スキル〈調教〉と〈デイリーガチャ〉の二刀流で異世界性奴隷ハーレムライフ 作:欲求不満キツネ
──────ガシャアアアンッ………!!
盛大な音を立てて、めり込んだ壁から落下したデュラハンが膝から崩れ落ちる。
しかし、上半身が倒れる前に大剣を地面に突き刺すことでそれに抗い、片膝立ちで何とか持ち堪えた。
ギギッ………と明らかに鈍った動きでデュラハンが体を持ち上げる。
鎧の胸部には真一文字の跡とそこから広がるヒビが走っていたが、内から漏れ出た黒い瘴気によって見る見るうちに修復されてしまった。
「再生能力持ち………」
「ですけど、どうも不完全っぽいですよ………鎧は修復出来ても、受けたダメージは回復してません」
アンデットだからなのか、ヘリーナから受けた〈神聖魔法〉によるダメージが特に大きいように感じられる。
俺のはただの斬撃だしな………もしかして、今回復したのは俺が与えた分のダメージだけってことなのか?
アンデットにとって〈神聖魔法〉や光属性に分類される浄化系統の魔法は唯一の弱点。
それはどれだけ上位種でも変わらないはずなので、このデュラハンにとってもヘリーナは天敵なのだろう。
となると………。
「ヘリーナ、ガンガン攻めろ!俺が援護する!」
「了解です!」
『………ッ!!』
ヘリーナが術の構築に入ると共に、ググッ!と足を曲げたデュラハンの姿が残像を残して消失し、一瞬にしてヘリーナに迫る。
巨体の割に物凄く速い。
一方、魔法陣の構築はまだ八割。
これはヘリーナが遅いのでは無い。
より完璧な魔法陣を作り上げるために。
速くしようと思えば、瞬きする間にヘリーナに迫ったデュラハンより先に魔法陣を構築するなど彼女にとっては簡単だ。
と言うかヘリーナは「無詠唱かつ魔法陣無し」で魔法が発動できるチート持ち。
よって本来は必要のない工程なのである。
もちろんその工程を省かないことで魔法の性能を100%以上引き出すことも出来るし、陣が正確ならばより効果や精度が上昇したりもする。
だからわざわざ詠唱や魔法陣を省かず魔法を使用する人は普通に居るのだ。
例に漏れずヘリーナもそう。
風を切り振るわれた大剣が、ヘリーナの細い首を狩ろうとその柔肌を─────。
「ふっ!!」
真下から両手で振り上げた片手剣が大剣の側面を捉え、ギャリギャリッ!と激しい火花を撒き散らす。
重い。
重いが、先程よりは明らかに鋭さが欠けている。
大剣を弾き上げ、ガラ空きになったデュラハンの腹部に必殺のヤクザキックをお見舞い。
体勢を後ろに崩したデュラハン向けてそのまま上段から〈剣術〉スキルの斬撃を喰らわせる。
手応えは中々。
しかし深々と刻まれたその傷も、やはり黒い瘴気で修復されてしまった。
「ちっ」
「ご主人様、しゃがんでください!」
背後のヘリーナからの合図。
瞬時に俺がしゃがむと、視界を埋め尽くした極光にデュラハンが身構える。
【
十五層でシルバーコングを消し炭にした魔法だ。
あの時よりさらに出力の上がった極光がデュラハンと衝突する。
『─────ッ!!』
驚いたことに、デュラハンは大ダメージを受けるどころかその正面に構えた大剣で極光とせめぎ合っていた。
しかしさすがにそう長くはもたないのか、ズズッ………!と地面を削りながら徐々に後退を余儀なくされている。
不意にデュラハンの炎が激しさを増すと共に、魔力が揺らぐ気配がした。
─────〈闇属性魔法〉・【
漆黒の瘴気が大剣を覆う。
すると、押され気味だったデュラハンの後退が止まり、かろうじて競り合いに引き戻した。
そして。
ズンッ!と重々しい踏み込みからの横薙ぎで極光が弾かれ、デュラハンの斜め後ろの壁に命中して部屋全体を激しく揺らした。
「むっ。亡霊の分際で中々やりますね………!」
目を細めたヘリーナの背後に、いくつもの魔法陣が多重に展開。
