範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
神室町の玄関口と言われる神室町一番街ゲート。
一番街ゲートを起点とし、神室町一番通りを北に進み泰平通りから更に北へ進むと繋がる、劇場前通りに存在している広大な空間──
神室町劇場前広場──
神室イルミネーションシアターや神室劇場ニュー天宝シネマ、神室シアターなどの劇場が入ったビルが付近に集まっていることから、そこは、劇場前広場と呼ばれている。
劇場前広場を中心に、ゲームセンターやボーリング場、パチスロ、ネットカフェと言った遊び場が存在し、老若男女関係無く賑わいを見せる。
ゲームセンターでは、小学生に人気があるメスキングの筐体が稼働しているため、時間帯によっては子供の姿もあった。
雑多な人混みとなる劇場前広場を、大勢が往来する中、一際目立つ人物が居た。
例えば、天宝シネマで上映されている映画に出演するような俳優などの有名人と言う訳でも無い。
昨今、一番通りに進出してきたホストクラブで働く、見目麗しい男でもない。
代紋を身に付けていないので、暴力団関係者では無さそうだが、そこを歩く、そんなごく普通の行動をしているだけで、多くの人に只ならぬ印象を抱かせるのだ。
──超重戦車
Ⅷ号戦車マウスが人の姿を成して現代に生きている。
そんな威圧と恐怖を伴う、恐ろしい戦力を想像させる男だった。
口の悪い若者は人間ドラム缶等と揶揄している、そんな巨体を誇っている。
ホッキョクグマにベアハッグをされても耐え、逆にベアハッグで絞め殺してしまうであろう、分厚い筋肉を搭載した身体と卓越した筋力を携えた両腕。
当然、脚も太い。
強靭な足腰は、十数人もの屈強なラガーマンが押し拉しごうとも、根を張り巡らせた巨木の如く微動だにしないだろう。
分厚い胸筋と腹筋は鎧であり、軽機関銃や散弾銃の弾丸、小型ナイフ程度なら肉の表層で弾き、本気で硬めたなら対物ライフルの徹甲弾をもってしても内蔵まで達する事は無い筈だ。
184cm125kg
体格に恵まれている。
そして、彼はまだまだ成長期なのだ。
年齢は11歳。
少年……と言うより、まだ児童である。
この巨躯が、昼間はランドセルを背負い小学校に通う小学生だとは、俄には信じられないが、嘘ではない。
小学生の間は足が速いとモテると言うが、この少年には当てはまらない。
100mを9秒強、200mを18秒弱で走り、未来のウィルバー・ボルトと期待されても不思議ではない尋常ならざる脚力は、却って同学年女子に気味悪がられているのだ。
見た目の厳つさも相まっての事だろう。
昨今の小学生では珍しい丸坊主、イースター島のモアイの様な顔、小学生女児には肥満に見える体躯が災いしていた。
丸坊主の頭にはバンダナ。
白いTシャツと上下の薄茶色のジャージを着て、革靴を履いている。
足腰の鍛練と蹴りの威力強化を考え、靴底は鉄板で補強し、爪先には鉄の重りを仕込んでいる。
凡そ5kgの革靴だ。
左右で計10kg。
因みに、100m9秒強はこの靴を履いた上での走力だ。
もし、まともな運動靴を履き測定すると、果たしてどれほどの記録が生まれるのか。
1988年の神室町で恐れられたカツアゲくん江頭の息子だ。
彼が真っ当なスポーツマンなら、日本のスポーツ業界は非常に明るいが、彼の興味はスポーツには向けられない。
父と同様に世界最強の生物を目指し、毎日カツアゲに明け暮れているのだ。
そして、付いた渾名が、カツアゲ坊主である。
カツアゲくんを知る者知らない者関係無く、自然にそう呼ばれる様になっていた。
