※この作品はR-18です。

“女難の対魔忍”暗躍譚 ―対魔忍RPGX HAERESIS―   作:holdics

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Main Story : Sakura & Saya

「──んほぉ! おあ、おふ、ふぅん! あ、イック、イクイクイクイクッ! お、おぅおぉぉぉ~~~~!!」

 

 

 

 些か波乱万丈と云うにも度が過ぎた6月が終わり、今は7月の頭だ。

 

 任務でまたしてもドジってしまった俺は上司から休養を命じられたにも関わらず、こうして教師との道ならぬ性活に励んでいる。我ながら懲りないことだ。

 

 

 

 

 風呂に入ってから1時間以上経つがまだ上がる気配はなく、それどころか行為はヒートアップしていく。

 

 普段俺の入浴時間は誇張抜きで烏の行水レベルなので、これでも異例の長風呂といっていい。

 

 無論、その計測タイムは一人で入っている時のものだが。

 

 

 

 まあそもそも長風呂とはいっても、今のように足だけ湯につけて性交に没頭しているのを「入浴時間」に含めるべきかは議論の余地があるだろう。

 

 今は湯船に立ったまま壁に手を付いたさくら先生を、バックで突きまくりイかせたところだ。

 

 

 

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……あっ、うっ……! ……も、もう……ふうま君タフすぎぃ……!」

 

 

 

 一度の絶頂程度では律動を止める気にならず、そのまま肉竿を膣内に叩きつけ続ける。

 

 右手は女の胸を鷲掴みにしつつ、左手は突っ込む角度に応じて腰やヒップを持つ。

 

 

 

 既にさくら先生の下半身は湯以外の液体でびちゃびちゃになっている。

 

 彼女のヒップは胸以上の張りがあり、俺の挿入に対して毎回跳ね除けんばかりに反発し続けている。

 

 

 

 だがその奥にある淫裂は、ブチュ、ブチュ……と涎を垂らして俺の肉棒を加え込んでいる。その媚汁の量たるや凄まじく、ピストンの衝撃で液が俺の腹や足にまで飛び散っているのが見える。

 

 

 

 パンッ、パンッ……という規則的な注挿音が、風呂場中に反響している。

 

 予め湿度の高い密室では音がよく響くという事実を知っていたとしても、いざ実音を聞くと予想以上の興奮を齎してくれる。

 

 

 

 分野を問わず、知識を経験で補足する行為は独特の達成感をもたらしてくれる。

 

 本だけ読んで全てを知り尽くした気になるのが勿体ないと俺が考える、最大の理由がこれだ。

 

 

 

「……考えてみれば、風呂場でこうするのは初めてですね。トイレでは前にしましたけど」

 

「ンッ、あっ、そ、そう、だね。おしっこする間ぐらい待ってればいいのに……あっ、ふうま君たら発情期のワンちゃんみたいにサカっちゃってさぁ。んぉっ! おぅ、んふぅ!」

 

「あれはさくら先生が悪いですよ。一発膣中出ししてノッてきたとこでいきなり『ごめんトイレ!』ですよ? 俺が“抜かず3発”する気満々だったのに知ってたくせに……」

 

「あん……あのねぇ。普通は3発どころか1発出したら……ん、少しは萎えて大人しくなるもんなの。自分の性欲が異常なんだっていい加減自覚してよ……こ、こっちが持たないって……の、っんぅ!」

 

 

 

 膣内のペニスにむしゃぶりつきながら、男の性豪ぶりに眉を顰める女。

 

 自分のことを棚に上げて……とは思うが、今話していた出来事については完全に俺が悪いと思っているのでそれを口にはしない。

 

 

 

 そう、この件に関しては珍しく反省している。

 

 いくら俺が性豪で相手がさくら先生とはいえ、流石に小用を足している最中の女性を相手の同意もなしに襲うというのは些か品性にかける行いだった、と。

 

 

 

 しかもトイレに押し入って性行為をするだけならまだしも、手始めにキスと胸揉みで抵抗力を奪いつつ体を持ち上げて便器の縁に足を付けさせ、そのまま飲尿プレイへと移行する始末だ。

 

 我ながら派手にやり過ぎた。さくら先生が相手でなければ確実に蹴っ飛ばされていただろう。勿論コトが済んだ後は平謝りした。

 

 

 

 とはいえその時すら、途中からはさくら先生の方がノリノリになって行為を主導していた気がするが。

 

 大体俺とセックスして彼女が先に参ったことなんて、初体験からこっち一度たりとも無いだろうに。

 

 

 

「……そう言えばずっと聞いてなかったんですけど、さくら先生ってバックが好きなんですか?」

 

「んぇ? ……あー、どうだろ。……ん、ふ。お尻とか腰とか掴まれて……ってのが興奮するのは確かだけど……まあ、ふうま君とするなら何でもキモチいーよ? ぁ、前後ろとか関係なく、ね……」

 

 

 

 ピストンの快感を受けて湿り気の強い吐息を漏らしつつ、こちらに振り向いてそう話すさくら先生。

 

 瞳も頬も、法悦の涙によってしとどに濡れていたが、その顔には可愛いものを見た少女のように朗らかで優しい笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 急に歯が浮くような言葉を投げかけられて、首筋から熱いものが頭へ上がってくるのを感じる。

 

 そんな顔の火照りを胡麻化すつもりで、俺は腰振りを加速させた。

 

 

 

「イヒっ!? ……ふ、ふふ……照れちゃってカワイんだぁ。んふ、ふふ、んあっ、あはああん……!」

 

 

 

 俺の分かりやすいリアクションを笑うさくら先生を見て、更に顔の赤みが強くなる。

 

 

 

 逆効果なのは百も承知だったが、このペースアップはチンポの命令である以上逆らうことはできない。

 

 まさしく今の俺は、下半身でモノを考え下半身から先に動く状態というわけだ。

 

 

 

