だが、世界は変貌していた。
そう、変態エロビッチだらけの世界に……。
君は生き残れるか?!
最近、俺は自分がパラレルワールドにいることを知った。
表面上は元の世界とほとんど変わらない世界、住宅街も商店街も変わらない。子供の頃から住み慣れたこの街の景観もほとんど変わってはいなかったし、俺も在宅の仕事をしているからあまり外に出ず、テレビも見ない生活だったので何が変わっているのか気付くのに時間が掛かった……のか?いや、いつパラレルワールドなんてモンに転移したのかさえもわからない状態なのだ。
気付いたのは、近所のファミレスに行った時の事だ。
いつも行く深夜もやっているラーメン屋がその日休みで、仕方無くだった。
ファミレスも建物や外観などなにも全く変わっていなかったのだが、中に入って驚いた。
ウェイトレスの制服がトップレスで股間をエプロンで隠しているだけな姿だったからだ。つまりトップレス裸エプロン、いや、ニップレス付けて下は履いているが。
そんなウェイトレスが特に恥じらいも無く普通に、いらっしゃいませー!
思考が真っ白になった。
次いでいろいろな考えが頭を巡った。
実はレストランは経営不振で潰れてしまい、その後を風俗店が買い取ってそういう店を営業してるのかも知れない、とか。何かのドッキリ番組なのではなかろうか、とか。新手の深夜バイトテロなのでは?とかいろいろ考えがぐーるぐる。
回る、回るよ思考は回る。でもそういう時にまともな考えは出た試しはない。
トップレスのお乳はB+、顔立ちはまだ高校生くらいに見える。でも堂々と、否、自然体で裸体をさらす女の子を前にまともな思考なんぞ出来る人間なんているのか?
いや、いまい。少なくとも童貞一直線で来た俺には無理だ。悪いが俺童貞なんだ。
入り口で固まってしまった俺にトップレスなウェイトレスが不振に思って話し掛けて来るまで、俺は動けなかったが、
「あの、どうかされましたか?」
の声でハッ!となり、
「あっ、財布忘れた!いやー、すみません、家に財布忘れたみたいで。ははは、ちょっと財布取りに帰ります、あははははは」
いやー、注文する前にわかって良かった、とかなんとか言いつつ、回れ右して俺は店を出て逃げるように、いや逃げてしまった。なお、財布はズボンの後ろポケットに入ってたりするが、そんなもん知るか俺は逃げるぞ、逃げるんだよぉぉぉっ、お家帰るのぉぉーっ!
とばかり脱兎の如くダッシュで帰った。
「……なんだったんだアレは。つうか若いねーちゃんが乳放り出して、裸エプロンとか」
頭を振り、いやいやいやありえねーと思いつつもしかしよく考え無くとも飯は無い。
「コンビニ、かな」
24時間営業のコンビニに行けば、やはりみんなトップレス。いや、なんでやねん。いくら夏場でもクーラーガンガンな夜のコンビニで乳放り出しとったら冷えるやろが。身体ってかおっぱいが。
冷えたおっぱい。夏の定番……ってそんなわきゃ無い。つうか店に入るまでも無くそんなんがレジに居っては入るなんぞこの俺には無理だ。
やはり回れ右して帰ろうとしたら駐車場に一台のミニパトカー。○○県警とドアに書いてあり回転灯もある。
……いや、ちょっと待て。軽のパトカーの回転灯の色、おかしくね?赤じゃ無くてなんかドピンクじゃね?つかよく見たら薄いピンクと黒なカラーリングがかなりおかしい。
嫌な予感がした。
こんなパトカーどう見てもヤベェ。ありえない。
脳裏に猥褻パトカーという言葉が浮かび、厄介な目に遭う前にここを去ろうと思い、コンビニから離れたのだが……。
ガチャ、バタンという車のドアが開く音が聞こえ、そして。
「ちょっとそこのアナタ。止まってください。○○県警です」
と、俺の背後から女の声、つまり○○県警のおそらく婦人警官の声がした。
THE職質!?
