オードリーの白い肢体が、簡易ベッドの上にあおむけに横たわっている。
なけなしの着衣さえ全て剥ぎ取られて、その眩いほど白い肌がくまなく晒され、乏しい灯りを吸い込んでいた。
その細い両腿がフロンタルの手で無造作に押しのけられ、手袋を外したその厳つい大きな手の中指が、秘められた小さなあわいに全く無造作に捻じ込まれる。
「う、う……ぐ、……」
オードリーの薄く開いた唇から、普段の彼女より一オクターブ低いような、醜く太い声がわずかに漏れた。
バナージが動揺に息を呑むと、フロンタルは長い中指をその無防備な狭間にぐりぐりと捻じ込んでいきながらこともなげに言った。
「心配することはない。喉と舌の筋肉が強直状態にあるせいで、いつも通りの声が出せないというだけだ。ふむ、舌がねじれて右奥歯の内側に溜まっている状態だ——これではまっとうに話せるはずもない」
淀みなく説明しながら、フロンタルの太い指があまりにも柔すぎる肉をぐじゅっ、と掻きわける。その華奢な体がびくりと跳ね上がり、とぎれとぎれに低い声を漏らした。
「う、うぅ、……っ……」
オードリーのそこは、ただ滑らかな皮膚の合わせ目に柔らかな狭間が一筋置かれているだけだ。
フロンタルの中指が無造作にえぐり込むことで、ようやくその奥に秘された淡い桃色の粘膜が乱れ、その指にまとわりつくようにはみ出してくる。健康で滑らかな粘膜が、室内の薄暗い光をぬらぬらと滑らせている。
胸を突き動かすほどに思慕し、掛け替えがないほどに大切に思った少女の体への、あまりに悍ましい仕打ち。
「……っ!」
言葉が出てこない。やめてくれ、という懇願すら、酷い恐怖の底で押しつぶされてしまう。
今までとは状況が違う。
あまりにも柔く、根本的で、無防備な場所に、フロンタルの厳つく太い指がずぶずぶと埋め込まれて好き勝手に動いている。
吐息の音さえ聞こえないように、ただ息を押し詰めて、時間が経つのを待つしかなかった。
声など出せるはずがない。
自分のせいで、オードリーが壊されてしまう。
その悪意に満ちた男の、ちょっとした気まぐれで、オードリーの無防備な体は不可逆的に、そしてあまりにも陰湿に傷つけられてしまう。
「バナージ君には、準備を手伝ってもらおうか」
オードリーの秘部を掻き回す指を止めないまま、フロンタルは穏やかな声でバナージに語り掛けてくる。無意識に目を逸らしていたバナージは、びくりと肩を跳ねさせて臆病な上目遣いをベッドに腰かけたフロンタルへ向けた。
フロンタルの空いた手が器用にベルトを外して前を寛げ、ずっしりとした重みを閉じ込めた柔らかかな巨塊を引っ張り出す。
バナージは、ただ、あ、と途切れた声を弱弱しく漏らし、その光景にぼんやりと目を奪われていた。
「君の口で、挿入の用を成す程度まで刺激するだけでいい」
「よう……?」
理解できているはずなのに、すぐには動けない。
体が、思考が、感情が、言及されている行為を激しく拒絶しているのに、今はそれを表情に出すことすら許されていない。
フロンタルの手がバナージの頭を掴み、強引に引き寄せた。後ろ手に拘束されたまま床に座り込んでいる体はバランスが悪く、そのままつんのめりそうになる。
「口を開けて、舌を出すんだ。そして、舌の先でひっかけるようにして、私のペニスを掬い上げ、口腔の中に導き入れる」
フロンタルの説明はひどく簡素で具体的だった。その合間にも粘りつくような陰惨な音が不規則に響き、オードリーの呻き声がそれに混ざる。
バナージは呆然と見開いた瞳で、ただフロンタルの表情の読めない白銀の仮面を見上げるしかなかった。
舌を出す? この男のものを、口の中に……
あまりに惨めな行動に、想像するだけで全身の血が冷える。
「この状況で逡巡できるのは、君の美点かもしれないな」
フロンタルの唇がかすかに笑んで、優しく告げる。
「その美点が、ミネバ様を苦しめることになる」
次の瞬間、耳につくような粘っこい音がやかましく耳朶を打った。
ぬぢっ、ぬぢゅぬぢゅっ、ごりゅっ——……
「うぁ、あ、ぐ、……ッッ、う、う゛ぅっ……!?」
オードリーの声が一転した。
白い肢体が簡易ベッドの上で跳ね上がり、薄い腰が挿入される指から逃れるように無様に振られる。それを全く意に介さずフロンタルの指は深々と膣内に埋まり込んで初々しい粘膜の中の不慣れな神経を隈なく踏み荒らし、硬い指先を使って掘削する様に掻き回している。
フロンタルの指がぴんっ、と弾かれるように動くと、オードリーの体が大きく弓なりに仰け反った。
