血高の人々 作:スロット767
「ね、ねえ親指姫、やっぱりやめた方が……」
「はぁ!?ここまで来といて、怖気付かないでよ……!今更……」
夕焼けのオレンジが差し込む体育倉庫。私立血式学園高等学校の生徒であるジャックと親指姫は、小さな声で言い争う。
「わざわざ練習こっそり抜けてきたのよ?このまま私をのこのこ帰らせるって言うの!?」
「だ、だってバレたらまずいよ……!」
「アンタも行こうって言ったじゃない!?アンタ私の彼氏の自覚あるの!?」
「か、彼氏ではあるけど……家に帰ってからでも……その、できるんじゃ……?」
「言い訳しない!私の家には妹たちが居るの!アンタの家も
ジャックはそれを聞いて、何か嫌なところを突かれたかのように苦笑いした。以前もジャックの部屋にて、二人がイチャつこうとした刹那、彼女の乱入により一時中止となった前例がある。
それを教訓に、二人はなるべく色々な所と時間で会うようにしていた。折角付き合っているのに、ごめんねとジャックが謝った事もあった。気にしないでとキスで返したのを思い出し、親指姫は彼女の髪の色のように顔を赤くする。
「そ、それに私は、今したいって言ってるの!分かったら早くするわよ、アンタの言うとおり、誰か来ちゃったらまずいもの」
それならやっぱりやらない方がいいんじゃ……ジャックは喉元まで出かかった言葉を飲み込み、ゆっくりと頷いた。
もう、後戻りは出来ない。不法侵入を繰り返す幼馴染や、風紀を破壊する風紀委員、学園の(自称)番長などの個性豊かな友人達と比べれば、ジャックはかなり真面目な生徒。しかし今、彼と彼女が行おうとしているのはれっきとした不純異性交遊。その背徳が、心拍数を不必要に上げて行く。
「じ、じゃあ、脱がす……ね」
「うん………………は、早くしなさい!」
そう言って、腕を天に伸ばした親指姫。ジャックは彼女の体操服に手を掛け、布擦れの音を立ててそれを脱がせる。起伏のない胸元を、派手さのないブラが覆っているのが目に入り、彼は一瞬、固まってしまう。
「……ちょっと、ジロジロ見ないでよ。恥ずかしいから……」
「あっ、ご、ごめん……その、凄く綺麗だなって、見惚れちゃってて……」
「みっ、みみみみっ、見惚れてた!?まだ上一枚脱いだだけよ!?これから見る以上の事もするのよ!?大体そもそも前から思ってたけど、私の身体でそんなに興奮するって、アンタ実はド変態なんじゃないの!!?」
ジャックは当然褒めたつもりだったのだが、そこは素直さに欠ける親指姫。頭の処理速度が追いつかず、口をパクパクさせて思ってる事と思ってもない事をまくし立てる。
「こ、声が大きいよ親指姫。それに僕、変態じゃないよ……多分」
慌てて親指姫が口を押さえ、辺りを見回す。幸い外からはボールの弾む音と生徒の掛け声だけが聞こえ、自分たちの事は気づかれていないとホッと一息。
「僕が見惚れてたのは……その……胸が小さいからとかじゃなくて……」
「胸が小さいですって!?」
「ご、ごめん間違えた!君の……好きな子の身体だから、見惚れてたっていうか……」
親指姫の振り上げた拳が落ちる前に、ジャックが言う。
「付き合ってるんだから当たり前だけど、僕は親指姫の事が好きなんだ。胸が大きいとか小さいとかじゃなくて、親指姫の事が……大好きだから、見惚れてた」
「ふ、ふぅん……」
真剣なジャックの眼差しに、彼女の口角がぐぐっと上がる。
彼女と言う立場から贔屓目が入っている事は重々承知の上で、ジャックは素敵な男性だと親指姫は思っている。自分には不釣り合いだと、時々頭をよぎるくらいに。
そんな彼が自分の事を、大好きだと言ってくれる。この二人きりの体育倉庫で、自分のためだけに向けられた言葉。親指姫は、もう我慢の限界だった。
「ジャック……!」
「わっ!?」
ジャックに抱きつき、そのままマットを下敷きに押し倒す形になる。二人の顔はお互いの脈動を感じられるほどに近くなり、そのまま数秒見つめ合う。
(ジャック、照れてるし心臓ドキドキいってる……可愛い……)
(親指姫、今日は何か……いつもより可愛い……?)
