※この作品はR-18です。

Ticket to Mystery   作:Abeeeta

6 / 7
大変長いこと間を空けてしまい大変申し訳ございません。


激流!激闘!チケミスバトル

颯一と海斗は、他の売場と同等かそれ以上に広いプレイエリアに何脚も設置されている適当なパイプ椅子に腰掛け、購入したパックをそれぞれのカバンをガサゴソやって取り出し手に取った。

 

「よーし、んじゃまずはパック開封だな。CMで出てたレアカードが俺のデッキと相性良さそうだから、それが来れば言う事無しなんだけどなー」

 

「はは……流石に1パックでそのレベルの神引きは厳しくない?」

 

「んまぁ……最高レアの次くらいだし可能性は無いことないだろ。颯一は何狙いなんだ?」

 

「ん〜……光属性のカードならなんでも良いかな。僕のデッキが光だから」

 

雑談をしながらパックを剥いていくふたり。カードを確認する度に一喜一憂しころころと表情が変わる様子はさながら百面相の様だった。そしてお目当ての新弾パック、最後のカードを表に返した時。

 

「……これ、は」

 

颯一の瞳に、仄かに、しかし眩く輝く虹の色を湛えたホログラムを纏ったカードが飛び込んできた。

 

 

 

 

 

「うっし、デッキ調整終わり!颯一はどうだ?もう少しかかりそうか?」

 

「あ、ごめんもうちょっとだけ考えさせて!うーん、こっちだと重すぎるからやっぱり省いて……よし、これで完成!海斗〜、お待たせ!組み換え終わったよ」

 

「おー、んじゃあやろうぜチケミスバトル!」

 

二人はそれぞれの手に拡張パック産カードを組み込んだデッキを携え、プレイフィールド越しに相対する。互いにデッキをシャッフルしてプレイマットにセットすると、プレイフィールドのAR投影システムが起動し、ふたりの傍らにRP(ルーツポイント)を示す。

 

「チケミスでは海斗に一日の長がある……けど僕だって負けないよ!最高に頼もしい相棒がいるからね!」

 

「気合十分ってカンジだな!でも勝つのは俺だ!」

 

ターンの所在を示すマーカーが、RPカウンター際で点灯した海斗。手札を確認すると、暫し思考を挟んだ後スピリットゾーンにカードをセットした。セットされたカードは青白く静謐なオーラの様なエフェクトを纏う。ただのARの演出であるそれにしかし颯一は、実際にモンスターを呼び出すためのエネルギーが籠っている、と言われたら信じてしまいそうな神秘性を感じていた。彼の唇は意図せず隙間を生み、そこを溜息が通り抜けていく。

 

「うし、スピリットをセットして……1コストで『浅瀬の尖兵 フィドーラ』を召喚するぜ!」

 

 

 

『浅瀬の尖兵 フィドーラ』

コスト1・水 / モンスター

 

自分の水属性モンスターの召喚コストを1少なくする。ただしコストは1を下回らない。

 

1000 / 5

 

 

 

海斗の宣言と共にスピリットのオーラが消失、一拍置いて両者の間に水が流れ込む。水面下に目をやれば、いつの間にか明るい砂地が広がっていた。その砂地を割って水飛沫と共に現れたのは、大型犬ほどの体躯と青白い甲羅を持つ蟹。しかし最も印象に残るのは、片側だけ異常に──胴体の甲羅と同程度には──異様に発達したハサミだろう。

プレッシャーのせいか、その身体が颯一自身よりも大きく見えるシオマネキのモンスターがハサミを鳴らして彼の前に立っていた。

 

「……わ、ぁ……」

 

「お友達……カイトくんは水属性のデッキの様ですね。デッキからカードをドローする能力と、増やした手札を捨てたり見せたりすることで発動する能力の組み合わせが定番の必勝パターンで……ソーイチ、ソーイチ?ぼーっとしてどうしました?」

 

「あっ……!うぅん、大丈夫。何でもないよ。ただ……」

 

リュック越しでくぐもったミララの小声が、海斗の立ち回りを予想してアドバイスをくれるが、颯一は上の空。不審に思ったミララの問いかけに、颯一は照れくさそうに応じた。

 

