範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
2.
ギョンドが放つ三十二文人間ロケット砲──
181kgもの巨体が宙を舞った。
跳び上がると同時に折り畳まれた膝を、反動をつけて、インパクトの瞬間、揃えられた両足を突き出した。
身長差を考えると、低空ドロップキックにも近い。
198cmと138cmの試合など本来なら成立しない。
体重も、当然有り得ない差がある。
故に、膝などを狙う低空ドロップキックに近い形に見えるのだ。
リョウガはギョンドの突き出された両足が着弾する刹那、緩やかに
そして、甲を向けていた右腕の肘を曲げ、下から突き上げる様にギョンドの右脚膝裏にアッパーカット気味に撃ち込んだ。
撃ち込んだのは拳では無い。
先端を揃えた四指だ。
リョウガの猛禽類の様な分厚くも鋭い、禍々しい爪がギョンドの膝裏に突き刺さっていた。
真冬が持つ天然の鋼の如しと言った爪とは異なり、何度も何度も剥がしては指を傷付け、鍛え上げた迦陵頻伽の鉤爪である。
突き刺さった鉤爪を振り抜く様に突き上げると、崩れて後頭部から背中と、順に床へと落ちていくギョンドの膝裏を切り裂いたのだった。
ギョンドの身体がまだ宙にあった瞬間、右脚を両腕で抱き込むように捉えて、床に叩き付けた。
その際、膝の皿を砕くように肘を当て、膝関節を逆に曲げた。
半身に構えて躱す──
鉤爪を突き刺す──
それを振り抜き膝裏を切り裂く──
右脚を捉えて、後頭部と背中が床に落ちる際により加速させ後頭部を叩き付ける──
そして、膝関節を曲げ、膝蓋骨を肘で砕く──
一連の攻撃は、恐ろしい速度で流れる様に行われた。
僅か0.6ミリ秒の攻防だ。
回避から始まったコンビネーションは、ギョンドが最初に見せた拳銃の抜き打ち動作よりも、遥かに速いスピードで叩き込まれた。
その気になれば、リョウガは相手が瞬きを一回する間に、このコンビネーションを約250回程度行える……そんな速度なのだ。
ギョンドが小さく呻き声を上げて、漸く一秒が経過する。
この常軌を逸した速度で行われた攻防、その為、チーヨーは一瞬、三十二文人間ロケット砲が着弾したと錯覚したのだ。
右脚の膝関節と膝蓋骨を砕かれたギョンドは、片膝を付いたその体勢で身体を起こし、リョウガへ向き直る。
「へぇぇ、まだやるん?」
膝を割られて悲鳴一つ上げへんの、ほんま
「無論だ──」
左膝を立て右脚を倒した、片膝立ちの体勢だ。
「あんたのその、屁のツッパリみたいな、えぇ度胸、嫌いちゃうで」
とは言え、真冬の元へ早く行きたいと、そうした焦りもあるため、出来る限り早急に勝負を着けたかった。
「何やったかな、それ、ん~」
ギョンドを左手で指差し小首を傾げ、悩む仕草を演じた。
「そうや、あれ……」
言葉はまだ続く筈だったが、そこでチーヨーに遮られた。
チーヨーとの彼我の距離は凡そ3mになる。
その距離から、何かが空を裂いて襲いかかって来たのだ。
咄嗟に下がる。
不揃いの前髪が切られた。
一層不揃いになった。
髪が舞って、すぐにハラリと落ちていった。
不揃いなのは、あくまでファッションの一環なのだ。
決して無精した髪型では無いから、変に切られたせいで髪型としての不揃い感が失われてしまった。
戦闘中に考える事では無いがリョウガはかなりの苛立ちを覚えた。
「ちょ、なんやねん、ふざけんな」
そこで、一瞬空気を裂いた音が耳に届くと、眼前に有ったのは
その手型は鎖と繋がり、チーヨーに操作されている。
「迦陵頻伽ぁ、こっちは本物の鋼鉄の爪だ!お前の爪がこいつに勝てるか!?」
生きた蛇が襲いかかる様に、鎖がうねり、死角を衝いて縦横無尽に爪が切りつけて来る。
リョウガは飛抓を蹴った。
一瞬だけ動作は止まったが、先端の爪が僅かに左足首辺りのタイツの生地に引っ掛かり、裂いてしまう。