そしてどちらからともなく、若い唇を重ねた。呼吸すらも止め、ただ互いの事を。感触を、味を、匂いを、漏れ出る声を。そして何より愛を感じ、貪るようでいてしかし抱きしめるようなキスが、二人に時間を忘れさせる。
「んぁ……ジャック……ね、早く……」
「う、うん……」
親指姫に急かされるように、ジャックはベルトを緩め、ホックを外す。
(パンツの上からでも分かる……ジャック、凄く興奮してる……私も、だけど……)
「お、親指姫?そんなにジロジロ見られると、その……ちょっと恥ずかしいな……」
ジャックそう指摘され、慌てて目を逸らそうとした。しかし、彼女は彼を改めて見つめ、勇気を振り絞る。
「み、見ちゃうわよ……私だってジャックの事……だ、だい…………大好きなんだから……!」
そう彼女が言うと、
(ジャックの腕、私より全然太くて……中身詰まってる感じがする……やっぱり、男の子なんだ……)
「親指姫、僕ももう、我慢できない……君と一緒……」
「うん……もう挿入られるから……すぐ来て……」
スルリと下着が降ろされ、ある意味ではグロテスクな、そう人畜無害な彼の物とは到底思えないようなブツが、外気に触れる。猛りを抑えきれないといった風に、先からは無色透明の液体が漏れ出し、今にも“そこ”に入り込みたいと、無言のアピールをしているよう。
そして親指姫も、自らの秘部を何のためらいもなく曝け出す。それは信頼の証であると同時に、幾度となく身体を重ねた故の慣れでもあった。
「ふぁっ……ああっ……!ジャック……っ!」
じゅぶ……という音を立てて、硬い肉の塔が彼女の割れ目にめり込んで行く。ベッドの上や風呂場といった場所ではなく、古びた匂いのする体育マットの上で始まった行為。この状況にロマンチックさは本来かけらもないはずだが、愛しい人が大好きと言ってくれて、愛しい人に大好きと言えた。それを思えば、その場の雰囲気などは最早どうでも良かった。
「んぃ……ジャックの、中ですっごく熱くて……嬉しそうなのわかる……」
「そりゃあ……嬉しいよ。だって大好きな人と……繋がれてるんだから」
「っ!?ま、またアンタはそうやって……」
「……そうやって?」
親指姫は額に汗を滲ませながら、ぼそっと呟く。
「……私が恥ずかしくなっちゃうくらい嬉しい言葉、すらすら言えるのよ……」
「……嬉しいんだ?」
「えっ……?そ、そうよ、何?悪い!?」
わざと煽るような言い方をしたジャックに、親指姫は驚いて、怒る。いつもなら慌てて謝る彼だが、今の彼は凄く余裕のあるような、まるで全てを見透かしているような笑みを浮かべて、おもむろに腰を動かす。
「あひっ!?ちょ……いきなりぃ……!」
ぬちゃぬちゃと粘膜が擦れる淫猥な音が、倉庫に小さく響く。親指姫の小さな膣内が、交互に訪れる掻き分けられる感触と、削られるような感触に快感の悲鳴を上げる。
元から少ない彼女の余裕が、肉棒の一往復する度、更に失われてゆく。腹部が圧迫され苦しいはずなのに、その苦しさも気持ちいいと感じている自分に、彼女はまだ気づいていない。
「親指姫……キスしてもいい?」
「いんっ……こんなっ……状況でっ、何聞いてる、あひいっ?!あっ、ああっダメぇッ!!?」
「えっ?」
身体を弓なりに反らせて、震えるように身体を痙攣させる親指姫。絶頂を迎えた事は誰の目にも明らかであったが、それ以上にジャックを驚かせたのは、結合部から染み出してくる温もりの方だった。
「あ、ああ……や、やめて見ないでジャック……」
彼女は顔を完全に覆い、恥ずかしさ以外の感情を一時的に失っているようにすら見える。そうこうしている間にもマットは少しずつ濡れて行き、微かに鼻をつくつんとした臭いで、ジャックは自分の性器にかかっているものの正体を知る。
「親指姫……」
驚く程しおらしく、弱々しい彼女の姿。普段の強気で、凛とした、ツンツンデレツンな彼女からは程遠い。しかし、その小さな身体と顔を存分に悶えさせる彼女の姿に、ジャックの心ははまるでガソリンを撒かれたかのように燃え上がる。