 せめて彼女も同じくらい恥ずかしい目に遭わせようと、Gスポットを重点的に責めるべく腰を前後だけでなく上下にもグラインドさせる。

 

 効果は抜群のようで、すぐにさくら先生は減らず口を叩くのをやめ、喘ぎ声と荒い呼吸のみを口から漏らすようになった。こうなると最早“メス奴隷化”一歩手前といった状態だ。

 

 

 

「おっ、おおぅ、んおぉ、そ、そこイイっ! ……あっ! あっ、ま、また、イキそう! ……ね、お願い、一緒にイこ? ふうま君と、一緒に、あああっ、い、イキたぃぃ……!」

 

 

 

 切なそうに哀願するさくら先生に応えるべく、両手で彼女の腰を掴んでスパートをかける。

 

 そして俺も限界を迎えたところで、期待に戦慄く子宮を圧し潰さんばかりの力を込めてペニスを突っ込み、精巣で焦らされ続けて濃縮された雄汁を一気に解き放つ。 

 

 

 

「あ、あ、あん! いぃ、んぉ! ……おぅ、おぉぉぉぉ~~~~! いい、イックゥゥゥゥ~~!!」

 

 

 

 少し溜めた後、肺にある空気を全て絞りだすかのような雄叫びを上げ、さくら先生は絶頂を迎えた。

 

 ドク……ドク……と俺の精液が膣内に流れ込むたび、柔らかさとくびれを両立させた女のウェストが絶頂を迎えた喜びで小刻みに震えているのが分かる。

 

 

 

「フゥ……フゥ……」

 

「あぁ……ふぅ、ン……いっぱい、射精ちゃったね……ん、ちゅっ♪」 

 

 

 

 繋がったままさくら先生の背中に体を密着させ、手を胸に回して抱きつきキスをする。

 

 そのままお互い膝をついて湯船に座り直し、体を温め直しつつ呼吸を整える。

 

 2人の心音と呼吸音以外、今の風呂場には一切の音が存在しなかった。

 

 

 

 お互いの体温を感じあう幸福でゆったりとした時間が数分程流れた後、俺から話を切り出した。

 

 

 

「…………出ましょうか」

 

「んふふ♪ そだね。……じゃあ、こっからはベッドで、ね♡」

 

「……ははは……どっちが底なしなんだか……」

 

 

 

 夜はまだ始まってすらいない。お楽しみはこれからだ。

 

 俺たち2人がくっつきながら立ち上がり、浴場から出た正にその時だった。

 

 

 

「ただいまー!」という元気な声が、さくら先生宅中へ響いてきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふうま小太郎と井河さくらが性的睦み合いを続けているのと同時刻。

 

 東京湾内に浮かぶ人工島「東京キングダム」の一角にある小規模な商店街。

 

 そのほぼ中央にある路地で、2人の人物が対峙していた。

 

 

 

 一人は青い対魔忍スーツを身に着けた男で、名を土橋権左という。

 

 二車骸佐と共に五車へ反旗を翻した者の一人であり、二車家の執事を務めている。

 

 己が身の丈以上の槍を軽々と振るう武人でもあり、高度な土遁の術の使い手でもある。

 

 

 

「……ナニもんだ、貴様」

 

 

 

 権左がそう問いかけた人物は、彼が今までの人生で全く見かけたことのない異貌だった。

 

 

 

 黒染めの布服と急所を守る鎖帷子で出来た──巷間では“忍装束”と呼称されるであろうものを着こみ、手に手袋、足には脚絆を装備している。手袋も脚絆とも、当然と言わんばかりに漆黒である。

 

 更に顔には仮面をつけ、ご丁寧に黒頭巾まで被って頭も隠しているため、素顔はおろか男女の区別すら外見では判断できない。

 

 

 

 頭の先から足先に至るまで服装は黒で統一され、それ以外の色を身に着けることを一切拒絶したその恰好からは、死神と対峙したかのような不吉さが漂っている。

 

 

 

 着こんだ本人も、人らしい情動を全く感じさせない物静かさを保っている。

 

 権左が対面して以来一言も口を利かず、そういうマネキンだと云われたら信じてしまいそうなほどだ。

 

 

 

 それ故に、ただ1つ服装と真反対な純白の仮面が、そのアンバランスさと不安をあおる作り物の表情によって、一層身に着けている人物の非人間的な薄気味悪さを強調させていた。

 

 

 

 しかも只の仮面ではない。全体に胡粉が塗され、漆でコーティングされている。

 

 芸事に詳しくない権左でも一目で分かる程に、それはどこからどう見ても能面だった。

 

 

 

「……おい、まさか口が利けねえわけじゃあるまい? 死角からの一撃を躱したんだから、耳が聞こえねえって事もねえ筈だ。名前くらい教えろや」

 

 

 

 態と構えを解いて槍を地面に立てかけ、今までの緊張が嘘のように軽めの口調で話しかける権左。

 

 そのままナンパでも始めるかのような態度だが勿論油断しているわけではなく、即時攻撃へ移れるように足と腕の配置は迎撃体勢を崩していない。

 

 

 

 相手が今の様を隙と見て仕掛けてきたら、瞬きする間に突き殺す。

 

 そのつもりでカマをかけたのだが、“黒ずくめの能面”は返答どころか身じろぎすら全くせず、直立不動で彼を見返すばかりである。

 

 

 

「……んだよ、ノリ悪いねえ」

 

 

 

 これはどうだ、とばかりに顔を右手で覆い溜息を吐く権左。だが、相手の反応はない。

 

 危険を承知で視線まで切って尚何もしてこない相手に、彼は内心本気で辟易し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 五車を離反した対魔忍、中でも二車家に所縁のある者が中核メンバーを占める「二車忍軍」。

 

 彼らは首領たる二車骸佐の下、この「東京キングダム」に辿り着いて以降日々勢力を拡大している。

 

