※この作品はR-18です。

パラレルエロビッチファンタジー現実世界。   作:罪袋伝吉

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 パスタを茹でて食べるだけの回。エロ?ああ、最後辺りにちらっと。


認めたくないものだな、別世界の俺など。

 

 帰宅。

 

 ネットが通う我が家。ああ、スマホが使える。なんと素晴らしい事か。

 

……しかし、よくよく考えたら俺が特区の方に行ったのは家の食料が尽きたからなのだ。

 

 俺は「ああ、腹減ったな」、とリビングのソファに座った澪に言う。

 

「そうね……。というか何か買い出し、行ってこようか?」

 

 と、澪が言ったがなんつうかこの家で独りきりになるのは怖かった。いや、勝手知ったる我が家ではある。しかしここは異世界でそしてこの家はこの異世界、パラレルワールドのウチの屋敷では建っているハズの無い建物なのだ。

 

……俺からしたら雄立の邸宅があること自体、有り得ない事なのだが。

 

 で、澪が言うには母屋の方の人間の街の側、つまり表の方の離れに雄立家の使用人達の住む寮がある、つまり他の人間達が住んでおり、ここが見つかったら騒ぎになるだろう、との事で……。

 

 んなもん、どうせえっちゅーのだ。いや、どうにかしなけりゃならんのだろうが、こっちの世界の情報も何も持たない俺一人ではどうしようも無いのだ。

 

 気分は敵陣の真っ只中、その拠点に忍び込んで一晩過ごさねばならない兵士のような気分、もしくはゾンビパンデミックが起こった時に家に引きこもっているサバイバーと言えばわかるだろうか。

 

……朝までには必ずこの家は発見されるだろうが、どうするべきか。つうか今は誰も気付いていない、というか深夜でみんな寝ているようだが、しかし誰かが起きて見つけないとも限らない。

 

「いや、動かない方が良いだろう。というかミニパトのエンジン音を聞きつけて誰か起きてこないとも限らない」

 

「……そうね。ってか見つかってヤバいのはアナタだけなんだけど、アナタを助けるって契約したものね。はぁっ、パトカーで来ちゃったから本当は署に戻らないといけないんだけど」

 

 澪は溜め息を吐く。俺はすまんな、と言いつつキッチンの方に向かう。

 

「業務用パスタの麺は大量にある。卵、粉チーズ、粉末状ガーリック、コンソメ、昆布出汁に乾燥ワカメ……あ、ジャガイモ残ってたか」

 

 俺はカウンター色のキッチンの台の上に現在ある、使えそうな物を並べていった。

 

 冷蔵庫を開けて卵二つ。牛乳、ベーコンのお徳用切り落としパック。

 

「……あー、パンは無いか」

 

 なお、米櫃に米が無いのは昨日の晩に飯を炊いた時にもうわかっている。炊飯ジャーにもな。

 

 パック入りの電子レンジで温めるご飯は二つあるがこれはなんかあったときのために取っておきたい。

 

 キッチンを物色していると澪がカウンターの椅子の方に来た。複数の大きな円筒形の透明のプラスチック容器の中に大量のパスタが詰め込まれているのを見て、

 

「えっとアナタ、パスタ好きなの?」

 

 とか澪に言われたが、パスタが好きか嫌いかなどあまり俺は人生の中で考えた事は無かった。

 

「パスタの麺はどちらかと言えば非常食くらいの位置付けだろうか。ガキの頃は米より食ってた気がする」

 

 母方の祖父母が事故で亡くなり、母が俺の遺伝子提供者の片割れ、つまりクソ男を包丁で刺し殺した事で俺は施設に入れられた。

 

 まぁ、施設に居た頃はまぁ、普通に中学までは行けた。義務教育は無償だったからな。

 

……修学旅行は金が無くて行かんかった。

 

