残骸置場 作:逃走‼蜚蠊男
餓狼が如く闘争を求め
獅子の門を潜り
己が拳に願いを馳せ
東天と為す──
龍が如く生きる
刃と牙の範馬道──
これは、その道へいずれ赴く、白い少女の闘争の記録である。
1.
少女が歩いている。
たった一人で、深夜の歓楽街『神室町』を歩いている。
日本最大の歓楽街である。
しかし、極道の黒い噂も付き纏う、光も闇も集う、そんな町である。
そこを、幼い少女が一人。
──何事か。
だが、少女に視線を向ける大人は居なかった。
髪が白い。
肌も白い。
口唇も白い。
その幽鬼の如き見目より察するに、声も恐らく白い。
着ている物も白い。
胸元は赤黒いが、それは汚れか。
よもや、血の跡ではあるまいか。
ワンピース代わりの丈の長いシャツである。
しかも、裸足だ。
靴下も履いていない。
左肩から、褪せた白いポーチを提げている。
チェーンも、色が落ち、既に錆びていた。
現在、カレンダーの上では、クリスマスが終わり、12月28日。
冬の真っ只中である。
この寒い時期に、それしか身に付けていないのだ。
虚ろな双眸は、血塗られた様に紅い。
胸元の赤黒さと比べて、鮮やかに紅い眸であった。
先天性色素欠乏症
アルビノである。白い髪が長く伸ばされている。
無造作に伸ばされ、手入れされている様には見えない。
少女の年齢は幾つくらいであろうか。
十代には差し掛かってはいない。
一桁か──
八歳か九歳であろう。
背も低い。
年相応よりも、小柄である。
身長は、120cm程か。
身体が細い。鎖骨が見える。
肋骨等も皮一枚下で、剥き出しで浮いているだろう。
体重など35kg程度あれば、良い方かも知れない。
単身痩躯──
奇妙で、異様な少女であった。
異質な空気が纏わり付いている。
西暦2005年12月26日──
二人暮らしの母が死んでいた。
六畳一間のアパートでの出来事である。
唯一の肉親であった。
少女が纏う異質な空気は、母の死が影響しているのかも知れない。
母の死は、病死や自然死ではない。
──自殺であった。
首を括り、天井から吊り下がっていたのである。
恐ろしい壮絶な死に顔であったと、少女の脳裡に今も残っている。
憎しみをぶつける様に目を剥いていた。
睨まれている──彼女はそう感じた。
舌が垂れ下がり、半開きの口から涎や泡が吹いていた。
足元は、糞尿でまみれ、悍ましく水溜まりが出来ていた。
その水溜まりには、手首を切った際に流れ続ける鮮血も混じっていた。
母が、享年何歳であったか、少女は知らない。
生前の母とまともに会話をしたことさえ、無かったのだ。
名前で、少女を呼んだことすら無い。
娘を愛していないのだ。
恐らく、憎んでいた。
その憎しみは、少女への呼び名で理解出来るだろう。
──蛆虫それが、母が子を呼ぶ際の名前であった。
愛されては、いなかった。
しかし、母との別れは、少女にとって辛い物が有るのだろう。
しかも、首吊り自殺による死体を見たのだ。
それ故に、異質な空気が、少女に纏わり付いているのだ。
母と暮らしていたころ、少女は、ゴミ捨て場で生ゴミなどを、口にしていた。
蜚蠊や野良猫、溝鼠が食事仲間であった。
夜の八時を過ぎた頃。
少女は、時計を持っていないので、詳しい時刻は分からない。
だが、不意に腹が鳴った。
空腹感に見舞われたのだ。
最後に、何かを口にしたのは一昨日の事である。
「……牛丼だ」
少女は、不意に、心が高鳴るのを覚えた。
二年前、ある少女と食べた思い出が沸き上がっていた。
ポシェットを調べた。
小銭が何枚かあった。
合計423円──
そして、白い少女──
──423円で何が食べられるかな。
もしかしたら、二年前より、高くなってるかも知れないなぁ。
──あの時は、翠が奢ってくれたんだよね。
値段、気にしなかった。
今思えば、余り良くない態度だったな。
少しは気にしないと。
奢ってもらう立場なんだし。
翠には甘えすぎた。
私何かが、人に甘えちゃいけないのに。
──なんでかな、翠にはつい、甘えてしまっていた。
あぁそう、値段、幾らだったかな。
あ、でも、そうだ、翠と入った牛丼屋は、赤牛丸じゃない。店名は忘れたな。
看板の丼が赤かったっけ。
赤牛丸じゃなくて赤丼丸かな?
