アルバスの落胤が温泉でちょっとえっちなハプニングに巻き込まれる話 作:ruchino
原作:遊戯王
タグ:R-18 烙印世界 アルバスの落胤 白の聖女エクレシア 教導の雷霆フルルドリス 鉄獣戦線キット
原作とは異なる、皆が生きている世界での一幕です。
いただいたリクエストがNSFWに設定されていたことを鑑みてR-18作品として投稿しています。
背中に棘の生えた褐色肌の少年が身体を洗い終えて湯椅子から立ち上がる。
その少年、アルバスの落胤は鮮やかな色合いのメッシュの混じった白銀の髪の先から水滴が垂れ落ちているのに気付き、顔を左右に軽く振った。
石の敷き詰められた床をそのままぺたぺたと進むと、円状に配置された岩で形造られた露天風呂が見える。周囲を遮っていた壁が開けた奥には緑に覆われた山々が連なる雄大な景色が望め、氷水の湖に続くひと際高い霊峰は漂う雲を山肌にまとわせていた。
相剣師たちが日々修行に励むこの地の名は大霊峰相剣門。
アルバスはエクレシアたちと共に霊峰の一角に新しく建てられた温泉宿を訪れていた。
しかし、そんな彼の目下の関心は幻想的な景色にではなく、湯煙の立ち込める露天風呂に対して向けられていた。
どことなく強張った表情を浮かべている彼を見れば、向けざるを得なかったと言う方が正確だろう。
「本当に、入って大丈夫……なんだよな?」
試しに足先を恐る恐る浸し、熱さを感じて即座に引っ込める。
間違いなく、お湯だった。
アルバスはエクレシアたちから誘われて同道していたが、張られた湯に浸かるのはこれが初めてだった。
だからこそ、水浴びとほとんど同じ行いだと理屈のうえでは分かっていても、温められた水に自分から身体を浸すということに対して身構えずにはいられなかったのである。
とはいえ警戒して立ち尽くしていれば、日中であっても温まった身体は徐々に冷えていく。
しかもアルバスが現在いる露天風呂は大霊峰という高所に造られているのだから、吹く風の冷たさは陽光の下でもひと際強い。
身体が冷えてしまえば一刻も早く温まりたいと思うのは当然の成り行きで、それはドラゴンである彼もまた同様だった。
しばらくの間躊躇う姿を見せていたアルバスも覚悟を決めるとあらためて足先をお湯に浸け、その引き締まった身体を湯船に少しずつ沈めていった。
「おぉっ、これはスゴいな。芯から温まって……あぁ、いい」
肩まで湯船に浸かったアルバスの口から感嘆の息が自然と漏れ出た。
つい先ほどまでは強張っていた表情も見事なまでに緩み切っている。
浴場というものを利用したことがあるエクレシアがこの温泉もきっといいものだと言っていたが、それもいまなら頷ける。
浸かっていると、まるで全身に溜まっていた疲労が湯に溶けていくかのようだ。
そんな多幸感に満ちた感慨を抱きながら、アルバスは湯舟の隅にそびえ立っている大きな岩にその身体をもたれさせる。
突き出るような形状の岩はそれなりの大きさを誇っているものの、露天風呂全体が大霊峰を彩る豊かな自然を大事にした造りであるからか、異物感を抱かせることなく馴染んでいた。
岩の表面のヒンヤリとした冷たさは温まった身体には染み入るように心地よく、身体を預けるのに適した形状も相まって瞼がじわじわと重みを帯びていく。
抗うように顔を左右に振るが、落ちつつある瞼が再び上がるなどということはなく。
間もなくアルバスは身体を岩に預けたまま舟を漕ぎ始めた。
*
「――スくん、アル――ん、いますか~? あれ、返事がありません。いると思ったのに」
眩い色合いの髪を下ろしている少女、エクレシアが内風呂から扉を少し開けて露天風呂を覗き込みながら呼びかける。
そのまま彼女はしばらく待っていたが、あるだろうと思っていた応答は何故だか無かった。
エクレシアが怪訝に思って首を傾げていると、その隣から彼女の友達であるキットが続けて顔をひょいっと覗かせる。
頭部でピンと尖った獣耳が特徴的な少女の顔には友人をからかうようなニマニマとした笑みが浮かんでいた。
「なになにぃ~。エクレシアってばアルバスと混浴したかったの~?」
「そ、そんなことは…………ないと言い切ってしまったら、その……嘘になってしまいますけど。って、そうじゃなくて! アルバス君はどこに行ってしまったんでしょうか?」
「先ほどまでの私たち同様、アルバスも内風呂を堪能しているのだろう。彼のことを気にするのもいいが、それで温まった身体を冷やしては本末転倒もいいところだ。
二人とも、露天風呂に早く入ろう。話に花を咲かせるのはその後でも遅くない」
話しているエクレシアとキットの背後から長身とロングヘアが印象的な美女、フルルドリスが声をかける。
そして彼女たち二人が返事をしてフルルドリスと共に露天風呂に向かって来るのを、一連の物音で寝落ちから目覚めたアルバスは戦々恐々とした思いで聞いていた。
(まっ、マズい。いやいやいやっ、マズいを通り越してヤバい! さすがにヤバすぎるっ!)
