範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
自動ドアが開き、POPPO天下一通り店に六人組みの男達が入って来た。
見るからに、物騒さを絵に描いた様な男達であった。
全員、金属バットを手にしており、どう考えてもコンビニに来店する様な格好ではない。
態度や仕草、それら全てが横柄で横暴、粗暴と言ったふるまいである。
へこみや傷だらけのバットを肩に担ぎ、威嚇するような視線と、肩で風を切るように、大股で歩いての入店だ。
手に携えたバットは野球をするための物ではない。
ここ、神室町に暮らすものなら、一目でそれが理解できる。
間違いなく、その男達は人をバットで殴ることに慣れている。
──そう理解させるには充分な“気配”を男達は醸し出しているのだ。
POPPOのレジ打ちをしている店員は、彼らを見てとり、呻くような悲鳴を小さく洩らした。
店内には、真冬と彼女に話しかけて来たホストの他に、客は男性二名、女性が一名いる。
男性客の一人は仕事帰りか、背広を着た何処か頼り無さげな印象を持たせる眼鏡の青年。
もう一人は高校生か中学生くらいの細面の少年。
どことなく険のある顔立ちだが、暴力沙汰を好む不良学生──と言ったそんな印象は無い。
そして、レジにて支払い中の年若いキャバクラ勤めであろう派手目な女性だ。
POPPOはそれほど広い店舗ではない。
客は皆、不審な輩が現れた事に直ぐ様気付いた。
店員や客達も、恐らく喧嘩慣れ自体してはいないだろう。
それでも危険な空気を感じ取れる……そんな
ホストの男性は舌打ちした。
早く真冬を病院に連れて行きたいと思っていた矢先に、面倒そうな輩がやって来たからだ。
彼もまた神室町の住人だ。
多くの極道やギャング連中を見ており──
当然、危ない目にも遭ってきている。
神室町は東日本最大の広域指定暴力団である東城会が取り仕切っているのだ。
このホストの男性……ホストクラブスターダスト店長ユウヤは、東城会の直系団体である嶋野組の構成員とは何度もいさかいを起こしていて、乱闘騒ぎにまで発展することだって少なくなかった。
ユウヤはそんな男だ。
POPPOに現れたこの連中にも心当たりがあった。
最近、神室町で……特にコンビニで揉め事を起こしているギャングチーム『神室町
神室町のコンビニで商品の万引きに始まり、メンバーは全員金属バットで武装し、店員や客には喧嘩を吹っ掛けては乱暴、女性相手なら痴漢紛いの行為を働くと言う迷惑極まりないチンピラの集まりである。
神室町のギャングと言えば、今年の12月の半ば頃にホームレスのたまり場である西公園を襲撃したカラーギャングの『ブラッディアイズ』や『ホワイトエッジ』等が知られている。
この『神室町
──真冬は、この厄介なギャングチームのメンバーが現れた事に関して特に気にした様子もなく、ユウヤに教えられた通りにコピー機を操作し、刷られていく尋ね犬のポスターを眺めていた。
POPPO店内に設置されているコピー機を使用していると出入り口の方向へ向いているので、真冬も
だが、視線を彼らへと向けることはなかった。
普通なら無法者と思われる危険人物が現れたなら、自然にそちらを見てしまうだろう。
興味など無くても、一瞬の動揺が視線を向けさせてしまうものだ。
しかし、真冬にはギャング達へと向ける恐怖や嘲り、或いは好意や興味も無い。
真冬の、常日頃から変わらぬ虚ろな目からも、感情を推し測れる要素は何一つとしてなかった。
真冬にとって、このコンビニ内で興味を惹かれるのは入店した際、最初に目についたポップに書いてあるカレーまんや肉まんを買うと3つ付いてくると言う餡まんと、コピー機の使い方に悩んでいたときに気付いた雑誌売り場に貼ってあるメガ盛りスイーツの広告ポスターだ。
フルーツごろごろと言う文言に惹かれる物がある。
果物を口にした記憶は殆どない。
──ごみ捨て場にあった乾ききった蜜柑の皮なら今よりも幼い頃にゴミ袋からあさりよく食べたが……。
398円、この神室町に、来る前なら途方もない高額な値段に感じただろうが、今なら問題ない。
カツアゲ坊主に感謝である。
また喧嘩をしたいなと思ってしまう。
寒空の下を歩いていたときから一度食べてみたいと思っていたコンビニおでんにも視線が行く。
──そして、入店した時から気になっているもう一つは細面の中学生か高校生だ。
“随分と重そうな服……”
真冬が彼に感じた第一印象はそれだった。
彼が着ている服は極々普通の学生服だ。
不良学生が好むような変形や改造された物ではなく、既製品の標準制服だ。
大抵の者ならこれを見ても「随分と重そう」等とは思わないだろう。
しかし、真冬は一目見て重い服だと考えたのだ。
外見からはごく普通の学生服なのだが、色々と仕込まれている、と真冬は感じた。
入店した際にも、あの少年は真冬に一瞬目を向けた事に真冬も気付いている。
だが、少年は真冬を見ながらも、視線そのものは真冬が持っている暗器に向いていた筈だと真冬は察している。
少年の視線の先にあったのは黒いリボン靴や、ポシェットに隠匿された針やデザインナイフ、だ。
“あの人もカツアゲ坊主かな”
重そうな服を身に付けた少年の存在。
──真冬は不思議と気分が高揚していた。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い