範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
雨が降り出した。
ポツポツと、疎らに細かい雨が降り、いつしか激しい豪雨となっていた。
夜も既に深い。
月は陰り、雨雲は夜の空に厚く残っている。
だが、真冬がいる“倉庫”では、雨音一つ聞こえなかった。
内外の音を遮断する防音設備。
倉庫に囚われた少女の泣き叫ぶ声は、外部へ決して洩れ出すことは無いのだ。
真冬は毛布一枚すらない、固いベッドに横たわっている。
まる一日休む暇無く凌辱され、漸く休む事を許されたのだ。
白い肌の此処彼処に、夥しい痣や傷が見られる。
ただ犯されていただけではない。
激しい暴力にも晒されていた。
両足の親指と小指が赤黒く腫れ上がり、異様に捩る様に曲がっている。
骨が折れているのではない。
粉砕されているのだ。
蒙将龍との三度目の取り組の結果だ。
指を粉砕しながら、凌辱を続けた。
横になりながらも、眠りには落ちていない真冬の耳に男達の笑い声が届く。
静寂の中、その声はよく響いた。
その内の一人の声は覚えている。
名前は知らないが、あの男だ。
膣口にガスガンを挿し込み、BB弾を大量に撃ち込んだあの男──竹内嘉信である。
聞きたく無い笑い声だった。
「おや、坊ちゃん。ご友人と一緒にどうなさったんですかい?」
悪樓の言葉に、嘉信は下卑た笑みを返す。
「遊んでやるんだよ、真冬ちゃんと。楽しいゲームでな」
嘉信は、持っていた段ボール箱を悪樓へと手渡した。
「そいつは、ガムテープで封してるだろ?開けずに見守っていてくれ」
嘉信がそう念を押すように言うと、他の男達は笑った。
そして、小さなケージを投げ捨てた。
すると、ケージ内にぶつかり、痛みを訴える仔犬の弱々しい鳴き声が聞こえた。
「……ぇ」
真冬はびくりと身体を震わせた。
ここにポチタロは居ない。
上体を起こし、犬の鳴き声が聞こえた方へ顔を向ける。
別の仔犬だろうか。
プラスチック製の持ち運び様のケージが転がっていた。
前面の入り口は金属製の柵状になっているが、そちらは真冬から見て逆を向いており、内部を伺い知る事は出来なかった。
「よお、真冬ちゃん、起きてたのか」
嘉信の他に、男が五人いる。
彼らはベッドの上にいる真冬を取り囲んだ。
段ボールを持った悪樓は6mほど離れて立っている。
「こいつ、今日何回中出しされたんだ?」
「五十回以上は確実じゃね」
携帯電話の画像を幾つか見ながら、柳田と新谷が真冬を指差し笑った。
指先は真冬の下半身に向けられている。
狂気に魅入られた彼らは、既に真冬を人間扱いしていないのだ。
ラブドールやオナホール以下の存在と捉えていた。
「真冬ちゃん、ゲームしようぜ」
真冬の虚ろな双眸は彼らを見てはいなかった。
彼女の視線の先はケージがある。
そして、それはケージを見ているのではなく、中に居るであろう仔犬の存在を意識し感じているのだ。
昼間、この倉庫で唯一の命だった蜚蠊を悪樓に殺された。
どれだけ懇願しても、蜚蠊は潰され、あまつさえ自分の膣に塗り込まれたのだ。
無論悪樓も真冬が蜚蠊の命を重んじ、叫んでいるとは考えていなかった。
単にそれを潰し、真冬の膣に破片や体液を塗り込む事が楽しかっただけだ。
その行為を心底嫌がり、怯えているのだろうと嘲笑っていたのだ。
真冬は、新たに現れたこの命がどうなるのか、気掛かりに思っていた。
失われて欲しくないと、真冬は強く願うが、それも悪樓次第であろう。
真冬は、自身がどれだけ抵抗してもこの男には絶対勝てないと、理解していた。
それは諦めに近い。
もはや、自身の強さに信頼を置いていないのだ。
「真冬ちゃん、お前、犬好きだよな」
嘉信は真冬の顔を覗き込む。
が、一向に反応を返さない真冬に苛立ち、右拳を握るや、それを彼女の頬へ振り抜いた。
打たれた刹那、真冬は無意識のままに衝撃を殺した。
直撃する前のほんの一瞬、顔を僅かに拳に寄せ、皮表面に拳が触れるとその後は後ろに顔を引いた。
そして頬骨で一瞬、押し返し、拳の威力と速度を完全に殺し衝撃を逃がしたのだった。
意識すらしていない。
それを、ごく自然に行った。
恐らく、嘉信は頬を打った感触が無かった筈だ。
まるで羽毛やビニール袋を殴ったように感じただろう。
あまりに気持ちの悪い感覚だった。
故に、自身の拳を見てしまう。
勿論、真冬が何かしたのだと、それさえ理解出来ていない。
まるで……そう、ここにいるのは幽霊なのでは。
などと、一瞬、ぞくりと冷たい怖気を感じた。
この倉庫の怪談も聞いたことがある為か。
解体された少女が歌う『かごめかごめの替歌』の話しだ。
真冬は既に死んでいてここにいるのは幽霊なのか……!?