 孤児で中卒のガキが勤められる仕事なんぞブラックかつ3Kな肉体労働をくらいなものだった。だが俺は諦めなかった。そんな会社に勤めながら通信高校を受けつつ大学資金を貯めるために頑張っていた。

 

 業務用パスタ10Kg約3000円。

 

 ああ我が師、我が導きのパスタよ。保存が利きそして一食分で約100g、つまりパスタ一食分は費用として約30円。このコスパよ。

 

 具無しの醤油パスタは二度と食いたくは無いが、卵とお徳用ベーコンで炒めても150円以下。ケチャップと特売の挽き肉で炒めても200円も行かない。のり玉、ごま塩、明太、ふりかけを振って食ってもいい。栄養のバランスを取るために屑野菜などを入れるのもいい。味噌汁やスープをつけるとさらに飯感が出る。

 

……金を得た今では他の料理もたしかに作るし外食もするが、パスタは某メーカーの奴とか買う気がしない。アレは確かに麺としてうまいが業務用は使いこなせればコスパも味もさほど悪くはないのだ。

 

「……パスタはけして俺を裏切らない。業務用パスタがあったからこそ今の俺がいる。そう言っても過言ではない」

 

 そう、だから常に家には業務用パスタを常備している。たとえ物価高騰の煽りを受けて五百円ほど高くなっていてもそのコスパは未だ健在。

 

「そ、そうなの。えっと……何があったの?」

 

「いや、ガキの頃は金が無くてな。業務用パスタは食費を抑えるのに最適だったんだ。キチンと作ればキチンとうまいしな」

 

 俺はシンクの浄水器のレバーを原水に合わせて水を出して水が濁って無いかを確かめた。水道工事のあとは必ず水質は見ような?あとガス工事のあともガス器具のチェックも忘れずに。

 

 ガスの元栓をひねり、コンロに火をつけてみる。カチカチカチカチ、と着火音と共に火が付く。

 

「問題無し、だな」

 

 俺は浄水器のレバーを浄水に切り替え、キッチンの台の上の電気ケトルを取って水を入れ、電気ケトルのクレイドルに置いてスイッチをオン。

 

 棚からプラスチックの細い円筒形の容器を出し、パスタの入っているパスタストッカーの筒から袋に入っているパスタを取り出した。

 

「パスタ、どれだけ食える?一人前か?大盛りか?」

 

 澪に聞いてみる。

 

「えっと……」

 

 と、澪は少し考えるような素振りをしたが、多分遠慮、いやこれは女性特有のアレだ。大食いとか男に思われたくないとかそういうアレだ。

 

「大盛り、っと」

 

 手で目分量を掴んで筒の中に入れる。大盛り二人分だ。俺ぐらいになるとすんなりと手で掴んだだけで正確に量を計れるのだ。

 

「え?ちょっと……!」

 

 と澪が慌てて言うが、俺はこういう時にはこういうようにしている。

 

「俺はいっぱい食べる奴が好きだ。食えてる間は人間なんとかなるからだ」

 

 電気ケトルの中の湯がボコボコボコボコと沸騰する音が聞こえ、そして、こぉぉぉぉぉっ、と蒸気を出してスイッチがカチンと切れた。

 

 俺はマグカップに塩を大量に入れ、そしてアジシオを二振り入れ、電気ケトルの湯をそのマグカップに注ぎ、スプーンでかき混ぜた。

 

 その塩を溶かしたマグカップの湯をパスタを入れた筒に注ぎ、さらにケトルの湯をだばーっと入れてねじ込み式の蓋をして、ひっくり返した。

 

「え?それ、なにしてるの?」

 

 と澪が驚いたような顔をするが、コイツはパスタ茹で器を知らんのか。  

 

「これはパスタ茹で器だ。……三分半でパスタは堅茹で、つまりアルデンテの手前になる」  

 

 台の上のクッキングタイマーを三分半にセットしつつ言う。

 

