スキル〈調教〉と〈デイリーガチャ〉の二刀流で異世界性奴隷ハーレムライフ 作:欲求不満キツネ
「うわぁ……意外と混んでるんですねぇ………」
「まぁ、一番難易度がちょうど良い迷宮だからな。低ランクから半ばくらいまでの冒険者は、だいたいここに集まるだろ」
翌日。
俺とヘリーナは、始まりの街リスタから馬車で数時間ほどの場所に位置する【グルエニーの迷宮】にやって来た。
着いたのがちょうどピークの昼時だったためか、迷宮の入口ゲートには長蛇の列が連なり、周囲に展開された露店も冒険者達でごった返している。
【グルエニーの迷宮】。
この世界に数多と存在する迷宮の中でも、特に初心者にうってつけとされる分かりやすい迷宮だ。
その理由としてはまず構造の単純さが挙げられる。
普通の迷宮とは違い、【グルエニーの迷宮】は層ごとの区切りが明確。
イメージとしては高層ビルが地中に埋まってる感じだ。
一層に必ず一つ、下の層に抜ける階段があり、五の倍数の階には強いボス魔物が待ち受けている。
当然ながら下に行くほど現れる魔物が強くなって、ドロップアイテムや設置された宝箱の中身も豪華になる。
また【グルエニーの迷宮】は既にその大半が攻略済であるため、先人が魔物避けの魔石設置した安全地帯がそこら中にあるのも、初心者が挑みやすい理由だろう。
ライセンス所持者用の列に並んでしばらくすると、思っていたよりも早く俺達の番が回ってきた。
「お次の冒険者の方………お二人ですね。それぞれライセンスと冒険者プレートをご提示ください」
受け付けのお姉さんに冒険者プレートと、昨日アレナから貰ったライセンスを見せる。
「イツキ・ヤエミヤさんと、ヘリーナさんですね。本日は初めての迷宮攻略とのことですが、何かご説明など必要な点はございますか?」
「いや………あ、一つだけ。【グルエニーの迷宮】って確か、全部で百層まであるんでしたっけ」
「はい、そうですが………」
「百層のボスって、どんなやつなんですか?」
「百層のボスですか?ええと………
「え?い、いや、さすがにそんな無茶な事は考えてないですよ………。ただ単に気になっただけです」
さっき"大半は攻略済"と言ったが、実際に攻略が進んでいるのは九十九層のマッピングまで。
百層はボス部屋のみしか存在しないため、後はそこをクリアするだけで完全攻略…………なのだが。
ここ数百年、それを成しえた者は誰一人居ないそうだ。
理由は単純明快。
ラスボスの変異
当時の精鋭揃いの攻略パーティを軽々と蹴散らし、あの勇者ですらタイマンでは勝てないとまで言われるかのドラゴン。
名前からしてゲーマー魂が疼くが、しかしまだ俺が挑むには格上すぎる。
「もうっ、命は一つしかないんですからね!?"命大事に"、ですよ!」
「あはは、分かってますよ」
初対面なのにここまで真剣に心配してくれるなんて、受け付けのお姉さんは優しい人だ。
きっと過去に何人もの冒険者が、こんな感じで分部不相応な挑戦をした挙句、帰らぬ人になったのだろう。
それを目の前で見ていたからこそ、お姉さんの言葉には確かな説得力があった。
お姉さんの疑わしげな視線を背に受けながら、俺とヘリーナはゲートを潜り迷宮に足を踏み入れた。
◇◆◇◆◇◆
〜第九層〜
迷路のような薄暗い洞窟を道沿いの明かりに沿って進んで行く。
今のところ、探索はこの上ないほど順調に進んでいた。
やはり上層はそこまでの難易度は無いようで、マップも複雑でなければ五層の中ボスもこの前倒したサンダー・バイソンと同じくらいの強さだった。
おかげで迷宮に入ってからまだ一時間も経っていないと思う。
『グルルルル………』
不意に、十字路になった暗闇の先から獣のような唸り声が聞こえてきた。
「ご主人様………」
「ああ。ヘリーナ、援護を頼む」
「はい」
腰の剣を抜いた俺の前に姿を現したのは、闇に溶けるような漆黒の体毛をその身にまとった大型の狼の魔物。
鋭い歯を剥き出しにしてこちらを睨む狼の額には三日月のような白い模様があり、背後にはそれと同じものがいくつも闇に浮かび上がっていた。
三、四………少なくとも六体はいる。