俺は後ろを振り返った。ギギギギギ、と首から軋むドアが鳴るような音がするようだった。
「ハイ、ナニカアリマシタ?」
と声の主を見れば、Oh……。
おっぱい放り出しブレザーなんて常識的に考えたら婦人警官は絶対着ないだろうモンを着たミニスカ……いや、もうスカートとは絶対言えないような、パンツ丸出しガーターベルトな変態コスな美女がそこにいた。
……黒レース。いやいやパンツはなるたけ見ないように、いや胸を見たらおっぱいが、つかどこを見たらええのだこれは。
変態エロ婦人警官は胸の谷間から警察手帳を出すと、それを開いて俺に見せてきた。
「いえ、私は○○県警・風紀課の『女香多澪(めかた・みお)』と申します」
警察手帳の証明写真はまだまともで、女香多澪の名前も確かに。階級は巡査部長。
つうかこんな名字初めてみたぞ。
変態エロ婦人警官は手帳の写真を俺に見せながら手帳のポケットから名刺を引き抜き、そして手帳を閉じてまた豊満な胸の谷間に戻すと 流れるような、しかし見せつけるような、いいや魅せるといった方がいいか?そんなセクシーな仕草で名刺にチュッと唇を押し当てるとそれを俺に差し出してきた。
「名刺よ?」
名刺にルージュのキスマークが付いた。つかお水なお店かな?18禁的なやつ。
名刺は、ずいっと差し出されなんかピンク的なオーラを放っている。つか本能的に受け取ってはならないような気がして思わず退いてしまう。
在宅勤務前は名刺とか差し出されたらうやうやしくペコペコして両手で受け取っていた俺だが、流石にこれはなんかヤベェだろ。
「名刺、よ?」
ジリジリっ、となんか俺にプレッシャーをかけるような笑顔と共にかかるオーラ。ピンクに黒い何かが発せられとる。
名刺を受け取ろうとしない俺に業を煮やしたのだろう、婦人警官はずずずいっと力を込めたかのように名刺をぐいぐいと押しつけてくる。
たまらず、
「……ご、ご丁寧にどうも」
圧に負けて受け取った名刺にも確かに○○県警の文字と部署と階級、女香多澪の名前。
裏にはルージュのキスマーク。
……なんつうかイヤげな特級呪物感。接待で行きたくもなかったピンクなサロン的なお店でやたら女の子に気に入られた時にLINEのQRコード入りのキャストカードを渡された、その時よりもなんかヤバそげな感じがする。
なお、LINEのそれは全く読み取る事もせずキャストカードは駅のゴミ箱行きになったのは言うまでもないが、これはどうすりゃいいのだろうか。
「……で、アナタはここで何をしてたんですか?」
腕組みしつつ……いや、巨乳を持ち上げ寄せて強調しとる?!……メガネをクイっ。なんか冷徹そうな切れ長の目でジロリ。これが普通の警察官の制服だったら怖かったかも知れないが、エロコスなポリスウーマン相手だと、これなんて企画物AV?なこの状況。いや、別の意味で怖いんですけど。
こんな警官いるか!と思いつつも、否定は出来ない。顔を見ればこの婦警は以前に現チャ(スクーター)で買い物に行った時に一時停止違反で俺にキップ切ってきたミニパトの婦警に違いない。つうか美人だったから覚えている。
「いや、買い物に来たはいいけど財布の中身を入れるのを忘れてたのを思い出して、このままだと足りないので引き返そうと……」
俺は口からデマカセを言った。
「なるほど」
ふむふむ、と婦警は俺の話を聞き。
カチャッ。
俺の腕に感じる冷たい感触。ん?と右腕を見ればそこには手錠。ノーモーションでこの婦警、俺に手錠をはめやがった?!
「え?」
「うふ」
手錠と婦警の顔を交互に見比べる。銀の手錠と艶っぽい笑み。
「捕まえた」
そうして俺は逮捕され、連行された。
容疑とか罪状とかそんな物は無く、ただただ理不尽にピンクなミニパトに引きずられて行き、乗せられ、そして何処かへと連行されて行ったのだった。