名探偵の世界のバグ(エラー)は俺らしい 作:heatmajin
パーティーでの一件以来、蘭の、精神的な不安定さを見抜いた世良は、その原因が神代玲にあると確信していた。
放課後の雑踏の中、彼女は、隣を歩くコナンの顔を覗き込むようにして尋ねる。
「ねえコナン君。あの神代って男、どう思う?」
「さあ? ボクはただの小学生だから、よく分からないけど⋯園子姉ちゃんの好きな人でしょ?」
コナンは、完璧な子供の笑顔でそう答えた。しかしその瞳の奥には、年相応ではない鋭い光が宿っている。
言葉は交わさない。
だが、それで十分だった。
二人の間には「あの男は危険だ」という共通の認識が、確かに生まれていた。
彼らは表向きはそれぞれの日常を送りながら、水面下では連携し、神代玲という巨大な謎の調査を開始した。
しかし二人が最初に直面した壁は、あまりにも高く、そしてあまりにも滑らかだった。
神代玲の経歴は、完璧すぎたのだ。
まるで誰かが意図的に作り上げたかのように、そこには一点の曇りもなかった。
「手掛かりがないなら、作るしかないさ」
ある日の帰り道、世良は悔しそうにそう呟いた。
コナンは無言で頷く。
二人の小さな探偵たちはまだ知らない。
それが、蜘蛛の巣に自ら飛び込んでいくのと同じ行為だということを。
そして彼らがこれから味わうことになる、圧倒的な敗北の味を。
*
数日後。二人が待ち望んでいた「舞台」は唐突に用意された。
西多摩市の美術館。ロマノフ王朝の秘宝「インペリアル・イースター・エッグ」が、忽然と姿を消したのだ。
そのエッグは、鈴木財閥が次の展覧会のために、借り受ける予定だった品だった。
そのため現場には、鈴木財閥の相談役である毛利小五郎が、当然のように駆けつけていた。
そしてその小五郎に蘭と園子、さらにコナンと世良が「心配だから」という名目で付き添っている。
捜査が難航する中、ついにコナンが動く。
彼は、その場にいる小五郎を腕時計型麻酔銃で眠らせ、「眠りの小五郎」の推理ショーを開始した。
世良は、その完璧なアシスト役をこなす。
「犯人は、内部の人間だ! 美術館の館長、あなたしかいない!」
眠りの小五郎の口を借りる形で、館長を追い詰める。
その、まさにクライマックスの、瞬間。
まるで散歩でもしているかのような、のんびりとした声が、その場の緊迫した空気を切り裂いた。
「やあ皆さん。何やら面白いことになっているようだね」
その声に、その場にいた何人かの人間が同時に反応した。
振り返るとそこにいたのは、神代玲だった。
彼はいつの間にか、この美術館の臨時セキュリティ・コンサルタントとしてその場にいたのだ。
「玲さん!♡」
園子が、救世主でも現れたかのように、顔を輝かせる。
蘭は、ただその場で凍りついていた。
彼の姿を見ただけで、その声を聞いただけで、彼女の身体の奥が、またあの甘く疼くような熱を帯び始めていたからだ。
彼女は誰にも気づかれないように、自分の震える手を、ぎゅっと握りしめることしかできなかった。
世良とコナンは、敵意と警戒感を剥き出しにして、彼を睨みつける。
神代は、そんな四者四様の反応を面白そうに一瞥すると、眠っている小五郎へと向き直った。
「いや、違うな。眠りの小五郎さん」
その静かな、しかし絶対的な一言に、その場の全員が息をのむ。
「その推理には、致命的な穴が三つある」
神代は淡々と、しかし完璧に、コナンが組み立てたはずの推理を論破していく。
そしてこう続けた。
「そもそも、この事件は盗難事件ですらない。エッグはまだ、この美術館の中にある」
