※この作品はR-18です。

バナージとオードリーのつがいじめ   作:6451hole

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まぶたを開けても暗闇なら

赤い暗闇の底から、全てをあざ笑う声がする。

宇宙の全ての歴史、人の全ての想い。何も持たない存在は、その重みを知ることすらない。いや、知るからこそ、踏み躙れるのだろうか————

 

『君は、もう』

 

穏やかに、優しく、語り聞かせるような声。

岩塊に綿を被せたようなものだ。

外面を繕っても、その衝突で爆ぜて裂ける肉の痛みは偽れない。

 

『みんなの中には、戻れない』

 

心臓を握りつぶすような、強烈な悪意に、自分は耐えなければならないのだ。

この悪意に呑まれれば、戦ってきた意味もなくなってしまう。

 

「人の真似をやめろ、亡霊————……ッ!」

 

絶叫だった。

声を限りに叫んで、バナージは飛び出した。

そしてそのまま無様に転がり、床にしたたかに頭をぶつけた。

 

「っ、あ……」

 

目の前に星が散る。ちかちかと眩む目で瞬きをして、周囲を必死に見回す。

狭苦しい部屋だ。薄暗いが、灯りはあるようだ。無機質な床はモルタルの砕片でざらついている。タイル張りの壁は配管の隆起があちこちにあり、汚れている。

そして、自分の両腕が背中に回された形で拘束されていることに、バナージはようやく気付いた。

 

「あ、……っ!?なんだ、これ……何が起きて……」

「バナージ」

 

不意にかかった声に、目を見開いてバナージはぴたりと凍り付く。

この異常な状況に対する錯乱を、その耳に心地よい声は一瞬で抑えてしまった。

床を肩で押す反動の力を借りてようやく身を起こし、床の上に膝を投げ出すように座ったまま、バナージは声の方向を振り向いた。

 

眩いような金色の髪、透き通ったエメラルドの瞳。

それは間違いなく、オードリー・バーンその人だった。

バナージがその手を取り、この宇宙を巻き込む戦いへ共に飛び込んだ、気高く美しい少女。

その瞳が憂いを込めて自分を真っ直ぐに見ていることに、バナージは状況にそぐわず胸がかっと熱くなるのを感じた。

 

「オードリー……オードリー、それは……!」

 

何処とは分からないが、ここに二人でいる。一人ではなく、二人で。

その事実にどこか縋るように名前を呼ぼうとして、バナージは愕然とした。

オードリーもまた、その非力そうな両腕を後ろ手に戒められ、ほっそりとした肩を怒り気味に居心地悪そうに揺らしていたのだ。

 

「一体、誰がこんなことを」

「誰が、という答えは、もう分かり切っているけれど」

 

オードリーの声はひどく抑えられていた。

感情の波立ちのない声が、バナージの胸を酷く締め付けた。

 

「……誰なんだ」

 

金の睫毛がふわりと上がり、涙を忘れた緑の瞳がバナージの青ざめた顔を映す。

 

「フル・フロンタル」

 

絶望の洞から響くような、抑揚の失せた声。

 

「『ラプラスの箱』争奪戦の、最終的な勝者の手の中に、わたし達は落ちた」

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