「鍋で茹でないで大丈夫なの?」

 

 うん、初めてこれを見る奴はみんな同じ事を言うが、茹でずに湯だけでパスタが茹でられ、しかも湯も少なくで済む。歪ん少なく済むなら茹でるときに使う塩も減らせる。なお、パスタを電子レンジで茹でられるシリコン容器もあるが、俺がよく買う業務用パスタの長さでは入らないし電子レンジのサイズ的に入らない。パスタを折ってもいいのだがそれをやるとイタリア人に怒られそうなのでやらない。

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

 言ってから某エノクさんかな?と思ったが、ゲームも長らくやっていない。Wizardryだってガキの頃に施設ににあった、おそらく誰かが子供達の為に寄付した古いゲームボーイに挿さってたのをやってただけだ。

 

……当時はゲームボーイなんてもう古く、とっくにDSが流行ってたし、巷はポケモンばっかし。だがそんなんしか無かったのだ。ゲーム機なんぞ、そんなんしか。

 

 澪を見る。

 

 今は角も翼も隠しているが本物のサキュバス。あの古いゲームボーイのWizardryで見たサキュバスの本物。

 

 今思えば、俺の初恋はあのWizardryのサキュバスだったのだろう。というかなんなら性と言うものを意識したのも。……ガキの頃の事ですっかり忘れていたが。

 

 つか、サキュバスとヤったんだよなぁ。うーむ、なんの感慨も浮かばねーのはなんでだろうな。

 

 ふぅ、と息を吐く。

 

 いや、そんな事より腹を満たさにゃならぬ。今は料理に集中すべきだ。

 

 俺は包丁立てからペティナイフを取った。

 ジャガイモを袋から大きい奴を一つ取り出し、ベティナイフで皮をエシャロット剥きにし、大根おろしで半分すりおろす。

 

 そして残った半分を縦に割り、サクサクサクと切る。だいたい四ミリ厚だ。これ以上の厚みだと火が通って無いところが出来、これ以下だと食感が落ちる。パスタにはこれがベストだ。

 

 すりおろしたジャガイモはさっき塩を溶かしてたマグカップに入れその上から塩胡椒、粉末のコンソメ、粉チーズ、お徳用切り落としパックベーコンを千切って数枚入れてそこに牛乳を注いでスプーンでかき混ぜる。ベーコンを入れるのはソースに風味付けする為だ。

 

 で、電子レンジにイン。

 

 続いてフライパンと小鍋を用意。フライパンはパスタを炒める用、小鍋はスープを作る用だ。

 

 タイマーを見て、ここまでまだ一分も経っていない。

 

 俺は小鍋に水を張り、コンロの上に置き、増えるワカメをひとつまみととろろ昆布を入れた。

 

 水にふわっと海藻類が広がるのを見てからコンロに火を入れる。海藻の類から出汁を取るときは水から小火だ。煮立った湯では海藻からの出汁はうまく出ない。逆に鰹節や肉などからなら沸き立たせないと出汁は出ない。これは大学時代のバイト先の大将から教わった事だ。

 

 ぷくぷくと泡が出るくらいで軽く湯にやや黄緑色の色が出たら、昆布茶の粉末を加える。昆布茶は出汁を追加するのに結構使えるぞ?

 

 そこからは簡単だ。塩と醤油を少量。火を中火にして軽く煮て、スプーンで味を見て味が整ったら、ごま油を小さじ二杯入れる。

  

 そしてここからが勝負……と言うほどでもないが、溶き卵投入。溶き卵がふわっと綺麗に入るかどうかでプロか素人かがわかる。 

 

 火を強火にし、卵を割ってお椀に入れて菜箸で素早くよくかき混ぜ、鍋の外周を素早く菜箸でくるくるっと回して渦を作り、そして卵液を菜箸に伝わせて細く湯の中に入れる。

 

 ほーら、綺麗に溶き卵がふわっと細かく入ったろ?

