「いやぁ、悪いねぇ仕事場から送ってくれて」
車内の芳香剤の甘い匂いとエンジン音が響く。
助手席に座る幼馴染の天音永遠は窓ガラスに映る夜景を見つめている。
「……で? 一体どういう風の吹き回しなんだよ?」
ハンドルを握る手に汗が滲む。
「えぇ、さっきも連絡した通りだよ。ちょっとしたトラブルで、本当だったら送ってくれるはずだったスタッフさんが来れなくなったんだ。だから頼りになる幼馴染みである要君に声を掛けたんだよ」
「はぁ? そんだけのためにわざわざ深夜に呼び出したのかよ」
信号待ちで停車すると、彼女はくるりとこちらに向き直った。派手なワンピースの裾がシートに広がる。薄暗い車内で彼女の存在感が際立つ。
「まさか断られると思ってなかったよ?」
「断るわけねーだろ。ていうかお前が困ってるなら当然送るよ」
「ありがと。やっぱり要君って優しいよね」
「お世辞はいいから……って近いな」
「ふふっ……嫌なの?」
「お前の性格を知っていると、何かしらの罠だと普通に思うだろ」
「えぇ、酷いなぁ、こんなに綺麗な幼馴染みを相手にそんな事を言うなんて」
「よく知っているからこそだろ」
俺はそう言ってからアクセルを踏んだ。静かな住宅街の道路を進む。ヘッドライトが闇を切り裂くように照らす。
ふと彼女が小さな欠伸を漏らした。
「眠いのか?」
「少しね。でも寝るわけにはいかないよ」
「なんでだよ?」
「だって……」
彼女が目を細めて微笑む。その表情が妙に艶っぽくて動揺した。
「要君と二人きりの時間がもったいないから」
「……は?」
思わず横目で彼女を見る。冗談なのか本気なのか判断がつかない。昔からこういう曖昧な発言をする奴だった。
「ほら、前見て前」
「あ、ああ……」
慌てて視線を戻す。ちょうど曲がり角の標識が見えた。ブレーキを踏み込む瞬間———
ぐいっ。
不意に右肩に重みを感じた。柔らかい感触とともに視界が遮られる。
「おい、何やってんだ!」
「えへへ、寄りかかっちゃダメ?」
「危ないっての!」
「ごめんごめん、でもついね」
彼女がゆっくり体を離す。ワイシャツ越しに残る温もりに戸惑う。
「ったく……。あと二十分くらいで着くぞ」
「早いね。もっと遅くてもよかったのに」
「何言ってんだよ」
再び沈黙が流れる。けれど空気は先ほどよりずっと濃密になっている気がした。
赤信号で停止したときのことだ。
「ねえ要君」
「今度は何だよ?」
「私のことどう思ってる?」
予想外の質問に固まる。彼女はこちらを見つめている。夜景の明かりが瞳に反射して妖しく輝いている。
「……幼馴染みだろ」
「それだけ?」
「他に何があるんだよ」
「女の子として魅力的に見えない?」
「……」
喉が渇く。無意識に唾を飲み込んだ。
「そんなこと言われても困るだろ」
「なぁんで?二次元しか興味がないでしょ?」
「そうだよ」
俺は当たり前のように言う。
「それに、お前は今、夢であった仕事をしているんだろ。だったら男なんて、必要ないんじゃないか?」
「まぁ、そうだけどさ」
そこで彼女は一度目を伏せてから再度こちらを見る。
「私にとってはね、仕事は生き甲斐なんだけど、それと同じくらい大事なものもあるんだ」
「へぇ、それはなんだ?」
「要君のこと」
「俺のことを大事にしてもらって嬉しいが、それが今の状況に関係するのか?」
そう尋ねると彼女は小さく笑って首を振った。
「違うよ。ただ知ってほしかっただけ」
そして自分の膝に両手を置く。淡いネイルが灯りに照らされて光る。
「……ありがとう」
ぽつりと呟かれた言葉が狭い車内に響く。
「・・・まぁ、今は君の事を少しでも知れて、良かったとするよ」
「そうかよ」
青信号になりアクセルを踏む。車は再び走り出した。
「……あのさ」
「ん?」
