※この作品はR-18です。

クソゲーハンターの兄は狙われている   作:ボルメテウスさん

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恋人偽装?作戦

襖が開いた瞬間、宴会場の空気が凍りついた。

 

斎賀百は艶やかな深紅の着物を纏い、背筋をピンと伸ばして入ってきた。いつものボーイッシュな印象は消え失せ、代わりに大人びた色香が漂っている。問題は胸元だ。着物の布が悲鳴をあげそうなくらい張りつめていて、歩くたびに鎖骨の谷間がちらちらと覗く。

 

(おいおいおい、その角度はヤバすぎだろ……)

 

俺は思わず襟元を直そうとして百に肘でどつかれた。

 

「痛っ」

 

「余計なお世話」

 

百は淡々と言ったが、その目は鋭く周囲を威嚇している。確かに周りの男どもが鼻の下を伸ばして凝視しているのがわかる。特に年配の商人が喉仏をごくりと鳴らしているのを見た瞬間、背中に冷たい汗が流れた。

 

(完全に視線が一点集中してるじゃねえか)

 

俺の隣に立っている百の肩が僅かに震えている。いや、あれは怒りが昂ぶっている証拠だ。手の甲が白くなるくらい強く扇子を握りしめている。

 

「要」

 

百の低い声が耳元で響く。

 

「頼むぞ」

 

彼女が俺を恋人扱いすることで牽制する作戦だ。だが俺みたいな冴えないオタクが通用するのか? 不安に駆られていると、百が腕を絡めてきた。柔らかい膨らみが肘に当たり、思考回路がショートしそうになる。

 

(待て待て待て! 近い! 近すぎるって!)

 

「何を突っ立ってんの?」

 

百は全く動じていない。むしろ俺の方が赤面してしまう始末だ。

 

「ほら行くよ」

 

引きずられるように宴会場の中央へ。そこには町の大名屋敷から派遣された武士たちが並んでおり、全員が好奇の目で百を見つめていた。特に若い侍が耳打ちしながら苦笑いしているのが気になる。

 

(やっぱバレてるだろこれ……)

 

俺が焦っていると、突然百が大きな声で言った。

 

「皆さん初めまして。こちらが、今、お付き合いをしている殿方の陽務要です。今日からは仲良くさせて頂きます」

 

周囲からどよめきが起こる。中には「あの若造が?」と呟く声も聞こえる。確かに場違い感がハンパない。だが次の瞬間、俺を見る百の目に深い怒りが宿ったのがわかった。

 

(この女……マジでぶちギレる寸前だな)

 

俺の腕を掴む力が増している。皮膚に爪が食い込むほどだ。周囲の男たちもようやく事態を理解したらしく、慌てて目を伏せ始めた。だが一人だけ空気を読まない奴がいた。

 

「おいおい姐ちゃん、そっちの男は見るからに貧弱そうだなぁ」

 

酔っぱらった浪人が大声で煽る。その瞬間、宴会場の温度が5度くらい下がった気がした。百の手から何か禍々しいオーラが立ち昇っているように見える。

 

(ヤバい! 百の殺気が漏れてる!)

 

「ちょ、ちょっと落ち着け」

 

俺が小声で止めようとすると、百はにっこりと笑顔を浮かべた。完璧な作り笑いだ。

 

「そうですわね。こちらの男性は確かに頼りないですわ。でも……」

 

扇子を開きながら続けた。

 

「少なくともあなた方よりは私を守れると思いますよ?」

 

その言葉と共に浪人の前に扇子が叩きつけられる。畳に小さな穴が開いた気がした。

 

「ひぃっ」

 

浪人が蒼白になって後ずさる。他の客たちも一斉に百から距離を取った。俺だけが巻き添えを食って彼女の傍にいるという状況だ。

 

「さて要」

 

百が俺の方を向いて言う。

 

「こんな連中は放っておいて食事を楽しみましょう? デザートに栗羊羹もあるらしいわよ」

 

急に優しい口調になるのが逆に怖い。だが確かに飢えているのは確かだったので、俺は腹を括ることにした。

 

(とにかく無難に過ごそう。百の怒りに火をつけないようにしないとな……)

 

 

豪華な膳が並べられた長机。上座には地元の大商人たちが陣取り、その向かいに俺たちが座ることになった。百の着物は一段と美しさを増していて、隣に座る俺は終始居心地が悪い。

 

(さっきの宣戦布告効いてるな。全員百から微妙に視線を逸らしてる)

 

それでも若い商人の一人が勇気を出して話しかけてきた。

 

「あの……斎賀さんは素晴らしいですね。その着物も本当にお似合いです」

 

言いつつも目は胸元から離れていない。俺は咄嗟に手を伸ばして箸置きを転がした。

 

「わっ! すみません!」

 

全員の注目が俺の手元に集まる隙に百が商人に微笑みかける。

 

「ありがとうございます。この着物を選んでくださった方に感謝しないといけませんね」

 

意味ありげな視線を俺に向けてくる。その瞬間、宴会場の空気が凍りついた。

 

(いやいやいや! そんな風に言われたら俺が買ったと思われるだろ!)

 

実際は百のお母さんが用意したものだが、この場で訂正するわけにもいかない。案の定、周囲から羨望と軽蔑の混ざった視線が突き刺さる。

 

「お若いのに粋なお選びですね」

 

老婆商人が嫌味ったらしく呟く。百の表情が一瞬曇ったのを見逃さなかった。俺は咄嵯に料理を勧めた。

 

「美味しそうですよ? さあ召し上がって下さい」

 

百は無言で皿を取ったが、その箸使いがいつもより荒っぽい。苛立ちを隠せなくなっている。

 

(早くここを出たい……)

もしシャンは連載版あり?

  • あり
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  • タイトルでバンされる可能性あり
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