もしアルバスがエクレシアの呼びかけたタイミングで返答できていれば、このようなピンチには決して陥っていなかっただろう。
しかしそのときにはまだ半覚醒状態だったアルバスはその機会を逸し、出て行くタイミングを完全に逃してしまっていた。
(……俺にそんなつもりはまったくなくても、エクレシアたちからは覗きって思われても仕方がない状況だよなぁ!)
それでもやって来たのがエクレシアとキットだけだったなら、誠心誠意謝罪すれば許してもらえることもあり得たかもしれない。
だが、いつも厳しいフルルドリスから許してもらえる光景をアルバスはどうやっても想像できなかった。
むしろ彼女に斬られて出来た左目を塞ぐ傷が危機を訴えるようにずっと疼き続けている。
あるいは、三人に一切気づかれることなく男湯まで戻ることができれば解決としては間違いなく一番穏当だろう。だが、エクレシアたちがすでに露天風呂に近づいて来つつある時点でそれを達成するのは限りなく不可能に近いと言わざるを得なかった。
何故なら、仮にこれが平常時だったとしてもフルルドリスの目を欺ける気が微塵もしないのだから!
(だったら――!)
アルバスは決死の覚悟を決めて行動を起こし始める。
露天風呂にそびえ立っている岩にもたれて寝落ちしていたため、いまいるのは幸か不幸かエクレシアたちからは気付かれづらい位置だった。
彼女たち三人に気づかれることなく即座に脱出するのが困難である以上、アルバスはその岩陰に身を潜めて息を殺しながら脱出の機会を窺うしかなかった。
*
「やはぁっ、一番乗りでダ~~イブっ! あははっ、温か~い。ほら、エクレシアも早くぅっ!」
薄っすらと立ち込める湯煙の奥から最初に姿を見せたのはキットだった。
一糸まとわぬ姿の彼女は石の床の上を軽やかに駆け、その勢いのまま露天風呂に飛び込む。
キットはエクレシアと同じくらいの身長――厳密に言えば、その比較も彼女が愛用している超厚底の超安全靴と頭部の獣耳込みではある――だが、あどけなさの残る顔立ちとくりっとした大きな瞳が幼い印象を抱かせる。
しかし普段は後頭部で二つ結びにした髪を解いた彼女はどことなく大人びた雰囲気を醸し出していて、水滴に濡れた横顔は姉であるフェリジットを彷彿とさせた。
また、メカニックとして常に動き回っているからか、彼女の小柄な身体は健康的に引き締まっていて、だからこそ胸元でたぷたぷ♥と揺れるアンバランスなほどに大きいおっぱいがその存在感を強く主張していた。
「元気なのはいいことだが、怪我だけはしないようにな」
そもそも浴場ははしゃぐような場所ではないがそれは言うだけ無粋というものか、とフルルドリスは続けてひとりごちる。
菖蒲の美女は艶やかな微笑を口元に浮かべ、身体の前面をタオルで隠しながら湯船にゆっくりと浸かった。
濡れたタオルはフルルドリスの身体にぴったりと張り付き、どたぷん♥と揺れるたわわに実った果実や豊かな曲線を描く彼女の身体つきをより際立たせている。
それでいながら彼女の身体は四肢に宿った聖痕に決して驕ることなく鍛え上げられており、聖女としての柔らかな美しさと剣士としての類稀なる力強さのどちらも損なうことなく共存させていた。