 

 で、コンロの火を落として小鍋に蓋をする。スープに火はもういらない。

 

「はー、随分と手際良いわねー」

 

 キッチンのカウンターの席に来た澪が感心したように言う。

 

「ガキの頃からやってるからな。繰り返し繰り返しら同じようなもんを作ってればこうもなる」

 

 フライパンを火にかけ中火。徳用のオリーブオイルを敷き、ガーリックパウダーをパッパッパッ。黒胡椒を二振り。油がプチプチと泡を出したならその頃合いに徳用のベーコンの細切れを多目にいれる。

 

 ベーコンは言ってみれば西洋における鰹節、つまり出汁だ。出汁を上手く出すには火力。オリーブオイルにベーコンの旨味を出すのだ。

  

 じゅぉわじゅおわっとベーコンを炒めつつガーリックパウダーの風味を移す。なお追いオリーブオイルはしない。オイリー過ぎるのは俺は好きじゃないからだ。

  

 そして切ったジャガイモも投入。軽く追い塩と追い黒胡椒で炒める。

 

 ぴぴぴっ、ぴぴぴっとキッチンタイマーがなった。

 

 俺はパスタ茹で器を取って、上蓋を外した。パスタ茹で器の蓋には湯切りがついており、逆さまにしてシンクに湯をだばーっ。

 

 思わずペヤングだばぁ、と言ってしまいそうになるが茹で器の蓋はねじ込み式だ。麺をだばぁする事はない。

 

 上下に軽く振ってよく水分を切ると茹で器からパスタをだばっとフライパンに上げ、そして菜箸で油を絡める。

 

 ここで、丁度のタイミングで電子レンジがチン!と鳴る。   

 

 俺はコンロの火を強火にし、加熱されたマグカップを布巾を使って取り出し、それをフライパンの上に回しかけた。

 

 すりおろしたジャガイモがいいとろみになって麺に絡まるが、これをフライパンで加熱する事で水分が飛んでよりよく麺に絡まるのだ。

 

 菜箸捌きでどりゃどりゃどりゃ!と素早く強火でしあげ、そしてあらかじめ出してあった陶器のボウル皿にそいっ!と上げた。

 

「ほい、完成っ!」

 

 と言いつつ、粉末バジルをパッパッパッ。 

 

 トングをボウル皿の前に置き、スープもお椀に入れ、取り皿とフォーク、スプーンも出してカウンターに並べる。

 

「これは……美味しそう!というかアナタ料理上手なのね」

  

「まぁ、有るもんで作った賄い紛いだ。口に合うかどうかわからんが食ってくれ」

 

 食器をシンクに片付け、水を出して漬けつつ、自分も手を洗い、そしてカウンターの席に俺も着いた。

 

 トングで取り皿にパスタをよそってやる。

 

「ま、あとは自分で自由に好きなだけ取ってくれ」

 

 すると、澪は両手を組み……キリスト教徒がやるように……そして、なんかお祈りをし始めた。

 

「我らが始祖リーリト様、今日の糧を得られた事に感謝致します。我が身と我が子に繋ぐ糧をもたらした者に幸あらんことを。イス・リリス・ファム・イスリムト・アスラウ・リーリー」 

 

……なんか西洋的な奴だな。

 

 と思うもよく考えたらサキュバスは西洋妖怪っつーか西洋の魔物か。しっかし最後のは何語かわからん。

 

 始祖と言うことはサキュバスのご先祖様なのだろう。

 

 しかしリーリトっていうと俺の元の世界で言うところの聖書にあるアダムの最初の嫁とかサタンの嫁とか悪魔的達の女王とか云々言われているリリスの事か?……いや、こっちの世界ではどうなのかはわからない。つか、聖書でボロクソに書いてあるのは大抵ユダヤ人が敵認定した民族の先祖だったりその信仰対象だったりするので、その善悪なんぞ本当にはわからんしな。

