいわね、園子。今年のパーティーは、いつもと全然規模が違うじゃない」

「でしょー! ママったら、すっごく張り切っちゃって! なんでも、すごいゲストが来るんだって!」

 

園子がそう声を弾ませた、その時だった。

 

会場の全ての視線が、まるで磁石に引き寄せられるかのように、エントランスへと、一斉に注がれた。

そこに現れたのは、漆黒の完璧なタキシードに身を包んだ、俺、神代玲。

そしてその腕には、まるで長年連れ添ったパートナーのように、女王・鈴木朋子が優雅に寄り添っていた。

 

蘭は、そのあまりにも絵になる二人の姿に、思わず息をのんだ。

久しぶりに会う神代さんの、その以前とは比べ物にならないほどの、圧倒的な存在感。

まるで彼だけが、この華やかな世界の、本当の「王」であるかのようだった。

 

そして、その瞬間。

彼女の身体に、奇妙な、しかし、もうすっかり覚えのある反応が起きた。

 

下腹部が、きゅん、と疼く。

身体の奥の奥が、じわりと熱を帯びていく。

毎晩、毎晩、あの甘く、破廉恥な「夢」の中で、彼に触れられる時と、全く同じ、あの感覚。

 

彼女は、まだ知らない。

それがこれから始まる、絶望と快楽の、舞台の始まりを告げる、ゴングの音だということを。

 

俺は朋子をエスコートしながら、会場をゆっくりと進む。その視線は、遠くに立つ一人の少女に、まっすぐに注がれていた。

毛利蘭。

俺の存在に気づき、明らかに動揺しているその姿は、実に愛らしい。

 

やがて、俺たちが蘭と園子の前にたどり着くと、園子が満面の笑みで駆け寄ってきた。

「玲さん! ママ! すっごく素敵よ、二人とも!」

「ありがとう、園子。あなたもね」

 

朋子は完璧な母親の顔で微笑む。実に大した女優だ。

 

俺は、蘭へと視線を移した。

そして、優雅に微笑む。

「久しぶりだね、蘭くん。そのドレス、とてもよく似合っている」

 

その声を聞いただけで、蘭の身体がびくりと震えたのが分かった。

足がかすかに震え、頬が上気し、彼女はまともに俺の顔を見られない。

「あ⋯ありがとう、ございます⋯」

 

かろうじてそれだけを返すのが、精一杯のようだった。

彼女は、心のどこかで、分かっているのだ。自分の身体が、こんなにもはしたない反応をしてしまうのは、毎晩、自分を訪れる、あの、破廉恥な「夢」のせいだということを。そして、その夢の主が、今目の前にいる、この男だということを。

しかし、それを認めるわけにはいかない。認めてしまえば、自分の全てが、壊れてしまうから。彼女は、必死でその事実から、目を逸らしているだけだった。

 

パーティーは滞りなく進み、やがてダンスの時間が始まった。

俺はまず、この夜の女王である朋子の手を取り、フロアの中央へと進み出る。そして、見事なワルツを踊ってみせた。

 

一曲を終え、拍手喝采を浴びながら席に戻ると、俺は次に、当然のように園子の手を取った。

「さあ、園子さん。次は君の番だ」

「ええ、玲さん!」

園子は、満面の笑みで、俺の手を取る。蘭は、その光景を、少しだけ、複雑な表情で見つめていた。親友の幸せを祝福したい気持ちと、なぜか胸の奥がちくりと痛む、不思議な感情。

 

園子との、当たり障りのないダンスを終えた後。

俺は満を持して、蘭の前へと歩み寄った。

そして、跪くようにして、その手を差し出す。

 

「一曲、お相手願えるかな? 我が麗しのエンジェルに」

 

「え⋯あ、私⋯」

蘭は戸惑い、助けを求めるように園子を見る。園子は、もちろん満面の笑みで、「行ってきなさいよ、蘭!」と、その背中を押した。

もう、彼女に逃げ場はない。

 

蘭は、おそるおそる、その手を、俺の手に重ねた。

俺は彼女をフロアへと導き、ワルツの調べに合わせて、ゆっくりと踊り始める。

 

俺の腕が、彼女の細い腰に回される。

俺の硬い胸板が、彼女の柔らかい身体に触れる。

その密着した感触。

 

それはまさに、毎晩「夢」の中で、自分を抱きしめるあの感触と、寸分違わなかった。

 

