スキル〈調教〉と〈デイリーガチャ〉の二刀流で異世界性奴隷ハーレムライフ 作:欲求不満キツネ
トラップや罠のトリガーに成りうる偽の宝箱に対する心得、迷宮での基本的な心構えに基本知識など。
昨晩までに学んでいたことを二人で確認し合いながら、時には実物をつついてみたりして身に染み込ませて行く。
十四層まで進んだ辺りで一通りの確認とついでのお宝探しを終えたので、俺とヘリーナは次の階層に進むための階段を降りていた。
手すりも何も無い狭い螺旋階段を下り、その先で俺達の前に立ち塞がったのは、簡素な装飾のなされた巨大な石の扉だった。
これはボス部屋だ。
通常、五の倍数の層に用意されたボス部屋は迷路の
またその
しかし、現代には先人の残した階層ごとの
これを辿れば、誰でも迷わずボス部屋に到着出来るだろう。
…………では結局、目の前にあるこれは一体何なのか。
実は【グルエニーの迷宮】のボス部屋のうち、十五層・三十層・五十層・七十五層・九十層・百層のボス部屋は特別なのだ。
階段を降りたらこうして目の前に位置しており、そこで待ち構えるボスはそれまでの階層とは一線を画す強さを持つ。
要はここで振るいにかけられるわけだ。
先に進んでも生き残れるか否かを。
「ヘリーナ、どんな魔物が来ると思う?俺はミノタウロス」
「私はムカデですかねぇ………」
特に賭けるものは無いが、そんな予想をしつつ重厚な扉に手をかけた。
軽く押すと、扉はまるで誰かに引かれるかのようにズズッ………と重々しい音を立てて思いがけずスムーズに開いた。
左右の松明に照らされた部屋の中に足を踏み入れる。
「………あれか」
円形のリングのように一部だけ整備された部屋の中央部には、宙に浮かぶ光の粒子の塊があった。
ふわふわと浮かんでいたそれは、俺達が円に一歩踏み入れた途端、不気味に蠢き流体を思わせる動きで上昇。
一際眩しい光を放つ。
『グオオオオオッ!!』
「「っ!!」」
雄叫びと共に振り下ろされた拳が地を砕き、破片を四方八方に飛び散らせる。
円の中心で自身の胸をドコドコ叩き雄叫びを上げるのは、銀の毛皮を纏った巨大なゴリラだった。
〈鑑定〉スキルによって浮かび上がったかの魔物の名は"シルバーコング"。
Lv25のボス魔物だ。
『ゴルフォオオオッ!!』
野生のシルバーコングは動物園などで見る一般的なゴリラと大差ない大きさだが、目の前にいるこのシルバーコングの体躯は比べ物にならない。
高さだけで言ったら二階建て家屋とほとんど同じだろう。
銀色の体毛に覆われた肉体はボディビルダー顔負けの筋肉でガチガチに固められており、こちらを睨む赤い
レベルも感じる魔力の圧も、先程までの階層とは訳が違う。
自身の胸を叩くドラミングで魔力を撒き散らしたかと思うと、大きな咆哮を一つ放ちシルバーコングは思いっきり飛び上がる。
山なりに落下する奴の視線が捉えているのは、未だに棒立ちで動かない俺とヘリーナだ。
『ゴルルルッ────!!』
「【
さらっとそう呟いたヘリーナの正面から、極太の光線が放たれ一瞬でシルバーコングを呑み込んだ。
ヘリーナの固有スキル〈神聖魔法〉の一つ、【
見ての通り聖なる光を放つ魔法なのだが、ヘリーナはそれの指向性を正面に定めシルバーコングを狙い撃ちしたようだ。
普通は全方位に向けた拡散攻撃で、特に多対一の時に有効な魔法………なんだけど、相変わらずヘリーナの応用力と言うか魔法の才能と言うかは凄まじいな。
本来は、こんな平然と魔法の仕様を変更出来るはずないんだけどね。
「こう使う」、「こういう魔法だ」という固定観念に囚われている限り絶対に成功しないし、そもそも思いつきもしない。
徐々に光の線が小さくなって行くと、そこには既にシルバーコングの姿は見る影も無くなっていた。
一瞬であの巨体を消し炭にする威力の魔法とか怖すぎ。
「………いやー、さすがにLv25相手でもまだ戦闘にすらならないな。ヘリーナが優秀すぎる」
「えへへ〜………あっ!ご主人様、魔石の等級が"D"になってますよ!」
ドロップした魔石を取りに行ったヘリーナが歓声を上げる。
やっとか。
迷宮でドロップする魔石にはいくつか等級があり、今のところ確認されてるのはE〜S。
十五層でDに上がったってことは、やっぱり節目のボスの階層から魔石の等級が変化すると考えて良いだろう。
