ナンパをからかっていた男の娘がチャラ男に騙されて酷い目に遭う話 作:ちょっとだけマイナー性癖マン
可哀想は可愛いですよね。
約束の日が刻一刻と迫っていた。
昼下がりの柔らかな光が差し込む自室のベッドの上で、僕はスマートフォンを握りしめ翔平さんからのメッセージを何度も読み返していた。
『今度の休み、うちでゆっくり映画でも見ない?』
たったそれだけの短い文章が僕の心を幸福感で満たしていく。
指先でそっと画面をなぞり、翔平のアイコンをタップする。
そこに表示されるのは爽やかな笑顔を浮かべた彼の写真。
この笑顔に、この優しい声に、僕は心を奪われてしまったのだ。
(翔平さんの、お家……)
その言葉の響きだけで頬が熱くなるのがわかる。
二人きりの、甘い時間。
前回のラブホテルでの出来事が鮮やかな記憶として蘇る。
乱れたシーツの上で彼に与えられた、快感。
お姫様のように優しく扱ってくれた、彼の大きな手。
必死に動いてくれた彼の顔から滴る汗。
最後にお腹で感じた彼の熱。
──そしてお腹に感じてしまった自身の熱も。
(ううん、違う。僕は、翔平さんの彼女なんだから)
彼はそう言ってくれた。「俺の自慢の彼女だよ」と。
男であるという事実は未だジクジクと心を蝕んでいる。
しかし、この甘美な現実の前では些末なことに思えて来た。
(翔平さんが喜んでくれるなら、なんだってしたい)
翔平さんの為に僕にもできる事がある、その事実が嬉しかった。
勢い良くベッドから起き上がる。
足取りは羽の様に軽かった。
デート当日。
少し緊張した面持ちでバスルームの鏡に向き合っていた。
床には薬局で購入した使い捨ての器具と、ぬるま湯を張った洗面器。
(前回は、全部翔平さんにやってもらっちゃったけど……)
思い出すだけで耳まで赤くなる。
あの時はただ流されるままだった。でも、今日は違う。
(今日は、最初から……僕が、綺麗な状態で会いたい)
それは、大好きな彼氏に対するささやかなプレゼント。
完璧な「彼女」には決して成れない僕の、無駄な足掻きかもしれない。
慣れない手つきで、説明書と格闘しながら準備を進める。
少し戸惑い、時折小さく息をのむ。
けれど、その先にある彼の喜ぶ顔を想像すれば、不思議と頑張れた。
すべてを終え、シャワーで身体を清めた後、新調した服と下着に身を包む。
ふわりと広がるパステルカラーのスカート。
胸元にリボンのついた、繊細なレースのブラウス。
そして、その下には揃いのデザインの、可愛らしいランジェリー。
(うん、完璧!)
鏡に映る自分は、どこからどう見ても、恋に胸をときめかせる一人の女の子だった。
完璧な「彼女」の姿に満足し、僕は期待に胸を膨らませながら、約束の場所へと向かった。