違うか。なんでもいいか。
店が別の所なら、だったら、値段も違う筈だよね。
翠──城之内翠
二年前に、とある事件を切っ掛けに、出会った二歳年上の少女である。
赤牛丸は、全面ガラス張りだった。
店内がよく見える。
自動ドアもガラスである。
登りやポスターに牛丼のイラストなども描かれていた。
並は280円だった。
ポスターに書いてあった。
西暦2005年現在、牛丼もまだ高くは無い。
だが、白い少女──真冬には十分高価な代物だ。
手持ちの半分以上の小銭が必要なのである。
これが、無くなればどうしよう。
実は、真冬には考えがあった。
非常に浅はかな考えである。
この神室町には、ホームレスが暮らす村があると聞いた事があった。
西公園の賽の河原である。
そこに、潜り込もうと考えているのだ。
──いっそ、自分もホームレスになる。
そんな浅はかで、あり得ない考えを、九歳の少女が行っているのだ。
ホームレスの世界。
九歳の浮浪児が生きていけるような、甘い世界であるわけが無いのだ。
真冬は、入店するタイミングを態とずらした。
不自然にならないように、ポスターなどを見ているように、移動したのだ。
何処か不穏な厭な気配を感じたからだ。
予見した様な、ある種の未来予知に似ているかもしれない、そんな危険に対しての察知能力である。
──護身
真の護身とは何であるか。
護神流の開祖、御輿芝喜平は語る。
──護身を極めれば、危うきに近寄れぬ。
危うきに近寄らぬことですら無い。
そもそも、近寄れぬのだ。だが、その域に達して居なくとも、危うきを察したならどうすれば護身となるか。
それこそ、近寄らぬ事である。
真冬は、それを実践したのだ。
危険を察する力と、それを回避する行動。
真冬は、また、護身に開眼しつつあるのだ。
若干九歳の少女がである。
賽の河原に、近寄ろうとしているのは、単にそこが危険であるという事を知らぬ、知識の無さのせいである。
だが、今、この赤牛丸で察した危険は、真冬もよく知る、暴力の気配であった。
ポスターに目を落としながら、周囲の空気を探った。
気配や、微細な空気の流れ、或いは人から発せられる『氣』といった物を、真冬は敏感に感じとる事が出来るのである。
小さな音を立て、自動ドアが開いた。
出てきたのは、三人組だ。
二人が男、もう一人は女だった。
見たところ、何処かの道着を身に付けていた。
胸元の左側に『本部』『神心』と黒字で書かれている。
本部が横書き、神心が縦書きである。真冬は知らないが、世界中で100万人を越える門下生を有する空手道の雄である。
館長の愚地独歩は、かつて、虎を素手で屠ったという。
その虎殺しの逸話を表現した巨大な絵が、本部のビルに描かれている程、有名な話である。
もし、真冬がその逸話を知ったとしたら、愚地独歩の恐ろしい戦闘力に憧れはするだろう。
だが、真冬自身は虎殺しをやりたいとは思わない。
単に『虎さん可哀想』と思うだけであろう。
しかし、神心会の主催するトーナメントなどで、愚地独歩が行うパフォーマンス、土管の粉砕を見たなら、それを真似したくはなるだろう。
九歳の少女がコンクリートを粉砕する?
普通は、無理だ。
だが、恐らく真冬ならば、可能であろう。
何故なら、彼女は、庭石を、球体に変えてしまうのである。
球体だけではない。
岩を輪に、岩を一本の棒に変えてしまうのである。
──打岩
──打輪
──打針
中国拳法でそう呼ばれる技術であった。
庭石に対してとは言え、真冬は六歳から七歳の間で、それらを行ったのだ。
恐ろしい、技術の持ち主である。
道着の三人、その内二人の男が黒帯、女が白帯だ。
神心会は、老若男女問わず門戸を開いており、当然女子の部もある。
入門希望者全員が、苛烈な修業をするわけではない。
そうしたところも、全世界100万人の門下生を擁することになった側面の一つだろう。
神心会程で無いにせよ、それなりに名の有る空手道の道場。
『魂神流空手道』
この道場では、女子の門下生も男子に混じって行われる。
組手なども、男子と行われるのだ。
故に、女子の門下生は直ぐに退会してしまう。
女子だけではない。
例えば、軽く仕事帰りに汗を流したいサラリーマン。
そんな人物にも実戦至上主義を名目に、苛烈な鍛練をさせるのだ。
とは言え、機会があれば、魂神流空手道の本部道場に一日か二日程度なら入門してみてもいい。
何故なら、その道場唯一の女子門下生『雪平紗羅』の愛らしさは、文章では言い表せない程である。
彼女の一見の価値がある愛らしさを目にするためなら、一日くらいは耐えても惜しくあるまい。
だが、関わってはいけない。
彼女は、病魔と言える、ある種の化物である。そうした、魂神流空手道と異なり、神心会は、入門者毎にコースが選べ、会費も、例えば帯の色などで変わるのだ。