目にした誰もが見惚れずにはいられないその美しさは、まさに至高の美。
どのような芸術作品もフルルドリスという存在が結果として磨き上げた美の前には容易く霞んでしまうだろう。
「お姉様、キットちゃん。お待たせしましたっ!」
二人から遅れて湯煙の奥から姿を見せたのはエクレシアだ。
はしゃぐ友達の姿に頬を緩めながらも、姉と同じように落ち着いた足取りで湯船にゆっくりと足を浸した。
「…………」
そんな彼女の姿を見るため、アルバスは岩陰からほんの少しだけ顔を覗かせていた。
期せずしてこの状況に追い込まれてしまった彼は先に姿を見せたキットやフルルドリスの裸身はなるべく見ないように努めていたが、パートナーであるエクレシアの裸には理性よりも欲が上回ってしまっていたのである。
普段結んでいることの多いエクレシアの眩い色合いの髪は下ろされ、透明な滴を帯びながら微かに揺れている。
それは彼女の均整の取れた美しい身体つきときめ細かく透き通るような肌をより際立たせていて、綺麗だった。
彼女はかつてのドラグマで"最も清らかなる聖女"として知られていたが、そのように言われていたのも納得だ。
"最も剛き聖女"であるフルルドリスとはまた違う愛らしくも清廉で暖かな美しさがそこにはあった。
気づけばパートナーの産まれたままの姿に見惚れていたアルバスだったが、その視線は彼女の胸元でたぷたぷん♥と揺れている美乳に自然と吸い寄せられていく。
理性が窘めるように警鐘を鳴らすものの、湯煙に乗って漂ってくる芳しい香りがそんな警告も靄の奥に容易く押しやっていっていた。
「はぁ、いいお湯……ですねぇ。この温泉はスプリガンズの皆さんが見つけてくれたんでしたっけ?」
尋ねたエクレシアは薄くにごったお湯に肩まで浸かり、リラックスした笑みを浮かべている。
その隣で同じように肩まで湯に浸かっているキットも緩み切った表情で頷いた。
「そうだよ。最初はスプリガンズの皆もお仕事って感じであれやこれやしてくれてたんだけど、源泉を発見してからはそれはもう大盛り上がりでさぁ。気づいたらこんな温泉宿が建っちゃってたんだよ」
「あははっ、盛り上がってる皆さんの姿が目に浮かびます」
フルルドリスは交わされている会話に耳を傾けながら軽く伸びをし、瞼をゆっくりと閉じる。
彼女が部下であるテオやアディオンと共に大霊峰相剣門に辿り着く少し前、この地ではひと悶着があった。
謀反とも言うべき騒乱はフルルドリスたちが相剣門に至ったときには解決していたものの、到着直後の彼女たちは斬られて上部が崩落した山々を目の当たりにしていた。
その後しばらくの時が流れ、そんな跡地の調査と整地の依頼が巡り巡ってキットの元に舞い込み、後は語られた通りだった。
なお、温泉宿が出来てしまったという報告には彼の大公も呵々大笑であったという。
「フェリジットさんにも来て欲しかったですねぇ~」
「そればっかりは仕方ないよ。リズねえはシュライグとデートだもん」
エクレシアたちが相剣門を訪れている一方、鉄獣戦線で凶鳥と徒花と呼ばれた彼らは一緒に出かけていた。
この日のためのコーデをビシッと決めたフェリジットの姿を思い返し、エクレシアはうっとりとした表情を浮かべながら小さく息を吐く。
