性欲魔神の天才ゲス剣士と、最強魔力な美女魔王のえっちな二人旅 作:遊野優矢
闘技大会の予選当日。
予選だというのに、闘技場には多くの観客がつめかけていた。
円形の舞台をぐるりと囲むように観客席が配置されたオーソドックスな造りである。
賭博も盛んらしく、そこかしこで勝敗の予想がされている。
そんな中、ヴァルガの1回戦が始まる。
「新顔だな。そんなでかい武器を持ち出すなんざぁ素人丸出しだなあ! そんなんじゃこのガイ様には勝てないぜ!」
トーナメント初戦の相手は、ショートソードとスモールシールドを持った若い男だった。
たしかに相手を殺してはいけないというルール上、大型の武器は威力過剰で扱いにくいというのが通説になるだろう。
「そいつはどうかな?」
しかし、ヴァルガは余裕たっぷり、挑発するようににやついてみせる。
「はじめ!」
審判の掛け声とともにガイがつっこんで来た。
盾で牽制しながら、ショートソードを素早く繰り出す。
「おらああああ!」
「ほう、なかなかやるじゃないか」
ヴァルガは次々に振り下ろされる斬撃を、軽々と避ける。
「ちっ! すばしこいやつだ。その大剣は飾りかよ!」
「そーだそーだ! 戦えー!」
「やっちまえガイー! 今週こそ優勝しろよ! 万年2位!」
ガイの言葉に呼応するようにヤジが飛ぶ。
コイツで2位というなら、ヴァルガにとっては優勝など簡単だろう。
もっともこのガイとて、そこらの街なら一番の腕前と呼ばれてもおかしくない強さではあるが。
「やれやれ、すぐ終わってもつまらんだろうに」
「はん! でけえのは口だけかよ!」
ガイは調子にのって攻めてくる。
「相手の実力を見抜くのも能力のうちだぜ?」
ヴァルガはガイの斬撃を大剣で受けると、そのままショートソードを絡めとった。
宙に舞うショートソード。
ヴァルガはスキだらけになったガイの側頭部を大剣の柄でどつく!
「なっ!? 速っ……」
ガイはその場にくたりと昏倒した。
「な……なんというあっけない幕切れ! ヴァルガ選手の勝利でーす!」
審判のコールとともに、会場がざわついた。
「な、なんだいまの……」
「ラッキーか?」
「いや、かなりの実力者だぜありゃあ……」
「おい! あいつに賭けろ! 名前は……ヴァルガだな! よし!」
騒ぐ観衆を尻目に、ヴァルガは悠々と勝ち進み、翌日の決勝へとコマを進めた。
決勝進出を決めたヴァルガは、酒場で酒をたのしんでいた。
「あなた、強いのね」
そう言いながら勝手にヴァルガの向かいに座ったのは、踊り子風の衣装に身を包んだ美しい女だった。
腰まである長い赤髪、ぎりぎりまで露出された大きな胸、きりりとした切れ長の目。
ヴァルガが今夜抱きたい女に認定したのは一瞬だった。
「どう? 一緒に飲まない?」
「あんたみたいな美人なら大歓迎だ」
「ふふ……嬉しいわ。一杯おごぅちゃう。マスター!」
女の名前はマナリスと言った。
ヴァルガのファンかのように近づいてきた彼女だが、カスミの情報にあった優勝候補と人相がそっくりだ。
なにより、有力な新人にこうして近づいて来ることも、カスミの情報通りである。
(カスミにはこんどサービスしてやるとするか。しっかり気持ちよくしてやろう)
ジョッキになみなみ注がれたエールがテーブルに運ばれてきた。
「それじゃあかんぱーい!」
マナリスはどこか妖艶ながらも人懐こい笑みでジョッキを掲げた。
ヴァルガもそれに応え、ジョッキを豪快にぶつけあった。
――お主、この酒には……。
(クスリが入ってるんだろ?)
――くっくっく。わかってるなら何も言うまい。
クロエの声はどこか楽しそうだ。
ヴァルガがなにかたくらんでいることをわかっているのだろう。
クスリを盛られていることがわかっていながら、ヴァルガはジョッキを豪快に煽った。
「ステキ! 飲みっぷりのいい男の人って好きよ」
マナリスは手を叩いて喜んでいる。
そのたび、大きな胸がぷるぷると揺れた。
一方、ヴァルガは自分の脳に睡眠薬がまわって来るのを感じていた。
毒物への耐性は鍛えてあるが、こうも強い睡眠薬をアルコールとともにガブガブ飲めば眠りに落ちるのは避けられない。
全身から力が抜け、まぶたが重くなる。
(クロエ、監視を頼むぞ。ヤバくなったら出てくれ)
――おや、妾頼りかえ。
(ギリギリまで出なくていい……か……ら……)
そこでヴァルガの意識は途絶えた。
8月9日から14日までの短期集中連載です。
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