最近は、喧嘩師『花山薫』、謎のゴスロリ幼女『當之真冬』と喧嘩し連敗の憂き目に遭った事から、殊更喧嘩とカツアゲに明け暮れ、身体を鍛えている。
彼にとって花山薫は越えるべき壁だ。
生まれながらの強者である花山薫は鍛える事を恥とする。
剛志もまた生まれもっての強者だ。
しかし、鍛える。
強者に生まれたなら、鍛え上げて世界最強の生物を目指す事が、その身を与えてくれた神と父への感謝の証となると考えたからだ。
だが、花山薫のそうした美学を否定している訳ではない。
否定しているなら、壁だとは思うまい。
そのカツアゲ坊主、江頭剛志が向かうのは、イルミネーションシアタービル地下で営業しているクラブ『デボラ』だ。
デボラには、カラーギャング『ブラッディアイ』が屯している。
彼らに喧嘩を吹っ掛け、カツアゲすることが目的だった。
今夜は、公園前通りでカツアゲをしていた豪腕男と呼ばれ恐れられている男と戦い、カツアゲしてきた。
それだけだと食い足りなく、半端に食べると却って空腹になるように、更なる喧嘩自慢を喰いたくなったのだ。
そうした思考は、彼が目指す最強の生物と言う称号……既にそう呼ばれている男──範馬勇次郎とよく似た物だった。
目的となるのは、ブラッディアイの赤井兄弟だ。
カラーギャングの中でも喧嘩自慢であり、今の時間帯だと、概ね居場所が固定されている連中なのだ。
その為、喧嘩を売りやすい。
デボラに続く階段を降りていく。
連中が居るのはVIPルームだ。
ダンスホールのカウンターに居るマスターらしきスキンヘッドの男の元まで歩を進めた。
このスキンヘッドも中々やりそうだと、剛志は推考する──剛志や花山と比較しても、見劣りしない体格の持ち主だ。
「赤井兄弟、居るか?」
「……ガキは寝る時間だぜ、帰りな」
マスターがそう返答すると、剛志は嗤った。
自分がガキだと見抜いている、こんな大人はそうそう居ない。
ついでに、マスターも喰っていくか。
いや、このオッサンは『つまみ食い』で済ませて良いレベルじゃない。
花山薫程では無いが、真冬くらいにはご馳走だろう。
剛志の脳裏を過るのは二人の強者の顔だ。
このマスターの戦力は、その水準に達していると評価したのだ。
「赤井兄弟が居ないなら、あんたでも良いよ」
暫し、沈黙。
二人の周囲に漂う緊張感が、一般の客にも伝播し、近くにいた複数人は理由も分からず、本能的な恐怖に飲まれ震えだしていた。
だが、緊張感を破る様に上階から一人の男が、落下してきた。
ただでさえ、正体不明の恐怖に晒されていた者達は突然の事故か事件に悲鳴を上げた。
「あ……?何だ」
「VIP席か……お前が言ってた赤井兄弟のブラッディアイに所属してる連中が何かやらかしてるな……」
「上か」
剛志はマスターの返答を待たず、階段へ走った。
その先に上がると、乱闘の真っ最中だった。
計十七人に囲まれながらも、ホストらしき男はたった一人で立ち回っている──それは、剛志にとって非常に興味深く面白い光景だった。
小柄な男と太った巨漢もいる。
あいつらが赤井兄弟だ──聞いた通りの容姿に、剛志はすぐに察することが出来た。
そして、ホストが発した言葉に剛志は反応した。
そのホストは、真冬ちゃんが捕まっている倉庫を教えろ、確かにそう叫んだからだ。
捕まっている?真冬が?真冬ってあの真冬か?
「おい、何の話だ」
剛志は、ホストを殴っているカラーギャングの腕を捕ると引き寄せ、顔面を掴むとそのまま持ち上げ、ギャングの後頭部を床にぶつけた。
スターダストのホスト『ユウヤ』と、カツアゲ坊主『江頭剛志』の邂逅だった。
現在、デボラで
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い