範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
伊集院は冴羽獠と合流し、鎬が真冬を発見したことを伝えた。
冴羽獠にインカムを渡していなかった事に気付いたのだ。
とは言え、粗方、戦闘は終わっている。
「まぁ、急いだ方が良いな」
弾丸を確かめ、冴羽獠はそう言った。
「こっちの負傷者は他に誰かいるか?」
「剛志の奴と連絡取れ無いな。あいつに限ってやられてるとは思えねぇが」
伊集院は、デボラのマスターだ。
カツアゲ坊主の噂は聞き及んでいる。
彼の高い戦闘力を買ったからこそ、ここに連れて来たのだ。
「剛志、どんな奴だい?」
その時である。
雷鳴と共に激しい駆動音が轟いて来たのだ。
一瞬の轟きではない。
継続している。
「ヘリコプターだぁ!?」
冴羽獠が叫ぶ。
海上の方から、その大気を激しく叩くプロペラのローター音が聞こえていた。
「どこのだ、ありゃあ」
かなりの大きさのヘリコプターが二機。
まだ遠目にも拘わらず、視認出来る。
全長は凡そ20m、全高は6m程度だろうか。
もう一機は一回り小型だった。
全長は12mほどである。
二機共にブレードは五枚だ。
テールブレードもある。
見たところ、中型の輸送ヘリコプターと、攻撃ヘリコプターだと考えられるが、冴羽獠の、決して乏しい訳ではない知識の中にも、該当するタイプが無い機体だった。
日本の物でも無さそうである。
それらが、二機、この倉庫群へ向かっているのだ。
「こっちに真っ直ぐ来るぞ。海坊主、M1対戦車ロケット弾はもう使っちまったのか!?」
「陽動のためだったしな。初っ端からぶち込んでるぜ」
敵か何かは判断出来ないが、ここまで派手にやらかしているのだ。
冴羽獠も伊集院も、敵であろうと考えていた。
「リチャード、ドクター、聞こえるか。妙なヘリコプターが此方に向かってる」
インカムへそう告げると、待機組も認識している様だ。
攻撃ヘリコプターの方は、中央胴体部分から翼が突き出ており、そこに対戦車ミサイルが計四基携行されている。
更に機首下部に、30mm機関砲が搭載されていた。
そして、輸送ヘリコプターの方から武装した男達が次々に降下を始めていた。
輸送ヘリコプターも翼に一基、対戦車ミサイルを携行していた。
動きが、極道などの物では無い。
ある種のシステム上で、作戦を展開する事を訓練されている動きなのだ。
こうした行動に慣れた様子が窺えた。
軍人や兵士、そうした者の所作であり、武装であった。
「不味いぜ、あれ。待機組は退いた方が無難じゃないか?」
井森とユウヤは素人のそれである。
危険すぎると、冴羽獠は判断していた。
降下してくる男達の武装が、明らかに一介の極道の物では無さそうなのだ。
何かの特殊部隊か。
冴羽獠と伊集院は駆け出し、建物の陰に一先ず身を隠す。
男達は皆、自動小銃を携持していた。
ボディアーマーとフルフェイスの防弾ヘルメット、タクティカルブーツを身に付けている。
ケブラー繊維の防弾アーマーだ。
ヘルメットには、暗視ゴーグルまで備え付けられている。
衣服は上下黒の戦闘服である。
皆、揃いの物だ。
現在は夜の作戦行動中にあるためか、すべての装備は黒色で統一されている。
前腕、肘と膝、脛はプロテクターで保護している。
拳銃もそれぞれホルスターに吊るしていた。
ボディアーマーには、自動小銃の予備カートリッジをそれぞれ二つと、自動小銃への着剣装置付きの小型ナイフを携行しているようだ。
武装兵士は、十二人降下し、列をなしている。
男達は皆、身長180cm体重90kgが最低限なのか、それより小柄なものはいない。
重装備の精鋭部隊。
そんな様相である。
そして、彼らは行動を開始した。
統率が取れた動きだ。
六名ずつ、二手に分かれるようだ。
片方は竹内政信の“倉庫”へ向かう手筈となっていた。
残りは襲撃者の排除である。
攻撃ヘリコプターは低空で、停滞飛行を続けていた。
「チッ、領空侵犯じゃないのか、あいつら。大丈夫かよ、日本」
冴羽獠は、愚痴を吐きつつ、真冬が居ると言う4番棟へ伊集院と共に歩みを進めた。