 

……別に俺はユダヤ人に含むところは無いけどな。

  

 澪は祈りを終え、そして手を解くと合掌して、

   

「では、いただきます!」

 

 サキュバスは日本式もやんのか。

 

「ほい、お上がり。……俺も食うか」

 

 合掌していただきますをし、トングで自分の分もよそった。

 

 つか、誰かと飯を食うとか何年振りだろうな、俺。

  

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 腹を満たした俺達はリビングのソファで冷蔵庫の冷凍庫にあった徳用パックの安いバニラアイスを食いながら話をしていた。

 

「はぁー、美味しかった!というかお店開けるんじゃない?」

 

 澪はアイスをスプーンで食べながら、「んー、意外とお徳用アイスも美味しいのねー」とか言っている。

 

 なお、徳用アイスにはバニラフレーバーのシロップを少しかけてあり、風味で少し美味く感じるようにしてある。

 

……人間の味覚を騙すには風味。これは科学的に実証されていたりする、というかかき氷のシロップでもうわかりきっている事である。

 

「……食い物関連のバイトとか掛け持ちでやったからな。自然と覚えた。元の世界では外食産業もやってたが、残念ながら不景気とタチの悪い病原性のウィルスのパンデミックが元で撤退せざるを得なくてな」

 

 ああ、本当に悔やまれる。

 

 経営を立て直して軌道に乗ったハンバーグレストランチェーンの『バーグマン』にラーメンチェーンの『ラーメン阿倶尼』、和食レストランチェーンの『じぇい三太郎』。どれもが県外30店舗撤退、県内に本店と二、三店舗残ったか残らないかという結果に終わったのだ。

 

 今も好調なのはデリバリー弁当の『たんまり弁当』だが、それでも店舗の数は現在減っている。

 

……昔、ガキの頃は雄立家の企業は全部潰ちまえ!と思ってはいたが、自分が雄立グループのオーナーになって立て直しに真剣に向き直った企業がそんな結果になって本当に凹んだ。

 

 マジパンデミック許すまじ。

 

「とはいえこっちの世界の雄立家はどうなってるのやら。まさかまだ寄生虫みたいなババァの親族が幅利かせてんじゃねぇだろな……」

  

 はぁ、と溜め息を吐きつつアイスを一口。

 

「うーん、雄立家の内状はアタシにはわからないけど噂っていうのかゴシップは多いわね。というかアナタもよく取り沙汰されてるわよ」

 

 澪は端末の映像を空間投影して見せてきた。

 

『雄立ホールディングス、食材の産地偽装か?問われるコンプライアンス』

 

『雄立建設の下請け解体業者のずさんな安全対策』

 

 俺は自分のスマホでクグりつつ……こっちの世界でもググれるってのは凄いな……それぞれの会社の社長その他を調べて見たわけだが、それらは俺の元居た世界でも散々ろくでもない事をやらかした癌細胞達だった。

 

「ほぅ?こっちの世界でもババァの親族共がクソみたいな事をやらかしてんのか。これは潰さねぇと罪もない有能な社員達が被害に遭うなぁ。ふーむ、しかし俺がやっていいのか?つかやれんだろか、うーむ」

 

……どうやらこちらの俺はまだ寄生虫の駆除を行っていないようだというのがわかったが、しかし俺はこっちの世界の俺では無い。

 

 それにどうやらこちらの世界のグループ会社の規模は俺の世界の比では無く大きいらしく、また俺が知らない部門も多くあった。

 

 つかローカルではあるがテレビ局があったり、ドーム球場まで保有していたり。また雄立家の所有する土地がかなり広く、特区そのものが丸々ウチの土地となっており、その収益や第一次大東亜大戦の時に日本にふっかけられた戦時国債の年間の返還金だけで全ての企業を丸々運営出来るだけの額があることが判明した。

 

