※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

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ロリータ専門AV制作グループ

 チャンピオン街を南側から抜け、真冬は四階建のソープランド“桃源郷”を眺めていた。

 ギリシャ神殿を思わせる一階部分の柱。

 二階以降の外壁には、雷紋が目立っている。

 入会料に最低でも100万円は必要だと言われた高級ソープ店である。

 客層も有名芸能人や国会議員、財界の大物などで、一般庶民にはそうそう立ち入れる場所では無い。

 だったのだが、ネオン看板は消灯して久しい。

 

 午後10時を回り、神室町がより賑わう時刻で在りながら、桃源郷はひっそりと静まり返っている。

 昨年末、ダンプカーが門を突き破る事故が起きて以来、桃源郷は営業を停止しているからだ。

 ヤクザの抗争による事件とも言われており、すっかりとこの建物は事故物件となってしまったのだ。

 

 嘗ての優雅だった外観は見る影も無く、随所はまるで廃墟の様相を呈しているのだった。

 

 門は閉ざされ、立ち入りは禁止されている。

 警察の手により閉鎖されており、侵入は困難かと思われた。

 しかし、『keep out』の黄色テープを取り除き、真冬を手招きする三人の男の姿があった。

 皆、人相が悪く、どう見ても堅気では無さそうな三人組だ。

 

 特に、真冬に手招きしている男は──胡散臭い──そんな言葉が人の形を成したような人物である。

 何処で焼いているのか、浅黒く光る肌。

 丸坊主の頭には、奇妙な幾何学模様の入れ墨。

 にこやかに笑ってはいるのだが、どこか厭らしく下卑た笑みだ。

 そして、目は笑っていない。

 眸の奥に、暗い闇が潜んでいる様だった。

 かなりの巨漢で、身長は190センチメートルを越えている。

 しかも、単に背が高いだけではなく、筋肉の量も相当だ。

 鍛え込んでいる事は、誰の目にも明白だろう。

 

 後の二人は、ビデオカメラを手にしているパンチパーマの男と、写真機を首にぶら下げ、撮影用の照明器具を持った髪を無造作に伸ばした男だ。

 彼らも、丸坊主の男程ではないが、盛り上がった筋肉が服の上からも見て取れる。

 

 真っ当な人間には到底思えない男達が、立ち入り禁止の元ソープランドに立ち入ろうとしている。

 真冬に手招きし、ソープランドの跡地に誘い込んでいる彼らの姿を目撃している人間は多く居たが、誰も止めようとはしなかった。

 神室町は日本一の歓楽街であり、東日本最大の極道組織“東城会”のお膝元である。

 最悪、この三人組が東城会の関係者である線も考えられるからだ。

 面倒な事に首を突っ込みたがる者などいないのだ。

 

 ──真冬が、この怪しげな三人組と出会った切っ掛けだが、ほんの少し時間を遡る。

 

2.  

 後々オカマバー“亜天使”のママとなるアコから、ぽちたろの話を聞いた真冬は、チャンピオン街南口側にある空き地にいた。

 ここは、チャンピオン街の一画で、長らく手付かずとなっている、ぽっかりと空白となっている場所だ。

 チャンピオン街の裏通りと言って良いかも知れないこの場所は、カラーギャング“ホワイトエッジ”の溜まり場である。

 チャンピオン街に足繁く通い詰め、毎夜の様に訪れる者であっても、ここに近付く事は決して無い、そんな危険な区画となっている。

 

 ぽちたろは、ごく最近、そんなチャンピオン街の一画でも目撃されているらしい。

 チャンピオン街で店を構えるバーのマスターやママから餌を与えられていることが考えられるが、そうした危険な場所にいると思うと、真冬は気が気で無かったのだ。

 しかし、件の空き地に入ってみるも、カラーギャングの姿は見られ無かった。

 ドラム缶の焚き火がパチパチ音を立てて燃えていた。

 人の出入りは有るようだ。

 空き地は四方、何らかの雑居ビルで囲まれている。

 ここに、犬を虐待しようと考える様な輩が、ぽちたろを追い詰めたとしたら、逃げられないだろう。

 真冬は、ぽちたろの境遇を聞いている。

 この神室町で半グレのような輩に虐待されていた野良犬だ。

 だからこそ、余計に早く保護したいと、真冬は思うのであった。

 

 そして、南口へと向かい空き地に入って行く真冬の姿を、三人組は偶然見掛けていた。

 チャンピオン街にあるオカマバー『大女優』の常連でもある彼らは、丁度酒を飲み、店を出たところ、真冬の姿を見付けたのである。

 

 ゴスロリ服を身に纏っている美しく、愛らしい幼女──「この幼女の映像を撮りたい」──真冬を見た彼らの第一印象であり、三人が三人共に考えた事だ。

 

 彼らは何者なのか──

 

 神室町のピンク通りの北側に“BEAM”と言うアダルトビデオショップがある。

 彼らは、そのショップで販売されるビデオの中でロリータ専門──かつ素人物のアダルトビデオを撮影する事で有名なクリエイター達だ。

 その筋の好き者達からは非常に人気があり、BEAMの客層の中で一定以上の需要があるのだ。

 四十八手(しじゅうはって)章治郎(しょうじろう)の名前がクレジットにあるだけでビデオを購入する者がいるくらいの人気具合だった。

 