魂神流が極端な例ではあるが、神心会が世界的な道場になったのもそうした一面からであろう。
無論、そんなことより、愚地独歩の存在が余りにも大きいことは言うまでもないだろうが。
真冬が感じた、不穏で厭な暴力の気配は、彼ら三人が纏っているわけでは無かった。
彼らが、自動ドアを潜って、三人一緒に外に出てきた時だ。
自動ドアが閉まった。
その程度の間はあった。
多くの通行人達を割って、同じく三人組の男達が、現れたのだ。
天下一通りと劇場前通りが挟む泰平通り西。
その泰平通り西の角に、赤牛丸がある。
三人組は、天下一通りの方から歩いて来たようだ。
彼ら、神心会の三人が赤牛丸に居ることを知っていたかのように現れたのである。
確実に狙いすました上で、姿を見せたのだ。
「よ~う、あんた、神心会女子部の井上ちゃんだろぉ、見たよ演舞と試合」
「あんた、有名だよ、神心会一の美少女井上ちゃん!」
下卑た声で、男達の二人が叫んだ。
態々、人込みのなか、大声で名前も叫ぶ礼儀の無さであった。
そこで、黒帯の一人が眉を顰めた。
不快感を露にし、声を出した。
その声は、彼らの様な大きな物ではなかった。
ただ近くの女性に掛けるだけのものである。
「相手にするな、行くぞ、井上」
「は、はい」
「井上ちゃん、俺らと遊ぼうぜぇ」
真冬は、神心会の面々も自動ドアの付近に立っているため、自動ドアに近寄れ無いのだ。
多少困りつつ、ふと、井上を見た。
──怯えている。
その表情が、城之内翠と何故か重なったのだ。
二年前、力士とヤクザに囲まれて、怯えていた少女の顔とである。
井上に、嗜める様な口調で言った神心会の男は、もう一人の神心会の男と比べて大きな男であった。
背丈だけでなく、筋肉もかなりの量感である。
鍛えられた、武道家の肉体であった。
身長183cm体重95kgほどだろうか。
誰もが目を引く、そんな大きな体躯ではない。
だが、そこは、鍛えられた肉体だ。
同じ身長体重であっても、質が違う。
──強いな
真冬が、彼に抱いた印象がそれだった。
悪く言う訳では無いが、例えば『怖い』とは思わなかった。
彼は、確かに『武』の人では、ある。
だが、その武は暴力とはイコールでは無さそうだと、真冬は感じたのである。
──盾であって矛ではない、そんな印象であった。
無論、そこが試合の場であれば、存分に矛となるであろう。
ようは時と場所である。
武を暴力とはしない、そんな男だと、真冬は察したのだ。
「井上ちゃんさ、源王会って知ってる?」
「俺達、そこで盃受けたもんよ」
「井上ちゃん、遊びに行こうよ、俺達とさぁ」
真冬は聞いた事が無い名前を男が言った。
源王会──
何の事か分からない。
しかし、男達の戦闘力の高さは理解出来る。
太く重そうな体格の男達だと、真冬は思った。
重いと言っても肥満ではない。
それは、鍛え上げられた筋肉の重さなのだ。
何かしらの格闘技を学んでいる。
「ふん、源王会ねぇ、盃受けたっつっても、お前ら単なる破落戸だろうが」
もう一人の神心会の男が言った。
明らかに、何かしら小馬鹿にした口振りである。
しかも、極道を前にしながらも、全く臆した様子が無い。
三人組の男達が、顔色をさっと変えた事からも窺えた。
この、極道を前にしながらも、啖呵を切った男。
敢えて言うなら、真冬は此方は怖いと思っていた。
例えば通常の試合なら、間違いなく、もう一人の方が上だろうと、真冬は察していた。
だが、こちらの男はそうした強さの他に別の強さがあるのだ。
恐らく、研ぎ澄まされた鋭利なナイフを前にしても、こちらは怖じ気つかない。
人は本能的に刃物に恐怖する。
しかし、この男はそうした物を前にしても、自分の武を見失わない筈だ。
そんな気配があるのだ。
獣の臭い。
武と暴力を両立させた匂いであった。
故に怖いと感じたのだ。
無論、間違いなく強い。
怖いだけではない。
また、
真冬が感じる『怖い』には、その硬さも含まれる。
その男から硬い強さが、感じられるのだ。
精神も筋肉も拳も、確実に硬い。
何よりも、硬い氣が、男から立ち上っているのである。
場合によっては、その氣をぶつけるために、拳を固める。
その拳がぶつけられるのは、何も尋常な試合の場だけではないのである。
こうした路上の喧嘩でも、神心会で鍛えた硬い拳を奮うのであろう。
そう確信出来るのだ。
だから怖い。
──神心会という道場には、こんな強い人間が山ほどいるのかな。面白いな。
真冬は神心会に、少なからず興味が湧いていた。
「構うな、行くぞ、二人とも」
「……はい」
「あんたらも、後輩が悪かったな。通してくれ」
取り囲む様な立ち位置にいる男達に向かってそう告げた。
威圧する様な口調では無い。
慇懃な物ではないが、決して喧嘩を吹っ掛けているような無礼さは、その声に、含まれてはいなかった。