「本当、昔から分からない事だらけなんだが、百もお前も、なんで俺のような奴と付き合うんだ?」
「えぇ、言ったじゃないの、面白いからだよ」
「面白いねぇ、それがよく分からんよ」
そうして、何時に間にか、永遠の自宅へと辿り着いた。
「ほら、ついたぞ」
「サンキュー、助かったよ」
彼女はドアを開けて降り立つ。髪を軽く整えてから振り返った。
「今日は本当にありがとね」
「気にするな」
「またお願いしてもいいかな?」
「……忙しくなければな」
彼女は満足そうに頷いた。
「じゃあね要君」
「おう」
踵を返す後ろ姿をぼんやり見送る。
「あっ、それとこれ」
「あぁ、なんだ?」
俺がそうしていると、何かを投げ渡した。
「なんだこれ?」
「君が好きそうなゲーム。いやぁ昔、プレイしたゲームをエロゲーにした感じだからさ、君が好きそうだと思って」
「ウイルスは入っていないだろうな」
「そんな事はしないよ」
「・・・そっか、んじゃ、ありがたく貰うわ」
「うん、ばいばい」
そう、俺は永遠とそのまま別れた。
そうしていると。
「君は、本当に面白いよね、だって、私の思い通りに動いてくれながらも奇想天外な動きで私の思い通りにならない。だからこそ、これは、彼女との約束という意味でも。絶対に負けられないから」
もしシャン
弟が最近になって、シャンフロを始めると聞き、興味本位で俺もまたシャンフロを始めた。
結果は、俺の知的興味による結果なのか、左目が蛇の模様が入った中二病が好きそうなアバターへと変わった。
だが、今、俺はピンチに陥っていた。
「やぁ、サンラク君。それにそこにいる変態さんは、まるほどなるほど、こっちではダテ君かぁ」
「・・・おい、サンラク、一応聞くが、あいつとは知り合いか?」
「我が愛すべきクソゲーフレンズだよ、そういうそっちは」
「昔からの付き合いにして、天敵」
そう、互いに事情を理解すると同時に、既に武器を構えていた。
「いやぁ、そういう風に殺気を剥き出しにするとお姉さんは結構困るんだけどなぁ。まぁ、個人的な理由もそうなんだけどさ、まぁとりあえず聞くけどさ、ダテ君」
「なんだ?」
「君、ほとんどが知らない何かを隠しているでしょ。教えてくれたら、嬉しいなぁ」
「そう言って、教えると思うか」
そうして、俺は既に構えていた。
左目の呪い。
それは皮肉にも、このシャンフロにおいて他のプレイヤーにはないスキルがある。
サンラクの持つ刻印には、その部分には装備が出来ない代わりに、呪いなどを跳ね返す力があり、自分よりもレベルが低いモンスターは接近しないという能力がある。
対して、俺の左目には、そのような能力はない。
ただし。
「ふむ、なるほどな」
蛇の特徴が、まさしく出ていた。
サーモグラフィーと言うべきか。
周囲の状況を見る事が出来、さらには相手のスキルをある程度ならば見る事が出来、隠れたモンスターやアイテムを見つける事が出来る。
これは、ゲーム攻略における情報戦を有利に進める事が出来る能力であり、サンラクからは交換してくれって、懇願してくれた。
「さて、サンラク。一応状況を言う。数は5。眼前にいるペンシルゴンと、門の前に待ち構えているのが4」
「なるほどなぁ、サンキュー」
そう、俺が言うと共に、向こうは。
「・・・へぇ、その眼、やっぱり何かあるんだ。ますます欲しくなってきた」
「お断りだ、お前に捕まると碌な事にならないからなぁ!」
もしシャンは連載版あり?
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あり
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なし
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タイトルでバンされる可能性あり