「おーい、お嬢ちゃん」

 丸坊主の浅黒い男が真冬を呼んだ。

 普通の少女だったら逃げ出すだろう、そうした強面(こわもて)の男であった。

 いつもなら、彼らも神室町で“スカウト”はしない。

 神室町には、彼らが撮影対象とするような少女はいないからだ。

 四十八手章治郎が撮影する少女は、幼女と言って差し支えのない年齢の少女となる。

 未成年どころではない。

 女児だ──

 そして、彼らの“スカウト”とは、言葉通りのスカウトとは異なる故に、質が悪い。

 ──とどのつまり、誘拐である。

 女児を連れ去り、当然合意を得る事もなく、撮影に及ぶのだ。

 

 彼らのアダルトビデオが人気なのは、そう言う行為のリアルさに在る。

 リアルさとは、真に迫る女児への強姦だ。

 BEAMで取り扱うそれらのビデオは、完全な裏ビデオとなる。

 単なる裏ビデオではなく、一定の信頼の措ける客にのみ販売される裏中の裏ビデオだ。

 闇ビデオと言って良いだろう。

 当然、彼らのそれは犯罪だ。

 しかし、彼らが検挙されることなく、彼らの犯罪が明るみに出ない事には理由がある。

 その秘密は彼らの背後組織、そして顧客が関係している。

 四十八手章治郎──

 そもそも、その名前は丸坊主の男の名前ではなく、彼らロリータ専門アダルトビデオ制作チームの名称となっている。

 そして、四十八手章治郎の背後に存在する組織こそ、広域指定暴力団、七代目“源王会”であった。

 源王会は以前、日本の暴力団統一化を掲げ、神室町に進出し、東城会と近江連合の全面戦争を目論んだ。

 しかし、内部の藤木組との抗争に敗れ、神室町を撤退した筈であった。

 が、東城会錦山組の神田強の後ろ楯を得て、この四十八手章治郎は神室町で活動しているのだ。

 本来は四十八手章治郎のしのぎは、神田強の懐にも入る筈だったのだが、彼は強姦罪で服役した為に、現時点、四十八手章治郎のしのぎは源王会への資金源となっていた。

 神田が逮捕されたのは、源王会に取って、神室町への再度進出に向けての良い追い風になっただろう。

 

 また、このアダルトビデオの客層である。

 顧客リストに列なる名には、財政界の大物から、医者や弁護士などと言った名士の名前が見受けられるのだ。

 それら、ビデオの客層こそ、四十八手章治郎のアダルトビデオファン達なのだ。

 下手にマスコミや警察も探りを入れる訳にはいかなかった。

 つついた藪から蛇が現れる所ではない、危険な場所になっているからだ。

 

 勿論、そうした客層にのみ提供される訳ではない、比較的ライトな物もあり、そうしたものは店舗内にも陳列され、一般層も陳列棚にその商品が見られるだろう。

 

「……はい?何ですか」

 

 物怖じする姿を見せない真冬に、一瞬面喰らう丸坊主の男だったが、笑みを作り、話を進める。

 こんな場所にいる少女だ──商売女の娘か、外国人の少女だろうか。

 頭のネジも弛そうだ──丸坊主の男は、そう考えた。

 

「お嬢ちゃん、こんな処で、何やってんの?危ないぜ」

「迷い犬を捜しています」

 

 丸坊主の男に追い付いた他の男二人も、真冬の言葉にポカンとした呆けた様な表情を浮かべた。

「へぇ、わんちゃん。お嬢ちゃんの犬かい」

「……そう言う訳では無いですが……」

 

 真冬は、携帯電話に収められたぽちたろの画像を開き丸坊主の男に見せた。

 

「この子です。この辺りにいたみたいなので」

「あぁ、このわんちゃんね。桃源郷の方で見たかなぁ」

 勿論、嘘だ。

 

「角の廃墟ですよね?見に行こうと思ってます」

「……お嬢ちゃん、あそこは警察が立ち入り禁止にしててなぁ」

「……はい」

 

 チャンピオン街の空き地に続く路地から、桃源郷の方を指差す丸坊主の男。

「一緒に行ってやろうか?大人となら入って良いだろう」

 

「そうそう、でね、お嬢ちゃん、ちょっとだけ映画にも出てみないかい?」

 パンチパーマの男がにやつきながら真冬に言った。

 

「僕たちね、特撮ビデオを撮影してるんだよ」

「そうそう、特刑ウインペニスターとか、特急指令プ即レイプン、特精巣セクシーマラフト──聞いたこと無い?あるよね」

 

「いえ、知りませんが……」

 

 真冬は、小首を傾げる。

 明らかなパチモノではあるが、それぞれの元ネタであろう特撮も西暦で言えば1990年から1993年のものだ。

 真冬は、1996年生まれだし、そもそもテレビを母親と暮らしていた頃に視聴した事さえ無いのだ。

 

「出演料も払うよ」

 

 パンチパーマの男が言ったそれは、確かにありがたい話ではあった。

 ぽちたろを保護した後、彼を養うためにはお金が必要だし、ゲンさんや、ミチさん、モグサに何か買いたい思いが強い。

 

 ロン毛の男が何処かしらに電話しているのに気付いたが、真冬は、彼らの申し出をこうして受けたのだった。

『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?

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