「フェリジットさん……、すっごく可愛かったです」
「にひひ~。エクレシアも次にアルバスとお出かけするときにはリズねえくらいオシャレしてもいいんじゃない?」
「――駄目だ。あのようなヒラヒラしたスカートなど、エクレシアには早すぎる」
あわよくばと思ってキットは囃し立てるが、ずっと見守るように会話を聞いていたフルルドリスが間髪をいれず口を挟んだ。
彼女は何故かこういうことではエクレシアに対して妙に厳しかった。
もちろん己を律することの必要性はエクレシア自身も重々理解している。
しかし、あんなにも大切な人のことを想うフェリジットの姿を見て彼女は大いに勇気づけられていた。
「お姉様、私もフェリジットさんみたいにオシャレしたいです!」
「そうだ、そうだー! お姉ちゃんの横暴反対ーっ!」
キットも両手を掲げて援護するように声を上げる。
フルルドリスがエクレシアに厳しいのも思えばこそというのは理解しているが、友達同士の恋路の更なる進展も同じくらいに大切だった。
「……ぐっ。しかし、軟弱なアルバスがエクレシアの生足を見て理性を保てるはずが――」
さすがにばつが悪かったのか、フルルドリスが実戦でも滅多に聞くことのないような苦悶の声を漏らす。
だが、その直後。彼女は唐突に湯からザバァっと素早く立ち上がると、彼方を向いて鋭く叫んだ。
「――そこにいるのは誰だっっ!!!」
*
(――っっ!!! マズいッ、気づかれたっ。絶対に気づかれてるっっ!!!)
岩陰に飛び込むように隠れたアルバスは両手で口元を覆うように塞いでいた。
エクレシアの裸を脳裏に少しでもはっきりと刻み込もうとしていた彼は気づかぬ内に前のめりになっており、支えとして岩に置いていた手を滑らせた拍子に水面を勢いよく叩いてしまったのだ。
三人の話がちょうど盛り上がっていたタイミングだったのでもしかしたらと思ったが、フルルドリスには当然のように気づかれていた。
そんな彼女が威嚇のために放ってる殺気が凄まじく、少しでも気を抜けば首を絞められた獣の鳴き声のような悲鳴が口からいまにも漏れ出てしまいそうだった。
「お姉様、どうされたんですか?」
「大声を突然出してすまなかった。そこの、岩の辺りに気配のようなものを感じてな」
フルルドリスは妹に向けて柔和な笑みを浮かべて答えるが、その瞳は岩陰の方を視界の端でずっと捉え続けている。
時折見え隠れする視線の鋭さたるや、そびえ立っている岩に貫かれたような穴が突如開いたとしてもそんなには驚かないだろう。
「こんな高地に不審者なんていると思えないし、小動物とかじゃあ……」
「それならそれでいいだろう。しかし、万が一ということもあり得る。私が確認して来るから二人は気にせず話してるといい」
フルルドリスがたわわに実った果実をばるんっ♥ ばるんっっ♥と上下に揺らしながらお湯を荒々しく掻き分けて進み始める。
彼女のおっぱいのあまりにもダイナミックすぎる揺れ方には事態を見守るエクレシアたちでさえも目を奪われずにはいられなかったが、アルバスは恐れていた断罪へのカウントダウンが始まったにも等しい状況に震えあがっていた。
(どうするっ!! どうするっ、どうするッ!!??)