彼の身体から伝わる熱。

彼の甘いコロンの匂い。

そして耳元で囁かれる、優しい言葉。

「力を抜いて。僕に、身を任せればいい」

 

その全てが、彼女の身体に深く刻み込まれた「快感の記憶」を、呼び覚ましていく。

 

蘭の頭はもう真っ白だった。

これは夢か、現実か。

新一への罪悪感も、何もかもが、目の前の男が与える強烈で、抗いがたい感覚に、上書きされていく。

彼女は、まるで操り人形のように、ただ、彼のリードに身を任せることしかできなかった。

 

夢のような一曲が終わる。

俺が彼女の身体から離れた、その瞬間。

 

蘭は、経験したことのない、強烈な「喪失感」に襲われた。

もっと、触れていてほしい。

もっと、あの腕に、抱きしめていてほしい、と。

 

彼女は初めて、はっきりと、自覚してしまったのだ。

自分のこの身体が、この神代玲という男を、明確に「求めている」という、信じがたく、そして、あまりにも破廉恥な、事実を。

 

 

テラスで一人、呆然と夜風に当たる蘭。

そこにコナンが、心配そうな顔でやってきた。

「蘭姉ちゃん、顔、真っ赤だよ? 大丈夫? 気分でも悪いの?」

 

そのあまりにも純粋で、そして今は、胸に突き刺さるような心配の声。

蘭は、コナンの顔を、まともに見ることができなかった。

 

大丈夫なわけがない。

気分が悪いどころではない。

自分の身体が、たった今、他の男に抱かれたいと願ってしまったのだ。

新一ではない、他の男に。

 

「う、ううん。大丈夫。ちょっと、踊って、のぼせちゃっただけだから⋯」

 

かろうじて、そう、嘘をつく。

そして、自分の熱でじっとりと湿ってしまった、下着のことを思い出し、さらに深い自己嫌悪に襲われる。

 

彼女は、コナンから逃げるように、その場を後にした。

「ごめん、ちょっとお手洗いに⋯」

 

豪華な、大理石の化粧室。

鏡の前に立った蘭は、そこに映る自分の顔を見て、愕然とした。

頬は上気し、瞳は熱っぽく潤んでいる。

それは、恋する乙女の顔、などではない。

もっと生々しい、男を求める「メス」の顔だった。

 

「私⋯どうしちゃったんだろう⋯」

 

彼女が震える声でそう呟いた、その時だった。

 

カチャリ、と。

背後にある個室の、一つの扉が内側から静かに開いた。

そして、そこに立っていたのは、いるはずのない、彼。

 

神代玲、その人だった。

 

「神代、さん⋯!? なんで、ここに⋯ここは、女性用の⋯」

「君がここに来るのが、分かっていたからさ」

 

彼は、悪戯っぽく笑う。

そして、蘭が逃げる、その一瞬の隙すらも与えずに、その細い腕を掴んだ。

 

「蘭くん。君の身体は、正直だな」

 

彼は、蘭の身体を、壁際に押し付けると、その潤んだ唇に、深く、激しい、キスをした。

 

「んむっ⋯! んんーーーっ!」

 

抵抗しようとする。

しかし、ダンスで完全に火照りきった、彼の味を覚えてしまった身体は、もう、言うことを聞かない。

むしろ、彼のその強引なキスに喜んでいるかのように、腰が震え、力が抜けていく。

 

長い、長い、キスの後。

息も絶え絶えの、蘭の耳元で、彼は、まるで彼女の心の奥底を、全て見透かしたかのように、こう囁いた。

 

「君も本当は、こうしたかったんだろう?」

 

「ちが⋯! 私は⋯!」

 

「違わないさ。ダンスの時から、君の身体はずっと、そう、訴えていた。僕に触れてほしい、とね」

 

彼は、蘭の、ドレスの背中にあるファスナーに、その指をかけた。

そして、ジィー、と無慈悲な音を立てて、それをゆっくりと下ろしていく。

 

「君の身体が、これほどまでに、俺を求めているのに。それを無視するのは、男として、失礼だろう?」

 

冷たい空気が、彼女の素肌に触れる。

 

彼は、蘭に抵抗する暇も与えず、化粧室の、一番奥の広い個室へと引きずり込んでいく。

そして、重い扉が閉まる音が、静かな化粧室に響き渡った。

 