「ちょ、待って待って、許して、たんまや」
リョウガは手を振って静止を頼むが、チーヨーは聞き入れず、タイツの踵辺りまでを完全に引き裂いた。
「左足が裸足になってまうやん!」
リョウガは頬を朱に染め、恥ずかしげに怒鳴る。
戦闘中にする抗議ではない。
リョウガは深く息を吐いて、またも手の甲を向けて指の先端を揃えた。
飛抓の攻撃範囲はかなり広い。
近付くのも困難だろう。
──横薙ぎ
左右に往復し、リョウガの胴体を斬り付ける。
「鎖勁毒蝮」
突然、左斜めに跳ね上がり、振り下ろされた。
眩惑する様な動きを鎖は見せ、爪が更に右横に薙ぎられた。
リョウガは、左上腕で飛抓の横薙ぎを弾く。
そして、鎖を掴んだ。
その時だ。
床に亀裂が生じた。
「な、何!?」
チーヨーが叫ぶと、床が亀裂と共に巨大な爆発音染みた轟音を鳴らしたのだ。
リョウガの左足が上がる。
その足元の床が抉られていた。
驚愕するチーヨーだったが、リョウガの左足、その足裏に瓦礫となった床の塊が吸着していることに気付く。
その塊は、さっき靴を足で投げたような要領で脚を振り抜き、鎖へと投げられた。
リョウガは掴んでいた鎖を離し、一気に距離を詰める。
塊が直撃し、繊細な操作が必要な鎖の動作が乱れた。
その隙にリョウガは、距離を詰めるや、同時にチーヨーの腹へ左足を押し付けた。
「空足や」
衣服の布越しでも、チーヨーは腹筋がリョウガの足裏に吸い付かれる痛みを感じた。
空掌と同じだ。
リョウガは、足裏と腹筋の間に真空を発生させ、吸着したのだ。
床を砕いたのも、この空足の技術によるものだ。
空足を使うには裸足でなければいけない。
当然、スニーカーなど履いていたら、靴底が邪魔をする。
タイツの生地くらいなら問題無いかも知れないが、相手も衣服を身に付けているため、それらの生地が邪魔をして確実性は大きく下がってしまう。
故に、靴を脱ぎ、敢えてタイツを破らせたのだ。
手の甲を見せたのは、ギョンドが最初に考えた通り、何かの技なのかと混乱させ、手へと集中させるために行った物だ。
タイツを破られたのも態となら、その際に静止を願ったのも演技である。
恥ずかしげに頬を染めたのも、そうだ。
あの真冬の姿をチーヨーも見ている。
そうした状況なら多少の色仕掛けで、集中を奪えると踏んでいた。
効果があったのか無かったのかは不明だが、終始、空足を狙っているとは全く気付かれ無い事には成功したと言える。
リョウガは、左足を引く。
空掌であれ、空足であれ、吸着した状態で引くとギョンドの腹や床の様に抉り取る事が出来るのだ。
しかし──
引けなかった。
チーヨーの皮膚と肉の強度が異様に高い。
ラブホテルの床を砕ける空足で抉れない硬度である。
「な、え、なんやッ!?」
逆に、硬すぎる肉に吸着した空足が災いした。
逃げられ無い。
「迦陵頻伽ぁ!!」
チーヨーはリョウガの左足を掴む。
凄まじい握力で、ギリギリと絞めあげた。
「勁師の硬気功を侮ったな、迦陵頻伽ぁッ!」
踏みつける様に足を上げているため、リョウガの脚は大きく開いていた。
膝上丈のプリーツスカートから覗く、白いタイツを履いている股間部へと、チーヨーは中指の第二関節を高く突き出し握りしめた拳を撃ち込んだ。
空足により吸着しており、更に足首を掴まえられ、リョウガは躱す事さえ出来無い。
一本拳はリョウガの陰部にめり込み、そのインパクトの瞬間、駄目押しの寸勁を放った。
膣口内に衝撃が伝わり、身体、内部に勁の波紋が広がっていく。
リョウガの身体が激しく痙攣すると、失禁と共にその場に崩れていく。
そして、白いタイツが、じわりと滲み出た朱色へと徐々に染まっていくのだった──
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