 金回りが良いと腐った部分は増える。そして肥え太った寄生虫はより根付くのだ。

 

……問題はどれだけこっちの世界の俺はそいつ等に対しての対抗策を取っていたのか、という事だが、そいつに関しては全くわからん!としか。

 

「なんかやるにしても、わからんことだらけだな。こっちの俺の立場ってかスタンスもわからん。もしかしたら俺とは正反対の考えを持ってたり、寄生虫に迎合するような奴だったら最悪だ」

 

「うーん実際のところ、雄立家の当主の噂としてはかなり弱腰な印象ね。本家の家人達からもかなり失望されてるみたい」

 

……ガキの頃の俺かよ。

 

「ふぅむ。俺に関しての情報は?いや、こっちの世界の『雄立入道』に関してだが」

 

 澪は、画面を切り替えた。

 

 ツ○ッターみたいなマークのSNS『フリーバード』とかいうのとネット掲示板『チャンネル5』だ。

 

……いや、チャンネル5とか言われると『ルー○柴』がいきなり踊りまくるというCMのセガのゲームを思い出すんだが。あとメキシカンフライヤーのテーマ。

 

 それを見てみるとウチのグループ会社の食品産地偽装の被害を受けたと思われる人物や事件の責任を上層部に被らされ不当に解雇された元平社員の書き込みなどがアップされていた。

 

 また、その他いろいろと雄立グループへの罵詈雑言が……。

 

「……これ、放置していい状態じゃねーだろ。つかちゃんとしろや、こっちの俺」

 

「ほんとにねー。で、これ見てくれる?」

 

 澪が画面を切り替えた。

 

『雄立家当主、婚約詐欺される!白鷺家令嬢、托卵詐欺か!?』

 

『雄立家、白鷺家に対して制裁なし!家名に泥を塗られてもまた弱腰!』

 

……ナニコレ。

 

 俺は固まった。というか週刊誌のネット版らしいが、それを読み進めるうちに、ぴきっ、ぴききききっ、と俺のコメカミに血管が浮くのが自分でもわかった。そして、バリン!とアイスを入れていたプラスチックの器も握力で粉々にしてしまった。

 

「ああん?ババァの親戚のガキに女寝取られて制裁もしねーだと?!こっちの俺は腑抜けかっ!!」 

 

 そう、こっちの世界の俺は、どうやら名家の令嬢と婚約していたらしいのだが、クソババァの実家の家の三男とやらに寝取られ、しかも子供を托卵されそうになっていたらしい。

 

「おいおいおい、俺はコケにされて黙ってる男じゃねーぞ……って」

 

 澪が画面を切り替える。

 

「この女がアナタの元婚約者なんだけど……」

 

 その顔というか姿を見て「うっ?!」と俺は固まった。

 

「……イボガエル?」

 

 それはかなり醜い容姿をしており、とにかく太ったイボガエルってのか某スターウォーズに出て来るジャバザハットソックリだった。

 

「いえ、人間よ。これでも純血種のしかも華族」

 

「……華族?」

 

 いつから日本にこんな醜いものを華族になんぞしたんだろうか。つか名前が『白鷺麗華』とか、名前負けというより……。

 

「コイツの名前から姿まで真っ赤な詐欺だろ。いや、存在そのものがもはや人類に対する詐欺だと思うんだが」

 

「うん、アナタの感性がマトモで良かったって今、思ったわ。いえ、ブス専だったら私の魅了(チャーム)オーラも利かなかったから違うって解ってたけど、守備範囲がよほど広いんだなーと……」

 

「いや、守備範囲どころかコレはデッドボール級だろ。代走走らせるほどの事故級だぞ。いや、デッドボールが来たと思ったら砲丸投げの玉だったくらいの衝撃だ。つうかこんなんと結婚させられんで良かったとマジで思うが……。なんでこんなんと婚約?何かの刑罰なのか?」

 