「通さな~い!」
一人がわざわざ手を広げそう言った。
そして、挑発するように、そのままの体勢で、上半身を左右に何度か振っていた。
どう考えても、彼らの方は喧嘩を吹っ掛けようとしている。
──ナンパが目的では無い。
神心会の門下生だから絡んでいるのである。
神心会の門下生を相手に喧嘩をしたいのである。
加えて、そこに、井上がいた。
かなりの美少女である井上を、副産物の戦利品として持って帰るのも悪くないと、そうした下卑た考えも持っているだろう。
井上は白帯、つまり無級だが、神心会主催のトーナメントの合間に行われる演舞のメンバーの中にいたり、たまに行われる試合などにも顔を出す。
そうしたイベントを好む者で、特に女子格闘家好きには、かなり知られているのが、この井上だ。
愛らしい容姿が、ある意味災いしているのである。
大人になればセクハラに悩まされそうな薄幸さがどこか見受けられる。
真冬は、ポスターに視線を落としながら、剣呑な気配と不穏な空気が張り詰め、広がり上昇していく厭な熱気を感じていた。
今にも暴発し、爆発する、そんな熱を孕んでいるのだ。
時限爆弾のように、その爆発までの時を、じわりじわりと刻んでいる。
それが犇々と肌に伝わるのだ。
──厄介だなあ
真冬は、井上の怯えた表情を見てしまった。
二年前の、翠と同じ目だ。
あの時、翠を放って置いたら彼女はどうなっていただろう。
なら、この女性はどうか。
年上だ。
普通なら、九歳の少女が護る相手ではない。
だか、この様な状況である。
井上と言う女性の事は、知らない。
だが、彼女の怯えの色に染まっている目が、あの時の翠を思わせてしまった以上、無視したくない。
真冬はそう思った。
そこに、理屈はなかった。
危うきに近寄らず──
當之真冬に、未だ、護身、開眼成らずと言ったところか。
源王会の男達は、みな身長180cmを越えている。
特に、手を広げ挑発している男は188cm105kgと言った所か。
かなりの重量級だ。
190cm近い日本人──海外なら兎も角、日本では、かなり珍しい身長の高さである。
しかも、鍛えている。
首が太い。
よく見れば、カリフラワーや餃子の様な形に耳が潰れている。
ぶつかり合い、寝技などの鍛練で畳と擦れ形成される、所謂、耳介血腫である。
何らかのスポーツ、格闘技を長年やっているのだろう。
だが、振る舞いは、そうした一面から見える想像とは真逆に当たる、軽薄そのものであった。
しかし、真冬は、ここにいる五人の男達のなかで、この男が一番『怖い』と感じていた。
仮にルールが取り決められた異種格闘技──
いつぞやに、プロレスラーの巽真や、神心会に並ぶ空手道の大家である北辰館の松尾象山が行った何でもありの異種格闘技試合。
それのようなルールで、やりあったなら、間違いなく、この場を仕切っているような形にある神心会の男が勝つだろう。
だが、こと路上での喧嘩となれば、別だ。
真冬の見立てでは、挑発している男は目を突くし、睾丸も潰してくる。
そうしたことに躊躇いを持たない人間だ。
刃物の使用さえ辞さない、そんな狂気に身を置いている人物なのだと、真冬は理解出来た。
何故、真冬の様な九歳の少女がそこまで分かるのか。
それは、気配である。
一人の人間が纏う異様な空気圧だ。
膨れ上がった、熱くも冷たくもある、そんな空気の圧力である。
ともすれば、この男、事故を装い、人間の首を折っている──そんな異様な血の臭いと気配が全身から滾っているのだ。
だが、それを感じられる理由、それを確信出来る理由、そうした事に頭が回る理由。
それは、何故か。
何故ならば、真冬もまた、そうした狂気に囚われた人間であるからであった。
「先輩、この破落戸共、口で言っても理解出来そうにないっスよ」
「構うな、
神心会の、この場に於いての年長者らしき男がそう嗜め、井上を庇いながら移動を試みていた。
「へへへ、神心会たぁ、マジで腰抜けの集まりだねぇ」
下卑た笑いと共に、三人組の一人が彼を指差し侮蔑の言葉を吐いた。
神心会が腰抜け──顔面に唾を吐かれるのと同様か、神心会への思い入れに依っては、それ以上ともなる侮蔑の言葉である。
「あ?何が腰抜けだと?」
「止めろ、町中の喧嘩など、北辰館の連中に任せていろ。神心会の門弟がやることでは無い」
北辰館の館長、松尾象山は、空手家の人間が例えば口論などの揉め事に巻き込まれているのを目撃したら、うちの門下生なら口論などせず既に殴りかかっていると言ってしまう程の武術家気質である。
そして、北辰館の門下生も、そうした武術家集団なのだ。
空手家の暴力事件、そうした物があれば、確実に神心会の人間より北辰館の人間が多いのだ。
だが、愚地独歩もまた、恐ろしい武術家気質の持ち主だ。
喧嘩が強いだけでいいのか?