 

 

 大小様々な闇の勢力がひしめくこの街では、暴力沙汰や抗争は既に日常の一部である。

 

 だがその争いが個々人の問題を超えて組織間の縄張り争いにまで発展した時、血で血を洗う凄惨な殺し合いの末に一つの組織が姿を消し、他の組織は強化されることになる。

 

 

 

 明文化された法の効力が及ばないこの町においては、力によって定められた不文律が全てを決める。

 

 強者の理論が通らない場所はなく、勝った者がルールを自由に決められるということだ。

 

 

 

 そんな中でも、ゾンビガスとも呼ばれる兵器、CDウィルスを用いた襲撃という“イカれた”手段でシマを浚い、しかもその抗争相手が中華連邦系黒社会でも最大手といわれる「龍門」だったということもあり、骸佐や権左たち「二車忍軍」の名は瞬く間にキングダム中の悪党達へと広まっていった。

 

 

 

 そんな評判も後を押してか、彼ら二車の勢力基盤は僅か3か月足らずにして驚異的な伸張を見せた。

 

 当初は、抗争としても余りに無法な手段を使った事への反感も強く、組織とは直接関係のない住民からも嫌悪をもって迎えられた。

 

 

 

 しかし、こうした逆境は然程時間をかけずに解消された。

 

 かつての支配者よりも身かじめ料を少なくし、勢力内における過度な乱闘や悪質な犯罪を取り締まるだけで、人々はあっという間に手の平を返して彼らを賞賛し始めたのである。

 

 

 

 元来こうした町に済む者には、総じて弱肉強食の理論が浸透している。

 

 如何なる手段も結果によって正当化されるという意味では公平な価値基準を共有しているともいえる。

 

 

 

 モラルや遵法精神が何の役にも立たない環境の中で生きる人々の順応力を、骸佐達は理解していた。

 

 だからこそ、その風紀に即した調略を計画・実行し、表面的で利害関係込みとはいえ、短期間で人々の信頼を得ることができた。

 

 

 

 そうして、二車の面々は上手く龍門の支配圏をそっくりそのまま奪い取り、人々に自らの支配を認めさせることに成功した。

 

 徐々に現地で彼らの傘下に加わることを申し出る連中も増え始め、客観的に見ても順風満帆な成り上がりを果たしたと判断できるだろう。

 

 

 

 目指すはこのキングダムにおいて絶対的な権力を誇る、「4強」と呼ばれる他勢力に匹敵すること。

 

 そしてゆくゆくは町全体の支配者となり、名実ともにふうまを超える「家」を構える。

 

 

 

 それが二車骸佐の野望であり、彼がかつて主と定めた「目抜け」への決別を完全に果たし、過去を捨て去る道を選ぶための第一歩でもある。

 

 

 

 その実現を可能な限り速めるために、彼らはノマドのような連中とも手を組んで仲間殺しに手を染め、無差別に住民を巻き込むと知りながらバイオテロを実行した。

 

 

 

 最早後戻りはできず、立ち止まることすら許されない。

 

 それらを全て覚悟した上で、骸佐は魔道をひた走る決意を固め、権左達もそれに付き従うと決めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 権左と能面の間に殺気を込めた沈黙が流れ、風さえ吹かない無音の空間が広がる中。

 

 突然、能面の背後に位置する地面が、スライムでも落ちたかのように不規則に蠢いた。

 

 

 

「……! よせ雫っ!」

 

 

 

 権左が叫んだ直後、蠢く影からバレーボール程の大きさがある黒い球体が飛び出してきた。

 

 その球体はゆらゆらと不安定な揺らぎを見せながら、そのまま風船と同じように空中へ浮かんだ。

 

 

 

 黒い絵具で空中に描いたかのようなフォルムをしている球体が、能面の顔がある高さまで浮上した──かと思うと、次の瞬間にはパァーン、という鋭い破裂音と共に、能面から離れるように四散し飛び散った。

 

 

 

 すると球体の中から、黒い飛沫と共に人影が1つ飛び出してきた。

 

 人影は吹っ飛ばされた勢いのまま空中で回転し、しゃがみながら普通の地面へ着地する。

 

 

 

「…………ええ? 今何やったの、そいつ。僕の闇が吹き飛ばされたんだけど」

 

 

 

 想定外な方法で迎撃されたことに憮然としつつ、襲撃をかけた人影は立ち上がった。

 

 その正体は、黒と紫を基調とした戦闘服に身を包む少年だった。

 

 

 

 あどけない眼差しと童顔と読んで差し支えない面立ちを持ち、義務教育すら終えていない年齢にしか見えないその少年は黒崎雫といい、権左と同じく二車忍軍の幹部である。

 

 

 

 雫はふうま一門に多く存在する系統の能力“邪眼”を有しており、その名を“盲目の赤蛇眼”という。

 

 これは雫自身の影から“闇の雫” と呼ばれる物体を生成し、宙に浮かせる能力である。

 

 

 

 “闇の雫” は重力や衝撃といった外部の影響を受けることなく浮遊し続け、ある程度の距離ならば彼自身の意志で移動させる事も可能だ。

 

 また雫本人は、“闇の雫” 自体の大きさに関わらず体の全体あるいは一部を自在にそこへ入れ、また入った所とは別の“闇の雫” から、距離や位置関係を無視して出ることもできる。

 

 

 

 これを用いた変幻自在の攻撃で相手を翻弄し意識の外からの攻撃で仕留めるのが、「二車忍軍」の最年少幹部である黒崎雫の基本戦法であり、初見の相手はまず防ぎようのない必殺技と言える。

 

 

 

 今の攻撃はその“基本”に則り、“闇の雫”内部に体全てを潜めた上で万全の態勢で奇襲を行ったつもりだった。能面の後ろを取った時点で、雫本人は既に勝ちを確信していた。

 

 

 

 だが、結果はまさかの失敗に終わる。

 