まず、逃げられるような状況ではない。
それができるなら最初からやっているし、こんな追いつめられる事態に陥っていない。
辛うじて隠れられている岩陰から一歩でも出れば三人の内の誰かには見つかってしまうだろう。
つまり、助かりたいのであれば岩陰から出ることなく隠れてフルルドリスをやり過ごすしかない。
(でも、この限られた空間の一体どこにそんな場所が……っ)
心臓が早鐘を打つのを聞きながら、アルバスは必死に視線を上下左右に動かして隠れられそうな場所を探す。
しかし、そんな都合のいい場所が即座に見つかるはずもなく、ついに項垂れた彼の目に淡い色を帯びた水面に薄く映った自分自身の顔が見え――
「我が妹たちの憩いのひと時を覗き、いまも居座り続けている不届き者よ。さぁ、覚悟し――――むっ、これは!?」
フルルドリスは岩陰を覗き込み、思わぬ結果に困惑の声を漏らす。
その陰には不審者どころか可能性として挙げられていた小動物の類さえもいなかったのだ。
間違いなく誰かが潜んでいると確信していた彼女は見回すが、周囲にはこの岩陰以外隠れられるようなスペースは見当たらない。
清澄な空気の漂う大霊峰の景色が広がっているばかりだった。
いや、何者が隠れられるスペースがまったく存在しないわけではない。
相応の準備をしていたのであれば、この露天風呂の直下にある断崖絶壁に張りついて身を隠すことは可能だろう。
フルドリリスはその可能性を疑って身を乗り出すも、靄が薄くかかった山々や緑が見えるばかりでそれ以外の存在はやはり確認できなかった。
「お姉様、大丈夫ですか~?」
「…………あぁ。大丈夫だ、エクレシア。どうやら、私の思い過ごしだったようだ」
彼女は言いつつも水面をしばらく探るように見つめていたが、間もなく踵を返してエクレシアたちの元に戻っていった。
そして岩陰を覗き込んでいたフルドリリスが立ち去って十分な時間が経った後、静けさを取り戻していた水面がぽこりと泡立つ。
それに続くように湯がボコボコと泡立ち始め、潜水していたアルバスがのっそりと浮上して姿を現した。
(はぁ……、はぁ、はぁ。フルルドリスが諦めるのがもう少し遅かったら本当に危なかったかもしれない)
少し開いた口の合間から絶え間なく漏れる息は荒く。メッシュ混じりの白髪は濡れに濡れ、顔の表面にびったりと張り付きながら水滴を滴らせている。
そんなアルバスの横顔は普段あまり見られない艶やかな色気を帯びているが、彼自身は髪を濡らしている水滴を思い切り払いたい衝動に駆られていた。加えて、出来れば息も大きく吸って呼吸を整えたい。
しかし、少しでも大きめの音を立てれば今度こそフルルドリスに気づかれるかもしれないという恐怖がそれらを躊躇わせた。
結局のところアルバスはそびえ立っている岩に裸身を密着させ、三人の交わす会話に耳を傾けて脱出の機会を窺うしかなかった。
*
「実を言うと、私、その……お姉様やキットちゃんに訊きたいことがあったんです。こんなことを二人に訊いていいのか分からないんですけど……」
エクレシアはフルルドリスが戻って来たのを見ておずおずと切り出す。
彼女の透き通るように綺麗な頬は上気していて、それは決して温泉に浸かって火照ったというだけではないことを窺わせた。
「なになにぃ、エクレシアとあたしの仲でしょ! 遠慮なんてしないで、じゃんじゃん話してよっ!!」
「あぁ、何も臆する必要はない。だから、私たちのことは気にせず自分のペースで話しなさい」
キットが嬉しそうな笑みを浮かべながらエクレシアに抱きつき、フルルドリスも鷹揚に頷く。
快諾してくれた二人に安堵しながら、エクレシアは抱いていた疑問を投げかけた。
「ありがとうございます、二人とも。それじゃあ、あの……男の人は大きなおっぱいが好き、なんでしょうか?」
問いかけた後も彼女は照れたように胸元で組んでいる手の指先をもじもじと擦り合わせている。
そして、エクレシアがそんなことを気にする理由と言えば一つしか思い当たらない。
彼女が浮かべている表情もまさに恋する乙女という表現がぴったりなくらいに可愛らしく、キットのテンションはうなぎ登りだった。