それぞれ違った複雑な幾何学模様が編み込まれている。
「ご主人様、隙を作ってください。これで仕留めます」
「おーけー、任せとけ!」
大剣を構えたデュラハン向けて、今度は俺から間合いを詰める。
剣術スキル同士のぶつかり合いだ。
研ぎ澄まされた感覚の中で、相手の動きに合わせて次々と変わり変えられて斬撃を繰り出す。
瞬時の判断力、数ある手の中から有効打を選ぶ決断力、またそれらを同時にこなす脳のキャパなど。
今までのどの戦いとも比べ物にならないほど、体も脳も使いまくっている。
「ぐおっ………!」
真上に弾かれた。
剣を握っていた右腕にビリビリ衝撃が走る。
仰け反った俺向けて容赦なく大剣の突き。
ボッ………!と一瞬にして目の前が漆黒に染まった。
「ご主人様っ!」
「んのっ、舐めんな!」
後転の要領で体を折りたたんで後ろに手をつき、その反動と手のひらの突き放しを利用してドロップキック。
よろけたデュラハンの腹部を足場に、〈
〈剛腕〉+〈剛拳〉+固有スキル〈狂化〉を発動。
瞳が紅く染まると共に、赤黒いオーラのようなものが俺の体を包み込んだ。
「"
拳が鎧に命中した瞬間、魔力と赤黒いオーラが迸り凄まじい衝撃をデュラハンに与える。
漆黒の鎧にビシビシッ!とヒビが広がり、さすがのデュラハンも体をくの字に曲げて思わずよろける。
依然として瘴気による修復は健在だ。
だが今回は、それが始まる前に。
「────〈セイクリッド・オブ・ライトニング〉っ!!」
幾重にも張り巡らされた多重陣からバチバチと魔力がスパークし、連続して放たれた幾重もの閃光がデュラハンに命中。
ひし形に煌めいて圧倒的なまでの衝撃波を周囲に撒き散らした。
デュラハンを中心にその周辺の壁や地面は深く抉り削られ、吹き抜けた爆風は砕けた破片やら土煙やらを明後日の方向に吹き飛ばす。
「…………なにこれ」
「神聖魔法の奥義、〈セイクリッド・オブ・ライトニング〉です」
「そっすか………」
唖然呆然。
あんぐり開いた口が塞がらない。
いやまぁ確かに、「これで決める」とは言ってたけども………。
異世界に来て魔法にも慣れたと思ってたけど、ちっともそんな事はなかったようだ。
スターダストのような光の粒子が晴れた向こうでは、ボロボロになった姿のデュラハンが力なく横たわっていた。
その巨体も程なくして光に包まれ、粉々に崩れ去った。
─────"魂縛の亡霊騎士"・デュラハンを倒しました。
デュラハンの居た場所には大きめの魔石が落ちており、その奥にはさらに豪華な宝箱が出現していた。
まずは手前の魔石から手に取る。
「お、A級か。なになに………?【魂縛の亡霊騎士・デュラハンの魔石。装備することで〈死霊術〉を扱えるようになる】か………」
「なんだか今までの魔石とちょっと違いますね」
「そうだな」
今までの階層でドロップした魔石は、どの魔物が落とした魔石でも全て均一の等級でのみ表されていた。
しかしデュラハンが落とした物はその等級に加え、個別の名前と効果も合わせて持っていた。
こんな魔石は初めてだ。
どうも等級が高いとこんな風に特殊な魔石が落ちることもあるらしい。
とは言え能力持ちの魔石の数は極めて少ないので、市場に出回ればそれなりの値で取引される………。
「ってのをどっかの書物で読んだような気がする」
「あ、私も読みましたよそれ。確か………【魔石全集】みたいなタイトルの」
「それだ」
ちなみに、後日調べたら本のタイトルは【魔石全集】で合ってた。
今のところ確認されている魔石の種類がほぼ全て乗っている超便利な書物なのだが、その後半の方に確かに能力持ちの魔石の記載があった。
巡り会える確率はそこまで高くないが、その反面敵のレベルが高くなる………つまり下層へ行けば行くほど確認される頻度が高まるらしい。
