※この作品はR-18です。

範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ)   作:贋海王

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青木とモグサ

 

 2005年12月25日

 聖夜──

 

 白い少女──真冬にとって、クリスマスと言う物は、なんの意味も価値も無かった。

 いや、クリスマスそのものに意識を向けたことはない。

 そうした行事が有ることは、流石に知ってはいるが。

 

 真冬は今年で九歳になった。

 小学生である。

 大抵の小学四年生なら、クリスマスのプレゼントを親から貰える時間を心待ちにしている筈だ。

 キリスト教徒の家庭でなくても、ケーキや、チキンを食べるなりして、簡単にでもクリスマスを楽しみ祝うだろう。

 

 だが、真冬はそうした聖夜の過ごし方を知らない。

 

 一目会ったことすらない父親──

 母にも愛されなかった彼女に、幸せなクリスマスなんて有りはしなかった。

 今年が例年と違うのは、母がこの世を去り、いよいよもって孤独さに拍車がかかったことだろうか。

 

 いや、母が居ようと居まいと、何1つとして変わりはしない。

 常に孤独さが、“真冬”の厳しい寒さのように白い少女の心を凍り付かせるのだ。

 

1. 賽の川原のホームレス モグサが見た印象

 

 最初はね、私があの子とコンタクト取った訳じゃ無いんですよ。

 児童公園からチンピラ五人に追い出されたホームレスの亀さんと平目さん。

 児童公園で焚き火にあたって、談笑してた所にチンピラ五人がやって来た様でして──

 そいつらが、あの子……真冬ちゃんも連れていましてねぇ。

 

 亀さん達も何かヤバそうな雰囲気を覚えたみたいなんですけど、チンピラ五人は怖いですよね。

 ヤバそうな上にヤバさを積み重ねた、そんな状況。

 

 で、私に連絡してきた。

 私らホームレスもね、まぁ、普通に携帯を持ってる奴が居るんですよ。

 一応、仕事に使うしね。

 ホームレスだって、仕事してるんですよ、意外でした?──あ、そうでもない?

 

 それに、この街って危険でしょ?

 町の不良とか、最近じゃ、ほら、カラーギャングでしたっけ。

 赤い服とか青い服着た奴等、皆でお揃いの色の服着て、結構な悪どい事やってる若い連中──

 そう言うのに絡まれて金奪われるだけじゃなくて怪我したりとかね、するんですよ。

 そんなときに仲間内に連絡したりする。

 その連絡受けとるためにもね、携帯電話、必要なんですよ、私ら。

 

 ホームレス仲間には、やたら強いじいさんも居るしね、運が良いときだったら未遂に終わらせる場合もあるし、怪我してるんなら早めに助けに行って、手当てする必要もありますから。

 

 あ、そうだそうだ、そのじいさんですけど、真冬ちゃんの事気に入っちゃってね、その辺のあれこれも、また機会あれば話しますね──

 

 で、話戻しまして──

 児童公園に居た亀さんから連絡来まして、何人か仲間呼んで来てくれ言われたんです。

 私はちょうど近くに居たもんでね、直ぐに駆け付けられましたよ。

  

 劇場前広場あるでしょ?

 あそこでね、犬探してたんですよ。

 あ、そうだ、青木さん、犬見てません?

 ほら、遥ちゃんと桐生さんが連れてた仔犬。

 その仔犬ね、遥ちゃんが何やかんやあってから保護して、世話してたんですけどね──

 

 何を思ったか、桐生さんと神室町出るとき劇場前広場にね……言い方悪いけど捨てて行ったんですよ。

 あ、言い直します、置いていきまして──

 

 それをね、伊達さん……って刑事が桐生さん達の見送りしてたから、車の中で見ててね、まさか置いていくと思ってなかったらしくて驚いてね……伊達さん、仔犬を保護しようと車降りていったんですけど──

 

 伊達さんには慣れてないから、仔犬……怖がって逃げちゃったんですよ。

 でも、暫くうちらホームレスが世話してた事もあるから仔犬がなついてないかって事で、伊達さんに仔犬探すよう頼まれちゃって、私、その夜、劇場前広場で仔犬探してまして……児童公園のすぐ側にいたんですよ。

