範馬道 神室町の蜚蠊幼女(ヤマトゴスロリ) 作:贋海王
イルミネーションシアタービル地下にあるクラブ『デボラ』には、用心棒斡旋所と言う裏の顔が隠されている。
個人や店舗に派遣しそれらを護衛──と言った一般的な用心棒をイメージする仕事もあれば、厄介事の解決等の仕事にも携わる。
特に荒事が想定され、警察や探偵の介入が難しい案件が対象とされる。
神室町の様な、裏社会の人間が犇めき、欲望が渦巻く街には彼らの力を必要とする者が大勢居るのだ。
依頼があれば、神室町に限らず関西の蒼天堀などにも出張し、問題解決に努める。
こうした仕事の後ろ楯には東城会風間組がついており、風間新太郎亡き後は現在の東城会若頭代行の『柏木修』が引き継いでいる。
その柏木修が作った『堅生会』と言う組織がある。
堅生会は、極道組織である風間組とは関係無く作られた、元ヤクザの社会復帰を支援する組織だ。
ヤクザ稼業から足を洗うも行き場が無い彼らへ新たな職業に就かせる為の訓練や職の斡旋を行っている。
その中の職業の一つとして、デボラへ用心棒の派遣をしているのだ。
真冬がデボラの用心棒登録をしたあの夜、柏木は娘の翠をデボラに連れて来ていた。
神室町らしさを肌で感じられる遊び場に行きたいとせがまれたとは言え、幼い娘をクラブに連れて行くのはどうかと思われるが、面識があるこの店なら、ある程度の健全さと安全さを確保出来ると考慮した結果だった。
翠が、真冬と再会出来た幸運、それは柏木とデボラに繋がりがあった為だ。
──そしてそれは、真冬にとっての幸運でもあった。
柏木は眉を顰め、受話器から聞こえる娘の悲痛な叫びを聞いていた。
彼は現在、ミレニアムタワー内に移された風間組の事務所にて、翠から彼女の友人である真冬の危機的状況を知らされ、必死の嘆願を受けている途中だった。
柏木は東城会直系二代目風間組の組長である。
故に、今回翠が縋って来る事件の解決に対して、彼が表立って動く訳にはいかないのだ。
源王会──が、背後にある。
七代目源王会は全国極道の一本化を大義名分に掲げ、勢力を伸ばし続けている極道組織だ。
源王会は関西近江連合と盃を交わし、築かれたその一大勢力は、東城会にとっても無視など出来ない存在感を醸し出している相手なのだ。
近江連合が背後にいる以上、現在の東城会が源王会と争う訳にはいかない。
源王会を火種に、東西極道の全面戦争になりかねないのだ。
そして、それは近江連合と源王会の思惑通りに進んでしまうだろう。
柏木にしてみたら、娘の友人とは言え真冬など縁も所縁も無い少女である。
直系組長である自分が動く事で生じる危険性に、東城会を晒す訳にはいかないのだ。
──翠の悲痛な叫びが、いつしか嗚咽となって聞こえてくる。
「……翠、一応言っとくが最悪諦めろ」
柏木の目には、今更、救出したとしても手遅れだと映っていた。
パソコンのモニターに出力されている、今も拡散が続き増え続ける動画や画像。
時間軸は分からない。
だが、どれだけ犯され傷付けられているか、把握出来ない。
既に精神が破壊されていてもおかしく無いだろう。
実際、翠にはもう画像や動画を観るなと言っている。
歴戦の極道である柏木が、あまりの凄惨さと悍ましい行為に何度も
──今しがた流れて来た動画の、巨漢に押さえ込まれ血塗れとなっている膣口に蜚蠊を捩じ込まれ、泣き叫ぶ真冬の声が、まるで反響しているかの様に未だ耳に残り続けている。
膣口で潰された蜚蠊の破片や体液を、陰核や小陰唇へと塗り込むように擦りつけ、泣き叫ぶ口へ強引に陰茎を捩じ込む動画。
柏木は気付いたが、口腔を強制的に犯す為か、前歯が砕かれている様だった。
「翠には絶対に見せちゃいけねぇな……」
柏木は忌々しげに心の内で呟いた。
年格好は、昨年、桐生が連れていた少女と同じくらいか。
翠だけじゃなく、こんな映像は桐生にも見せられんと柏木は考えた。
──あいつなら、源王会が背後にいても関係無く殴りに行くだろう、とも思ってしまうが。
二年前、翠は源王会に攫われる寸前だったと聞いている。
それが実行されていたら、翠もこの様な姿になっていた可能性が高いのだ。
眉間を押さえ、込み上げる疲れを流す様に息を吐いた。
──そして、その誘拐を阻んだのが、真冬である。
柏木は、真冬が囚われている、この“倉庫”を知っている。
源王会のシノギに利用される場所だ。
だが、柏木もこの倉庫で調教された少女が、政界と警視庁に太いパイプで近江連合と繋げる代議士『竹内政信』に宛がわれる事までは知らない。
柏木が想像できる真冬の末路は、解体され臓器が台湾黒社会に流れる──と言う物だった。
もし助け出しても真冬に待っているのは生き地獄だ。
身体面も精神面でも恐ろしい後遺症が残るだろう。
あれだけ犯されていたら、幼いとは言え身籠っている可能性が高い。
しかも、インターネットにあれだけのレイプ行為が拡散されてしまっている。