その近くでは同様のことに思い至っただろうフルルドリスが対照的に彼女らしからぬ筆舌に尽くしがたい曖昧な表情を浮かべていたが。
「リズねえにそんな話をしたのを聞いてたもんねっ! エクレシアも気になっちゃった?」
「はい。キットちゃんとフェリジットさんがそんな話をしているのを聞いて、アルっ……いえ、一般論としてどうなのか気になってしまって」
エクレシアは顔を更に真っ赤に染めながら掲げた両手をぷるぷると左右に振り、思わず口にしかけた名前を誤魔化すように早口で続ける。
語るに落ちる感が否めないが、それをわざわざ指摘するのも無粋というものだろう。
キットが頬が緩んでしまうのをどうしても抑えきれずにいると、しばらく黙っていたフルルドリスが首を左右に振った。
「エクレシア。男性がそれをどう思っているかは一まず措いておくとして、乳房が大きいというのは決していいことばかりではない。むしろ、苦労することの方が多いくらいだ」
そう語るフルルドリスの目の前では圧倒的な質量を感じさせるおっぱいがお湯にたぷたぷ♥と浮いている。
彼女の呼吸に合わせてたわわに実った果実全体が微かにゆさゆさぁ♥と揺れ、立ち込める湯煙の奥で鮮やかな色を帯びている乳輪と突起が時折その姿を覗かせていた。
「……まぁ、それは確かに一理あるかも。リズねえもおっぱいがもう少し小さかったらもっと身軽に動けるのにってよく愚痴ってたし、あたしも大きな機械の整備をするために下部に潜り込むときに当たりそうになって邪魔だなぁって思う瞬間はいまでもあるし」
同じようにふよふよ♥と湯に浮かんでいるキットのおっぱいはエクレシアのそれと大きさとしては同じくらいだが、比較して身体が小柄な分だけ相対的に大きく見えていた。肌の色つやもエクレシアは白磁のような透明さが目を引くが、キットは瑞々しく健康的だ。
キットの姉であるフェリジットはこの場にこそいないものの、身軽な軽装備を着こなしていた姿が印象的だ。そのスタイルのよさについては言うまでもないだろう。
「戦士にとって身軽であること、俊敏さというものは極めて重要だ。より速く動けることができれば、いかなる場面でも優位に立つことができる。危機に瀕しても難を逃れやすくなり、窮地に立たされた仲間も素早く助けられるだろう。
だからこそ、前線に立っていたフェリジットがそういう懸念を抱いていたというのは大いに頷けることだ」
フルルドリスは感心するように頷いているが、鉄獣戦線と教導騎士団がよく激突していた頃の彼女は宙に浮いてシュライグと空中戦を演じていたことが多かったはずだ。
それは身軽さ云々を最早超越している気もしてならなかったが、キットはあえて指摘せずに抱きついている友人の方に向き直った。
「……って、話が大分逸れちゃったから最初の質問に戻るけど。アルバスも男の子だから、多かれ少なかれそういう部分はあるんじゃないかな。
でも、それはそれとして、エクレシア自身のことを好きだと思うからそんなに気にしなくていいって思うなーって思うけど。エクレシア的には気になっちゃう?」
「……そうですね。私はいままでの多くの時をドラグマで過ごしていたので、世俗の流行りなどには詳しくありません。それが色恋についてであればなおのこと。
だから、アルバス君にもっと好いてもらえるためにできることがあるなら、その……試してみたいなぁって思い……ます」
言っている内に照れてきてしまったのか、段々と小声になっていったのが逆にエクレシアの可愛さを際立たせていた。
悩み方それ自体にも初々しさと真面目さが滲み出ていて実に彼女らしい。
そんな恋する乙女な可愛すぎる友人の姿にキットのテンションは最高潮に達し、我慢できなくなった彼女はエクレシアの背後に回り込むと友人の美乳を掬い上げるように持ち上げた。
「キッ、キットちゃん……っっ!!??」
「あー、もうっ、エクレシアってばサイコーに可愛いんだからぁ!! 本当はアルバスがやるのが一番なんだけど、おっぱいがちょっとでも大きくなるようにあたしがモミモミしてあげちゃうっっ!!!
