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ある晩のことだった。
いつものように音もなくドロテアの私室の扉が開かれ、寝間着姿のイサクが入ってくる。
ドロテアは読んでいた本を取り落としそうになるのを必死でこらえ、心臓が氷の手に掴まれたかのような衝撃に身を強張らせた。
「義母上。今宵は少し趣向を変えましょう」
イサクの静かな声には、有無を言わせぬ響きがあった。
小さなビロードの小箱をテーブルに置くと、ドロテアに命令する。
「全てお脱ぎなさい」
格付けは既に済んだのだ。抵抗などもはや彼女の選択肢には存在しない。
ドロテアは震える指でゆっくりとネグリジェの紐を解いた。
肌が月明かりとランプの光に淡く照らし出される。
一枚、また一枚。
下着を脱ぐ際には躊躇をしたが、それでもイサクから放たれる圧に負けるようにして、ドロテアは生まれたままの姿となった。
全裸になったドロテアに対し、イサクは小箱から銀製のクリップのようなものを取り出す。
精緻な細工が施されたそれは宝飾品にも拷問具にも見えた。
「こちらへ」
促されるまま近づくと、イサクはドロテアの両方の乳首にその冷たい金属を装着した。ひやりとした感触の直後、万力で締め上げられるような鋭い痛みが走る。
「あっ……!」
思わず漏れた声に、イサクは満足げに頷いた。
クリップからは細い銀の鎖が伸びており、ドロテアが少しでも身じろぎするたびに、その鎖が揺れて乳首の痛みを増幅させた。
「次はそのままガニマタで腰を深く落とすのです。もっと。馬に乗るような格好で」
それは貴婦人が人前で取るにはあまりに下品で、獣じみた姿勢だった。
両足は大きく開かれ、女としての最も秘すべき部分が無防備にイサクの眼前に晒される。
ドロテアの顔は屈辱で燃えるような熱をもった。
「そのままで」
イサクは言葉通りにそのままドロテアを放置する。
限界が来るのはすぐだった。
ろくに運動もしていない普太腿の筋肉は限界を訴えてぷるぷると震え、乳首の痛みと相まって、ドロテア全身からは汗が噴き出した。
(なぜ、私が……こんな……)
サザーランド侯爵夫人である自分が、なぜこの肥満児に獣のような真似をさせられているのか。
理屈ではわかっている。自分はイサクに完膚なきまでに敗北したのだ。
しかし頭での理解と心の受容は全くの別物だった。
砕け散ったはずのプライドの破片が心に刺さり、チクチクと痛む。
イサクは椅子に腰かけ、まるで舞台の演目でも鑑賞するかのようにドロテアの無様な姿を眺めていた。
やがて彼はゆっくりと立ち上がると、彼女の目の前に立ち──そして、こともなげに足を上げ。
そのつま先がドロテアの露わになった女陰に、そっと触れた。
「ひっ……!」
声にならない悲鳴が喉の奥で詰まる。
それは暴力的な接触ではなかった。
むしろ羽毛でなぞるかのように、優しく、探るような感触。
だが、だからこそ、その行為に含まれた絶対的な侮蔑と支配の意思がドロテアの精神を根元から揺さぶった。
汚らわしい。屈辱的だ──そんな殺してやりたいほどの憎しみが腹の底からこみ上げる。
しかし、その感情とは裏腹に。
体の奥がずくりと疼いた。
乳首を苛む鋭い痛みと、太腿の悲鳴を上げるような疲労感、そして急所を靴先でなぶられるという極度の屈辱。
それら全てが混沌とした渦となり、ドロテアの体の中で忌まわしい熱へと変換されていく。
下腹部に熱い痺れが集まり、彼女の意思に反してそこがじわりと濡れていくのがわかった。
(いや……いやだ、こんな……!)
この感覚を知っている。
先夜、鞭打たれながら絶頂に導かれた時と同じ、背徳的で抗いがたい快感の兆し。
自分の体が、この屈辱を「喜び」として受け入れ始めている──その事実がどんな痛みよりもドロテアを絶望させた。
涙が止めどなくドロテアの頬を伝う。それは悲しみや苦痛だけの涙ではない。憎しみと、屈辱と、そして芽生え始めた淫らな喜びがないまぜになった、滅茶苦茶な感情の奔流であった。
ドロテアは奥歯を強く食いしばる。
──獣のような喘ぎ声だけは、決してこの小僧の前で漏らすものか
その最後の意地が彼女をかろうじて繋ぎとめていた。
だが、イサクはそれを許さなかった。
彼のつま先はもはやただ触れているだけではない。
粘り気のある熱い液体の中で、まるで生き物のように蠢き始める。柔らかい肉の襞をなぞり、その奥にある硬い芯を執拗にこね始めたのだ。
「あっ、あ……や、やめ……!」
食いしばった歯の隙間からかすれた懇願が漏れる。
──やめて欲しい
心はそう絶叫しているのに、体は正直だった。
思考とは裏腹に腰が勝手に揺れ、その不遜な愛撫をより深く受け入れようとしてしまう。
「いい声です、義母上。もっと鳴きなさい」
イサクの冷たい声が火に油を注ぐ。そうしてつま先が、最も敏感な一点をぐ、と強く押し付ける。
その瞬間、ドロテアの脳裏で何かが焼き切れた。
「ヒギィイイイイッ!」
それはもう、人の声ではなかった。理性の堰が完全に決壊し喉から迸り出たのは、プライドを捨て去った雌の咆哮だった。
背中が大きく弓なりに反り、全身が激しく痙攣する。熱い奔流が内側から迸り、視界が白く点滅した。乳首のクリップがガチャガチャと鳴り、その痛みすらもが快感の燃料となって燃え盛る。
長い長い痙攣の果てにドロテアの体から全ての力が抜けた。
支えを失った体は、汚泥のように絨毯の上へと崩れ落ちる。口からは涎が垂れ、かすかにアンモニアの匂いが漂った。屈辱の絶頂は彼女から淑女としての最後の箍さえも奪い去っていた。
イサクは床に伸びて浅い呼吸を繰り返すだけの肉塊となったドロテアを絶対零度の瞳で見下ろし──
「随分と感じやすい体だ。まあゆっくりと分際を教え込んであげます」
口元に笑みさえ浮かべ、イサクは去って行った。