だが、その恐怖を振り払うように深く息を吐いた。
「おい、そいつ頼むぜ」
嘉信が木村に声をかけると、ケージを持ち上げた。
そして、真冬の目の前に持ってくる。
真冬の耳に届く、か細い悲痛な仔犬の鳴き声。
軽い金属が擦れ合う様な声で、仔犬は苦痛と恐怖を訴えている。
ケージを開けると、仔犬は奥へと引き下がる。
より、悲鳴が強くなった。
木村の腕がケージの奥へ入り込み、仔犬の首を掴んだ。
呼吸が洩れる様に喉の奥を仔犬が鳴らす。
ずるりと仔犬を引き摺り出し、ケージを落とす。
「ぁ……ゃめて下さい、苦しんでいます……そ、それにその子……熱が高い……病気ですから……」
震える声で真冬が言った。
男達は唖然とした。
熱が高い──どういう事だ。
「あぁ、そっかあの爺、医者に連れてく途中だったのかもな、このケージに入れて持ち運ンでたからよ」
「ヨッちゃん、パクったんだよな、その糞犬」
「いや、なんで、こいつ、この糞犬が病気ってわかったんだよ……」
男達は、各々顔を見合わせた。
そして気味が悪そうに真冬へ視線を送る。
「よし、じゃあこうしよう」
嘉信が真冬に仔犬を見せる。
「こいつを助けたかったら、真冬ちゃん、てめえでてめえの尿道口に彫刻刀をブッ刺してみな」
「あぁ、そうそう」
そして木村は真冬のポーチを見せて、そこから彫刻刀と釘を三本取り出した。
「で、この糞犬の尻穴とキンタマ二つに釘をブッ刺したら、お前のレイプ地獄から解放してやるよ、なぁ、犬助けるか、自分が助かるか、選んでみな」
「ぇ……」
一瞬、尿道口と言う単語が理解出来無かったが、言葉を反芻してみると直ぐにどこを指しているかは思い至った。
「ほら、選べよ、クソガキ」
嘉信は仔犬の耳を掴み、捻り上げた。
一際甲高い鳴き声が仔犬から上がった。
「ゃ……ゃめ」
真冬に彫刻刀と釘を投げて寄越す。
嘉信は、仔犬の首を掴んだまま仔犬を突き付けた。
真冬は、釘を取った。
そして、目を瞑り歯を強く噛み締める。
少し体勢を変えて、脚を広げた。
「へ……」
山村が気の抜けた声を出した。
男達の想像だにしなかった行動に真冬が打って出たのだ。
彫刻刀を握りしめ躊躇いなく、一気に尿道口へと突き刺したのだ。
尿道口を深く傷付け、刃が皮膚と肉を突き破っていた。
彫刻刀がスルリと外尿道口に挿入などされないだろう。
ただ、彫刻刀は周囲の肉を巻き込み突き抜けているのだ。
夥しい血が、溢れている。
「う……嘘だろ、キチガイかよ、このガキ」
若松の声は恐怖で震えていた。
まさか、仔犬を刺さず、自身を刺すなどと想像出来なかったのだから。
少なくとも自分ならやらない。
絶対に仔犬を刺している。
「そ……その子を、びょぅ、いんに、連れていってあげて……下さい」
苦しげに何度も息を継ぎながら、真冬は懇願する。
「糞犬ゲーム!結果発表ッッ」
嘉信は大笑いしながら叫んだ。
嘉信の笑い声を聞き、恐怖に我を忘れかけていた男達も、正気に戻る。
「いやあ、スゴいわお前。信じてたよ、俺は」
嘉信は悪樓を呼び、段ボールの封を開けさせた。
そして、それぞれが予想結果を書いた紙を開いていく。
笑う嘉信以外は、皆腹立たし気に真冬を見ていた。
誰も、真冬の姿に憐憫を掛けることは無かった。
「俺以外、糞犬に突き刺すでしたーッッ」
そして、紙を見せる。
「……え、スゴ」
「クソガキ、糞犬に刺してりゃ、俺ら一人に百万円ずつ山分けだったのによおっ!」
若松が怒鳴り、嘉信から仔犬を引ったくる。
「おう、ヨッちゃん、糞犬ゲームは終わりダッ、次はクソガキレイプの時間だろうが!」
そして、仔犬を床に叩きつけた。
ギャウッと太い声で鳴き、仔犬は転がった。
更に蹴り上げた。
ボールが跳ねる様に仔犬の体が宙を舞った。
「ぁ……なん……どぅし」
真冬が呟く。
転がる仔犬を追って、若松と山村が走った。
「やっぱ、一発目はヨッちゃんだろ、俺らは糞犬サッカーでもやってるから、ヨッちゃんはヤッてろよ」
下品に笑いながら、サッカーボールを蹴る様に、脚をスイングする若松。
その時だ──
突然、若松が軸足としていた右足から鮮血が迸った。
脹ら脛から、凡そ10cm程度の木製の棒が突き出ている。
違う。
これは、彫刻刀の持ち手だ。
若松の脹ら脛に深々と、刃渡り1.5cmの刃となる金属が突き刺さっており、持ち手だけが伸びているかのように見えたのだ。
若松は仰向けに転倒し、後頭部を床に打ち付けた。
その彫刻刀は──
無論、今しがたまで、真冬の尿道口に突き刺さっていたものである。
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