ほぉらっ、うりうり~♪」
「っっ……んっ♥ あっ、キットちゃん……おっぱい背中に当たってますぅ♥ それに手つきも何だかえっちでぇ……っんぅ、ぁっ♥ んんっ……ぁっ、ひゃんっ♥」
エクレシアの乳肉に沈み込んだキットの指がわしゃわしゃと揉みしだき、その動きに合わせて彼女のおっぱいそのものがくにくにと形を変えていく。
あまりの柔らかさにキット自身も我を忘れて没頭しかけたその直後、露天風呂に大きな水音が響いた。
*
「はっ、はははっ……ははっ」
ずっと岩陰に身を潜めていたアルバスもパートナーのいままで聞いたことのない艶めかしい声には我慢できず、気づかぬ内に先ほどよりもはるかに前のめりになっていた。
その結果として彼は盛大に倒れ込んでしまい、エクレシアたちの前についに姿を見せてしまったのである。
あらゆる言い訳が効かない状況に口からは乾いた笑い声しか出ない。
アルバスは早々に諦めの境地に達していたが、それでも本能はその気配を鋭敏に感じ取って反射的に飛び退いていた。
直後。眩く鋭い軌跡が轟くような音と共にアルバスの眼前で描かれ、はらりと宙を舞っていた髪の先端が切り落とされると同時に焼失した。
「ほぉ、我が雷霆が避けるとは。不埒な行いを働くのに相応の覚悟は決めてきたようだな?」
アルバスが驚きながら顔を上げれば、エクレシアたちの傍で湯に浸かっていたはずのフルルドリスが一糸まとわぬ姿のまま立っていた。
すっと引き結ばれた唇は怒りを滲ませるように歪み、その手には剣状の雷霆が握られている。
先ほどアルバスに向かって振るわれたそれは時折バチバチと音を立てながら目が眩みそうなほどに眩い光を放っていた。
「ま、待ってくれ。フルルドリス、これには止むに止まれぬ事情があって」
「問答無用っ!!! 我が妹の肌を覗き見た罪、その命を以て贖うがいいッ!!!!」
フルルドリスが叫びながら手にしている雷霆を振りかぶる。
それはまさに天から地上に向かって降り注ぐ雷のごとき断罪の一撃。
喰らえば一たまりもないのは言うまでもない。
「うおっ、おおおおぉぉぉぉぉっっ!!!!!」
アルバスは死に物狂いの俊敏な動きで避け、その勢いのまま男湯に向かって脱兎のごとく逃げ出す。
一方のフルルドリスも雷霆を振るいながら逃げるアルバスを追いかけて行った。
「フルルドリスが怒るのも分かるけど。別に減るもんじゃないし、あたしはそんなに気にしなくてもいいと思うんだけどなぁ。
ねぇ、エクレシアはどう思う?」
「ア、アルバス君がわたっ、わた私の裸を……っ。お姉様が言うように覗くのはいけないことだけど、でも覗き見るということは関心があるっていうことで。
つ、つつ……つまり、アルバス君は私を――――うぅっ、ぶくぶくぶくぶく」
逃走劇を見守っていたキットは隣にいるエクレシアに問いかけるが、彼女は熟れた果実と見紛うほどに顔を紅潮させていて心ここにあらずといった様子だった。
恋する乙女の思考は沸騰してもなお止まることはないようで、エクレシアは顔を半分までお湯に浸けながらも何やら呟き続けている。
(ありゃりゃ。でも、これは……もしかしたら近い内にもしかするかも?)
アルバスが覗いてしまったのは、本人が口走った通り不慮の事故だったに違いない。
しかし、初々しさ溢れる二人がお互いをあらためて強く意識するきっかけにもなっただろうことは――エクレシアの反応を見ただけでも――火を見るよりも明らかだった。
これを契機に彼らの関係が更なる進展を迎えたのならば、二人の友達としては喜ばしい限りだが、その前にアルバスが斬られてしまっては元も子もない。
(さすがに大丈夫だとは思うけど、エクレシアが絡んでるときのフルルドリスはちょっと分かんないからなぁ)
現に、雷を剣状にして振るえるという話は鉄獣戦線として敵対していた頃でも聞いたことがなかった。
そんなフルルドリスを止めるにはエクレシアに説得してもらうのが一番だが、彼女が完全に立ち直るまではいましばらくの時間を必要そうだった。
つまり、フルルドリスをいますぐ止められるのはキット以外にいないということになる。
その事実に思い至った彼女はあどけなさの残る顔を青ざめさせるが、気づいてしまった以上はやるしかなかった。
「……んもうっ、メカニックにこんなことさせないでよねぇっ!」
キットは嘆きながらも湯船から立ち上がり、友人たちの恋路を守るべく、雷霆を振るってアルバスを追い立てているフルルドリスの元に向かった。