これは、夢じゃない。

紛れもない、現実。

そして今から、この男に抱かれるのは、誰のせいでもない。

この男を求めてしまった、「自分自身のせい」なのだと。

蘭は絶望的な事実を突きつけられながら、なすすべもなく、そのドレスを剥がされていくのだった。

 

個室の冷たい壁に背中を押し付けられ、蘭は震えることしかできなかった。

カチャリ、と、内側から鍵が閉められる音が、まるで死刑執行の合図のように響く。

 

神代は、何も言わずに、ただその漆黒の瞳で、蘭を見つめている。

その視線は、まるで全てを見透かすかのように、彼女の心の奥底まで、突き刺さってくるようだった。

 

「や⋯やめて、ください⋯」

 

かろうじて、絞り出した、抵抗の言葉。

しかし、その声は、自分でも驚くほど、か細く、そして情けないほどに、震えていた。

 

神代は、その懇願を、無視する。

彼は、完全にファスナーが下ろされた、彼女のドレスを、まるで邪魔な布切れのように、その両肩から引きずり下ろした。

 

豪華な青いドレスが、音もなく床に、崩れ落ちる。

上半身にはまだ、純白の下着が、残っている。

それが彼女の、最後の砦だった。

 

「美しいな、蘭くん」

 

神代はそう言うと、その華奢なブラジャーのストラップに、指をかけた。

そしてそれを、ゆっくりと、肩からずらしていく。

 

「君のその、清らかな身体は、まるで神が作り給うた芸術品のようだ」

 

彼は賛辞を口にしながら、しかし、その手つきは容赦がない。

ブラジャーが剥がされ、まだあどけなさの残る、しかし、美しく形作られた二つの乳房が、無防備に晒される。

 

「んっ⋯!」

 

蘭はたまらず、自分の胸を腕で隠そうとする。

しかし、神代はその両腕を掴むと、壁に縫い付けた。

 

「隠すことはない。君の全ては、今、この瞬間から、俺のものになるのだから」

 

彼はそう言うと、その硬く尖った乳首を、舌で舐め上げた。

 

「ひゃあああっ!♡♡」

 

あまりにも直接的な、その快感に、蘭の最後の理性が焼き切れる。

もう、抵抗はできない。

いや、したくない。

このままこの男に、全てを委ねてしまいたい。

そう彼女の身体が、心が、絶叫していた。

 

神代は、彼女が完全に快感の虜になったのを確認すると、今度はそのスカートと、最後の一枚の布切れを、一息に引きずり下ろした。

 

そしてその、まだ誰にも汚されていない聖域に、既に熱く、硬く、猛っていた、自身のペニスを押し当てる。

 

「さあ、蘭」

 

彼は、彼女の涙で潤んだ瞳を覗き込みながら、静かに告げた。

 

「お前のその身体で、証明してみせろ。お前がどれほど俺を求めていたのかを」

 

神代がそう告げると、彼は、わざと、すぐには挿入しない。

ただその硬い先端を、入り口で、ぐりぐりと、焦らすように擦り付けるだけ。

 

「んっ⋯あ⋯♡」

 

蘭の頭は、パニックだった。

ダメだ、と叫びたい。突き放したい。

しかし。

しかし、彼女の身体は。

毎晩、毎晩、夢の中で、この感触を、この熱を、この硬さを、徹底的に刷り込まれてきた、彼女の正直な身体は。

 

彼女自身の意思とは全く無関係に、勝手に動き始めてしまった。

 

「あ⋯いや⋯なんで⋯こし、が⋯♡」

 

彼女の腰が、くねりと、まるで蛇のように蠢く。

そして、神代の、そのペニスを、まるで餌をねだる雛鳥のように、自ら、その入り口で受け入れようとしてしまうのだ。

 

神代は、そのあまりにも健気で、そして淫らな光景に、満足げに微笑んだ。

そして、絶望に目を見開いている蘭の耳元で、こう囁いた。

 

「おや、可愛いな」

 

その声は、まるで珍しいペットでも見つけたかのような、純粋な好奇心と、そして底知れない侮蔑に満ちていた。

 

「俺が、何もしなくても、勝手に、ねだってくるじゃないか」

 

その残酷な一言が、とどめだった。

蘭のかろうじて残っていた、最後の理性が、完全に砕け散る。

 