 

 亀さんから連絡来たから、そこで犬探しは一時中断して、急いだんですけど……急ぐ必要は無かった。

 

 酷い有り様でしたよ。

 チンピラの方がね。

 

 真冬ちゃんの強さねぇ──

 女の子とは思えない──以前の問題じゃ無いですかねぇ。

 人間とは思えない。

 まともな精神は持ってないと思いますよ。

 精神面も化け物みたいに強い。

 普通ね、彫刻刀、人の目に刺せますか?って話で──

 

 ブランコチェーンの留め金具、どうやったのか引き千切ったみたいですし──

 

 何かビンタって言うかな──

 それで手首を折っちゃったって、いや、自分も手首へし折れてるチンピラ見ましたもん、ありゃ、とんでもなくヤバい……

 鞭──

 えぇ、鞭みたいな感じで、ビンタ打ってたみたいですよ。

 真冬ちゃんの腕がね、人の腕とは思えない、“しなり”かたをしてたらしい──

 やたら強いじいさんがいるって言ったでしょ?

 その人、古牧さんが言うには“鞭打(べんだ)”って技術(わざ)何ですってね。

 

 五人も居たチンピラが九歳の幼女の前でズタボロですよ、ほんと、信じられないもの見ましたねぇ。

 それに、真冬ちゃんの目がね、怖かった。

 虚ろって言うか、もう、人間を見る目じゃなかった──

 

 私が到着した時は、眼鏡かけた男にね、淡々と尋ねてたんですが──あ、えぇ、西公園ってどこですか?って。

 

 その眼鏡のチンピラねぇ、話せる訳無い……何故って、顎が外れてた。

 あれねぇ、外れてるどころか顎関節が多分粉砕されてる。

 

 ブランコチェーンの留め金具外したって言ってたでしょ?それをね、そのチンピラに投げたらしくて。

 しかもね、“要らないんですか?欲しかったのではないのですか?”って執拗に訊ねてから、落ちてる鎖を拾ってね、その鎖の先に付いてるブランコの椅子でチンピラの顎を打ったらしい──

 

 で、私が着いたときには、西公園の場所を聞いてる、と。

 亀さん達は離れて一部始終見てたからね……えらい怖がり様でしたよ。

 

 その後は、私が到着した事を確認した亀さんらが慌てて真冬ちゃんを止めてね、西公園行きたいのかー?って。

 

 そしたらね、こっちの言うこと疑わないし、怪しまない。

 変なチンピラに絡まれたのか公園に連れ込まれて、しかもこんな大立回り演じてるのに、ホームレスの言葉を疑わないんですよ。

 あっさり西公園に案内されるって、危うい感じがしましたよ。

 心配になるよね、この娘──

 

 私が見た真冬ちゃんの印象はねぇ──

 化け物、でも心配になる危うい、優しい女の子──

 何だかね、優しくもあるんですよ、私の体の調子の悪いところ気にかけてくれたりね。

 

 あの子ね、一目で、人が体調崩してるところを見付けるんですよ。

 それで、“痛くないですか?気持ち悪くないですか?大丈夫ですか?”って聞いてくれる。

 怪我とか疲労してると分かると、ことぶき薬局とかまでね、薬買うため、お使いに行ってくれたりもね、するから、いい子ですよ。

 

 え?何で見ただけで悪いところが分かるのかって……。

 あぁ、考えた事なかったなぁ、確かに、ちょっと怖いですね。

 でも、あの子が来てくれて、良かったですよ。

 賽の川原のホームレス達も前より楽しそうにしてますしね。

 

 特に古牧さんがね。

 

 え?古牧さんと真冬ちゃんの話?

 ここから、まだ聞きます?

 

 じゃあ、そろそろ食事にしませんか?

 話がてら、韓来ででも、晩飯にしましょうよ──

 あそこのカルビ美味しいらしいですよ──

 

 

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