「わくわくしちゃってさ……ARのモンスターって、こんなにリアルで迫力満点なんだ。ただカードを並べて遊ぶだけでも十分楽しかったのに……こんなの見せられたら、どハマりしちゃうよ……!!」

 

颯一の声はごく穏やかだった。わくわくしている、という言とは裏腹に上擦った様子も見受けられない。しかし、ミララにだけは聞こえていた。ミララにだけは視えていた。颯一の声に乗った戦意の火の粉が弾ける音、闘志の火が燃え上がる颯一の瞳。

 

「……そうでしたか。それなら、ソーイチが思いっきり楽しめるように、改めて全力でサポートします!」

 

ミララは一度深く頷いた後、「あ、それから、ボクの召喚を楽しみにしててくださいね。ホンモノの召喚はARとは一味も二味も違うはずですから」と自信ありげに胸を張って付け加えた。

 

「うし、もうできることもねぇしターンエンドだな。颯一のターンだぞ!」

 

蟹のモンスター(フィドーラ)をちらりと見やった後、ターン終了の宣言をする海斗。それを受けて颯一は、逸る鼓動に突き動かされるかの様にドローした。

 

「ドロー!!スピリットをセット、それをローにして……『盲目の導き手 グロリア』を召喚!」

 

 

 

『盲目の導き手 グロリア』

コスト1・光 / モンスター

 

自分の光属性モンスターの召喚コストを1少なくする。ただしコストは1を下回らない。

 

1000 / 5

 

 

 

颯一の前に現れたのは、簡素な白い法衣と、金糸で眼の紋様を縫った目隠しを身に付けた青年。手札から場に出したカードのイラストと寸分たりとも違わぬグロリアの姿がそこに在った。

 

「……はは、コレ、最っ高だね!!モンスターはかっこいいしモンスターはかっこいい、おまけにモンスターはかっこいい!」

 

「……要は兎に角モンスターがイカす、って事しか言ってねぇよな、それ」

 

裏返った声ではしゃぐ颯一から、頬を掻き掻きツッコミを入れる海斗へとターンが渡る。

 

 

 

海斗、2ターン目。マジック『黒弄潮(くろしお)』を使用。

ドロー効果を利用し、デッキに眠る強力なカードを狙う。

 

 

 

『黒弄潮(くろしお)』

コスト2・水 / マジック

 

自分のデッキから2枚ドローした後、手札を1枚選んで捨てる。

 

 

 

颯一、2ターン目。マジック『銅鏡の聖歌』で対抗。

こちらは次の番に望み通りのドローを行えるよう布石を打つ。

 

 

 

『銅鏡の聖歌』

コスト2・光 / マジック

 

自分のデッキの上から3枚を見る。そのうち1枚をデッキの一番上、1枚をデッキの一番下に戻し、残りをグレイブに置く。

 

 

 

海斗、3ターン目。モンスター『磯の守人 フィスター』を召喚。攻守共に秀でたモンスターで、盤面の安定を画策している様だ。

 

 

 

『磯の守り人 フィスター』

コスト3・水 / モンスター

 

このモンスターは、自分のターン中衝撃力を+5する。

このモンスターがガードを行ったバトルで勝った時、このモンスターをハイにする。

 

3500/15

 

 

 

中央部に巨大な目が据えられた棘だらけのヒトデ型モンスターが海斗を守るような位置に出現した。

 

「ターンエンドだ!さて、序盤のモンスターだけでこいつを倒すのはなかなか大変だろ!どうする?颯一」

 

「うーん……倒さなきゃモンスターやRPに被害を出されちゃうし、放置は出来ないよね……。とにかく僕のターンだ!ビーハイ、ドロー!」

 

颯一の手元に来たるは前のターンにマジックの効果でデッキトップに置かれていたカード。ドローが予め分かっていた事で、迷っていたにしては短時間の思考で颯一は行動を開始した。

 

「スピリットをチャージ!グロリアの効果で1コスト軽減された『懲らす法典 ファイネ』を召喚だ!続けて2コストで『スタン・スパーク』!」

 

 

