範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
柴千春、真冬を目撃する
……オレの話じゃねェが、お前も興味あるかも知れねぇ話よ。
神室町のある夜の話だ。
まだ、花山の大将と出逢ってない時期だが、オレァ、神室町にいた。
おう、うちのチームは、もう有ったな。
神室町には伝説のゾク、ブラックサンダーの元総長もいるってェ話だから、いつかは、そいつとタイマンはれねぇかって期待もあったわけだ。
と言っても、その夜はあても無くぶらついていた。
赤牛丸で牛丼食って、ミレニアムタワー前に向かった先に、胸糞悪ぃ連中が居てな。
仔犬を虐めていやがったンだ。
ん、そりゃ、オレは止めに入ろうと考えた。
小動物の虐待なんざ、男の恥だ。
男がもし動物相手に
あぁ?花山の大将はホホジロザメとタイマンで勝ってるんだぜ、おい、マジだ、嘘は言わねぇよ。
アナコンダやライオンとプロレスをヤった人だってオレは知ってる。
虎を倒した空手家ってぇのも居るしな。
で、なぁ、撰、オレには、オンナだが戦闘力って点で、認めてるヤツが二人いる。
オンナの癖にバカつぇえ二人の話だ。
一人は真冬。
あの夜、アイツはまだ9歳くらいのガキだった。
もう一人はリョウガ。
真冬より二つ上のガキだ。
もし、花山の大将以外にオレが惚れるとしたら、そりゃあ真冬かも知れねェ、そんなガキの話だ。
ん?バッカッ野郎、オレァ、ロリコンじゃねぇに決まってンだるオォ。
兎に角、その夜、とんでもないガキの喧嘩と、オレは出くわしたのよ。
4.
真冬は、違和感を覚えた爪での攻撃を止め、一旦退いた。
しかし、その真冬を追い詰めるかの様にして、リョウガは真冬に近付き、ヒラヒラしたロングスカートを掴む。
「逃がさへんでぇ」
真冬の玄武岩を穿つ程の爪を砕いた掌を、真冬の胸元に置く。
そして、凄まじい衝撃が激痛となって真冬の乳房に走った。
無寸剄だ。
リョウガは概ね戯れに、妹の乳房の中心に向かって無寸剄を放ったのだ。
スカートを捕まれ、咄嗟に回避が遅れた真冬は、得意の
スカート生地を破れば良かったかも知れない。
しかし、翠に貰った服をまたもや台無しにしたくない……そんな思いが
失敗の原因はそれだけではない。
服を掴まれる事が深層意識レベルで恐怖となっている。
それは先日の桃源郷での一件が原因である。
衣服を脱がされ、異常な快楽を与えられる恐怖。
意味こそ今も理解出来なかったが、ショーツまで降ろされ、男達の手や指が下腹部を這う様に撫で廻し、奇妙な機械の震動から伝わる身体への刺激。
それが怖かった。
その於曾ましい記憶が、衣服を持たれる事への恐怖に繋がってしまうのだ。
そして、衣服を掴まれた事が僅かな緊張となり、身体を硬直させてしまい脱力の極みたる
間違い無く、いずれ、この恐怖症は格闘技者としては致命的な物となる。
格闘技者を続けるならば、克服しなければならないのかも知れないのだが、真冬自身、この恐怖症に気付けていないのである。
この恐怖に向き合うのは、暫く先の話なのだ。
無寸剄の一撃は真冬の乳房の中心を捉え、乳首を撃ち、剄の波紋は彼女の膨らみも見られない乳房に広がった。
幼女とは言え、神経が通う乳首や乳房は急所となる。
気を失いかねない激痛に耐え、ロングスカートを掴むリョウガの手を払おうとするが、既にロングスカートから手は離れていた。
逆にその真冬の右手をリョウガは捕った。
右腕の関節を折ろうとするが、今度はリョウガが違和感を覚えた。
折れない。
関節の形状が異様だ。
まるで、軟体。
そこで、リョウガは真冬を投げ飛ばした。
真冬の体重は35kgしかないが、リョウガの様な幼女がその重量を投げ飛ばしたのだ。
かなり異様な光景である。
真冬の身体は、ハンバーガーチェーン店であるヴェッテキッチンのガラス張りの壁へと激突した。
野次馬達も、ヴェッテキッチン内の客や店員達もガラスが割れると考え悲鳴を上げた。
しかし、真冬の身体は、ガラス張りの壁に着地したのだ。
