範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
神室町やその周辺一帯から蔓延を始めた熱病は、狂気を孕んでいた。
真冬を凌辱する様子を切り取った画像。
それが拡散していくスピードは凄まじい物だった。
だが、その速さが災いの元ともなるのであった。
真冬が、神室町で過ごした時間は一ヶ月程度だ。
そんな僅かな期間でも、彼女は多くの人間と出会った。
敵も多くいた。
しかし、暖かい交流の先に、絆を育んだ者たちもいるのだ。
──ホストクラブ スターダスト
「きゃー、えっぐー、何これぇ」
スターダストの客の女が、携帯電話に届いたメールを見ながら悲鳴を上げた。
悲鳴の様な声ではあるが、その実、楽しそうな物だった。
携帯電話をホストの男に見せて、女は彼の反応を待つ。
楽しげな女と異なり、男はそれを見るや顔が強張り、徐々に怒りが満ちた表情に変わっていく。
「……真冬ちゃん」
「え、ユウヤ、知ってる子なの?」
客の女が見せた物は、例の『真冬のパンパン祭り』の画像だ。
ホストの男……ユウヤは、膣が白濁液で汚れ両脚を大きく広げて倒れ伏している真冬と、普段のゴスロリ服を纏う愛らしい彼女の姿を比較する様に並べて加工された画像を見た。
「スゴいよ、これ、どんどん増えてる。この子色んなやつにレイプされてんの」
幼女が凌辱されているのだと、はっきりと分かる画像であるにも拘わらず、女は痛ましく思う所か嘲笑う様な口調で話した。
「警察、通報しねぇと。どこだ、これ」
「どうだろ?無駄じゃね?これ、何時間か前から増えてるみたいだし、掲示板側が削除してもまた誰かあげてるみたいだしさ」
明らかに異常事態だ。
これ程の状況が起きているのに、警察が動いていないのだ。
「桐生さんも伊達さんもいないのに、どうすりゃ……」
ユウヤは、真冬の戦闘力を目の前で見たことがある。
あの恐ろしく強い真冬が、何者かに犯されているのだ。
「クソっっ」
ユウヤは席から立ち上がる、
突然怒鳴ったユウヤの姿に驚いた他のホストや客は、何事かと彼を見やった。
「ユウヤ……?」
スターダストオーナーの
一輝は、ユウヤのただならぬ様子に若干の動揺を見せた。
ユウヤは、ヤクザから店を守る為に、彼等と大立ち回りを演じるような血気盛んな人物だが、決して接客中に怒鳴る様な性格では無い。
「どうした、ユウヤ」
「すんません、一輝さん……俺、真冬ちゃんを探しに行ってきます」
「何!?」
ユウヤの言葉に一輝は、少し間の抜けた声で返してしまう。
そもそも一輝は真冬を知らないのだから仕方無い。
「こ、この子です、なんか、やべえことになってまして、だから、俺」
「いや、お前が行ってどうする、警察に任せた方がいい」
「ダメなんです、何か警察が動いて無いみたいで」
ユウヤは、説明している時間も惜しく、簡単にそう答えた。
「もし、桐生さんだったら……手掛かり一つ無かったとしても絶対、まずは、行動すると思うんです!」
そうした言葉を紡ぐユウヤの目には確かな決意が燃えている。
一輝は、それを理解した。
ユウヤにとって、この真冬と言う少女の存在はそれ程大きいと言うのだろう。
「だから、行かせてください、一輝さんッ!」
「……分かった、でも、どうやって捜すつもりなんだ」
「……こいつを送って来た人、誰だ?」
ユウヤは、客の女に訊ねる。
女にしたら、意味不明に話が進んでおり、良い気はしていなかった。
何より、贔屓にしているホストであるユウヤが、客である自分を放ったらかしで画像の幼女を気に掛けていることが気に食わなかったのだ。
「知り合いのカラーギャングだけど?」
不機嫌さを全く隠さない声で答える。
「そいつ、今どこに居るか分かるか」
「赤井君たち、いつもデボラに居るから、今夜も居ると思うけど……」
そこで、ユウヤは一輝に一礼して、走り出した。
真冬を救出したい。
そう考えて、ユウヤは、彼が憧れるあの桐生一馬の様に、何の得にも成らない戦いに身を投じる為に、動き出した。
1.