そんな事を口にされる。
愚地独歩は、恐らくだが、そうした手合いに対しては、彼等が望むような玉虫色の返答をするだろう。
だが、実際は違う。
高弟の前ではこう言うのだ。
「強ければ良いんだよ」
彼も立派な、強き事を重んじる武術家なのである。
ならば、愚地独歩は、間違いなく、木塚の考えや態度の方を是とするだろう。
木塚は、さっさと、この極道共を叩きのめしてやりたい。
そう考えているのだ。
真冬は、このタイミングで動く事を決めた。
ポスターを眺めながら、ゆっくり、身体を動かしていく。
だが、仕掛けなかった。
自身の動きが起こり始めるのを、自らの意思で、若干ずらしたのである。
──木塚の存在であった。
彼が、打って出ようとしていることに気付いたのだ。
気配、若干の筋肉や骨格の動きと軋み。
その際に生じる空気流れや空間の震動。
流動しているのを肌で感じ、耳で聞いている。
何より、打って当てると、そう覚悟した木塚の意思や脳が伝達している信号を、真冬の脳が察知しているのである。
それは、宛ら、予知能力を思わせる知覚や先読みであった。
こうした読みを、九歳の少女が行っているのだ。
どこで訓練したのか。
そして、どのように体得したのか。
その若さで到達出来る領域では無いのである。
だが、体得していることに、間違いは無い。
そして、その知覚により、確かに真冬は木塚の動きを察知していた。
だから、動かない。
ここで、自分が動き、源王会の男に仕掛けたなら、木塚の面子が立たない。
そうした、思いが真冬の心に浮かんでいるのだ。
彼が極道を倒したなら問題ない。
真冬が助けたいのは、あくまで井上という女性である。
彼女を助ける者が誰であっても、そこに問題は無いのだ。
助けるのは自分以外でも良い。
感謝されたいわけでは無いのだ。
しかし、井上の恐怖と緊張のメーターがピークに達しているようにも思えた。
それが気掛かりだった。
そんな時だ。
また、腹が鳴った。
真冬の腹はかなり呑気な様子である。
緊張などとは程遠いところにあった。
腹はただ、牛丼を欲している。
──速く終らせて欲しいな。
自動ドアの奥に目をやると、店員が多少の動揺を見せていた。
長々とドアの前で何かしらのやり取りが続いているからだ。
しかも、大男が五人である。
揉め事なのは、見て分かる。
神室町で、日常茶飯事の光景とはいえ、店の前でやって欲しくは無い──それが店員の本音である。
「てぇ事は、あれだ。神心会は北辰館より腑抜けの集まりなんだな」
「こいつら、あれだよ、巽真とかのバーリトゥード出ねえもん」
「腑抜けで腰抜けっしょー、あのでかいのずっとビビりっぱなしじゃん」
年長者が言った『町中の喧嘩など、北辰館の連中に任せていろ』これに対して、煽りを入れて来たのだ。
木塚は、最早、止まらなかった。
真冬は察した。
行った!と真冬は心中で声を上げる。
木塚は、するりと構えた。
左腕と左脚が前に出ている。
右の腕と脚は後ろ。
右拳は胸元より少し上。
空手の構えだ。
そして、前に出していた左足を踏み出す。
それに続き右足も動いた。
それらの動きとほぼ同時に、すかさず、左拳を繰り出した。
真っ直ぐ、188cmの巨漢の顎を打ち上げたのであった。
速く──
重い──
木塚は左拳を叩き付け、直ぐ様それを退いた。
そしてその左拳に続き、右腕が弧を描いていた。
右拳が流れる様に疾った。
拳が振り抜かれると、人体を打つ音と、大気が破裂するような音が響く。
右拳が、久信の顎を貫いたのである。
このタイミングで、悲鳴が聞こえた。
井上の悲鳴も混じっているが、野次馬で集まって来ていた者達が発した悲鳴だった。
赤牛丸の店員も、慌てて、自動ドアへ駆け寄った。
だが、誰も止めようとしない。
止められる訳が無いだろう。
極道の男を殴り付ける道着を身に付けた男。
極道は188cmの巨体だ。
その空手道着の男も180cm程度の体躯である。
勿論、鍛え上げられた筋肉が道着の上からでもはっきり見て取れる。
久信を打った拳は、まるで石器の様な武骨さがあった。
幾つもの打製石斧を束ねて一つにしたような、荒々しく、武骨で硬い拳である。
木塚の顔は真っ赤に染まっていた。
殴られた側ではなく、殴り付けた側の顔が真っ赤なのだ。
それは、怒りによる物だ。
怒りの熱が顔全体に浮かび上がっているのだろう。