 雫が苛ついたのは、単に“闇の雫”を潰されたからだけではない。

 

 自分の得意技がジャブでも払うような気軽さで防がれたにも関わらず、敵がそれを成しえた原理が全くわからなかったからだ。

 

 

 

 二車の中でも突出した戦闘センスと身体能力を持ち、自らを天才と称して憚らない雫にとって、邪眼の力は絶対的に信用できるものであった。

 

 稀に勘のいい奴がマグレで死角からの攻撃を避けることはあっても、力の源たる“闇の雫”そのものを破壊される等ということはあり得ない筈だった。

 

 

 

 だが、今彼らの目の前にいる能面は明らかにその不可能を実現した。

 

 

 

(…………雫のやつが「出てきた」瞬間だ。何をやったかは分からんが、足を引いて後ろに素早く手を出した。それで野郎の拳に触れた瞬間、“闇の雫” が水風船みてぇに弾け飛んだ)

 

 

 

 少し離れた位置に経っている権左は、雫より引いた視点から今しがたの攻防を観察できた。

 

 だが月明りが殆ど無い今夜は、商店街の柱に据え付けられた街灯以外に頼れる明かりはない。

 

 権左の眼力をもってしても、能面の攻撃手段を看破することは厳しい状況である。

 

 

 

 普段ならネオンや店内から漏れる明かりによってもう少し見渡しがいいのだが、今は全ての店が閉じられ、周りに済む者は全て家の中に引き籠っている。

 

 この路地にいる人物も、動いているのは彼ら3人だけだ。権左が来るまで能面の相手をしていた彼の部下や気の荒い住人達は全員道端に転がっており、殆どが失神している。

 

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 そもそもこの戦いは、突然この街に現れた正体不明の能面が、二車のシマであるバーの中で荒くれ者共と突然乱闘を始めたのがきっかけである。

 

 

 

『訳の分からん面を付けた奴が暴れている』というマスターの連絡を受けた権左が現地へ急行すると、彼の通報にしては珍しく嘘でも誇張でもない状況が繰り広げられていることに驚いた。

 

 このマスターは、粗暴さと底なしの性欲がウリなオークにしては珍しく気が弱く揉め事を嫌うため扱いやすいのだが、商品に手を付けるほどの酒好きかつ、街でも有名な法螺吹きでもあるからだ。

 

 

 

 件の店で起こっていたのは喧嘩、というには些か一方的な暴力行為だった。

 

 酔いに任せて乱闘に参加した一般人、それなりの場数は踏んできたであろうオークや魔人、更には騒ぎを見て駆けつけてきたであろう権左配下の対魔忍、それら全員が男に殴打されたらしき傷を負ってノックアウトされていた。

 

 

 

 見た所全員息はしているようだが、能面の方は傷はおろか衣服が乱れた様子すらない。

 

 圧倒的な実力差を察しざるを得ない状況だった。まさしく大人と幼児の戦いだっただろう。

 

 

 

 そんな惨状を見るや否や、権左はすぐさま頭を戦闘モードに切り替えた。

 

 土遁の術を用いて道路から土塊を削りだし、自らそっくりの土人形を2体形成する。

 

 そいつらを本体より先に仕掛けさせた上で、自分は更に術を用いて土中に潜行し、完全に相手の死角を突ける位置へ移動する。

 

 

 

 初撃から「決める」腹積もりで、権左は能面へと交戦を開始した。

 

 

 

 こんな時間にこんな場所で暴れるような奴が、今更話し合いでケリを着けるような物分かりがいい性格である可能性はほぼ無い。

 

 大体恰好からして自ら不審者だと名乗っているようなものだ。こういう輩と進んで交渉をするほど権左は酔狂ではなく、この現場を見て様子見や出し惜しみをする程鉄火場に不慣れなわけでもない。

 

 

 

 まずは確実に仕留め、脅威を排除する。身元の確認はそれからでも遅くはない。

 

 街の治安を預かる者の職責をもって、彼は理性的に能面を始末することを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 だが冷徹な権左の観察眼をもってしても尚、能面の戦闘力を正確に計れてはいなかった。

 

 能面は鋼鉄製らしき小手と手甲を身に着けているが、銃や刀剣はおろか寸鉄1つ装備していない。

 

 

 

 にも関わらず、分身達のコンビネーション攻撃を足の運びと体の反らしだけでいなし、死角かつ土中からの槍すらもあっさりと躱してみせた。 

 

 それだけではなく、長物である槍の攻撃を掻い潜って懐に入り、権左の分身たちをそれぞれ拳の一撃だけで粉砕してのけたのである。

 

 

 

(!! ……こ、こいつはやべえ……っ! 手練れなんてもんじゃねえぞ……!)

 

 

 

 自信をもって仕掛けた術と戦法が初見で破られたのみならず、殆ど素手同然の相手に追い詰められたことで、自他ともに認める戦闘狂の権左も流石に面食らった。

 

「クロスレンジでやり合うのは分が悪い」と直感し、後方に跳んで能面との距離を取ると槍を構え直し、敵の接近に合わせてカウンターを放つ戦法に切り替えた。

 

 

 

 だが、彼が予想していた追撃は何時まで経ってもこない。

 

 それどころか今しがた自分を殺そうとした相手と向き合っているというのに、殺意はおろか敵意すら感じ取ることができなかった。

 

 

 

 まるで人形かロボットと対峙しているような気分にさせられたが、権左は目の前の能面が間違いなく血の通った達人だと確信していた。

 

 それ程に今能面が見せた戦いぶりは見事なものだった。ドローンやアンドロイドの類にあんな動きができるとは、彼には到底思えなかったのだ。

 

 

 

「……ナニもんだ、貴様」

 

 

 

 だからこそ権左はこの能面に初めて興味がわき、判断を撤回してまで相手に話しかけたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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 だが、権左の問いに能面が返答することはなく、雫が応援に来て尚状況が好転する様子は見られない。

