◆
馬鹿な女だ、と自分でも思う。
六十余年。この歳になるまで、私は内心で男というものを毛嫌いしながら生きてきた。女であるという、ただそれだけの理由で理不尽に奪われ、踏み躙られてきた人生だったからだ。
だというのに、今の私はどうだ。
ソファの上で、親子ほども年の離れた青年の前で、自ら足を開いている。
──彼になら。
そんな甘い囁きが、心の奥底から湧き上がってくるのを止められなかった。
彼は何も言わない。ただ、その暗い瞳で私を見下ろしている。その視線が、私の全てを暴き立てるようで、ぞくりとした快感が背筋を駆け下りた。
私は震える手を伸ばし、彼の熱く硬くなったものを掴んだ。その禍々しいまでの存在感。これが私の中に入るというのか。恐怖と、そして抗いがたい期待が同時に込み上げてくる。
そして自らの手で、それを最も秘すべき場所へと導いた。そこはすでに私の意思とは無関係に濡れそぼり、彼を受け入れる準備を整えている。長年、使われることのなかった場所が、今、こんなにも浅ましく開かれている。
ずぶり、と。
熱い塊が、私の体内へと侵入してきた。
「ん゙っ……!」
息が詰まる。想像を遥かに超える大きさと熱。それが狭い道を無理やりこじ開け、内壁を押し広げていく。ぎちぎちと、肉が軋むような感覚。
痛い。だが、それ以上に。
──満たされる。
空虚だった体の中心に、巨大な楔が打ち込まれる。その圧倒的なまでの存在感が私という人間の輪郭を、内側からなぞっていくようだった。
「……どうですか、先生。苦しいですか」
耳元で囁かれる声は、驚くほど穏やかだった。
「……少し、だけ」
かろうじてそう答えるのがやっとだ。だが、その言葉とは裏腹に、私の体は彼の存在を受け入れ、自ら熱い蜜を溢れさせ始めていた。
その反応を確かめるように、彼がゆっくりと腰を動かし始めた。
ず、と肉が引き抜かれる感覚。そして、ぐ、と再び深く突き込まれる衝撃。その度に腹の底で熱い塊がぐり、と蠢く。
「あ、ぁ……ん、んんっ……!」
これが私の声──? 最初は悲鳴に近かった声が、次第に甘く、切ない響きを帯びていく。彼の動きが徐々に速度を増すにつれて、ぬちゃぬちゃと卑猥な水音がリビングに響き渡り始めた。
信じられない。この私が、こんな声を上げているなんて。
恥ずかしい。
はしたない。
浅ましい。
ああ、でも。
不思議なことに、私の心は奇妙な高揚感に包まれていた。
彼は私を支配している。だが、それはかつての夫のような暴力的な支配ではない。彼は私の心と体の全てを理解し、その上で、私を「女」として扱っている。
その事実が私の心の奥底にあった長年の渇望を満たしていく。認められたい。理解されたい。そして、誰かに全てを委ねたい。そんな自分でも気づかなかった願望が今、満たされているのだ。
◆
「あ、あ、ああッ……! イサク、君……!」
もはや羞恥心などどこかへ消え去っていた。私は彼の首に腕を回し、その広い背中に爪を立てた。もっと深く、もっと激しく、私を掻き乱してほしい。そう、喘ぎながら懇願する。
彼の肌から立ち上る汗と男性的な匂いが、私の嗅覚を麻痺させる。その匂いを嗅ぐだけで体の芯が蕩けていく。
「……先生、素晴らしいです」
彼が感嘆するように言うと、一際深く、強く、その楔を打ち付けた。
「あ゙ッ——————♡♡♡」
絶頂。 脳が焼き切れるような強烈な快感が全身を貫いた。視界が白く点滅し、思考は停止する。ただ快楽の奔流に飲み込まれていく。
どれほどの時間が経ったのか。朦朧とする意識の中、私は自分の内で何かが爆ぜるのを感じた。熱い奔流が容赦なく注ぎ込まれ、腹の奥がきゅん、と疼く。その圧倒的な量と熱に私は再び小さな絶頂の波に攫われた。
◆
全てが終わったのだと、思った。
体は鉛のように重く、指一本動かせない。全身が倦怠感と満たされたような虚脱感に包まれている。荒い呼吸を繰り返しながら、私は虚ろな目で天井を見上げていた。疲労困憊とはまさにこのことだろう。
隣で彼もまた深く息をついているのがわかる。
静寂が訪れる。だが、それは長くは続かなかった。
彼がゆっくりと身を起こしたのだ。そして──
「……え?」
信じられなかった。彼はまだ満足していないというのか。
彼のそれは、先ほどまでの熱を失うどころか、むしろさらに硬度を増しているようにさえ感じられた。この若者の底知れぬ体力に私は恐怖すら覚えた。
「ま、待ちなさい……。私は、もう……」
懇願はしかし、彼の耳には届かない。彼は私の体を反転させると、ソファの上に四つん這いにさせた。まるで獣を扱うかのような仕草。その屈辱的な体勢に私の頬が熱くなる。
「無理ではありません。貴女の体はまだ僕を求めている。わかるんです。体を重ねれば、それくらいの事は」
彼はそう言うと、背後から再びその熱い昂りを私の最奥部へと突き入れた。
「あ゙っ……! お、奥が……!」
先ほどとは違う角度、違う深さ。彼のものが私の内壁を容赦なく抉る。その衝撃に私の体は再びびくんと跳ねた。
彼は私の腰を掴むとまるで道具のように扱い、激しく腰を振るった。その動きは先ほどよりもさらに深く、激しい。それはもはや交合などではない。一方的な徹底的な蹂躙だった。