「殴った!」
悲鳴が上がった時、そんな声も張り上げられていた。
周囲ははっきり誰が言ったのか気付いていない。
恐らく、確信を持って、叫んだものが誰なのかを答えられる人間は、この場では真冬だけである。
──殴ったと叫んだのは、源王会の一人であった。
態とらしく、そう言ったのだ。
先に手を出したのは神心会──そう印象付ける為だろう。
仮に、目撃した者に現場検証の者が尋ねても、皆、神心会が殴ったと言うだろう。
全面的に神心会を悪とする。
真冬には、そんな思惑として見て取れた。
かなり狡猾な連中である。
そして、
──効いてない。
真冬は、そう呟き、顎に二発の拳打を受けて尚、微動だにしていない源王会の男をじっと見据えた。
眸は虚ろなままだ。
だが、若干揺れてもいた。
その揺らぎは、彼女に芽生えている動揺かも知れない。
──強いな、この人。
その小さな、端的に紡がれた言葉に、確かな驚愕が込められていた。
だが、真冬以外──大半の者は、顎への打撃により、脳が揺らされ朦朧としている。
そう受け取ったのだ。
男が、何らかの行動を、未だ、起こしていなかったからだ。
木塚もまた、そう判断したのか、止めに打って出たのである。
初撃の刻み突きで、顎が砕けていても可笑しくない。
木塚の鍛え上げられた拳から繰り出される一撃は、容易く頭蓋骨を陥没させてしまう。
彼の打拳を喰らう、それは石を思い切り、投げ付けられるようなものであった。
木塚は、激しいコンビネーションのラッシュを見せた。
気が遠くなる程の反復練習。
その末に組み立てられたコンビネーションである。
打つ為に必要な手順を、既に考える必要さえ無い。
身体が覚えているからだ。
手数が尋常ではない。
その全てを目で追えている者は、この場の野次馬と言う点で言えば真冬だけであった。
拳と足、掌、膝、脛、肘──
様々な部位が叩き付けられる。
前面から見える男の様々な部位が、木塚のラッシュの速射に貫かれるのだ。
例えば膝が鳩尾に突き刺さるのとほぼ同時に、若干のタイミングがずれて脛が跳ね上がり顳顬を打ちつけ、そして肘が脇腹に飛んでくる。
そうした物が様々なバリエーションで仕掛けてくるのだ。
単純な物から複雑な物、多様なコンビネーションのラッシュをまさに全身で繰り出していた。
男は、若干体を下げ、防御の態勢で耐えているだけの様に見えた。
男が着ている冬服とズボンが、既にボロのようになっている。
男達はみんな、ラフな私服である。
源王会を名乗っているが、代紋なども付けていない。
ラッシュを続け、木塚は一瞬の間すら置かず、コンビネーションの続きから、渾身の一撃を放った。
全身全霊かけて放たれる拳──
「ぁれ?」
その拳が、放たれるより僅かに前、真冬は声を上げた。
その声の後、残る源王会の男達二人が脱兎の如く逃げ出したのだ。
一人はミレニアムタワーが聳える泰平通り側に、一人は彼等が歩いて来た天下一通りの方向だ。
その天下一通りを真っ直ぐ南に進むと、神室町の入口として有名な、天下一通りと輝くあのネオンのアーチ看板が見えてくるだろう。
真冬は、彼等が逃げ出す前から、その行動を取る事に気付いていた。
そして、逃げ出す際の、彼等の心の裡に恐怖の色などが無かった事までも察していた。
無論これは、精神感応の様な超能力ではない。
筋肉の動きや、それにより生じた微細な震動を感じ、脈拍数や心音を聞き、発汗などによる臭いを嗅ぐ、そうしたものから精神状態を察するのだ。
だが、こうした精神状態や心境を察する知覚も、真冬がよく理解仕切れない物には対応していない。
それは例えば性的な欲望や欲求なども挙げられる。
何かしら、興奮状態にあるとまでは分かる。
仮に真冬を見て勃起している男を前にした場合、それの意味は理解出来ないだろう。
「興奮状態?胯間部が膨張してる。でも凶器にはならないよね。寧ろ人体急所をなんで肥大化させてるんだろう」
勃起している男を前にした場合、考える事はこんな所であろうか。
そうした弱点もあるにはあるが、真冬は、この技術の応用として、その気になれば、昆虫相手にも千里眼或いは心眼のような凄まじい察知能力を発揮し、パッと周囲に散開した複数の蜚蠊を、捕らえる事さえ可能であった。
しかも、羽根を折らず脚を挫かせる事無く、生かしたまま逃がす技術をも持ち合わせている。