 

 権左は再度の攻撃を仕掛けるタイミングを見つけられず、今にも飛び出しそうな雫を声や視線で制するのが精一杯だった。

 

 

 

 権左自身、2人がかりで挑んで負けるとは思っていない。

 

 だが敵の実力、特に土中からの槍や“闇の雫”からの奇襲を初見で看破した絡繰が不明な以上、迂闊な攻撃は予想だにしない犠牲を生むことになりかねない。

 

 

 

 バーで乱闘した相手には明らかに手加減しているところから見て、能面が無益な殺生をするタイプではないことは窺える。

 

 だが、本気を出さざるを得ない状況になって尚、敵の命を気遣うような博愛主義者に見えないのも確かだ。 むしろ立ち居振る舞いから推測するに、真剣勝負に一切の情けは無用と信じる手合いだろう。

 

 

 

(……こんな戦いじゃ死ねねえよな、流石によ)

 

 

 

 権左は心の中で苦笑する。

 

 

 

 彼や雫は、今の二車にとって欠かすことの出来ない戦力である。

 

 自分たちが捨て石になって主や組織全体にとって確実なリターンがあるというならともかく、彼らの命はこんな素性も知れない闖入者との戦いで散らしてよいものでは決してない。

 

 

 

 故に、能面が確実な隙を晒すか奴の能力が判明するかしない以上、こうして睨み合う以上の名案はなかった。

 

 だが、こうして突っ立っているままでそんな機会が訪れるとも思えない。

 

 

 

 ここで他の幹部──性格や実力から言えば彼らと同じ二車の一門であり、普段雫のお目付け役をしている楽尚之助か八百比丘尼あたりが望ましい──が来援に来てくれれば話は変わる。

 

 腕に覚えがある(雫ほど自信過剰ではないが)権左としては屈辱的な話だが、その希望に縋る以外、今は確かな勝ち筋を見いだせなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな膠着状態は思いもよらない展開で崩れることとなる。

 

 

 

「……失礼。電話に出させてもらうぞ」

 

 

 

((………………は?))

 

 

 

 おおよそ権左と雫にとって信じられない事態であった。

 

 初めて能面から人間の声──低さから言って男だろう──が聞こえたと思ったら、何とそいつは戦闘中にも関わらず懐から携帯端末を取り出し、誰かからの着信に応答し始めたのだ。

 

 

 

「俺だ。首尾はどうだ?」

 

『ああ、お疲れ様。こっちは今片付いたわ。二車骸佐は留守の上、幹部連中は貴方たちの陽動に引っかかって皆いないんだもの。あっけなさ過ぎてつまらないくらいだわ』

 

 

 

 思わず権左と雫は顔を見合わせる。お互いに「何だこれは」とでも言いたげな表情だった。

 

 今まで全く隙がないことを忌々しく思っていたが、これは逆に隙を晒し過ぎである。

 

 2人共に待ちわびた絶好のチャンスだというのに、権左はおろか雫さえ困惑の余り足が動かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 おまけに能面はただ通話するだけでなく、態と2人に会話が聞こえるようにスピーカーで話相手の声を出力している。

 

 挑発のつもりなのか、或いは彼らに会話の内容を聞かせるのが目的だとでもいうのだろうか。

 

 

 

「……あ? おい待て。今なんつった?」

 

 

 

 うっかり気が緩んで聞き逃すところだったが、電話の向こうにいる相手──こちらは声色からして女だろう──が話した「陽動」の一語は、権左としては絶対にスルー出来ないものだった。

 

 

 

『……え? ちょっと待って。もしかして貴方、近くに二車の連中がいるの?』

 

 

 

 その声が聞こえたのだろう、電話相手の女は明らかに動揺しだした。

 

 だが、それに対する能面の回答は実にあっけらかんとしたものだった。

 

 

 

「ああ。つい今しがたまで戦っていた。だがもうこれでこちらの狙いは分かったことだし、彼らも急いで戻るだろうから、そっちは撤収を急げ。こっちは仕掛けを作動させる。詳しい報告は後で聞こう」

 

『…………』

 

 

 

 女は言葉を返さず息を呑む音だけが聞こえた。

 

 男の能天気さに呆れたのだろう。権左は少しだけ女に同情した。

 

 

 

「どうした? もう切るぞ」

 

『……え、ええ。それじゃあ』

 

 

 

「どうした?」じゃねえよお前がどうかしてるんだよ。

 

 珍しく権左と雫の思考が完全に一致した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなありえない状況で通話を行った能面が携帯をしまい、権左に視線を戻す。

 

 すると、今までの無反応は何だったんだというくらい、気さくな口調で向こうから話しかけてきた。

 

 

 

「まあ、そういう訳だ。俺達が派手に暴れて注目を集め、今の仲間が情報を本拠地から盗み取る。その作戦は無事終了した。つまり俺の方には、これ以上お2人さんを足止めする理由はなくなったわけだ。ちなみに、俺たちがそこまでして盗んだ情報が何なのか、お前さん知りたいか?」

 

 

 

「…………ああ、是非聞きたいね」

 

 

 

 槍を構えたまま、そう権左は答える。

 

 敵の話を全面的に信じることはないが、芝居だと断じるには少々手が凝り過ぎている。

 

 

 

 能面の話を信じるなら、雫以外の応援が来ないのは奴のような敵が他にも街中で暴れているために手が回らないからということになるが、現状それを確かめる術が権左側にはない。

 

 

 

 まさか、目前の相手を真似して携帯を使うわけにもいかない。馬鹿らしいが、こちらが通信しても仕掛けてはこないと思いこませて裏をかく為のポーズである可能性は捨てきれない。

 

 

 

 ペースに乗せられているようで不本意だが、今は少しでも会話から手掛かりを掴むしかない。

 