ああ、そうか。

この人は、分かっているんだ。

私の、この身体が、私の意思に逆らって、この人を求めてしまっていることを。

そしてそれを、心底楽しんでいるんだ。

 

神代は、その自ら擦り寄ってきた彼女の身体を、「許し」と解釈した。

いや、彼女の身体が与えた「招待状」を受け取った、というべきか。

 

彼は、一気にそのチンポを彼女の、処女の、硬く、しかし、愛の蜜で濡れそぼったその最深部へと突き入れた。

 

「んんんぎゃあああああああーーーーーっっ!!♡♡」

 

薄い膜が破れる、微かな、痛み。

しかし、それを遥かに凌駕する、脳髄が痺れるほどの、圧倒的な、快感と充填感。

毎晩、毎晩、夢の中で焦らされ、求め続けてきた「答え」が今ついに、彼女の、身体の一番奥に突き刺さったのだ。

 

蘭の絶叫が、狭い個室に、木霊した。

それは、天使がその純潔を、自らの身体の裏切りによって、失った瞬間の悲しく、そしてあまりにも甘美な産声だった。

 

神代は、蘭の絶叫を、まるで美しい音楽のように聞きながら、その腰をゆっくりと動かし始めた。

一度道が開かれてしまった聖域は、もはや何の抵抗もできない。

彼の硬く太い男根が、その奥のまだ誰も触れたことのない柔らかい場所を、容赦なく抉っていく。

 

「あ⋯! ああ⋯っ!♡ ひっ、く⋯!♡」

 

蘭の口から漏れるのは、もはや悲鳴ではなく、嗚咽と、そして隠しようのない甘い喘ぎ声だった。

痛い。苦しい。そして何よりも、新一を裏切ってしまったという罪悪感。

それなのに。

それなのに、身体の芯は、今まで感じたことのない、とてつもない快感に震えていた。

 

「どうした、蘭くん。涙を流して」

 

神代は、彼女の汗ばんだ額にかかる髪を優しくかき上げながら、悪魔のように囁く。

 

「そんなに嬉しいのかい? 俺に処女を捧げられたことが」

 

「ちが⋯! 私は、こんなこと⋯望んで、なかった⋯!」

 

「嘘をつけ。お前の身体は正直だよ」

 

彼はそう言うと、一旦その動きを止めた。

そして、まだ自分のもので満たされている彼女の入り口付近を、わざとらしく、ねっとりと、擦り上げる。

 

「んぅうううっ!♡♡」

 

それだけで、蘭の身体が、ビクン、と大きく跳ねる。

彼の言う通りだった。

彼女の身体は、もう完全に彼のものになってしまっている。

彼のどんな些細な愛撫にも、正直に、そして敏感に反応してしまう。

 

「ほら、もっと欲しいんだろう? お前のその可愛い身体で、俺のペニスを締め付けてみろ」

 

彼は蘭の腰を掴むと、今度は一転して、激しくその腰を打ち付け始めた。

 

「あががっ!♡ あ、あっ、んっ、んっ!♡ だめ、だめ、そんなに、激しくしたら⋯!♡」

 

狭い個室の中に、肌と肌がぶつかる卑猥な音が響き渡る。

遠くから聞こえる、パーティーの華やかな音楽。

そのコントラストが、この行為の背徳感を、さらに増幅させていく。

 

蘭の意識は、もうほとんどなかった。

ただ自分が、今この瞬間に、この男に、めちゃくちゃに抱かれているという、その事実だけが現実として、彼女の身体に、魂に、刻み込まれていく。

 

やがて神代は、彼女の身体の奥で、その硬度をさらに増した。

 

「さあ、蘭。これが、お前の望んだ答えだ」

 

彼はそう言うと、一際大きく、深く、彼女の、その処女だった子宮の入り口に、自身のチンポを打ち付けた。

そしてその熱く、濃い、支配の証を、彼女の身体の、一番奥深くに、迸らせた。

 

「んんんーーーーーっ!♡♡♡♡」

 

蘭は白目を剥き、全身を硬直させながら、人生で、最も深く、そして罪深い、絶頂のオーガズムを迎えた。

その意識が、完全に闇へと落ちていく。

 

神代は、ぐったりと壁にもたれかかる、その美しい亡骸のような身体を、しばらく慈しむように眺めていた。

そして、何事もなかったかのように、彼女の乱れたドレスを丁寧に直し、髪を整えてやる。

 

「いい子だ、蘭くん。――パーティーに、戻ろうか」

 