「なんだと!?」
「本当の犯人は⋯君だね」
神代が指さしたのは、全くノーマークだった若い学芸員の女性だった。
「彼女は、エッグを盗んだのではなく、隠したんだ。海外のオークションで、偽物とすり替えられる計画があることを、事前に察知してね。彼女はただ、この美術館の宝を、守りたかっただけなんだよ」
神代は、彼が超能力で見つけ出した、動かぬ証拠、つまり、学芸員の女性が、必死の形相で、エッグを、館内の、秘密の隠し通路に隠している、防犯カメラの死角からの映像を、警察に提示した。
世良と、そして眠る小五郎の影に隠れたコナンの、探偵としてのプライドは、木っ端微塵に砕け散った。
自分たちの積み上げてきた論理が、この男の前では、まるで子供のお遊びでしかないという事実を思い知らされたのだ。
神代は、呆然とする二人を一瞥すると、興味を失ったようにその場を後にした。
その背中はまるで、退屈なゲームを終えた後のようだった。
*
その夜。蘭はまた、あの「夢」を見ていた。
しかし今夜の夢は、いつもと少し違った。
夢の中で神代は、彼女を優しく抱きしめ、そして激しく愛撫する。
だが、決してそれ以上はしてこない。
一番気持ちのいい、最後の一線を越えるその直前で、ふっと、悪戯っぽく笑いながら、姿を消してしまうのだ。
あまりにもリアルな快感の記憶と、そして焦らされた身体の疼きだけを残されて。
蘭は、びっしょりと汗をかいたまま、目を覚ました。
「⋯っ⋯う⋯ん⋯」
身体は熱く火照り、下腹部の疼きは、もう我慢の限界を超えていた。
空っぽのまま残された、この身体の奥の虚しさを、どうすればいいのか分からない。
彼女は、ついに抗えなかった。
新一への罪悪感に苛まれながらも、震えるその指を、自分のパジャマのズボンの中へと滑り込ませていく。
そして、夢の中で神代に、何度も何度も教え込まれたその場所を、自分自身の指で、なぞり始めた。
「あ⋯!♡ ん、く⋯っ⋯!」
初めての、背徳的な行為。
それは確かに、彼女に一瞬の快感をもたらした。
しかし。
しかし、その虚しい快感は、夢の中で神代の太く硬い本物のペニスに与えられる、あの脳が焼き切れるほどの快感とは、全く比べ物にならなかった。
むしろ、そのあまりの「差」に、彼女は絶望する。
自分のこの指では、ダメだ。
本物が、欲しい。
あの、神代さんの、本物のチンポが、欲しい、と。
彼女は、自分の指で小さな絶頂を迎えながら、静かに涙を流していた。
自分のどうしようもない淫らさと、そして決して満たされることのない、この「渇き」に。
一方、その一部始終を千里眼で眺めていた神代は、自室のベッドの上で、静かにその目を閉じた。
彼の目の前には、鈴木朋子が、四つん這いの姿勢で跪いている。
彼女は、何も身に着けていない。
しかし、彼女のその、滑らかな腹の中心。
そのヘソには。
これまで彼女が一度もつけたことのなかった、小さな、しかし、純度の高いダイヤモンドが埋め込まれたピアスが、静かに煌めいていた。
神代は、千里眼で見ていた蘭の、あの、いじらしい自慰の光景を、反芻するように呟いた。
「⋯素晴らしい、眺めだったな」
そして、目の前で命令を待つ朋子の、その豊かな尻を、まるで馬でも検分するかのように、パン、と軽く叩いた。
「ひぅっ⋯!」
朋子の身体が、びくりと震える。
「さて、朋子。お前の娘も、ずいぶんと、俺色に染まってきたようだ。お前のように、な」
彼は、朋子の耳元でそう囁くと、その髪を鷲掴みにし、無理やり顔を上げさせる。