 通信での会話にも出てきたように、今この東京キングダムに二車骸佐がいないことは事実なのだ。

 

 権左が常以上に慎重な対応を強いられている、その最大の理由はこれだった。

 

 

 

「その前に確認しておくが、お前らがこの地にいた『龍門』の連中を排除しその権益を奪った時、奴らが隠匿していた“玩具”の殆どは売っぱらって金に換えた。それは間違いないな?」

 

「……さあね、その辺は俺が担当したわけじゃないんで、詳しくは知らねえな」

 

「そうか。その中に『馬超』というコードネームを与えられた生物兵器があった。見た目は単なる女型の化物に過ぎず、狂暴な本能のままに周りの人間を襲う」

 

 

 

 権左の惚けた回答なぞ意に介さず、と謂わんばかりに能面は話を続けた。

 

 

 

「だがそいつには単なるモンスターと見なすには恐ろし過ぎる秘密があった。チャイニーズ共は近年遺伝子細工やらクローンやらに凝っていてな。馬超はその息がかかった闇組織のブツだ。とんでもない“両親”を持っているのは想像に難くあるまい。……そこのボウヤ、お前はこいつの“親”が誰か知ってるか?」

 

「はぁ? ……んなの、僕の知ったことじゃ「だろうな、だが今回は知っておいたほうが良かったのは間違いない。何せお前らの主ときたら、その最高にヤバい代物を碌に調査も対策もせず、どこぞの厄介な好事家へ売り飛ばしたんだからな」

 

 

 

 今度は雫の回答を遮って説明を始めた。

 

 顔は見えないが、心なしか話し始めの時より能面のテンションが高くなったように聞こえる。

 

 

 

「全く、そいつが廻り回って自分たちに牙を剥くとか考えなかったのかね。……まあ、手元に置いておくのも物騒過ぎるし、何より金が入用だったのは仕方あるまいな。残ったウィルスの除去や感染者の治療、その為には結構な費用が必要だ。『あれ』はさぞかしいい値で売れただろうよ」

 

 

 

 そう語る能面の口調は彼らの所業を嘲笑うかのようでもあり、同時に教師が生徒の失敗を諭すかのようでもあった。

 

 どちらにせよ、そんな語り掛けは2人の神経を逆撫でするのみだったが。

 

 

 

「最初から連中のカネを当てにした作戦である以上、多少のリスクはやむを得ないだろうが……それにしたって乱暴だよな。お陰で自勢力内では兎も角、他からの評判は最悪だ。獣王会……だったか。隣の地区に構えているあの連中なんて、今にもお前たちに報復したそうだが?」

 

 

 

「そんな事」は、権左達も最初から想定済みだった。

 

 ウィルス兵器の使用により、龍門の構成員だけでなく他勢力の人間をも巻き込むことについては、作戦立案の段階で身内からも懸念する声が出ていた。

 

 

 

 いくら闇の町での勢力争いがルール無用だといっても、人として許容できるラインはある。

 

 

 

 まして、それまでは曲りなりにも対魔忍を名乗っていた自分たちがそのような蛮行を行えば、反動による不信と批難はより大きいものとなり、支配するどころか街全体を敵に回すことになる可能性とてある。

 

 権左自身、主命とはいえこの作戦に思う所が無かったわけではない。

 

 

 

 だが、血生臭い砂をかけてまで五車から出奔した“二車忍軍”が独立して活動するためには、一刻も早く根拠地となる場所、配下の者達を養う経済基盤が必要であることもまた明白だった。

 

 

 

 だからこそ、ノマドの連中に借りを作ってまで“シマ”を手に入れる最短距離を突っ走り、事を成しえた後は全力で後始末にかかると決めたのだ。

 

 

 

 罵倒されようと唾を吐きかけられようと、必ず結果で悪評を覆して見せる。腕ずくで俺たちを排除しようというならば望むところだ、こちらも実力でもって応えよう。

 

 二車骸佐にその気概があればこそ、部下である権左達もその意志に沿い、敢えて外道働きも厭わず闇の住人となる道を進んでいるのだ。

 

 

 

 故に、この能面の諭すような口上は許容しがたいものであった。

 

 知らず、権左の槍を握る手にも余計な力が入る。無事に帰すつもりは最初からなかったが、今や何としても目前の能面を叩き割らずには、彼に宿った激情は収まりそうもなかった。

 

 

 

「……お前に何が分かる、とでも言いたそうな面だな? ああ、気持ちは分かるよ土橋権左。今の五車に、そしてあの“目抜け”には、俺も言いたいことが結構ある」

 

 

 

 そこで、権左は目の前にいるこの男の素性に気が付き、瞠目した。

 

 五車のことは兎も角、あのふうま家当主を“目抜け”と呼ぶ人間はかなり限られる。

 

 

 

「……お前、対魔忍か?」

 

「おや、まだ気づいていなかったのか。……ま、とはいっても俺は、お前たちとは些か以上に立ち位置が異なる。野良犬になって腐肉を漁るくらいなら、飼い犬として上等な餌にありつきたいって信条なもんでね。だからこれを機会に、ちょっとお前らに聞いておきたいことがあるんだがな」

 

 

 

 そこまで話した所で、能面は一呼吸分溜めを作った。

 

 もって回った彼の物言いの所為で、権左と雫は急にクサい芝居を見せられている気分になった。

 

 しかもそのクサさとは腸が煮えくり返るような怒りを想起させる、不快極まる腐臭だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―どんな感じなんだ? 自分で点けた火を消して感謝され、殺した人間の家族から与えられた金で飯を食う気分っていうのは? ……おっと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこまで聞いて、ついに雫のの我慢が限界を迎えた。

 

 余程頭にきたのか“闇の雫”を使うことすらせず、足による踏み込みだけで一息に能面まで迫る。

 

 その勢いを乗せて右手の鉤爪を突き出し、彼の喉首を引き裂かんとするも──。

 

 

 