ふわりと、まるで羽毛やビニール袋がガラス張りに当たったかのように軽く……と言った風にガラスを割ること無く真冬はほんの一瞬、ガラス壁に立った様だった。
そして何事もなく地面に降り立った。
悲鳴の次は歓声が上がった。
どんな手品か、サーカスかと言った所である。
リョウガもまた、愉しそうに笑った。
「海月やな、あんた」
ユラユラ水面を漂い、白く色素のない生物を真冬の様相に重ねた。
クラゲは美しいし、そして、関節技は効かない。
褒めたつもりでもいたのだ。
そんな軽口に対して、真冬は何も返さないが、真冬には言いたい事があった。
「邪魔をしないで下さい」
「はぁ?」
リョウガは怪訝そうに眉を顰めた。
「貴女には見えませんか、あの仔犬の惨状が。私はあの子を助けます。邪魔をしないで下さい」
「はっ!そう言うことか、
暫し、考える素振りを見せた。
勿論、何も考えてはいないが、あくまでポーズである。
「アイツラ、犬を虐めとるからな、私も気に食わんかったんや、えぇで、一時休戦。真冬の事は後で殺したるけど、まずその前にアイツラからやな」
ポチタロを虐待することを忘れ、真冬の異様な身体能力を唖然と見ていた男達にリョウガは向き直る。
「お前らぁ、大阪府警や!犬の虐待の現行犯で死刑やでぇ!」
リョウガは叫ぶが、その意味不明な言動に男達の理解が追い付かない。
「いくで、真冬!」
石を投げた男と彼の仲間六人。
「何言ってやがるクソガキ!」
リーダーと思しき派手な金髪の男が我に返り怒号を上げた。
昨年の焼き直しかと言う考えに至り、より怒りが込み上がったのだ。
そして、更にヴェッテキッチンから八人の男がゾロゾロと姿を現した。
丁度、真冬を取り囲む形となる。
「なぁに、ヨッちゃん、今度は親父じゃなくて幼女に邪魔されてんの」
「なっさけねぇなぁ、オイ」
ハンバーガーを食べながら男がへらへら笑った。
この状況に野次馬達はざわつき始める。
チーマーの様な集団が幼女を取り巻いているのだ。
「警察呼んだ方がよくね?」
「いや、でもなぁ、関わるのもなぁ」
「面倒だべ」
恐らく恐怖心もある。
あのチーマーらしき男達の顔を知るものは、彼等の質の悪さを充分に理解していた。
この神室町で、暴力事件をよく起こしている連中なのだ。
しかし、彼等が逮捕されたと言う話は聞いたことが無い。
今しがた仔犬に石を投げつけていたヨッちゃんや、仲間の誰かしらは、所謂上級国民の息子だと、そんな噂もある程だ。
根も葉もないとは言え、それの真実味は、彼等が逮捕された経歴がないと言うことが根拠となっているのだ。
誰一人として、真冬とリョウガを助けようとしない。
いや、一人いた。
「おーい、ヨッちゃん、どうしたの」
更に三人、ミレニアムタワーのベンチ側から男達が歩いて来る。
しかし、その内の一人の道を阻むや、いきなり胸ぐらを掴む男がいた。
チーマーの男は、胸ぐらを掴んできた男を殴ろうと拳を振るうが、その拳を額で受け止められ、あまつさえ逆に殴り付けられてしまう。
拳も壊され、パンチを受けた頬を押さえながらチーマーは転げ回る。
「いけねぇな、
チーマーの一人を殴り飛ばしたのは、旧態依然とした男だった。
鉢巻きに金髪のリーゼント、何処で買ったのか紫色の特効服。
地下足袋も履いている。
絵に描いたような暴走族。
異様に猫背で、紅を引いたような口唇が印象的だ。
彼の名前は『柴千春』。
暴走族チーム機動爆弾巌駄無の総長である。
「な、なんだ、てめえ!」
「幼女二人に何人で囲んでるンだ、男のヤることじゃねぇよな」
千春は、特効服を脱ぐ。
その背中には奇妙な竜の刺青。
三ツ首の黄金の竜だ。
怪獣映画のキングギドラを思わせる物であった。
野次馬達の中に、その刺青を知っている者がいた。
「柴千春だ!」
歓声が千春の耳に届く。
野次馬達だけではなく、チーマー達の中にもその名を知っている者が居るようだった。
そして──真冬とリョウガ、柴千春、それぞれによる救出劇と言う喧嘩が、始まった。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い