助け出し、下手に生き残るよりも、違法な臓器売買の被害者として死んだ方が楽だろう。
──娘がそうなっていたらどう考えただろう。
自問する柏木だが、答えは直ぐに出た。
恐らく、そうだとしても、安らかな死を願う筈だ。
今の苦しみは、そう長く続かない。
だが、生き残れば何十年も苦しみ続けるのだ。
助け出すことが正解なのか判断が難しい。
「……組、動かして真冬を助ける事は出来ない……が、出来る限り働きかける。詳しくは言えねぇが、こうした要件に適した連中にな」
そして、翠の返事を待たず、柏木は受話器を置いた。
1. ユウヤと剛志とリチャード
リチャード・フィルスが二階のVIPルーム席へ上がると、そこでは、怒号と喧騒、人や物が飛び交っていた。
人が飛ぶ──
それは比喩では無い。
本当に宙を舞っていたのだが、無論、彼の意思によって行われている物ではない。
かなり鍛えられた体躯の持ち主だ。
180cm105kg
何らかのスポーツや、格闘技を嗜んでいることは明白な筋量である。
そんな男が、片腕で持ち上げられ、無造作に投げ飛ばされていた。
投げ飛ばしたのは、丸坊主の巨漢だ。
リチャードはこの丸坊主の巨漢を知っている。
先程マスターと話していた人物。
神室町で最近、良くも悪くもその名前を耳にする様になった。
江頭剛志……カツアゲ坊主だ。
剛志に投げられた男は数m飛び、壁にぶち当たる。
男が衝突したその壁は陥没していた。
その様子を目の当たりにすると、シカゴで負け無しの用心棒リチャードと言えども、流石に寒気を覚えたのだった。
乱闘の様相を呈しているこの場で、中心となっているのは剛志ともう一人、ホストのユウヤである。
彼らは仲間では無い様だが、このVIPルームの主であるカラーギャング『ブラッディアイ』を共通の敵として認識しているらしく、彼らはブラッディアイのメンバー、そしてリーダーの赤井兄弟のみを標的としている。
硝子瓶で殴りつけられながらもユウヤは反撃する。
割れた硝子瓶の破片が散らばり、それがユウヤとカラーギャング両方に降り注ぐ。
そして、どこからか投げられたテーブルが、硝子片を払うユウヤの一瞬の虚をついたのか、後頭部へと直撃した。
だが、ユウヤは倒れない。
声を張り上げ、目の前にいる割れた硝子瓶を持った男を殴り付けた。
リチャードの本来の仕事は、酔客同士の乱闘を止める事だ。
今回は、酔客ではないが、喧嘩目的でやって来た剛志の鎮圧である。
ブラッディアイの連中は、正直な所、クラブとしてのデボラの売上げ面では優良顧客だろう。
だが、カラーギャングである。
治安の上ではデボラのイメージを悪くする客でもあった。
とは言え、マスターやリチャードに取ったら所詮はガキの集まりでしかない為に好きにやらせていた。
だが、あのホストは何者だ。
しかし、その疑問は直ぐに解けた。
真冬の名前を出したからだ。
赤井兄弟に真冬の居場所を問うている。
「よし、分かった。お前は客の様だな」
剛志の方は今後の出方次第だが、ユウヤは客だ。
デボラの後ろ盾となる風間組の柏木修、そして賽の河原からの依頼に関係する男だと、リチャードは判断した。
「お前は休んでな、真冬を助けるんだろう?」
「え?あんた、真冬ちゃんを知ってんのか!?」
ユウヤの隣で脚を止め、近くのブラッディアイメンバーを殴り飛ばす。
その一撃で、その男の肋骨が粉砕される恐ろしい音が響いた。
「知っている、そして俺も真冬救出に動くつもりだ」
ブラッディアイのメンバーが二人係りでリチャードを金属バットで殴打した。
一人は腹を打ち抜き、一人は後頭部に振り下ろしたのだ。
完全に殺すつもりの一撃である。
だが、リチャードは笑い微動だにしない。
二人のメンバーは自身の手の内にある金属バットを見るや悲鳴を上げた。
打ち付けた金属バットが曲がっているのだ。
リチャードは右腕で背後のバット、左手で前方のバットを掴む。
そして振り回した。
男達は体勢を崩してしまう。
その刹那、リチャードの拳が前方の男の顔面に叩き込まれた。
リチャードのストレートは、男の歯を砕き、顎の関節さえ破壊したのだった。
「カツアゲ坊主、お前も真冬を知ってるなら話を聞け。そこの二人より遥かにヤバい連中との喧嘩が待ってるぜ」
赤井兄弟二人を指差し、リチャードは剛志に笑いかけた。
「……何の話しだ、聞かせろ」
と言いつつ、剛志は赤井弟の首を後頭部から腕を回し、絡め、絞めつける。
そして体勢が下がった赤井弟の顔面に膝蹴りを打ち込み、一瞬僅かに離れると、仰向けに倒れていく彼の首に向けてラリアットを放ったのだった。
『仕切り直し、没ネタエピソード』は削除し、残骸置場に入れた方が良いですか?
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そのままで良い
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残骸置場行きが良い