「……おいおい、ボウヤ。ここは怒らずに反省するもんだ。お前らが今日まで何人殺したか、何なら数えて教えてやろうか?」

 

「く……うるさい!! お前なんかに骸佐様の何が……! ぐぁっ!」

 

 

 

 能面はあっさりとその攻撃を右手で掴んで無力化し、激高する雫が口上を述べきる前にその喉を左手で握り、雫の発声と呼吸を遮る。

 

 

 

「骸佐様の、だと? ……人の話はきちんと聞くもんだぞ黒崎雫。今はお前の“罪”について話してるんだ。どう言い訳しようと、お前たちが二車や龍門とは何の関係もない命を奪った事実は変わらん。お前は自分の罪悪まで主に背負ってもらうつもりか? そこまで介護してもらわなければ立つことも出来ないようなガキが、俺に勝てると思っているのか?」

 

 

 

 正論や質問を畳みかけて委縮させ、反論しようとする意志を挫く。

 

 その圧迫面接の如き説教は、高慢な年長者が年下を叱る時特有の手法だった。

 

 

 

 上から目線で話されれば、雫のような少年は必ず反発する。

 

 能面はそれを知った上で語り掛けつつ、まるで自分の小ささを思い知らせるようにぐい、と首を掴んだまま目線以上の高さに雫を持ち上げる。

 

 

 

 頸動脈と気道を絞められた雫は「放せ」の一言すら言えないまま上を向き、酸素を求めて喘いだ。

 

 邪眼を発動し“闇の雫”を使うだけの集中力すら、今の彼にはないようだ。

 

 半ば無意識に手足をバタバタと動かした時、鉤爪が何度か能面の腕や胴体を切り裂いている。

 

 

 

 本来なら痛手を与えられるであろうその抵抗は、能面の着こんだ黒い服に斬り跡をこそ残してはいるが、皮膚自体には跡どころか出血すら見られない。

 

 斬撃は装束のみならず、その下に着けられた黒のボディーアーマーや小手を貫通し、間違いなく身体まで届いているにも関わらず、である。

 

 

 

 無理やり病院に連れていかれ駄々をこねる幼児のような有様に、能面は「フッ」と嘲笑を漏らす。

 

 

 

「……悪いが子どもの相手は苦手でな。後のお叱りは他の奴にやってもらうといい。じゃあ……なっ!!」

 

 

 

 この程度の挑発で我を忘れ、術の使用もせずに突っかかる者に興味はない。

 

 その台詞は胸にしまい、能面はただ行動で自分の意志を雫に伝えることにした。

 

 

 

 すなわち、人間を槍に見立てた大暴投によってである。

 

 首を掴んだままその場で横方向に一回転し、遠心力と肩の力を最大限活用したスローイングは過たず斜め上方向への直線運動となって作用し、黒崎雫を宙へと放った。

 

 

 

 綺麗に槍投げと同じ軌跡を描いて空中に放り出された少年の肉体は、槍どころか野球のボールすら滅多に経験しない距離を飛ぶことになった。

 

 

 

 予想外の飛行体験をする羽目になった雫は気が動転して、悲鳴すら碌に上げられなかった。

 

 彼はヒューッ、という風切り音だけを残し、街上空に広がる暗闇へと飛ばされて姿を消した。

 

 

 

「…………まじかよ」

 

 

 

 手を出し損ねた権左はこの光景を見て、ただ呆気にとられるしかなかった。

 

 

 

 彼が何より魂消たのは能面が今しがた見せた、小柄とはいえ人間一人を数十m以上遠くへ投げ飛ばす膂力であるが、それより前に披露した反応速度と耐久力も十分驚嘆に値するものだった。

 

 

 

 雫の装備した鉤爪は単なる金属製ではない。

 

 主たる刃は出力によって長さを調整できるエネルギーブレードであり、人間が素手で防ごうなどとすれば腕ごと切り裂かれるしかない。

 

 

 

 にも関わらず、能面は爪状に形成された高出力レーザーを握りしめ、雫の攻撃をいとも簡単に受け止めてしまった。

 

 たとえ耐熱性の装備を付けていたとしても、仮に相手が人間でなくとも、そんなことは不可能のはずだった。

 

 

 

 しかも雫が喉を絞められ藻掻く際、腕や胴に鉤爪が当たっても尚能面にはダメージがなかった。

 

 この事を考えれば、奴の強さは単に頑丈な装備を着こんでいるとか、鋼のように肉体を鍛えているとかの問題ではない。

 

 明らかに人の領域を外れた、権左が予測もできない「何か」を持っているとみて間違いない。

 

 

 

 であるならば、猶更この情報を主や仲間に伝えねばならない。

 

 単に分が悪いというだけでなく、既に権左の方にもこれ以上戦う必然性は無かった。

 

 相手が帰るというなら、猶更深追いは無用である。

 

 

 

 このまま能面を見逃して勝ち逃げされるのは癪だ。

 

 だが権左にとっては、無駄死にして主や仲間に迷惑をかけることの方が余程業腹であり、それは自らの存在意義を否定するに等しい暴挙なのである。

 

 二車家執事となったその時より、土橋権左の命や名誉は彼自身のものではない。

 

 

 

「……どうやらお互い意見が一致したようだな。結構、では俺は帰らせてもらうよ」

 

 

 

 そんな権左の思考すらお見通しなのか、能面はそう言うなり踵を返した。

 

 そして槍を構えた男に向かって背を向け、そのまま路地の奥へと無造作に歩いていった。

 

 

 

 今となってはこれを油断と考えられるほど、権左は素人でも狂犬でもなかった。

 

 だが同時に、主や自分に対し讒言を吐いた相手を笑って許せるほど、彼は温厚でも鈍感でもない。

 

 

 

「……おいあんた、せめて名くらい言っていけよ」

 

 

 

 それは断じて親しみや敬意故の発言ではない。

 