「ひ、ぎぃッ……! あ、あぁ、あ゙ああァッ!!! ♡」
もはや声にならない絶叫が迸る。快感の波が、次から次へと押し寄せてくる。もう、何が何だかわからない。ただ、彼の与える快感に身を委ね、獣のように啼き叫ぶことしかできない。
思考が、完全に停止する。私はもはや、アガサ・メーベルではない。ただの、一体の雌。彼の欲望を受け止めるための器──その事実に、私は言い知れぬ興奮を覚えていた。私の全てが暴かれ、犯されている。その快感に、溺れていく。
「あ゙ああァッ——————♡♡♡」
二度目の、そして先ほどよりも遥かに強烈な絶頂が私を襲った。全身が硬直し、意識が遠のいていく。その最中にも彼は容赦なく腰を動かし続け、その熱い欲望を私の体内に注ぎ込んだ。
◆
ようやく、解放された。
彼はゆっくりと身を引き抜くと、ぐったりと脱力した私の体に覆いかぶさった。汗で濡れた肌が触れ合う感触が、妙に生々しい。部屋には二人の体液が混じり合った濃厚な匂いが満ちていた。
「……はぁ……はぁ……」
私は荒い呼吸を繰り返すだけで、言葉を発することもできない。だが、その時。
彼が私の顔の横に何かを突き出した。
それは彼の性器だった。 先ほどまで私の体内を荒らし回っていたそれは、まだ完全には萎えておらず、生々しい熱を帯びている。先端からはとろりとした液体が滴り落ちていた。
「……っ、一体、何を──」
ここまで言った所で、私はそれが何を意味するのか、本能的に理解した。
──これを、舐めろというのか。
さすがに、それは。 最後の理性が、それを拒絶しようとする。だが体は動かなかった。それどころか、私はその禍々しい存在感に魅入られ、目が離せなくなっていた。
私はゆっくりと、震える手でそれに触れた。まだ熱く、脈打っている。その感触が私の指先から全身へと伝わっていく。
そして意を決して、それを口に含んだ。
「んっ……」
生暖かく、少し苦い味が口の中に広がる。それは彼自身の匂いであり、そして、私自身の匂いでもある。私はその先端に舌を這わせ、滴り落ちる液体を舐め取った。そしてゆっくりと、それを口の奥へと含んでいく。
ずちゅ、と。卑猥な水音が響く。そして、私がまるで赤子が母乳を吸うかのようにそれにしゃぶりつくと。
「んぐっ……!?」
彼の性器は私の口の中でより大きく、そして硬くなった。喉がふさがれるように苦しい。驚いて口を離そうとしたが、彼はそれを許さなかった。彼は私の頭を片手で掴むと、その動きをコントロールし始めた。深く、浅く、時には激しく。
「んぐぅっ……ぅ、ちゅ……れろ……」
喉が鳴る。苦しい。だが、逃れることは許されない。私は必死に彼の要求に応えようと、舌を這わせ、吸い付く。それはまるで彼への絶対的な服従を示す儀式のようだった。
やがて、彼の呼吸がわずかに乱れ始めた。その兆候を察知した私が一際強く吸い付く。そうしなければならない、と知っていたわけではない。これもまたやはり、私の頭の奥から湧いてでてきた答えを行動に移したに過ぎない。
「……っ」
短い呻きと共に、彼の体がわずかに強張った。熱い奔流が私の口の中に注ぎ込まれる。
その量と勢いに思わず咽そうになるが──
「……飲んでください、先生」
ああ、まるで自分が自分ではないようだ。彼の言うことなら、なんだって聞いてあげたくなってしまう。そうして私はゆっくりと、その白濁の全てを喉の奥へと流し込んだ。
全てを飲み干すと、彼は満足げに頷いた。そして私の唇に残った液体を優しく指で拭いながら「よくできました」と言った。
その声は、まるで優秀な学生を褒めるかのようだった。
◆
全てが終わり、私はソファの上でただ呆然と横たわっていた。
彼はすでに身なりを整えている。私もそうしたい所だが、あいにく体が動かない。
「先生。最後に一つ、お願いがあります」
「……何でしょう」
私は虚ろな声で答えた。私に何かをしたいというのなら、何をしてくれても構わない──ただ、今は少しだけ休ませてほしい。
「貴女の指で、そこを押し広げてください」
彼は私の秘部を指差した。
「僕に、“中”を見せてください」
「え……?」
その言葉の意味を理解した瞬間、私の顔が羞恥で熱くなった。
なぜそんな事を。
疑問が頭をよぎるがしかし、なんとなくわかる様な気もする。
彼はきっと、
私がちゃんと、彼のモノになったかどうかを。
私は理屈ではなく、本能でそれを理解した。
私はゆっくりと、震える指を自らのその場所へと伸ばした。そして、彼の欲望で満たされたそこを、自らの手で押し開いていく。
そこは先ほどまでの行為の痕跡が生々しく残っている。彼の体液で濡れ、赤く腫れ上がった私の秘部。
そんな場所をまじまじと見られるのは確かに屈辱的だ。彼はずいぶん酷い男だな、と思う。だが同時に。
──満たされている。
私はそう感じていた。
「先生、今ご自分がどんな顔をしているかわかりますか?」
彼の質問に私は答えられない。いや、答えたくない。
なぜならきっと、私はとてもとても、浅ましい笑顔を浮かべているだろうから。