「んっ、ぁ……ジャック、な、何か言ってよ……じゃないと私、恥ずかしくて死んじゃいそう……」
「……ごめんね」
「えっ?あぎっ!?やっ、やぁぁぁぁぁあっ!!」
肉と肉のぶつかる音が、再び生々しく奏でられる。僅かばかりとはいえ残っていた理性がついに消え去り、完全にケダモノと化したジャック。その猛りを一身に受け止め、言葉にならない喘ぎと悲鳴を上げる親指姫。
ともすればレイプにすら見えるような、一方的かつ激しい性行為は、二人にここが公共の場であるという事も忘れさせるほどに、彼らを夢中にさせていた。
「親指姫……」
「んゃぁ……んむぅ……ちゅ……ふむぅ……」
ジャックの強引な口付けを、親指姫は後も容易く受け入れる。彼女は惚けきった翡翠色の瞳を閉じると、外部からの刺激を断ち、唇に全ての神経を集中させる。
素直になれない事が悩みなのは、素直になった時の自分が怖いから。まさにそれを証明するかのように、親指姫は実に素直に、愚直に、ジャックへ愛を注ぎ、ジャックの愛を受け止めていた。
「んぅ……じゃっく……じゃっくぅ……!」
「れふ……親指、姫……」
甘えてもいい、いや今は徹底的に甘える時だと、心が告げる。自分の本心を曝け出し、彼に愛され愛す事が、今の自分の一番やりたい事で、一番幸せになれる事。力いっぱい彼の筋肉を抱きしめ、灼かれるような快感に悦びながら耐える。でないと、彼のことが好きになり過ぎてしまうと思ったから。
「親指姫、君のこと……好きだよ」
「わ、私も好きっ、大好きっ!んひっ!?」
どくんと肉棒が中で跳ね、それが打楽器のバチのように、親指姫に嬌声を上げさせる。普段なら恥ずかしい事この上ない筈が、この瞬間は、彼にいいようにされている自分が心地よい。
「親指姫……んんっ……!」
「ね、ジャックぅ……なかに、なかに出してぇ……!」
「う、うん、僕も……そうしたい……」
「んぁ……嬉しい……」
互いの惚けきった顔を見つめ、確かめるように笑い合う。心が満たされていくのを感じながら、行為もクライマックスへと向かう。
「少し……早めるよ」
「うん、いつでも……出して……んっ」
親指姫の小さな身体は、大きく反るような形状のジャックの一物を確かに受け止める。時に優しく、時に削るように激しく。二人の持つ雌雄の本能が、自然と快感を押し上げて行く。
「ぅっ、親指姫、行くよっ……!くぅっ……!」
「あんっ、来てっ、ジャックぅ……!あっ、あぁぁぁっう?!」
ジャックが一際深く肉棒を差し込むと同時に、濁流のような精液が、親指姫の膣内を暴れるように満たす。それに間を開けず、二度、三度と肉棒は跳ね、追加して精を吐き出す。その全てを、親指姫は逃すまいと受け入れる。
「ふぁ……あったかい……きもち、いいの……んぁっ、んん……」
息も切れ切れに、幸せそのものといった表情を浮かべる親指姫。ジュルリという湿った音と共に肉棒が引き抜かれ、切なげな吐息を漏らす親指姫。窓の鉄格子越しに射す夕陽が、彼女を淡く、儚く、扇情的に照らす。
「ごめん親指姫、もう一回だけ」
「えっ?あ、ちょっとジャック?んいぃぃっ!?!」
少し萎んでいた彼の物も、すぐに息を吹き返し、もう一度味わえと囁く。僅かな躊躇も無く、ジャックは白濁が垂れようとしていた彼女の割れ目目掛けて、乱暴に挿し込んだ。
「あっ、だめっ、イッたばっかりぃ……ひぅっ!?」
口ではそう言っていても、心は悦んでいる。その矛盾すら楽しむほど、今の親指姫はジャックに溺れている。
そして互いに若さを炸裂させ、二度目のクライマックスが訪れようとした、その時だった。
「あー、疲れたー!」
「「!?」」
「明日午後練で合ってるよね?」
「うん、午後午後。それよりもさー……」
重い扉が開く音と共に、騒がしい生徒たちの声が倉庫へ響き渡る。咄嗟にジャックが左手の腕時計を見ると、親指姫が彼を連れ出してから一時間以上が経過していた。
(ここに居たら……まずい!)
