※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

131 / 139
美髯公

 

 伊集院は冴羽獠と合流し、鎬が真冬を発見したことを伝えた。

 冴羽獠にインカムを渡していなかった事に気付いたのだ。

 とは言え、粗方、戦闘は終わっている。

 

「まぁ、急いだ方が良いな」

 弾丸を確かめ、冴羽獠はそう言った。

「こっちの負傷者は他に誰かいるか?」

「剛志の奴と連絡取れ無いな。あいつに限ってやられてるとは思えねぇが」

 

 伊集院は、デボラのマスターだ。

 カツアゲ坊主の噂は聞き及んでいる。

 彼の高い戦闘力を買ったからこそ、ここに連れて来たのだ。

 

「剛志、どんな奴だい?」

 

 その時である。

 雷鳴と共に激しい駆動音が轟いて来たのだ。

 

 一瞬の轟きではない。

 継続している。

「ヘリコプターだぁ!?」

 

 冴羽獠が叫ぶ。

 海上の方から、その大気を激しく叩くプロペラのローター音が聞こえていた。

「どこのだ、ありゃあ」

 

 かなりの大きさのヘリコプターが二機。

 まだ遠目にも拘わらず、視認出来る。

 全長は凡そ20m、全高は6m程度だろうか。

 もう一機は一回り小型だった。

 全長は12mほどである。

 

 二機共にブレードは五枚だ。

 テールブレードもある。

 

 見たところ、中型の輸送ヘリコプターと、攻撃ヘリコプターだと考えられるが、冴羽獠の、決して乏しい訳ではない知識の中にも、該当するタイプが無い機体だった。

 日本の物でも無さそうである。

 それらが、二機、この倉庫群へ向かっているのだ。

 

「こっちに真っ直ぐ来るぞ。海坊主、M1対戦車ロケット弾はもう使っちまったのか!?」

 

「陽動のためだったしな。初っ端からぶち込んでるぜ」

 

 敵か何かは判断出来ないが、ここまで派手にやらかしているのだ。

 冴羽獠も伊集院も、敵であろうと考えていた。

 

「リチャード、ドクター、聞こえるか。妙なヘリコプターが此方に向かってる」

 

 インカムへそう告げると、待機組も認識している様だ。

 

 攻撃ヘリコプターの方は、中央胴体部分から翼が突き出ており、そこに対戦車ミサイルが計四基携行されている。

 更に機首下部に、30mm機関砲が搭載されていた。

 

 そして、輸送ヘリコプターの方から武装した男達が次々に降下を始めていた。

 輸送ヘリコプターも翼に一基、対戦車ミサイルを携行していた。

 

 動きが、極道などの物では無い。

 ある種のシステム上で、作戦を展開する事を訓練されている動きなのだ。

 こうした行動に慣れた様子が窺えた。

 

 軍人や兵士、そうした者の所作であり、武装であった。

 

「不味いぜ、あれ。待機組は退いた方が無難じゃないか?」

 

 井森とユウヤは素人のそれである。

 危険すぎると、冴羽獠は判断していた。

 降下してくる男達の武装が、明らかに一介の極道の物では無さそうなのだ。

 何かの特殊部隊か。

 

 冴羽獠と伊集院は駆け出し、建物の陰に一先ず身を隠す。

 

 男達は皆、自動小銃を携持していた。

 ボディアーマーとフルフェイスの防弾ヘルメット、タクティカルブーツを身に付けている。

 ケブラー繊維の防弾アーマーだ。

 ヘルメットには、暗視ゴーグルまで備え付けられている。

 衣服は上下黒の戦闘服である。

 皆、揃いの物だ。

 現在は夜の作戦行動中にあるためか、すべての装備は黒色で統一されている。

 前腕、肘と膝、脛はプロテクターで保護している。

 拳銃もそれぞれホルスターに吊るしていた。

 ボディアーマーには、自動小銃の予備カートリッジをそれぞれ二つと、自動小銃への着剣装置付きの小型ナイフを携行しているようだ。

 

 武装兵士は、十二人降下し、列をなしている。

 男達は皆、身長180cm体重90kgが最低限なのか、それより小柄なものはいない。

 重装備の精鋭部隊。

 そんな様相である。

 

 そして、彼らは行動を開始した。

 

 統率が取れた動きだ。

 六名ずつ、二手に分かれるようだ。

 片方は竹内政信の“倉庫”へ向かう手筈となっていた。

 残りは襲撃者の排除である。

 

 攻撃ヘリコプターは低空で、停滞飛行を続けていた。

 

「チッ、領空侵犯じゃないのか、あいつら。大丈夫かよ、日本」

 冴羽獠は、愚痴を吐きつつ、真冬が居ると言う4番棟へ伊集院と共に歩みを進めた。

 

 降り続く豪雨は、身を隠しながらの移動では、武装兵士達の位置を掴むのも困難であった。

 耳を攲(そばだ)てていても、限界がある。

 

