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イサクはマリアンヌからの何通目かの手紙を読んでそんな事を思った。露骨な誘いというわけではない。内容は無難なものだが、注意深く観察すれば文章の端々に滲むモノがある。
だがそれを以て
──まあその辺は世界が違えど、という所なのかもしれないな。
案外ぐいっと強引に押せば堕ちるのかもしれない──が。
ただ、とイサクは考えを進めていく。
マリアンヌはオルレアン家の夫人である。つまり既婚者だ。となれば、軽々に誘うわけにもいかない。不貞の罪は案外に重い。ましてや、イサクがやらかしたとなればサザーランド侯爵家の家名を穢すことになるだろう。
それにリシャール・ド・オルレアンがマリアンヌの手紙に全く気付かないと言う事があるだろうか?
──あの手の男はやたらと細かい。そして執拗だ。家の事ならば隅から隅まで把握していないと気が済まないはず。
顔を合わせた時に
──勘というのが僕自身が掌握しきれていない僕の感覚が反応したものならば。
あるいは、罠だろうかとイサクは警戒した。
──父さんとオルレアン卿は何やら確執があったという話は聞いているし。
罠であるなら仕掛けたのは誰か。マリアンヌか、リシャールか、あるいは二人で示し合わせてか。手紙という薄い紙の上では、そのどれもが等しく有り得た。
イサクは便箋を文机に伏せて暫し考えを巡らせるが、余り良い考えは浮かばない。そもそもイサクという青年は確かにあれこれと考えるヘキがあるが、別に
ならばどうすればいいか──イサクは手っ取り早い方法を選んだ。
すなわち直接対面である。
別に顔を見れば何を考えているか分かるとかそんな特殊能力はイサクにはない。だが、罠を仕掛けるほどグレイルの息子である自分を憎んでいるのなら、それらしき感情の切れ端くらいは見て取れるかもしれない──そのくらいの感覚だ。
問題は口実。
侯爵家の庶子が公爵その人へ面会を願い出るなら建前が必要だ。
そこでイサクが行き着いたのはヴァリーラという伝手である。二人はもはや知らない仲ではない。何だったらイサクは彼女の陰部まで見た事がある──まあその経験はヴァリーラにとっては黒歴史でしかなさそうではあるが──ともあれ、研究の手伝いの件もあるし、オルレアン公爵家の書庫を見たいくらいの名目で良いだろうとイサクは踏んだ。
結句、ヴァリーラはイサクの見立て通り「ま、まあいいですわよ……」とあっさり頼みを了承するに到る。
渋々というていではあるが、口の