「この記事によると、子供が頃にアナタのお祖母様が決めた相手らしいわよ」

 

 澪が出したその記事を見て、俺は見たくも無いクソババァの名前とその姿を映した写真を見つけた。

 

 なんか雄立家次期当主と華族である白鷺家の末娘との婚約発表の記事だ。クソババァが満面の笑みで俺の隣に座っている。ジジィは複雑そうな顔である。そりゃあそうだろう。

 

 ジジィはクソババァがしゃしゃり出て来る度にろくな事がないということを知り抜いていた。だが、ババァの暴走を何ら止める事もしなかった大罪人でもあるのだが。

 

……ガキの頃は何故、雄立家の当主なのにババァを止めないのかと思っていたが、親族のクソ共を始末した時にその答えを知った。

 

 ババァはかつてジジィが犯した殺人事件の証拠を握っており、ジジィはそれが公になることを恐れていた。そして長年に渡り、ジジィはババァの親族が自分のグループ会社を蝕み続けるのを傍観していたのだ。

 

 雄立家最大の癌。それがババァ、雄立久佐、旧姓伯野久佐(はくの・ひさ)というクソババァだった。

 

「コイツが俺の祖母なわけがあるか。コイツと俺は血が繋がってねぇ」

 

 そう、実際に雄立家にいたババァと俺は血が繋がってはいない。というか俺の父親にあたるクソ野郎は雄立家のクソジジィとその先妻との間の子供なのだ。……あのクソ野郎(父親)と血が繋がっていることも否定したいがこれはどうしようも無いので諦めている。というか自分の中では無視している。

 

 俺が自分の血を引かないと罵り、シバいてきたがそれすらもジジィは見て見ぬ振りをしていた。

 

 まぁ、俺もそん頃には大きくなっていた、というか通信制高校の二年になってた……というかジジィに懇願され謝罪され、雄立家の跡取りになって欲しいと頼まれた、その姿に絆され、地元の高校に編入して通っていた頃だったので老婆の攻撃なんぞはなんら効きはしなかったのだが、間違い無くあのクソ野郎(父親)も、同じように虐待されて歪んだのだろう。

 

「……死んでからも蝕み続けてんのかこのクソババァは」

 

 澪に俺の世界のババァに関して話したわけだが、俺はふと、思った。

 

「……まさかまだ生きてるとかねーよな?俺のいた世界じゃ認知症んなって施設で死んだんだが」

 

「もう亡くなってるわ。でもこっちの世界では表面上、アナタを甘やかして育てていたそうよ」

 

「おえっ。止めてくれ想像したくない、というかすまん、俺トイレ行ってくる」

 

 俺は、急いでリビングを離れてトイレに向かい駆け込んだ。つうか吐き気がパなくなったのだ。

 

 トラウマってよりも白鷺某の容姿を見たのとババァがこっちの俺に甘々だったとか俺の胃は限界だった。

 

 だが。

 

 便所に、先客がいた。

 

 つうか。

 

 首から何か札を下げた全裸な女が便座の上で大股を開きで。

 

 札には肉便器と書かれ、胸に『吸って』とか、太ももの内っかわにペンかなにかの太字で『チンポ穴無料』とか『クソ穴セックス希望』とか書かれてあった。

 

 つか、アナルにはプラグが挿ってあった。

 

 吐き気が、吹き飛んだ。

 

「だ、誰ぇぇぇ?!」

 

 夜中のトイレにこんなん居ったら、そら誰だって叫ぶ。俺だって叫ぶ。だが。

 

 叫んだ声は、直ぐに何かに打ち消されてまるで響かず、ドアを開けて逃げようとしてもドアはロックもしてないのに開かない。

 

 ガチャガチャガチャとノブを回しても動かず、そして。

 

「お便器、いかがですぅ?雄立の若様ぁ……」

 

 後ろから抱きつかれ、そして俺は…………。

 

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