しかも〈気配感知〉が感じ取った殺気の数はそれ以上だ。
おそらく奥で気配を殺して隠れているのだろう。
漏れ出た気配すら敏感に察知する〈気配感知〉があったからこそ気づけたが、これが無ければ危うく不意打ちを食らうところだった。
群れで役割を分担し的確に獲物を捉えるのは、彼らブラックウルフの常套手段だ。
『グルァアアアッ!』
一番手前のブラックウルフが飛び上がり、そのズラッと並んだ凶悪なキバを剥き出しにして俺に襲いかかる。
構えた剣を咥えさせて噛みつきは防いだものの、大型犬以上の立派な体格を誇るブラックウルフの全体重を支えるのは中々に辛い。
前足で抑えられる前に切っ先を倒しつつ腹に横蹴りを食らわせると、壁に叩きつけられたブラックウルフから『ギャンッ!?』と悲鳴が漏れる。
「"サンダー・ランス"!」
一体目は陽動だ。
体勢を崩した俺の元に二匹の狼が飛びかかるが、その前にヘリーナが放った雷の槍に貫かれ撃墜され、痙攣してから動かなくなった。
しかし彼らは仲間が目の前で殺られようと、一切怖気づかない。
追加で三体の狼がそれぞれ違う方向から壁や天井を蹴り鋭いキバをギラつかせ迫る。
その背後には、俺の一挙一挙を見逃さず次に備える狼の姿もあった。
他の狼よりも一回り大きく魔力の威圧感も強いことから、あいつが群れのボスである可能性はかなり高い。
俺は魔力で全身の身体強化を施し〈剣術〉スキルを発動。
研ぎ澄まされた感覚の中で、限りなく最適に近い正確な動きで狼の首を落とす。
断末魔さえ許されなかった彼らは、どしゃっ!と地面に崩れ落ち光の粒子となって消えてしまった。
ちらりと視線を向けると、先程ヘリーナが倒した二匹もいつの間にかその姿を消していた。
代わりにその場に落ちていたのは、小さな細長い八面体の物体だ。
俺の近くに転がっていた三つのそれを拾う。
「これが魔石か………」
魔石とは、迷宮に住まう魔物がドロップする唯一のアイテムだ。
迷宮の内部でエンカウントした魔物を倒すと、外とは違い光の粒子となって消滅してしまう。
近年の魔術師による研究で、この光の粒子は魔力・生命力に起因するものだと判明し、これが迷宮内で循環・再構築されることで魔物が繰り返し生み出されるのだと結論付けられた。
迷宮内の魔物がいくら狩っても絶滅しないのは、これが原因なのだろう。
そのため魔物ごとのドロップアイテムと言う概念が存在せず、代わりに落ちるのがこの魔石だ。
魔石は魔物ごとに模様や構造が違っていて、それ専門のお店に持っていくとそこそこの値で買い取ってくれる。
もちろん珍しい魔物や強力な魔物の魔石は売値も高く、ボス級ともなれば数十万ユラで取引されることもざらにある。
「等級はEくらいかな。ヘリーナ、そっちはどうだ?」
「こっちも全部Eでしょうね〜。………あ。ご主人様、頭左に傾けてください」
「おう」
言われた通りひょいっと頭を傾けると、そこを光の矢が通って、音も無く接近していたボスの狼の眉間を見事に貫いた。
巨体が揺れ、崩れ落ちる。
「さすがにまだまだ余裕だな」
「敵がLv10前後ですもん。ご主人様、本当に五十層くらいからじゃなくて良かったんですか?」
ヘリーナからしたらさすがに格下すぎて、少し退屈だったようだ。
まぁその気持ちは分からなくもない………というか、正直めっちゃ分かる。
俺だってこの手応えのなさにはちょっと飽きてきそうだ。
だがしかし。
「俺達はいくらスペックが化け物じみてるとは言え、迷宮に関しては素人も良いところだろ?だからいきなり難易度の高い層に行って何かあっても、誰も対処出来ないで詰みだ」
「それはそうですけど………。まぁ、ご主人様がそう言うなら仕方ないです。今のところはご主人様とのデートだと思って楽しみますぅ」
ささっと気持ちを切り替えたヘリーナが、ガバッ!と俺の腕に抱きついてきた。
俺の右腕をがっしり両腕でホールドし、寄りかかりながら上機嫌で鼻歌を歌う。
片手間に撃つ自身の魔法で全てカタがつくのを良いことに、迷宮なんてのはいざ知らずイチャイチャしようと宣言したのだ。
「………ったく、俺の話だけは聞いといてくれよ?」
「もちろんですぅ♪」