人間以外の生き物にも通用するのだ。
まともな闘争の場にある感情ならば、手に取る様に察知できる。
ならば、彼等が消えたのは──
二人同時に相手しても──
後々、事情聴取を受けた時の事も考えての行動だ。
三人と二人の喧嘩より、聴取で有利になると考えたのだろう。
そして、これで一対二だ。
逃亡した相手へ、執拗に仕掛けて行ったのは神心会の方だとなる。
それでもなお喧嘩の上では──
「一人で二人を、問題なく、倒せると考えたから、かな」
真冬の声は幽鬼の声だ。
か細く、心霊が耳元で囁く様な声は、すっと冬の大気に消えていった。
その声は雪のように直ぐに溶けてしまい、誰の耳にも届いていない。
白い少女は、やはり声も白いのだ。
木塚は、攻撃の手を緩めない。
連続で、どれだけの数を打ち込んでいるのだろう。
野次馬達から見れば、残りの二人が逃げ出すのも無理はない──そう納得してしまうコンビネーションのラッシュである。
それを可能とする木塚のスタミナは、空恐ろしい物があるだろう。
かのマウント斗羽のライバルと呼ばれるレスラーの中に、無類のタフネスとパワーを誇る世界ヘビー級チャンピオンがいた。
──彼の異名は、人間発電所である。
この木塚のスタミナも、また、人間発電所に喩えたとしても、申し分が無いだろう水準にあった。
下段から中段、両足で交互に回し蹴りを放つ。
顔面中央に刻み突きが二連。
膝が顎下から突き上げられた。
と、そこで──
再び、木塚が構えた。
最初と同様の物だった。
その構えから、変化していく。
足を前後にするのは変わらない。
新たに構えを変化しつつ、発汗している赤い顔のまま、顰めた眼光で久信を睨み付け、じっと見据えている。
気合いを込める様に声を挙げた。
人間発電所となった木塚のエネルギーが炸裂する。
炉心と化した丹田で、核融合がスパークしたかの様だった。
全身に力が漲っていた。
そして、全身全霊かけて放たれる拳──
構えを変化させたが、ほぼ間髪入れず、その拳は放たれた。
核融合が如くスパークしたエネルギーは上半身の全ての筋肉に熱を発散させ、力となった。
その拳を放つ際、両の拳は引かれて、腰にあった。
それを真っ直ぐ突き出したのだ。
突き出す瞬間、腰を捻り更に加速。
正拳突きが、男の鳩尾に突き刺さっていた。
膝蹴りで顎が跳ね上がった状態からの、腹への正拳突きである。
更に、その正拳突きが後ろに下がるや、二発目が、全く同じ箇所にめり込んだのだ。
連続で恐ろしい音が響いた。
打製石斧の如き拳、確かに、石斧が肉を叩くと生じる音かも知れない。
硬い物が、硬い物にぶつかる音でもあった。
一般人なら、悶絶では済まない。
内臓の破裂は免れ無いだろう。
一般人がこの正拳を食らったら、石斧で打たれた──ではなく、鳩尾の内側で、爆発物が炸裂したかのように錯覚する筈だ。
誰もが、男の凄まじい巨体が崩れて行くのを想像した。
その時だ、真冬が突然奇妙な事を行った。
真冬が立っていたのは、赤牛丸のガラス壁の前だ。
そこで、ポスターを眺めるフリをしつつ、やり取りを見守っていたのだ。
それは、少女の唐突な奇行──
真冬は、左掌でガラス壁を叩いたのだ。
そして、そのインパクトの瞬間、強く圧していた。
──ガラス壁は音も鳴らなかった。
九歳の少女の奇行に一瞬目をやったのは、もう一人の神心会の男と、近くに居た数人の野次馬だけである。
しかし、彼らも真冬が何をやったか理解出来る訳が無かった。
理解しようとも思わなかっただろう。
一般人の目には、神心会の空手家が見せた技に興奮している変わり者の幼女とでも映ったのだ。
そして何より、真冬が行ったこれと、ほぼ同時に、木塚と源王会の男とのやり取りに変化が有ったからである。
殆どの者が注視したのは、この源王会と神心会が繰り広げている野試合宛らの喧嘩の動向であった。
何かが軽く音を立てた。
冷たく、鈍い、軋む様な音だ。
それを聞いたのは真冬だけだった。
雑踏が搔き消してしまう程度の音なのだ。
「いやあ、美味いねぇ、手頃な美味しさだよ、あんたの強さ」
無数のコンビネーション、全身全霊を傾けた二連の正拳突きを喰らった。
それを放つ木塚を美味いと言ったのか。
久信がそう、異様な称賛を言い放った直後、彼の両腕が動いた。
ぬらりと伸びて来た。