「もし、今のお前の、この雌犬のような姿を園子が見たら、どう思うだろうな?」
「⋯っ! や、めて⋯ください⋯」
朋子は、震える声で、懇願する。
娘の前での、母親としての最後の、最低限のプライド。
彼が今、弄んでいるのは、まさにその彼女の、最後の砦だった。
「やめてほしいか? ならば、もっと俺を楽しませてみせろ。お前の、その熟れた身体でな」
神代はそう言うと、彼女のその、無防備な尻の割れ目に、自分の硬く、熱くなった男根を、ぐり、ぐりと擦り付け始めた。
「あ⋯!♡ ん、ぁ⋯!」
「ほら、鳴け。もっと、みっともない声で、鳴いてみせろ。さもなくば、今すぐ園子を、ここに呼び出すぞ。そして、お前の、この見事な芸を、目の前で見せてやろうじゃないか」
その残酷な脅しに、朋子の最後の理性が完全に崩壊した。
彼女はもはや、恥も外聞も全て捨て去った。
「ひぃいいっ!♡ いや、です! 園子だけは、いやぁっ!♡ お願いします、ご主人さまぁっ!♡ もっと、朋子の、ここを、めちゃくちゃに、してくださいぃっ!♡」
彼女は、自らその尻を高く持ち上げ、神代のペニスを、その秘裂で迎え入れようと、必死に腰をくねらせる。
彼女は、主人の命令通り、みっともなく、鳴いたのだ。
「ほう。ようやく素直になったな」
神代は、そのあまりにも見事な雌犬の姿に満足げに微笑む。
そして、彼は、その懇願に応えるように、一気にそのチンポを彼女の潤んだ子宮の奥へと突き入れた。
「んくぅうううっ⋯!!」
今度は、甲高い絶叫ではなかった。
息が詰まり、声にならない、獣の呻き声。
それは、命令されて鳴く先ほどの声とは、全く違う。
身体の芯の、奥の奥から絞り出された、純粋な快感の雄叫びだった。
彼女の琥珀色の瞳から、一筋、静かに涙がこぼれ落ちる。
プライドの高い女帝が、その頭で考えていた「服従」ではなく、身体の本能の全てで、ただの「メス」であることを認めざるを得なくなった、その瞬間だった。
そして、その全てを、見せつけられていた、神代の、もう一人の忠実な奴隷。
――佐藤美和子は。
部屋の隅の暗闇の中で、その息を殺しながら、自分以外の女が、主人に可愛がられている、その光景に、醜い、嫉妬の炎を燃やしながら、自らの指で、その濡れた秘裂を、慰めることしかできなかった。
「いい傾向だ。天使はもうすぐ、自ら俺の元へ飛んでくるだろう」
そして、時を同じくして。
都内にあるホテルの一室。世良真純は一人、ベッドの上で、今日の事件の、そして、神代玲という男の、異常なまでの洞察力を反芻していた。
小手先の調査では意味がない。
あの男の本質には、決してたどり着けない。
彼女はそれを、痛いほど悟っていた。
(神代玲⋯)
彼女は、心の中でその男の名前を呟く。
もう探偵ごっこはおしまいだ。
あの怪物のような男を理解するためには、もっと直接的に、その懐に飛び込むしかない。
たとえそれが、蜘蛛の巣に自ら飛び込む、蝶のような行為であったとしても。
彼女は決意した。
その琥珀色の瞳には、もはや探偵としてのライバル心ではない、もっと個人的で危険な好奇心の炎が燃え上がっていた。
その鋭い視線が、今ここにいない神代玲という男の幻影を、確かに捉えているかのように。
朋子を抱きながら、千里眼でその世良の表情の変化を眺めていた神代は。
まるで新しいおもちゃを見つけた子供のように、面白そうに笑みを浮かべていた。
「ほう。ようやく腹を括ったか。⋯可愛い子猫ちゃんだ」
二つの運命が今、確かに交錯しようとしていた。