※この作品はR-18です。

クソゲーハンターの兄は狙われている   作:ボルメテウスさん

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夜のドライブは

その日の呼び出しは突然だった。

 

「お前なぁ……」

 

溜息混じりに呟いた俺はエンジンを吹かした。

 

助手席には帽子を目深に被った永遠が座っている。伊達眼鏡の奥から覗く双眸は悪戯っぽく煌めいていた。

 

「自宅まで送ってくれるんでしょ?」

 

「送るわけねぇだろ! こんな怪しい依頼を素直に聞くかっての!」

 

「でも道順はもう調べてあるわ。ナビにセットすれば一分で目的地よ」

 

永遠はポケットから折り畳まれた紙切れを取り出した。そこには住所らしき文字列が記されている。

 

「普通に怖いわ!」

 

思わずハンドルを握る手に力が籠る。だが運転中だ。急ブレーキなんて踏んだ日には命に関わる。

 

「ねぇ要君」

 

永遠が身体を僅かに傾けた。車内灯に照らされた太ももが眩しい。

 

「二股認めるなら信号の都度キスさせてあげてもいいわよ?」

 

「ふざけんな! 脳内は全年齢版で固定されてんだよ!」

 

言い返しながらも法定速度を守ることだけは厳守する。道路交通法違反で人生が終わる方がマシだ。

 

「じゃあ三叉路ごとにミニスカート捲るというのは?」

 

「犯罪臭しかしない提案をしてんじゃねぇ!!」

 

必死の抗議にも永遠は小さく笑うだけだった。

 

「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。ただ家に送ってもらうだけよ」

 

その穏やかな声色が逆に怪しかった。彼女が表向き柔和な態度を見せるときは大概裏がある。これまでの経験がそう教えてくれていた。

 

交差点を曲がった瞬間、永遠が不意に窓を開ける。

 

「ちょっと換気していい? 車内暑くて」

 

「勝手にしろ」

 

返事をしながらバックミラー越しに確認すると、永遠は髪を耳にかけながら外の景色を見つめている。その横顔があまりにも綺麗すぎて、つい喉の渇きを意識してしまった。

 

(くそ……こういう時の永遠は凶悪だ……)

 

唇の端から溢れかけた生唾を誤魔化すようにハンドルを強く握る。

 

「そうそう要君」

 

「今度は何だよ」

 

「帰りにお酒買ってもらえる?」

 

「カリスマモデルが、そんな所を見せても良いのか?」

 

「今は変装しているから問題ないわ。それに貴方が選んでくれるお酒は美味しいって噂なの♪」

 

「……買いに行くよ。奢ってくれるんだろ?」

 

永遠が満足げに笑った。

 

(まぁ……いいか)

 

要はそう自分に言い聞かせた。

 

(今はこの女の気まぐれに付き合うのが吉だろう……)

 

そう結論づけながらもアクセルを踏み込んだ。エンジン音が低く唸り、夜の街へと突き進んでいく。

 

永遠の家まで約20km。これから続くであろう長い夜の始まりを予感しながら―――。

もしシャンは連載版あり?

  • あり
  • なし
  • タイトルでバンされる可能性あり
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