しかし、気付いた時には、その二頭の大蛇が、既に木塚へ絡まりその牙を立てていたのだ。
開手された五指と掌が、大蛇の牙であり、開口された顎だ。
それが、木塚の胴体に、食らいついていた。
その時だ。
体勢と視覚に違和感があった。
自分の目線の先は、天下一通りのアーチ看板に続く方角だった筈だ。
それが、赤牛丸のガラス壁に向いている。
一瞬だけ悲壮な顔の井上の顔が見えた。
みるみる内に、ガラス壁に亀裂が生じて行くのが見えた。
異様な現象であった。
このままでは確実に割れる。
そう思った刹那、左足がアスファルトを離れた。
不味いと考え、堪え様と力を込める。
しかし、既に木塚の身体が宙にあったのだ。
目眩の様な浮遊感──
既に視線はアスファルトに向いていた。
ガラス壁──
そこに、叩き付けられようとした時だ。
真冬が更に、軽くガラス壁を叩いたのである。
ガラス壁は、木塚を赤牛丸店内に迎え入れるかのように割れていく。
破片が多少、道着に当たりはするだろう。
だが、ガラス壁に意思でもあるかのように、割れるのだ。
木塚の身体がすり抜けた様にも見える。
緩やかに割れていった。
音も立てない。
もし、ガラス壁に投げ付けられていたら、どうなっていたか、想像に難くないだろう。
井上が絶叫した。
もう一人は、言葉を失っている。
木塚は、店内の床へと背中を叩き付けられた。
受身の心得はある。
だが、床は、畳やリングの上ではない。
かなり強固な物である。
そこに背中を叩き付けられたのだ。
凄まじい激痛が背中で発生し、熱い呼気が唸るように洩れた。
「──ガ……ガラス」
何が起きたのか。
最初にガラスの異常について言及したのは、真冬の側にいた野次馬の一人であった。
彼は真冬がガラスを叩いた瞬間を目撃していたのだ。
「まさか、お嬢ちゃん、あ、あんたがあの現象を……?」
眼鏡の奥の目が真っ直ぐに真冬へと向いていた。
──神心会
──源王会
それらより、この少女だ。
彼は、何故か、この場にいる何者よりも、この少女について詳しく知りたくなったのだ。
「無寸勁・破砕連振です」
「えっ!?」
「無寸勁・破砕連振です、翠が名付けてくれました」
真冬はそう、同じ名を繰り返した。
「翠?」
その問いには答えなかった。
「お嬢ちゃん、ちょ、ちょっと聞きたいんだけど、良いか?」
「はい、答えられる範囲なら構いませんがよろしいですか」
「最初に、ガラス壁叩いたのも、その──無寸勁?」
「はい」
「もしかして、お嬢ちゃんは、こうなることに気付いてた?」
「はい」
「柔道家が空手家をガラス壁に投げるってのも?」
「はい」
「お嬢ちゃんエスパーかなにか?」
「いいえ」
こっくりさんが答えているような会話である。
しかし、男は身体の震えを止められ無かった。
恐怖の震えではない。
歓喜だ。
真冬が、最初に無寸勁を放った時は、誰もが、木塚の勝利を疑っていない頃だったのだ。
あれから物の数秒の事とは言え、既に先を見越してガラスに何かの技術を使っていたと言う事になる。
「お嬢ちゃん、な……名前は!?」
「當之真冬です」
「お嬢ちゃん」
「それより──」
真冬は、なおも続こうとする質問攻めを、言葉だけで制した。
「少しの間、お待ち下さい」
そして、するりと、身体を動かした。
真冬の知覚は、確かに性的な物には対応していないかも知れない。
しかし、あの極道が、もう一人の神心会を叩きのめした後、あの女性に何かしら危害を加えるのは、分かる。
それが性暴力とは知らないが、危険な意思を向けていることは理解出来るのだ。
それに、木塚が倒れた。
彼は、闘争の意識を持っていた。
だから、彼の面子の為に、自分がしゃしゃり出るのは止めたのだ。
危険なら、彼が気付かぬ様に庇う。
もう一人の神心会の男は、闘争の意識を持っていない。
彼が路上の喧嘩を嫌う誇り高き武道家だとは察している。
そうした者に態々、余計な『危うき』に近寄らせる必要は無い。
他人の護身を、自らが買って出るのもたまには悪くない。
そして、何より、真冬自身、何故、こうして前に出たのか。
それは、あの井上の目だ。
怯え切ったあの目は、ある冬の夕刻、翠が見せた恐怖の色と同じだ。
翠の目と重なってしまった。
だから、真冬は、源王会の極道──
竹内久信の前に立ったのである。
これが、彼女に長年付き纏う事になる、不幸な因縁の始まりとも知らずに。