リョウガの空掌によって、ごっそりと肉を抉り取られたギョンドの腹の傷は、まともな人間ならショック死してもおかしくは無いだろう。
「ギョンド、下がってろや。取り敢えず止血しとけ」
「この程度、何の問題も無い、それより……」
ギョンドの視線はリョウガの腹部へ向けられている。
先程、弾頭重量8.0gの9mmパラベラム弾を、超至近距離で七発撃ち込んだ。
夥しい流血が見られたが、出血は既に止まっていた。
薄紅色のフリルブラウスは銃弾により穴が空き、血で朱く染まっているので、負傷していたことは間違いない筈だ。
「……この数分で、射創が癒え始めているのか」
自然治癒の能力が異常過ぎる。
ギョンドの言葉にチーヨーが頷いた。
「俺の場合は硬気功で銃弾を弾いたけどよ、何だ、あいつの治癒速度は……」
硬気功──
消力とは真逆の勁である。
脱力ではなく、筋肉の緊張と硬直。
瞬間的に、気功や勁を全身に巡らせ硬化させる。
タイミングによっては、刃物も銃弾さえも膨張した筋肉の硬化により弾き返すのだ。
チーヨーもギョンドと並べば多少見劣りするが、とてつもない筋肉量を誇っている。
カンフー着の胸元から覗く大胸筋、凄まじい肉の壁だ。
中国拳法と言えば、あの郭海皇の様に、突出した筋肉とは決別し理合の拳を極めて行くものだと考えてしまう。
だが、揚海王の金剛拳などの様に、強固な肉体を作り上げる拳法もまた存在している。
このチーヨーも、そうした肉体を鍛え上げた拳法家なのだ。
「空掌だ、あれにさえ気をつけりゃあ、所詮小娘の拳よ。恐るるに足りん」
チーヨーは更に全身に勁を滾らせ、筋肉を膨張させる。
「蚩尤街八十一勁師の勁、味わって貰おうかぁ!迦陵頻伽ぁ!」
チーヨーが床を踏み締める。
亀裂が生じた。
脚部にも夥しい勁が巡り続けているのだ。
太く巨大な根が張り巡らされているような立ち姿だと、リョウガは思った。
空掌を警戒しているのは間違いない。
並みの打撃では、あの肉の壁には無意味であろう。
だが、空掌を警戒しているのなら都合が良くもある。
靴を脱いだ甲斐もあったと言うものだ。
勿論、靴を脱いだら、この瓦礫や砂利の様な破片が散らばる廃ホテル内では危険もある。
そんなものを踏みつけたら、タイツ越しであっても足裏を負傷しかねないからだ。
ギョンドは靴を投げたのは単なる牽制と考えていた。
リョウガが靴を脱いだ真の思惑に彼らは気付いておらず、それ以前にリョウガの足から繰り出される
リョウガは右手の指先を揃え、手の甲を相手に向けた。
空掌の構えではない。
混乱を誘う為か。
別の技なのか。
チーヨーは考えたが、答えは出ない。
ギョンドもまた、リョウガのその動きに思い当たる空道の技が無かった。
まず、ギョンドが動いた。
飛び蹴り──いや、両足を揃えたドロップキックを放つ。
助走を付けて、全体重を両足に乗せたドロップキックだ。
あの手の甲の秘密は分からないが、ドロップキックは腕による受けなど意味を為さない重さがある。
無理矢理、あの構えを潰す考えだ。
元レスリングの競技者が見せたのは、プロレスリング的な、かのマウント斗羽を彷彿とさせる32文人間ロケット砲を打ち出した姿だった。
──181kgの炸薬が込められた人間ロケット弾が着弾した。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い