降り続く豪雨は、身を隠しながらの移動では、武装兵士達の位置を掴むのも困難であった。
耳を
しかも、攻撃ヘリコプターをも所有している組織との交戦だ。
どれだけ記憶を辿っても、あの二機のヘリコプターに該当するものが思い出され無かった。
恐らく、軍用機ではない。
それとも、新型なのかも知れない。
まだ、運用段階では無い、例えば試作機のような。
考えあぐねていると、突然、水溜まりを踏む様な音が聞こえた。
歩いている。
一人だ。
小さな姿が見えた。
ヘリコプターの音も聞こえているだろう。
しかし、その少女は堂々とした様子で、身を隠そうともしていなかった。
散歩でもしているような足取りなのだ。
「子供!?」
ポツリと、冴羽獠は洩らした。
「真冬──か?」
冴羽獠と伊集院が近付き、その少女について尋ねた。
「いや、違うな、獠。知らねぇ子供だ」
「何?こんな深夜に……おい、君、まさかここで捕まってた子供か何かか?」
冴羽獠も、この倉庫の概要を聞いていた。
故に、囚われている少女なのかと、そんな考えに至ったのだ。
この依頼も、倉庫の話しを聞き及び、怒りを覚えた為に受けたのである。
ここは、あまりにも、悍まし過ぎる場所なのだ。
冴羽獠は少女の顔を見る。
それは、背筋が寒くなる相貌だった。
右側が、口の端から頬骨の辺りまで裂けているのだ。
しかも、瞳は、白目と黒目が反転している異様な物だった。
「私が真冬か、やてぇ?
少女が嗤った。
裂けた口が吊り上げる。
笑うと、裂けた口の深さがはっきりと分かった。
「おっちゃんらは、
大阪弁のイントネーションで、少女は、全く物怖じした様子もなく、二人に話していた。
どこか、異様な少女だった。
そもそも、助けに来た、その言葉も理解に苦しむ物であった。
「でかいおっちゃん、真冬は、白い幼女やろ」
それは、少なくとも真冬を知る者であると、明かしたのと同義となる台詞だった。
「俺達は依頼でね、その真冬を助けに来たんだよ」
冴羽獠がそう告げると、少女は楽しそうに笑った。
「何やぁ、じゃあ、真冬助けるんも楽そうやん」
少女は、踵を返し、再び歩き出した。
「いや、待て、お前は何なんだ?」
冴羽獠は少女を呼び止める。
「リョウガ──呉陵伽や。真冬の、姉ちゃんやな。名字
顔だけ振り向き、真冬の姉を自称する少女、リョウガは声を上げて笑った。
裂けた口の端に、八重歯が覗いていた。
愛らしさもあり、犬歯を剥き出しにした獰猛な獣のようでもある、そんな奇妙な少女だった。
1.
亜細亜裏武術省『
特殊制圧部隊『
それが、上陸してきた部隊の名称である。
美髯──
それは、三國志の英雄『関羽雲長』の通称『美髯公』を由来としていた。
彼らが、動いたのは、當之重蔵の命令による物であった。
隊員は皆、優秀な兵士で、武術家でもあるのだ。
当然、當麻塵滅流とも面識があり、その技術を学んでいる。
今回の彼らの使命は、襲撃者の排除、そして真冬の殺害であった。
特に、真冬の殺害を主な任務として、展開しているのだ。
幼女の殺害。
それを任務とする。
彼らの中に、疑問や蟠りは生まれていないのか?
当然、その様な物は持ち合わせていないのだ。
殺せと言われたら、赤子の顔も踏み潰せる。
そんな男達である。
今回、上陸してきた部隊の者は、中国人と韓国人で構成されている。
寧ろ、蟠りなどではなく『日本人の幼女を殺せる』事に悦びを見出だしている程であった。
この部隊の候補生に選抜される為の試験の一つに、まず日本人の殺害と言う項目がある。
方法と、結果、日本での話題性の大きさなどが、その採点結果に影響する。
日本への反感が強く、それに加えて近江連合や竹内政信との繋がりにより、捜査の手が及ばない優位性。
そうした事から、こんな試験が用意されているのだ。
フルフェイスの下で、皆、薄ら笑いでも浮かべているのでは無いだろうか。
そんな性根の者達である。
遭遇は接敵、接敵即戦闘行動──
先に戦闘行動が開始されたのは、4番棟へ向かった六名であった。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
-
そのままで良い
-
残骸置場行きが良い