※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

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新装備

 

 チャンピオン街と言う、何処か古めかしい昭和の残り香の匂い立つ様な空間には、似つかわしくない幼女がいた。

 ゴスロリメイド服を身に纏った美少女──當之(たぎの)真冬である。

 

 共に一切の色素を取り除いたかのような、長く白い髪と白い肌が特徴的だ。

 眸は紅い。

 一目見ては、雪女や、幽かな存在感、虚ろな紅い眸の視線から幽霊を連想してしまう者もいるだろう。

 しかし、ゴスロリ服がよく似合うこの美少女は、チャンピオン街で不思議な存在感を発揮していた。

 

 そして、このゴスロリ服が曲者なのである。

 衣服自体は、昭和通りと交差する中道通りの南口に建っている日本最大級のディスカウントストアや、公園前通りの大人のおもちゃを売る店で購入した格安のコスプレ衣裳である。

 とは言え、布も本格的な物で見た目の上ではそれほど安っぽくはなく、余程の拘りのある人物で無ければ安物感は覚えないであろう代物だ。

 

 彼女が纏うこのゴスロリメイド服を曲者と評した所以だが──

 それは、各部位に様々な暗器とも言える隠し武器を仕込んで有るからだ。

 

 彼女の長く白い髪に着飾れたボンネット。

 全体は黒く、つばの部分には白い刺繍の様なレース。

 左右には白いリボンがあしらわれ、同じく白いリボンが顎下で結ばれている。

 真っ白のフリルとレースで装飾された襟首から胸元にかけて目立つのは、中央に白い花飾り、段々に拡がるレースの飾りそして、イミテーションではない宝石が輝いたジャボだ。

 この胸元に飾り付けられたジャボはディスカウントストア等で購入した物ではなく、翠が神室町の中でも高級店として名高い“ル・マルシェ”で購入しプレゼントして来た決して安くは無い代物である。

 しかし、裾に黒いレースと白いフリルで装飾されたスカートはかなり際どい短さであり、それが何処と無くコスプレ感を拭えないでいる。 

 長袖のブラウスもミニスカートも黒く、全体的に黒い衣裳が真っ白な少女を包み込んでいる。

 ブラウスの袖はふわりと膨らみ袖がフリルの様になっている。

 足元は黒いリボンシューズで、白いフリルがふんだんにあしらわれた黒いニーソックスを履いている。

 白と黒で彩られた衣服に飾られた白い人形──真冬の余りの愛らしさに、その姿を目にした城之内翠は心底身悶えたものだった。

 

 そして──暗器だが。

 今までは、彫刻刀や針などの日常品を暗器のように扱って来た彼女だが、最近知り合った武器マニアである少年“井森洸一”からの紹介で『殺傷の為の武器』を得ることが可能となったのだ。

 神室町は歓楽街の顔の他に、闇社会の顔がある。

 当然、そうした世界には闇の取引所が存在しているのだ。

 井森が紹介したのは“beam”と言う店と、個人が取引している“ワークス上山”であった。

 “beam”は表向きは、ピンク通り北の雑居ビル地下でアダルトビデオや写真、雑誌を扱う店だが、裏の顔として武器の密売を行っている。

 ワークス上山は、主に天下一通りの裏路地にある一角にて個人で武器の密売を商う妖しげな小肥りの男だ。

 彼が作製した物が販売されており、比較的、近接用の武器が多い。

 頼めばオーダーメイドも請け負ってくれると言うのが、真冬には有り難い話であった。

 

 beamで購入した暗器は肩に掛けたポシェットに入れている。

 “手の内”や“寸鉄”或いは“娥媚刺”と呼ばれる隠し武器を六本忍ばせているのだ。

 勿論彫刻刀も忘れてはいない。

 ポシェット自体は以前からの物と変わらないが、これにも一つだけ変更点がある。

 鎖がより強固な金属製の物へと変更されたのだ。

 この鎖もbeamで購入した物である。

 特殊な暗器はボンネットの左右のリボンに仕込まれた剃刀だ。

 この剃刀は通常の剃刀より薄く、そして小型である。

 髭を剃るには適してはいないが、罠や、暗器として用いられるのだ。

 井森もちょっとした罠(トラップ)として愛用している。

 これはワークス上山の改造武器である。

 顎下で結ばれているリボンにも同じ物が隠匿されているが、これは真冬にとっても危険なので上山は改造中に何度か警告していた。

 また、この剃刀は襟元にも潜んでおり、掴みかかってきた敵の手を迎え撃つのだ。

 ブラウスの袖下には革のベルトが巻かれている。

 長袖で隠されてはいるが、ふわりとラッパ状になっている袖はこれを機能させる為にある。

 ベルトには複数の小型の矢が仕掛けられ、手首側に設置されたバネから発射される。

 発射装置は中指に繋がる細い糸だ。

 この糸は、アラミド繊維とチタニウムを焼結させた超最先端技術の結晶であり、ワークス上山でも滅多に取り扱えない代物である。

 後々、更に改良が重ねられたものを、アメリカのドリアンや、本部以蔵も使用している程に優秀な代物なのだ。

 現在は暗器“袖箭”の発射装置として利用されているが、使い様によってはこの“糸”こそが暗器として扱い得るだろう。

 袖箭を隠しているのは左手だ。

 勿論右手の袖にも隠された暗器がある。

 小さな刃それぞれが輪で繋がり、連なって、牙の様に形を為している刃物だ。

 インドの隠し武器“バグナウ”と呼ばれる物である。

 輪に指を入れて、握り混むと刃が拳側へと向き、その刃の拳で撃ち斬り付ける隠し武器だ。

 それを先程の糸で操作し、袖口に仕掛けてあったそのバグナウが真冬の手元に下りると言う仕掛けが施されているのだ。

 リボンシューズには、今まで同様、針などを仕込んでいた。

 

 そうした様々な改造隠し武器を真冬はワークス上山に製造を依頼した。

 それはデボラのマスターや井森の口利きがあったからでもある。

 だが、ワークス上山もまた、真冬の尋常ならざる暗器技術を見抜いているのだ。

 故に、喜んで真冬へと武器を製造依頼を受けたのだ。

 

 ワークス上山にとって、真冬が良い顧客になってくれる事は間違いないだろう。

 

 ──そして

 そうした新たな暗器を手にした真冬は、チャンピオン街でぽちたろの捜索を始める事となる。

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