※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

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失禁幼女

 

”うっわ、け、蹴ったぞッッ!”

“幼女死んだんじゃね?”

“おいっ!警察呼べ!警察”

“馬鹿、特撮かなんかの撮影だろ、撮影”

“あのハゲ、カツアゲ坊主じゃねぇか、俺、あいつにカツアゲされたことあるわ、クソ”

“俺もだ”

“俺もされたぞ。おいっ!ゴスロリメイドの幼女頑張れー!”

 

2.

 

 鉄で補強され重くなった靴。

 その靴を履いた爪先が真冬の下腹部に突き刺さっていた。

 剛志の攻撃は、それだけで終わらず──

 投擲されたデザインナイフの鋭利な切っ先が胸元に刺さっていることにも気にも止めず、僅かに崩れた真冬の鼻っ柱に膝蹴りを見舞う。

 

 両腕で下腹部を抱き抱える様に前のめりに崩れかけた真冬の顎は上に跳ね上がった──

 

 プシィッッ──

 その擬音は、二つの状況を意味している──

 一つは文字通りの擬音、もう一つは実際に聞こえたかも知れない。

 

 真冬の鼻からは夥(おびただ)しい量の血が吹き出され──

 そして下腹部を蹴られたことにより、膀胱にダメージが入ったのか失禁したのだ。

 

 剛志の厚い大胸筋はデザインナイフの鋭利な刃先を防ぎ、流血一つしていない。

 刃が食い込んではいても、筋肉を突き破る事は無かったようで、剛志の手はデザインナイフを掴み、投げ棄てた。

 

 砕けんばかりに歯を噛み締め、真冬の跳ね上がった顔は起き上がり、虚ろだが、鋭い光を宿した瞳が剛志を見据える。

 敗者の目ではない。

 転倒する事は無く、真冬の小さな足は未だアスファルトの地面を強く踏み締めていた。

 

 下腹部には爪先を用いた前蹴りを入れられ、顎には膝蹴りを食らい、それでも、尚、倒れぬ真冬の姿に、野次馬から歓声が上がった──

 身長120センチ程度の真冬と180センチを越える剛志である──この体格差の相手に蹴られたなら即死する可能性だって考えられる。

 

 かたや体格で明らかに劣り、尚且つ幼く、何よりも美少女である真冬──

 かたや、巨漢であり、カツアゲされたことを根に持つものも多く、カツアゲ坊主として知られている剛志──

 

 周囲の野次馬達からは真冬を応援する流れとなっていった。

 

 真冬にとって、一連の攻撃で最大のダメージとしては、前蹴りや膝蹴りで被った肉体的な物ではなかった。

 

 失禁してしまった──その精神的なダメージである。

 恐らく誰も気付いてはいないだろう。

 溢れる鼻血が目立つ。

 多くはそちらに目が行っている筈だ。

 気付かれ難いと言う点ではタイツを履いていたのも功を奏しただろうが、流れた尿によって太股辺りが滲んでしまっている。

 ミニスカートなのは失敗だったかも知れない。

 人前での失禁、初めてのこの経験は真冬の精神に多大なダメージを与えていた。

 そして、ミチに買って貰ったショーツやタイツ、スカートを汚してしまったことが何より辛かった。

 誰かに、自分だけの物を買って貰えた事が初めての事であった。

 それ故に、真冬にとってこれらの衣服はかけがえのない物になっていたのだ。

 やはり、避ければ良かった、と後悔するがもはや遅い。

 下腹部への攻撃を食らい膀胱にダメージが入り、失禁してしまうとは予想していなかった──

 今後、ミチに貰った衣服を着ているときに闘争に巻き込まれたならば、より慎重に闘う必要がある──と、固く誓う。

 

 多少の苛立ちと、羞恥が入り交じる中、右手にポシェットから取り出し錐を持つ。

 

 真冬が錐を取り出し瞬間より若干遅れ、再びタックルをするべく剛志が動いた。

 真冬は最初、剛志の姿を見た時、山を連想した──更に、突進してくるこの姿には、活火山の噴火を見た。

 

 だが、この肉体の凄まじい圧力を受けながらも、真冬は全く動じる事無く、そして、その噴火の如き突進を前にすると、いつしか苛立ちや羞恥の感情もなりを潜めて行った。

 

 錐は投擲しない。

 剛志の尋常ではない筋肉に対して、殺傷のための武器ではない道具ではまず、間違いなく通用しない。

 

 下腹部、鼻っ柱への打撃──夥しい鼻血を見る限り、倒れ伏していない現状でも、そのダメージは大きい筈だ、と剛志は判断していた。

 だが、それは誤りだ。

 真冬から痛みは既に遥か彼方に消えているのだ。

 

 剛志の右腕が真冬の左太股に絡まり、左腕は腰回りを抱え込んだ。

 小柄な真冬を捕らえるのは案外容易であった。

 見て分かる通り、剛志の野太い腕は万力の様相を呈している。

 

 掴まった──

 だが、その瞬間に真冬は、剛志の次の行動を封じるべく、迷う事無く、ある攻撃に撃って出たのだ。

 錐で刺す訳でもない──

 

 まるで、火竜が鼻腔より炎の息を打ち出すように、血を噴射したのだ。

 狙うのは剛志の右目だった。

 

“え~……”

 

 野次馬は唖然とする。

 鼻血が噴射される様は滑稽過ぎたのだ。

 

 だが、効果はあった。

 突然眼球に血液を射たれた剛志は、咄嗟に目を庇うように押さえてしまった。

 テイクダウン、或いは脚の関節を狙っていたが、真冬から離れてしまう。

 

 すかさず、頭上にある剛志の顔面の中心部──鼻孔に錐を射し込んだ。

 錐の持ち手となる木製の柄、その先端部を左掌底で打ち、更に奥へと突き刺す。

 凄まじい激痛がだめ押しとなった様で、剛志の体は完全に真冬から離れた。

 

 しかし、真冬はまだ、止まらなかった。

 全身を翻し回し蹴り気味に、再び錐の柄、先端部へと打ち込む。

 

 だが──

 真冬が常人を遥かに凌駕した者である様に、剛志もまた、同じくして、ただならぬ存在なのだ。

 鼻孔に錐が突き刺さったと言う激痛の中で、彼は嗤っていた──

 鼻から流れ込んだ血が嗤った口から滴り落ちる。

 

 真冬の回し蹴りは錐から逸れた。

 いや、命中する寸での所で、真冬の左脚は剛志の両腕に抱えられたのだ。

 

 抱え込むと同時に上げられた剛志の雄叫びに、野次馬達は耳を塞いだ。

 怒声とも取れる雄叫びである。

 

 左脚を抱え、剛志は走った。

 回し蹴りを封じられ、勢いに負けた真冬の体は、軸足とした一本脚で踏み止まるべくアスファルトを踏みつけたものの力及ばず、その場に止まる事が出来ず押しやられてしまった。

 この勝負だが、体重や体格に差がありすぎた。

 流石に、どうしようもない。

 

 その先、彼女の背後にはブロック壁だ──

 

 背面はブロック壁に激突し、左脚はほぼ垂直に抱え上げられ前面と共に、剛志の巨躯に押し潰された。

 

 轟音が響く──

 それは──

 赤牛丸のちょっとした駐輪スペース。

 その北側にある洋食も食べられるドリンクバー、“レストランじゃんぷー”の壁が大きく陥没する音だった。

 

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