神代のそのあまりにも、普段通りの声に、蘭はかろうじて意識を、現実に引き戻した。

足が震えて、力が入らない。

腰の奥が、まだ彼の与えた熱で、ジンジンと痺れている。

 

神代は、そんな彼女を、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく支えると、何事もなかったかのように、個室のドアを開けた。

 

「さあ、行こう」

 

蘭はもう、何も言い返せない。

ただ彼の、その力強い腕に支えられるまま、まるで操り人形のように、その足を踏み出すことしかできなかった。

 

化粧室の大きな鏡に、二人の姿が映る。

完璧なタキシード姿の美しい男。

そしてその隣で、まるで魂が抜けたかのように虚ろな表情で彼に寄り添う、ドレス姿の少女。

それはまるで、魔王と、その魔王に捕らわれたお姫様のようだった。

 

パーティー会場に戻ると、園子が心配そうな顔で駆け寄ってきた。

「蘭! 大丈夫!? すごく、顔色が悪いわよ!」

「⋯う、うん。大丈夫。ちょっと、疲れちゃったみたい⋯」

 

蘭は親友の顔すら、まともに見ることができない。

自分はついさっきまで、この親友の想い人であるこの男に、トイレで処女を奪われていたのだ。

そのあまりにも汚らわしい事実に、吐き気がした。

 

しかし同時に。

神代の腕が自分の腰から離れていく、その瞬間に、またあの、強烈な「喪失感」が、彼女の心を襲った。

もっと、触れていてほしい。

もっと、この人に支配されていてほしい、と。

 

彼女は、はっきりと自覚してしまったのだ。

自分はもう、この男なしではいられない。

自分はこの男に、身も、心も、完全に支配されることに、快感を覚えてしまっているのだ、と。

自分の中に、「奴隷」の素質があったという、絶望的な事実を。

 

蘭がその場で崩れ落ちそうになった、その時だった。

 

「蘭君? 園子君? こんな所でどうしたんだ?」

 

快活な声が、彼女たちの背後からかけられた。

声の主は、ボーイッシュなパンツスーツに身を包んだ、クラスメイトの世良真純だった。

 

彼女は、蘭の、明らかに様子のおかしい顔色に気づくと、その表情を鋭くさせる。

「蘭君、顔色が悪いじゃないか。大丈夫か?」

「せ、世良ちゃん⋯ううん、なんでも⋯」

 

蘭がしどろもどろになっていると、園子が、慌てて二人の間に割って入った。

「だ、大丈夫! 蘭は、ちょっと踊り疲れただけだから!」

 

その、あまりにも不自然な、園子の取り繕うような態度。

そして、そんな二人を、まるで面白い芝居でも眺めるかのように、静かに見下ろしている、見慣れない男。

 

世良の、探偵としての直感が、警鐘を鳴らす。

彼女は、蘭と園子から、その視線を、ゆっくりと、神代へと移した。

そして、挑戦的な笑みを浮かべて、こう言った。

 

「ボクは世良真純。蘭君たちのクラスメイトで、探偵だからな」

 

彼女は、親指で、怯える蘭を指し示す。

 

「アンタ、ボクの友達に、何かしたのか?」

 

それは、挨拶などではない。

明確な敵意と、疑念に満ちた尋問だった。

 

神代は、そんな彼女の、物怖じしない視線を受け止めると、初めて、心の底から楽しそうな笑みを浮かべた。

 

「神代玲だ。探偵ではないが⋯君のような、好奇心旺盛な子猫ちゃんは、嫌いじゃない」

 

彼は、蘭のことなど、もう興味がないとでも言うように、その意識を目の前の、新しい「獲物」へと、完全に切り替える。

 

蘭は、その光景をただ呆然と、見つめることしかできなかった。

クラスメイトが、自分を助けようとしてくれている。

しかし、自分は、何も言えない。

そして、自分を、めちゃくちゃにした、この男は、もう自分ではない、別の女に、興味を向けている。

 

その事実に、彼女は、絶望と、そして初めて感じる、醜い「嫉妬」の感情に心を焼かれていた。

 

自分が、これからどうなってしまうのか。

そして、この悪魔のような男が、次に何をしようとしているのか。

もう彼女には、何も、分からなかった。

 

ただこれから始まる、新しい地獄の予感だけが、彼女の壊れかけた心を、支配していた。

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