※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

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真冬の特撮系AV撮影

 

 嘗ての高級ソープランドは、今や見る影も無く荒れ果て、すっかりと寂れ切っていた。

 

 ──桃源郷

 

 真冬と、丸坊主、パンチパーマ、ロン毛の男達は“keep out”と書かれた黄色いテープを越え、板張りの扉を抜ける。

 扉も元々は豪奢で、頑丈そうな代物だったが、昨年末に起きた極道の抗争によりダンプカーが突っ込み、完全に破壊されてしまい、今では単なる板張りで簡素に閉ざされているだけであった。

 

 内部の荒廃具合も、酷い有り様である。

 埃っぽい。

 埃や黴のすえた、嫌な臭いが真冬の鼻をついた。

 

 どこから立ち入ったのか、ホームレスなども居着いているのだろう。

 酒瓶やビール缶、残飯などもそこかしこに散らばっている。

 

「やぁ、来たかい」

 砕けた石膏の像が目立つ受付ロビーのカウンターに座った一人の男が、真冬を出迎えた。

 奇妙な出で立ちである。

 全身黒タイツ、目出し帽の様な覆面──

 恐らく、四十八手 (しじゅうはって)章治郎(しょうじろう)の特撮ビデオに出演する人物だ。

 他にも二人、彼と同じ格好の男がいた。

 彼らのその姿は、古い特撮に見られる戦闘員のパロディだ。

 

 その内一人は何やら怪しげな器具の点検をしており、もう一人は注射器を弄っている。

 真冬は知らないが、公園前通りにもある様な店に売っている、所謂大人のおもちゃだ。

 ピンクローターやら、電マ等と呼ばれる物である。

 注射器には何の薬物が仕込まれているのだろうか。

 ──媚薬やら、違法薬物などであった。

 

「私は何をしたらいいのですか?」

 真冬は、小首を傾げ丸坊主の男に尋ねた。

「真冬ちゃんには、僕達のね、新作特撮ビデオ、仮面《マ》ライダー リパイズリのヒロインをやってもらおうと思ってるんだ。直ぐに終わるから、その後、ワンちゃんを探そうか」

 

「よ~し、真冬ちゃん、まず写真一枚撮るよぉ」

 ロン毛の男が、真冬に有無を言わさずシャッターを切った。

 

 それと同時に、全身黒タイツの一人──注射器を弄っていた男が缶飲料のタブを開けた。

 プシュッと音が鳴る。

 缶ビールだ。

 真冬の視線がカメラに向いた隙に、その缶ビールに注射器の媚薬と同様の薬物を注入し── 

「お嬢ちゃん、喉渇いてねぇか?」

 ──ビールを注いだ紙コップを真冬に手渡した。

 

 周りの男達がにやつく中、真冬は、それを口にしてしまう。

 途端に真冬は、ビールの苦さに不味さを覚え、眉を顰めた。

 しかし、捨てたり吐いたりするのは申し訳無いと考え、真冬はコップ一杯のビールを飲み干した。

「もう一杯飲むかい?」

「いえ、いりません」

 だが、紙コップへ更に注がれ、飲まざるを得なくなる。

 

「よし、真冬ちゃん。取り敢えず上に行こうか」

 

 桃源郷は四階建てで、それぞれの階層に幾つかの個室が存在していた。

 現在は床が陥没し、半ば倒壊寸前のように見える。

 嫌々ながらも注がれたビールを飲み続け、真冬は、男達と共に上階へと向かっていく。

 

 ──階段は、瓦礫、瓶やらのガラス片でかなり危険な事になっている。

 ──しかし、男達はそんな足場にも慣れた様子であった。

 桃源郷が閉鎖されて以来、彼らはここで余程の数の“仕事”をこなして来たのだろう。

 

 ガラス片を踏む音が響く。

 ──男達の視線は真冬に向けられていた。

 

 彼らが撮影するポルノは、ロリータ専門アダルトビデオで、彼らの映像を愛するロリータ趣味の持ち主は数多く存在している。

 そして、彼ら全員が、ロリータ趣味を嗜好とする集団なのだ。

 真冬の様な美少女は彼らの格好の獲物となる。

 

 パキり──とガラスが割れると、真冬の脚が震えた。

 割れて響いたガラスの音が足に伝わり、そして脚に突き刺さり、体の真芯を震わせた。

 

 際どいミニスカートのフリルと、黒いニーソックスの間に覗く白い太ももが、僅かに赤みを射している。

 

「真冬ちゃん、期待してるよ」

 ぽんぽんとパンチパーマの男が肩を軽く、叩く。

 すると──

 真冬は、全身に走った異様な感覚に驚き、小さく声を上げた。

 脚の震えが激しくなり、一瞬、しゃがみこみそうになってしまう。

 脚の震えを抑える様に、強く足首に力を込めた。

 眩暈が、真冬に足場が揺らめいた様に錯覚させ、パンチパーマの男の方へと肩が傾いた。

 

 真冬のその様子を見たパンチパーマの男と、全身黒タイツの男達は下卑た笑顔を浮かべた。

 

「おっと、真冬ちゃん、大丈夫かい?どうしたんだい」

 

 真冬とパンチパーマの男はかなりの身長差がある。

 真冬は、120センチ──

 パンチパーマの男は凡そ190センチだ。

 真冬を支える為に男は僅かに腰を落とし、その細い肩を抱き抱え、背中に手を回した。

 

 ぞくりと背中に氷が押し込まれた様な感覚に、真冬は、反射的に仰け反った。

 息が上がっている様な、未知の感覚に戸惑う。

 疲れや、ダメージは無い──だが、それらと異なる明らかに不可思議な感覚が全身を襲っている。

 布越しに触れられているだけで、体の痺れと震えが治まらない。

 

“あぁ、そうか──”

 ──毒だ。

 

 二階の一室に入ると、窓は板で打ち付けられていた。

 外から見えないようにするためか、それとも窓から逃げ出させ無いようにする為か。

 

 桃源郷時代から使われていたが、打ち捨てられ薄汚れたベッドの上には、見るからに怪しい道具が散らばっている。

 その中で、真冬の知識の中に有るものは手錠だ。

 ベッドの横にある小さなテーブルの上には注射器と錠剤が入った瓶、薬包紙も見えた。

 

「それじゃあ、真冬ちゃん、電マ人間ローターックル軍団とゴスロリヒロインの撮影会といこうか」

 丸坊主の男が告げると、荒い息を吐く真冬の顔を、ロン毛の男はカメラに収める。

 普通なら、女児が見せない様な表情である──男達に取って最高の画がそこにあった。

 

「向こうに座ってねぇ」

 パンチパーマの男がベッドへと促す。

 全身黒タイツ男の一人がベッドの横に控えており、真冬がベッドに近寄るや、真冬へと右手を伸ばした。

 左手には手錠がある。

 

 下卑た笑みを隠すような猫撫で声で、優しげな顔を見せていた男達だったが、豹変した。

 黒タイツ男は乱暴に真冬の左手首を掴むのだった。

 

 ここに連れ込んでしまえば、逃げようが無い。

 優しい顔など不要なのだ。

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