「ぎ、ぃ゛ぅっ、うぅぅっ、う゛……っ!」
何も映していない緑の瞳が大きく見開かれ、虚ろなほどに大きく開かれた口から持て余した舌が引き攣りながら突き出されている。細い喉がびくびくと跳ねて、痙攣が全身を打つように走る。
ぼた、ぼた、と重い雫が落ちる音。
ベッドに滴るそれは、フロンタルの指を埋め込まれた秘部から流れ出す、一筋の鮮血を混ぜた愛液の雫だった。
病的な痙攣をしばらく続けた体が、突然がくりと脱力する。投げ出された脚だけがわずかに震え続けている。滴下の音は聞こえなくなり、ただ音もなく愛液が垂れ流されてじっとりと簡易ベッドのマットに沁み込んでいく。
途切れ途切れの苦しい息が、その小さな胸郭から押し上げられて響いていた。
「女性のオーガズムは単純な物理刺激だけでは発生しづらいが、やりようはある。どこまでいっても、結局は神経と伝達物質によって引き起こされる現象だ」
フロンタルの指がぐ、ぐっ、とさらに深く差し込まれ、かすかに指先を起こしてその中を押し上げているのが分かった。
「不応期を無視してオーガズムを繰り返させることで、より強烈な不快感を齎すようにもなる。試してみるかね?」
「おー、どり……」
バナージは呆然と、ただ彼女の名を呟いた。
バナージは女を知らない。オードリーの体にもたらされた強制的なオーガズムが、どれほど彼女の精神と肉体に負荷を掛けているのかも、想像するほどの余裕すらない。フロンタルの指がどんなに悪意を込めてオードリーの中を蹂躙したのか、本当に理解できるわけでもない。
目の前で起きたことを順を追って理解することすら、脳が拒んでいる————
バナージにわかったのは、ただひとつだけ。
(おれが、ちゃんとしなきゃいけないのに……)
自分はなぜ命令を拒んだりしたのだろう?
こんなにも酷いことをされて、拒むことすらできないオードリーを前にして、ただ受け入れがたい命令一つを前に、自己保身に走ろうとしてしまった。
自分は、なんて卑怯で、臆病な人間に成り下がってしまったのだろう。
オードリーを守れるのは、もう自分しかいないのに。わかっていたはずなのに————
バナージの頬を、涙が伝う。
「ご、ごめん、なさい、ごめんなさいっ……」
バナージはフロンタルの膝に縋りつくように身を乗り出し、必死にその顔を見上げた。
「おれ、します、ちゃんとしますから、もう、そんなこと、しないで、……待ってください……!」
「素晴らしい心がけだが、私としては待つ必要は感じていないな。説明した手順通りにやってみるといい」
「は、い……っ」
ぐす、と鼻をすすって、バナージは口を開け、震える舌をゆっくり突き出した。
フロンタルの性器に顔を寄せ、差し出した舌をその重みの下に押し込む。味を感じるほどの接触ではないが、生ぬるい体温に嫌悪感が騒ぐ。
持ち上げた柔い竿はその重みのせいで、簡単に取り落としてしまいそうだ。この状況でそんな失態を見せた先に何が待っているか、想像するだけで吐きそうになる。逃さないように慌てて唇全体で咥え込み、吸い上げるように口腔へ誘い込んで、しっかりと竿の半ばから先を口の中に含んだ。
「んぶ、……んん……」
涙を溜めた目で、バナージはフロンタルを見上げた。
満足げに笑ってでもいれば、まだ安心できたかもしれない————結局のところ、バナージが感じる屈辱すら、フロンタルは重要視していないようだった。
(途中なんだ、これは、ただの————)
自分に突き付けられた言葉は、そのままの意味を持っているのだと、バナージは理解せざるを得なかった。
用を成すようになるまで、刺激を加える。
そして、「用を成す」ようになったフロンタルのものが、オードリーを犯す。
自分は、愛する人の純潔をこの男が無惨に踏みにじる、その準備をさせられているのだ————
「う、ぅ……」
バナージの喉から、呆けたような呻き声が漏れる。
光を失った瞳が涙に濡れて、とろりと揺れる。
その唇がちゅぼ、ちゅば、と聞き苦しい音を立ててフロンタルのものにしゃぶりつき、より深くまで導き入れる。柔らかな頬が力んでわずかに凹み、必死に吸い付く。
その先に待つものを知っていても、やめるわけにはいかない。逆らう選択肢はすでに取り上げられている。要求を叶えて、従って、少しでもマシに、わずかでもその悪意を和らげて……
(そして、どうなるんだ……)
最後に思考に響いた、虚ろな呟き。
バナージの顎から、溢れた唾液と涙が混ざり合って、滴った。