親指姫もその状況は把握しているようで、性の興奮とは違う、緊張と恐怖の鼓動が、密着させた胸元から伝わる。あっという間に熱が引いたジャックは、親指姫を抱えて倉庫の更に奥。年に一度使うかどうかといった道具が積まれている所の陰に、二人で身を潜める。
「ここなら……バレないよね?」
「い、挿れたまま言わないでよ、ばか……」
「……それは、ごめん」
それでも二人は繋がったまま、呼吸の音すらボリュームを下げてじっと身を寄せる。
「そーいえば、親指大丈夫かな?」
「体調悪いって保健室だっけ?彼氏が迎えに来てたよね」
「そうそう、A組のジャックくん。意外とあの子人気だよねー」
「優しそうだもんね。案外今頃、二人でイチャイチャしてたりして」
何の気なしに女子部員が発した言葉で、二人は凍ったように固まる。はいその通りですとは、心の中でも言えない。
「リア充すぎでしょ、それ。ん?」
「どしたー?」
「こんなとこにマット引いてたっけ?しかもなんか、変な匂いしない?」
再び、二人の血の気が引く。その上親指姫は、漏らした事が今更恥ずかしくなり顔を覆う。
「本当だ、まあ巻いてしまっとけば良いんじゃない?」
「じゃあ手伝って、早く帰ろ、もうクタクタ……」
「はいはい」
マットが手際良く片付けられ、親指姫はホッと胸を撫で下ろす。もし自分が漏らした事が知られたら、明日から学校に通えなくなってしまう。
「だ、大丈夫そうだね、親指姫……」
「う、うん……って、アンタ何こんな状況で、んっ、大きくしてんのよ!?」
ふと意識を彼の方に向けると、挿さったままの彼の肉棒は、明らかに臨戦態勢で、膣内のポイントを弱いながらも刺激していた。
「ご、ごめん……でも親指姫との距離、すごく近いから……」
彼の言う通り、人一人がやっと入るくらいのスペースに、小柄とは言え二人の男女が入っているのだ。二人の距離は紙一枚ほども無く、まさに密着状態。汗ばんでくる身体は、直ぐそこにチームメイトがいる事などお構い無し。
「ま、まさかアンタ、動くつもりじゃないでしょうね……?」
「僕は、う、動きたい……かも……」
「バカ……!あっ、ダメぇっ!?」
親指姫の制止を振り切って、ジャックはゆっくりながらも腰を動かす。大きな喘ぎ声を手で咄嗟に抑え、血走った目で背後のジャックを睨む。
「んーっ……!んんっ、んぃ……?!」
目に涙、額に脂汗を滲ませる親指姫の顔に、ジャックはどうしようもなく興奮してしまう。普段強気な彼女が見せる焦りや恐怖、悲しみといった弱い一面が、彼のジェノサイドな部分を刺激する。
(あっ、だめ、声止まらない……バレる、絶対バレちゃう……私の学校生活、終わっちゃう……!)