 しかも、攻撃ヘリコプターをも所有している組織との交戦だ。

 どれだけ記憶を辿っても、あの二機のヘリコプターに該当するものが思い出され無かった。

 恐らく、軍用機ではない。

 それとも、新型なのかも知れない。

 まだ、運用段階では無い、例えば試作機のような。

 

 考えあぐねていると、突然、水溜まりを踏む様な音が聞こえた。

 歩いている。

 一人だ。

 小さな姿が見えた。

 ヘリコプターの音も聞こえているだろう。

 しかし、その少女は堂々とした様子で、身を隠そうともしていなかった。

 散歩でもしているような足取りなのだ。

 

「子供!?」

 ポツリと、冴羽獠は洩らした。

「真冬──か?」

 

 冴羽獠と伊集院が近付き、その少女について尋ねた。

「いや、違うな、獠。知らねぇ子供だ」

「何?こんな深夜に……おい、君、まさかここで捕まってた子供か何かか?」

 冴羽獠も、この倉庫の概要を聞いていた。

 故に、囚われている少女なのかと、そんな考えに至ったのだ。

 この依頼も、倉庫の話しを聞き及び、怒りを覚えた為に受けたのである。

 ここは、あまりにも、悍まし過ぎる場所なのだ。

 

 冴羽獠は少女の顔を見る。

 それは、背筋が寒くなる相貌だった。

 右側が、口の端から頬骨の辺りまで裂けているのだ。

 しかも、瞳は、白目と黒目が反転している異様な物だった。

 

「私が真冬か、やてぇ?違(ちゃ)うよ、おっちゃん、私は、真冬を助けに来たんや」

 

 少女が嗤った。

 裂けた口が吊り上げる。

 笑うと、裂けた口の深さがはっきりと分かった。

「おっちゃんらは、何(なん)なん?源王会の人とは……違(ちゃ)うみたいやし」

 

 大阪弁のイントネーションで、少女は、全く物怖じした様子もなく、二人に話していた。

 どこか、異様な少女だった。

 そもそも、助けに来た、その言葉も理解に苦しむ物であった。

「でかいおっちゃん、真冬は、白い幼女やろ」

 

 それは、少なくとも真冬を知る者であると、明かしたのと同義となる台詞だった。

「俺達は依頼でね、その真冬を助けに来たんだよ」

 

 冴羽獠がそう告げると、少女は楽しそうに笑った。

「何やぁ、じゃあ、真冬助けるんも楽そうやん」

 

 少女は、踵を返し、再び歩き出した。

「いや、待て、お前は何なんだ?」

 冴羽獠は少女を呼び止める。

 

「リョウガ──呉陵伽や。真冬の、姉ちゃんやな。名字違(ちゃ)うから、ややこしいやろぉけどな」

 顔だけ振り向き、真冬の姉を自称する少女、リョウガは声を上げて笑った。

 

 裂けた口の端に、八重歯が覗いていた。

 愛らしさもあり、犬歯を剥き出しにした獰猛な獣のようでもある、そんな奇妙な少女だった。

 

1.

 亜細亜裏武術省『剄神山(ヂンしぇんしゃん)』所属

 特殊制圧部隊『美髯(びぜん)』

 

 それが、上陸してきた部隊の名称である。

 

 美髯──

 それは、三國志の英雄『関羽雲長』の通称『美髯公』を由来としていた。

 

 彼らが、動いたのは、當之重蔵の命令による物であった。

 隊員は皆、優秀な兵士で、武術家でもあるのだ。

 当然、當麻塵滅流とも面識があり、その技術を学んでいる。

 

 今回の彼らの使命は、襲撃者の排除、そして真冬の殺害であった。

 特に、真冬の殺害を主な任務として、展開しているのだ。

 

 幼女の殺害。

 それを任務とする。

 彼らの中に、疑問や蟠りは生まれていないのか?

 当然、その様な物は持ち合わせていないのだ。

 殺せと言われたら、赤子の顔も踏み潰せる。

 そんな男達である。

 

 今回、上陸してきた部隊の者は、中国人と韓国人で構成されている。

 寧ろ、蟠りなどではなく『日本人の幼女を殺せる』事に悦びを見出だしている程であった。

 

 この部隊の候補生に選抜される為の試験の一つに、まず日本人の殺害と言う項目がある。

 方法と、結果、日本での話題性の大きさなどが、その採点結果に影響する。

 日本への反感が強く、それに加えて近江連合や竹内政信との繋がりにより、捜査の手が及ばない優位性。

 そうした事から、こんな試験が用意されているのだ。

 

 フルフェイスの下で、皆、薄ら笑いでも浮かべているのでは無いだろうか。

 そんな性根の者達である。

 

 遭遇は接敵、接敵即戦闘行動── 

 先に戦闘行動が開始されたのは、4番棟へ向かった六名であった。

 

『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?

  • そのままで良い
  • 残骸置場行きが良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。