範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
真冬は自身に向けられている多くの視線が好意的なものである事は理解出来た。
殺気やら、敵意、そう言ったものは感じられない。
奇異な目で見られることも多かった。
それは、産まれながらの白い髪と紅い虹彩のせいだ。
肌の色も日本人離れした白さである。
特に今は着ている衣服が、メイド服の様なゴスロリ衣装だ。
ゴスロリアルビノ美少女……目立たない方が不思議だろう──
1.
劇場前広場では仔犬の姿を見付けられ無かった為、そのまま、劇場前通りを南下し泰平通りへと向かった。
泰平通り沿いに進むと見えてくるのはミレニアムタワーだ。
この神室町の象徴とも言える超高層ビルに、つい最近謎の爆発事故が起きた。
その際は大量の札が神室町に降ったという。
季節柄、サンタクロースから贈られた万札の雪と言うプレゼントか。
尤も、爆発事故の原因や、札の出所を知ったら、無邪気に喜べないし、それを拾おうとは思わないだろうが……。
真冬はその事故が起きた夜には、まだ神室町へ来ていなかったため、万札の降雪と出会ってはいない。
泰平通りへと曲がらず劇場前通りから更に南に行けば天下一通りに入る。
神室町がテレビや雑誌などで紹介された物で、神室町の入り口として天下一通りの名前が書かれた赤いネオンのきらびやかな看板を、目にすることがある筈だ。
その天下一通りである。
劇場前通りからやってきた場合、まず目にするのは、たこ焼き屋と、向かって右手にある赤牛丸と言う牛丼屋だろう。
真冬が特に惹かれたのは牛丼屋だ。
黄色い看板に青い文字で赤牛丸と書かれていた。
のぼりには『大正十三年創業 牛飯丼ぶり 安い早い美味い』とある。
これはまさしく牛丼一筋81年、安いの早いの美味いの言える牛丼屋だろう。
そんな、比較的安価で結構腹持ちも良い牛丼──
一度、食べてみたかったのだ。
この店舗の並盛りなら、400円だ。
手持ちの小銭で充分足りる。
天下一通りの方へ、歩を進めた折りの事だ。
「食い逃げだーッッ!」
男の声が聞こえ、赤牛丸の方から、かなりの勢いを伴って走る男がいた。
食い逃げ犯──
今時、そんな犯罪を行うものが居るのかと思うが、神室町では意外と見られる犯行だ。
男の姿を目に止めるや──
真冬はしゃがみこむ。
そして、リボンシューズの踵に仕込んだまち針を両手に二本。
それは、ほぼ同時に行われ、まち針は食い逃げ犯の両足のアキレス腱、
四本のまち針は、どれ1つとして逸れることなく、かなりのスピードで走る食い逃げ犯のアキレス腱と脹ら脛に突き刺さる。
食い逃げ犯は、両足が突然利かなくなり、倒れこんだ。
アキレス腱は両方とも断裂していた。
容赦など1つとして無い残酷な仕打ちだが、真冬にとって食い逃げなど見過ごせる犯行ではなかった。
自分は手持ちにある心許ない小銭を払うのに……と、かなりセコい怒りであるが。
──この針を投擲する
勿論、真冬は中国武術を学んだことはない。
昔、漫画を古本屋で立ち読みしたとき、針を投げるキャラクターが描かれていた。
それを真似たのだ。
真冬は不思議な事に武術に関連することを想像したり手本となる物を見て真似することで、それを実践してやってのけることが可能だ。
だからと言って、手からオーラを発射するような漫画の
その気になれば、オーラを発射するのではなく、微弱な空気の震動などを扱い、
模倣出来る範囲となると、例えば“花山薫”が行う様な超握力を以てして可能な“握撃”だが、これも模倣することは不可能だろう。
花山薫に匹敵する握力が彼女には備わっていないからだ。
だが、やりようさえ変えれば、似たような事は不可能ではない。
産まれながらに備わったアスファルトやコンクリートですら抉ってしまう彼女の超硬度を誇る爪を扱い、握撃の様に両手で敵の四肢を握り、爪を突き刺し肉を穿つのだ。
仮に地下闘技場に参戦する正戦士の技を模倣するとして、彼女のその爪を踏まえて考えたなら“鎬昂昇”の“斬撃拳”等とは相性が良いかも知れない。
爪で紐切りを行うのだ。
彼女が以前に行った鞭打も、空想の産物の末に扱える様になった
真冬がまち針を投擲し、食い逃げ犯の足を破壊した一連の動作は余りにも速く、赤牛丸の店主も、食い逃げ犯もその攻撃に気付いていない。
現に突如倒れこみ、立ち上がる事さえ出来なくなっている食い逃げ犯に追い付いた店主は不思議そうにしていた。
しかし、一人だけ、彼女の投擲に気付いていた者がいた。
彼女に視線を向ける者は多くそこにいたが、気付いたのは彼一人だ。
通称“カツアゲ坊主”
地上最強の生物を目指す少年、
剛志は強い者が好きだ──
食い逃げ犯のアキレス腱と脹ら脛に向けて針を投擲し、そこに寸分違わず命中させた美少女。
彼が認める“強者”に十二分に合格だろう。
その真冬の一連の動作を見て、彼は笑った。
こう言う相手を潰したい。
先日、剛志は喧嘩師花山薫と拳を交えた。
だが、花山薫の力の前では、何一つ出来なかったと言っても良いくらいの敗北を喫したのだ。
もっと強くならないと、地上最強の生物など、遠い存在だ。
だから、この真冬の様な強い相手と戦いたい。
そして、倒したい──
相手が幼い女だろうが、どうでもいい。
あの尋常ならざる戦闘力を目にしたら、彼にしてみれば、年齢や性差など取るに足らない事なのだ。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い