(親指姫、やっぱり怒ってるよね。でも……怒らせたいって、僕は思っちゃってるんだ、最低かもな……それでも今は……!)
ジャックはこの状況に不釣り合いな程の真剣な顔を見せ、親指姫の膣内を深く犯して行く。肉棒に伝わる快感に乗せられるように、彼の腰使いは次第に速くなる。そして嫌がるそぶりとは裏腹に、親指姫もじっと犯されるだけでは無かった。
「もぅ……ばかぁ……バカジャックぅ……」
「親指姫……腰、動いてるよ……」
「うっさい……!アンタの……それが、悪いのよ!」
「“それ”って何?言って欲しいな」
素面ならば思いつきもしないであろう台詞が、口を開く度に飛び出す。彼はちょっと悪いかなとよぎりつつも、親指姫の反応が可愛いのが悪いと自分に言い訳して、このとびっきりスリリングな非日常を楽しみ尽くそうとする。
「いっ……言わない……あぅっ、言ってやんない……!」
押し殺した怖い声で、親指姫はジャックを睨む。
「言って欲しいな」
「ぃぎ……!いわ……ないっ!」
「言って?」
「あんっ……!ジャ、ジャック……?」
親指姫の表情が、少しずつ怯えたものになって行く。影が顔中に伸びて、細かな表情は分からないが、彼の様子が、いつもの優しい彼氏のそれでない事は、下腹部から全身を揺すられていても、よく分かった。
「よし、これで全部と。終わった終わったー」
「誰もいないねー?鍵閉めるよー」
その時、どうやら片付けを終え出て行く部員達の声が耳に入り、親指姫は少し緊張の糸を緩める。
「よそ見しないでよ」
「はぅっ……!?ジャックっ、や、やめ……っ!?へぅっ!?」
バレずに済みそう、その考えをすり潰すように、ジャックは怖い程スムーズに彼女のブラを外し、胸の突起を弄る。不意打ちだったその責めに、親指姫は身体を反らして甲高い悲鳴を上げる。
「ん?」
「どうかした?」
「いや、なんか人の声がしたような……」
親指姫は体をこわばらせ、どうせ終わるのなら、二人一緒が良いと目の前の彼に抱き付く。ジャックは一瞬慌てた顔を見せてから、安らかな顔で彼女を背中から抱擁したが、そのどちらも、親指姫には見えていない。
「気のせいでしょ。そんなの良いから、早く帰ろう?」
「うーん、でも何か気になる……」
「この学校、幽霊出るらしいからそれじゃない?」
「あー、青い髪の女の子?」
「そう、すっごく足が速くて、昔失恋を苦に自殺した陸上部の子じゃないかって言われてるやつ」
「こわ〜、じゃあやっぱり、会わないうちに早く帰ろ!」
少し身に覚えのある噂話をしながら、二人の声は次第に小さくなって行く。そしてドシン、ガチャリという重そうな音が響き、体育倉庫は怖い程静かになる。
「た、助かった……の?」
「そ、そうみたい……?」
胸と胸が密着している為、互いのドキドキが手に取るように分かる。親指姫はゆっくりジャックから離れると、思い出したかのように彼に食ってかかる。
「てか、アンタ調子に乗りすぎ!やめてって言っても全然聞いてくれないし、挙句あんな状況で、私に何言わせようとしてんのよ!?」
「ご、ごめん!ちょっと調子に乗りすぎた!」
「反省してよ?ホントに……ホントに怖かったんだから……!」
「はい……」
さっきまでの力関係が逆転し、今にも正座して頭を下げそうなジャック。まさかそこまで凹むとは思わなかったのか、親指姫は下着と体操着の乱れを直しながら、フォローするように続ける。
「全く……あんな状況じゃ無けりゃ、そのくらい言ってあげるのに……」
「え?」
「……やっぱ無し、今の忘れて。忘れなさい。あっ、ちょっ、んむっ……!?」
冷たいコンクリートの床に親指姫は押し倒され、唇を奪われる。
「ぷは……この、ケダモノぉ……!」
「そっちこそ、このまま終わりたく無かった癖に」