強い魔物ほどドロップ率が高いんだと。
まぁゲームでもそうだよな。
ちなみに能力持ちの魔石は"付与型"と"能力値型"が存在し、前者はデュラハンの魔石のように特定のスキルや能力を装備者に付与するもの。
後者は、装備することでステータスなどの基礎能力が上昇する。
─────アイテムを入手しました。
「ん?」
「………?ご主人様、どうしました?」
不意に、眺めていた魔石を遮るように現れたウィンドウにはそんな文字が表示されていた。
一瞬、「アイテム?魔石のことか?」と思ったが、この通知ウィンドウがいちいちそんな事で現れないことくらい既に承知済だ。
よってこの通知が指す「アイテム」とはデュラハンの魔石とは別の「アイテム」の事となる。
ウィンドウには新たな文章が続く。
──────突発クエスト【剪定の罠】をクリアした事により、アイテム【スキルオーブ(ユニーク)】を獲得しました。
「【スキルオーブ】ってなんやねん」
思わず関西弁でツッコんでしまった。
初めて聞くアイテムだ。
名前からしてスキルに関するものなのだろうが………(ユニーク)ってなんだよ、ユニーク以外もあるって事か?
………ああ、これスキルのランクの事だ。
ノーマル・ユニーク・エクストラだもんな。
じゃあこの【スキルオーブ】とやらはユニークスキルを強化、あるいは獲得出来る代物………なのだろうか。
わからん。
わからんので、とりあえずウィンドウを可視化してヘリーナにもその文面を見せる。
「ああ、そうですよ。【スキルオーブ】を使用すると、その【スキルオーブ】が内包してるスキルを獲得することが出来るんです」
「まぁ"
そう聞くとかなり凄いアイテムに思えて来た。
だって転生時に一度だけ与えられる世界からの"
めちゃくちゃ強いじゃん。
「ただし、中に入ってるスキルは外からじゃ分かりません。ハズレのスキルの可能性も大いにありますし、なんなら呪われたスキルを無理やり獲得させられるかも………」
「なに呪われたスキルって」
「たとえばそうですね………〈
「何それ怖い」
とんだギャンブルじゃねぇか。
"
だって"祝福"だし。
けれど【スキルオーブ】は違った。
本当にただスキルを閉じ込めてるだけのアイテム。
その中にあるスキルが、持ち主に幸不幸をもたらすかは一切考慮されていない。
結論、やっぱ"
「う〜ん………どうします?売ることも出来ますけど………」
「………いや、使おうと思う」
「ですよねぇ」
やれやれみたいな仕草でがっくし肩を落としたヘリーナ。
最初から俺がこの選択をするのを分かっていたらしい。
「心配か?」
「そりゃあ………ご主人様は私のご主人様ですし………」
ははっ、可愛いやつめ。
不満そうに唇を尖らせているヘリーナの頭をポンポン軽く叩く。
「ゲーマー魂にかけて無視する訳にはいかん………玉砕上等!身を削って開拓してこそ真のゲーマーよ!」
久しぶりのゲーマー節をかましてから、俺は〈
空間に開いた穴の中から出てきたのは、飴玉くらいの大きさの小さな球体だ。
色はエメラルドグリーン。
スベスベした肌触りで触ってる分には結構面白い。
アイテムの詳細から見るに、これを砕くとスキルを得られるらしい。
「よっ」
別に仰々しくやるものでも無いので、とりあえず握り潰した。
砕けた欠片がさらさらと砂のような小さな粒となって手のひらからこぼれ落ち、何本もの細長い道筋を描きながら俺を覆い、やがて溶けて消えた。
「………え、これで終わり?」
「………みたいですね」
思った以上に何も無かった。
もっとこう………壮大な演出とかあっても良かったのに。
ちょっと肩透かしを喰らった気分の俺とヘリーナの間に、ウィンドウから通知が届いた。
──────【スキルオーブ(ユニーク)】を使用したことで、ユニークスキル〈デイリーガチャ〉を獲得しました。