 

『懲らす法典 ファイネ』

コスト2・光

 

エマージェンシー

バトルゾーンに出た時、相手のモンスターを1体選びローにする。その後、このターン中、他に同じ名前のカードがバトルゾーンに出ていないかつ相手のスピリットゾーンにハイのスピリットがあるなら、それをローにし、自分のデッキの上から1枚をスピリットゾーンに置く。

 

500 / 5

 

 

 

『スタン・スパーク』

コスト2・光

 

エマージェンシー

相手のモンスターを1体ローにする。

 

 

 

「俺のモンスター全員をローに……!?……でも、颯一の攻撃可能なモンスターは衝撃力5のグロリア1体だけ。まともに食らったところで大した痛手じゃないぜ?」

 

「それはどうかな……ファイネの効果で増えたスピリットを使って、『夢食む幼聖 バクラ』を召喚!」

 

 

 

『夢食む幼聖 バクラ』

コスト2・光

 

バトルゾーンに出た時、相手のモンスターが全てローなら手札を1枚選びスピリットゾーンに置く。その後相手に5ダメージ与える。

 

1000 / 5

 

 

 

「手札がないからスピリットを追加する効果は発動しないけど、海斗に5ダメージ!さらにグロリアで追撃するよ!」

 

「げっ、ダメージ効果持ちか!……攻撃の方もハイのモンスターがいなくてガード出来ないから、RPで受けるしかないな……」

 

海斗 RP: 100→95→90

 

モンスター達の攻撃エフェクトが海斗の方に向かって行き、彼は眩しさと迫力に思わず両の腕で顔を庇う。

 

「これで僕はターンエンドだ!」

 

「強引にダメージを与えるなんてやるじゃねーか!でもまだまだ、こっから巻き返してやるよ!」

 

海斗は2枚の手札を握りしめると、白い歯を見せ荒波を思わせる獰猛な笑みを浮かべた。デッキトップを勢いよくドローした彼は、その貌(かお)を崩さぬままビーハイ、スピリットチャージを行う。

 

「俺はマジック『覇者の海域 泰平洋(たいへいよう)』を使う!これはコストが10もするからふつーは使えない……けどルーツを10減らすことでコストが1減るんだぜ!!」

 

「なっ……自分のルーツを犠牲にしてコスト軽減!?」

 

海斗が叫ぶと同時に、傍らのRPカウンターが回転を始める。フィールドには、カードの効果を高らかに宣言する海斗の声と、マジックの発動エフェクトに付随する細波(さざなみ)の音、そして依然回転を止めないカウンターの音が混じりあって響く。

 

「このマジックの効果で俺は1枚ドローする!更に!!このマジックのルーツを削る効果で軽減されたコスト分、追加でドローだっ!!俺は……」

 

細波で揺れていた水面が止まり、フィールド上が静まり返る。そして、次の瞬間。

 

「7枚、追加でドローだ!!!」

 

海斗 RP: 90→20

 

瀬戸海斗の宣言と共に、海面が爆ぜ、天まで届く程の水柱──否、天へと昇る瀑布──が轟音と共に吹き上がった。デッキから、10のカードが彼の手へと流れ込む。全てを呑み込む程に苛烈な潮流が止まった後、海斗の場は一変していた。

 

「そして、8枚ドローした事で手札のモンスターの効果発動だ……『大洋の哨兵 サーディン』を4体、コストを支払わず召喚!!」

 

 

 

『覇者の海域 泰平洋(たいへいよう)』

コスト10・水

 

このマジックを使う時、自分のRPを10減らす代わりにこのマジックのコストを1減らしても良い。ただしコストは1より小さくならない。この効果は9回まで同時に使うことができる。

1枚ドローする。

このマジックを使った時に軽減されたコストと同じ枚数ドローする。

 

 

 

『大洋の哨兵 サーディン』

コスト4・水

 

自分のターン、マジックの効果で4枚以上ドローしたならば、このモンスターはコストを支払わず召喚できる。

 

1500 / 5

 

 

「……場にモンスターが、6体……!?」

 

 

海斗の激流が、今まさに颯一を呑み込まんとしていた。

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