つまり、三十層のボスを倒せば"C"の魔石が落ちる…………と思われる。
ちなみにまだ未確認である百層のラスボスが落とす魔石は、"SS"なのではないかと実しやかに囁かれているそうだ。
魔石を〈
俺たちが入って来た入口の真反対にあったのは、あの石の大扉と全く同じ見た目の扉だった。
ここを通れば次の階層に進める。
………だが先に進む前に。
いつの間にこんな所にあったのか、金のさり気ない装飾がなされた小さな箱がちょこんと出口の前に置いてあった。
ボスを攻略した際に得られるクリア報酬がこれだ。
中には先程倒したボスの素材や武器、探索に役立つアイテムやシンプルにお金など。
実に様々なものが入っている。
クリアの度に中のアイテムは変わるため、開けるまでは何が入っているか分からない。
ヘリーナが意気揚々と開けた、その中には────。
「………え、なんでしょうこの鍵」
入っていたのは、なんとたった一つの錆び付いた鍵だった。
頭にくすんだ赤い宝石のはまった小さな鍵。
肩透かしも良いところだ。
まさかこんなものしか入ってないとは思っていなかったであろうヘリーナは、呆然とその鍵を拾ってまじまじと見つめる。
「"秘密の鍵"か………なんかの宝箱を開けるのに使うらしいぞ」
「その宝箱が何か分からないんじゃ話になりませんよぉ〜!」
「だな」
〈鑑定〉で見た限り、"秘密の鍵"というアイテム名と「宝箱の鍵」だと言うことしか分からなかった。
一体どこで、どんな宝箱に使うかなど………詳しい情報は一切ない。
不親切にも程があるだろう。
今のところ、使い道のないガラクタと一緒だ。
しかも報酬の中の一つならまだしも、宝箱の中にはこれしかない。
いくら上層だからとは言えあまりにも酷くないか………?
「う〜ん………まぁ最初はこんなものなんでしょうかねぇ」
「そう割り切るしかなさそうだな。下層に潜るほど報酬が豪華になるのは定石だし………ま、次に期待しようぜ」
「ですね〜………あっ」
「お?」
割り切るしかないとは言え、落胆の気持ちを隠しきれないヘリーナが鍵を片手に様々な角度で眺めていると、不意に頭の宝石が光を帯び、それは一直線に壁の方へ伸びて行った。
出口から十メートル程横にある場所。
光の道標はそこを指していた。
「………解放条件は分からんが、とりあえず行ってみるか」
「こ、これ、角度変えたら見えなくなるとかありません?」
いつ消えてもおかしくないので、俺とヘリーナは足早に光が示す壁の場所まで向かった。
近くに寄っても先程までと同じ何の変哲もないただの壁にしか見えない。
しかし試しに光が指す場所を触ってみると、驚いたことに少し押し込める隠しスイッチとなっており、カチッ!と音がして正方形に壁の一部が沈むと共に、人一人がやっと通れるような小さな抜け穴が空いた。
これは、隠し部屋に続く入口だった。
「………あっ!ご主人様、宝箱がありますよ!」
「本当だ。ヘリーナ、念のため警戒は怠るなよ?」
「はいです!」
万が一の場合もある。
こんだけ期待させておいて、「遥か下層に落とすための罠でした〜!」なんて展開も無いとは言い切れない。
そう言うのを平然としてくるのが迷宮だ。
警戒するに越したことはないだろう。
長年放置されていたのか、表の階層に比べ幾分か荒んだ隠し部屋を進み宝箱の前へ。
ヘリーナが例の鍵を宝箱に試してみる。
「ん、と………あ、入りました。ご主人様、この宝箱開けて大丈夫なやつですか?」
「一応〈気配感知〉で反応がないからミミックじゃないのは確定だが…………まぁ、せっかくだし開けてみようぜ」
「へへっ、そう来なくっちゃですぅ!何が入ってるのかなぁ〜」
わざわざこんな場所に隠していたのだから、きっと凄いお宝に違いない。
ドキドキワクワク。
興奮を隠しきれない様子のヘリーナが、ついに宝箱の蓋を開けた─────と、同時に襲いかかる浮遊感。
「「…………」」
突然に無くなった地を踏みしめる感覚と、当然のようにすっからかんな宝箱の中。
俺とヘリーナの頬が引き攣る。
「うおわあああああーーーっ!?」
「ほんっっっとうに何なんですかぁあああ!!」
ブチ切れたヘリーナの怒声と俺の悲鳴は、ポッカリ空いた落とし穴の底に響いて消えて行った。