※この作品はR-18です。

残骸置場   作:逃走‼蜚蠊男

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最終的なものになった残骸


記録

 

 眼鏡の男は、離れて行く白い少女を、一瞬呼び止めようと考えたが、すぐに思い直す。

 この少女、一体、何をする気なのか。

 その熱い感情が、突然湧いてくる間欠泉の様に噴出したのだ。

 少女への興味が、止まらないのである。

 

 知らず知らずの内に、両の拳を握り締めていた。

 興奮が抑えられない。

 

 無寸勁──

 詳しくは知らない。

 だが、そう言う技術が何かの武術にあった筈だ。

 そんな技術を、あの様な少女が使った。

 破砕連振──

 それに関しては初耳だ。

 それは、仕方無い。

 小学生程度の年齢の少女が考えた、下らないネーミングセンスにより名付けられた、特に意味が通じる名称では無いからだ。

 

 だが、何にせよ、凄まじい技術ではある。

 凡そ2mは離れたガラス壁を砕いたのだ。

 しかも、神心会の男が負けることも予測し、彼を守るために、行った異様な技だった。

 割る箇所を打った訳でも無いのが不気味である。

 少なくとも、人間技ではない。

 

 実の所、あれは、無寸勁とは異なる。

 敢えて言うなら、真冬が使ったのは、遠当てに近いものである。

 

 妖怪──

 魔物──

 

 女神?

 そうだ。

 彼女は、この、歓楽街に降臨した女神じゃないのか!?

 

 ──いや、女神にしては汚ないな。

 

 興奮し贔屓目で見ていたが、改めて真冬の容姿を見詰め、そこで、正気を取り戻したのだった。

 見窄らしい、ただの浮浪児だ。

 流石に女神は言い過ぎである。

 薄汚れ、荒廃(うらぶ)れた姿は、寧ろ貧乏神のようだ。

 

 恐らく、妖怪が最もしっくり来る比喩の対象であろう。

 赤い服を着ていたら台湾の女怪モシナを連想するかも知れない。

 残念ながら、着ている服は、汚ないシャツ一枚である。

 裸足で、アスファルトの上を歩いている。

 ホームレスの子供だろう。

 

 虚ろな紅い双眸も気味が悪い。

 肌など死人の様に白い。

 しかも白髪(はくはつ)である。

 

 ──妖怪だな。

 だが、性根は良い妖怪だ。

 もし、ゲゲゲの鬼太郎が実在するなら、この少女は、鬼太郎の味方側となる妖怪だろう。

 

 神室町の情報屋にして週刊誌の記者『青木』と、妖怪『當之真冬』が、ここで出会った。

 當之真冬が神室町で織り成す闘争の記録は、今まさに、この瞬間から、始まったのである。

 

 ゆらりと、真冬は動いた。

 ただ、風が吹く。

 ただ、水が流れた。

 そんな、動きであった。

 

「なんだ、あの、浮浪児──」

 もう一人の神心会の男が、近付いて来る真冬へと、怪訝そうに視線を向けた。

 明らかに、異様な姿である。

 この様な場に、少女が臆することなく近寄って来たのだ。

 怪訝に思っても無理からぬ事であろう。

 

 

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