今日一番不機嫌そうに言われたその言葉がその通りだったので、彼女は言い返せなかった。
「あっ……んんんぅぅ……!」
今日何度目か分からない挿入に、野良猫のような唸り声が出てしまう。先ほどとは違い、気をそらす要因が無いからこそ、吸い込まれるような快感がより身体の芯まで響く。
「親指姫……ちゅ……」
「ぁ、やぁ……胸はぁ……」
また顕になった乳頭を、ジャックは舌で転がすように遊ぶ。
「ダメっ、もうイッちゃう……!」
「いいよ、親指姫のイッてる顔も、可愛くて好きだから」
「何言ってんのよぉ……!この……バカ!」
「じゃあ……僕の事嫌い?」
「う、ううん、好き!そんなバカな所も、好きなのぉ!!」
「僕も、大好きだよ、っ!」
「んひぃ?!気持ちいいとこっ、つかれてっ、ジャック、ジャックっ!」
「親指姫っ……親指………姫!あぁっ!」
ドクンドクンと波打つような感触が、ジャックの全身を支配する。そして激しい抽送の弾みで、陰茎は穴からずるりと、多量の粘液を纏って抜け落ちる。遮るものが無くなった彼の肉棒は、沸騰しそうな程滾った精液を、湿った空気に向かってぶちまけた。
「んんーーっ!?ねゃ……ぁっ、熱いっ……!」
「うぁ………はぁっ、はぁっ……げほっ……!」
親指姫のはだけた胸、首元に寄せられた体操着、そして汗が溢れる顔にまで精液は侵食し、一本の白い道のように、彼女の小さな身体を染めていた。
「あぁぁぁぁ!ネバネバして……全然落ちない!」
夕日のオレンジが最も濃く、それに青さも混じってくる頃合い。残業の先生や熱心な部活生でまだ明かりが消えない校舎の隅の隅で、親指姫はちょっとぬるい水道の水を使い、自身の体操着を必死に擦り洗っていた。
「ほ、本当に……ごめんなさい……」
「そーよね、どっかの誰かさんがうっかり私の服にぶっかけちゃったのが悪いのよねー。ホンット最悪!」
「うぅ……ご、ごめん……」
バシャバシャと荒っぽく洗うその手の動き一つにも怒りが滲んでおり、ジャックは謝る事しか出来ない。
「で、でもありがとう、親指姫」
「……何?私と散々エッチ出来た事に?」
「ち、違うよ!君の力が無かったら、僕達倉庫に閉じ込められたままだったんだからさ」
鍵をかけられた体育倉庫は、内側からは開かない。性行為の余韻から冷めた二人を待っていたのは、密室空間に閉じ込められたという危機的状況だった。
「……ホントは閉じ込められたままで、一晩中私を抱きたかったんじゃ無いの?」
「そ、そんな事考えてなかったよ!?」
「本当かしら……?まあでも、出られてよかったわね。自分どころか人に能力を使うのは、初めてだったけど」
親指姫の持つ、物を小さくする能力。それを自分達に使って小さくなり、倉庫の扉の隙間から脱出に成功した。もちろん元に戻すのも、彼女の能力の内。
「よし、やっと落ちた。これを絞って……!」
握力がある方では無い親指姫だが、体操着が悲鳴を上げる程きつく絞る。それを見てジャックは、また背中が凍えるような感触になる。
「ふう……じゃこれ、返すわ。ありがと」
「あっ、どう……いたしまして」
親指姫が、さっきまで羽織っていたジャックのカーディガンを投げ渡す。万が一誰か来た時の為、そして体が冷えないようにと彼が渡した物だった。
「ねえ」
「な、何かな……?」
片腕の裾を通したジャックに、親指姫が声をかける。その声には既に剣幕が消えていたのだが、反射的に身構えてしまうジャック。
「今度は……邪魔が入らない所でしたいから……ね?」
「え?それって……」
「ああもう!とにかくそういう事だから!帰るわ!バイバイ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!途中まで送ってくよ!?」
長い影が二人分、走り去っていった。