 名前も知らなければ探し出して殺すのに不便だという、極めて殺伐とした理由でしかない。

 

 

 

「ふ……生憎、俺は名前なんぞ必要のない世界の住人でな。どうしてもというなら、そう……『鴉』とでも呼べばいい。……あ、そうだ。折角ここでお前と会ったんだ。一つ忠告しておこう」

 

 

 

 問いかけた権左に背を向けたまま、能面は何の手掛かりにもなりそうもない適当な名をあげた。

 

 しかしその後、何か言いたいことがあったのを思い出したらしく、体を後ろに振り向かせた。

 

 

 

 夜の闇に紛れて体の輪郭がぼやけ、まるで能面だけが宙に浮かんでいるように見える。

 

 それは最早ホラー映画のワンシーンを見せられているかのようで、只管に不気味な光景だった。

 

 

 

「他所者と組むなら十分に注意するんだな。『鶏口となるも牛後となるなかれ』、なんて言うつもりはないが、知らぬ間に組織ごと誰かの捨て駒にされていた、なんてオチは俺としてもつまらんからな。……ま、精々頑張ることだ。立場上応援は出来ないが、お前たちの息災くらいは祈っといてやるよ」

 

 

 

 権左の体中から漏れだす殺気をものともせずに、纏う雰囲気に合わない軽薄なアドバイスを残し、今度こそ能面は完全に街の闇へと溶けていった。

 

 

 

 次に会ったら殺す。必ず殺す。

 

 人によっては負け惜しみにも聞こえる決意を胸に刻み、権左はその背を黙って見送った。

 

 

 

 数秒後、能面に投げ槍扱いされた黒崎雫が顔を真っ赤にして戻ってきた。

 

 “闇の雫”によって落下の衝撃は殺せたらしく、その身体に外傷は全くなかった。

 

 しかしどうやら幼さ故に天井知らずな少年のプライドは、泣きたくなるほどに傷つけられたようである。

 

 

 

 だが雫と同程度以上にキレている二車家執事は、その顔を見ても慰める言葉は一切かけず、代わりにその湯気が立ちそうなほど血が上った小さな頭へ、一発の拳骨を見舞った。

 

 

 

 更に思わぬ攻撃を受けて雫が頭を押さえ、「何すんだよ!」と叫びながらその場に屈んでいる隙に、

 

 

 

「うるせえ。今日のザマは百之助とおばばに知らせとくからな。精々絞ってもらえ」

 

 

 

 それだけを吐き出すように告げ、足早にアジトへと戻っていった。

 

 誰が何処をどう見ても、それは大人げない八つ当たりそのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、東京キングダムにおける一夜の「小競り合い」は幕を閉じた。

 

 ほぼ同時期、権左達とは別の場所で「二車忍軍」の幹部や構成員と交戦中だった「謎の集団」も、まるで幻だったかの如く瞬時に姿を消した。

 

 

 

 また、権左達以外が到着した現場においても死者は1人も出ていなかった。

 

 重症者も合計して10名に満たず、一番酷いもので肋骨や鼻骨の骨折だったと報告された。

 

 

 

 明らかに、陽動をかけていた者達の手加減が見て取れた。

 

 無論余計な犠牲を出さないという人道的配慮だけでなく、怪我人を増やしたほうが多く時間を稼げるという打算もあったであろうが。

 

 

 

 その後二車忍軍総出で必死の捜索が行われたが、「鴉」と名乗った能面の男を含め、襲撃を掛けた「集団」の足取りや素性は洋として掴めなかった。

 

 また彼らの本拠地にあるデータサーバーを調べたところ、何者かが不正な手段でアクセスし、中のデータをコピーした形跡が見つかった。

 

 

 

 そのコピーされたデータとは、彼らが売却した龍門の“資産”と、売り先である顧客の情報だった。

 

「鴉」は、確かに真実を話していたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ふ~ん。で、言い訳はそれで終わり?」

 

 

 

 拝啓 ふうま時子様。

 

 長い間お世話になりましたが、今日でお別れになるかもしれません。

 

 その理由が物理的な死なのか社会的な破滅によってなのかは、今のところはまだ分からないが。

 

 

 

「……い、いやだってさあ。『遊びに行ってくる』って言って日が暮れても帰ってこないときは、今まで大体泊まってきてたじゃん。いつもと違う流れになったんなら連絡入れてくんないと、こっちにも予定ってもんが……痛ぁっ!」

 

 

 

 ぎち、と拘束の締め付けが強くなり、さくら先生が情けない悲鳴を上げる。

 

 今現在彼女は金属製の触手によって両手足を縛り付けられており、全く身動きが取れない状態だ。

 

 

 

 そして、つい数分前までさくら先生と交わっていた俺はと言えば、真っ裸のまま床に正座させられている。

 

 寝室の床はやけに冷たく、風呂から上がったばかりというのもあって妙に肌寒い。

 

 

 

 その眼前には、彼女をぐるぐる巻きにしている張本人──背中から金色の触手を6本生やしたピンク髪の少女が、見るもの全てを虐げずにはいられないとでも言わんばかりの嗜虐的な笑みを浮かべて仁王立ちしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 この少女の名前は沙耶NEO。「NEO」までが本名だが、親しいものは皆「沙耶」と呼ぶ。

 

 

 

 彼女は元々米連の研究者たちによって作られた人造魔族であり、戦闘用の触手を装備され残虐性と闘争心を強化された兵器として、向こうではモルモット同然の扱いを受けていたようだ。

 

 

 

 だがある日、極秘で行われた日本某所における実験中に職員や警備部隊を殺害し脱走。

 

 俺はその回収任務をDSOに所属する“仮面の対魔忍”に依頼され、彼女を追った。

 

 

 

 だが実際に沙耶と会った時、この少女の境遇やこの先の処遇を考え、五車で保護すべきという考えに至り依頼主らと対立した。

 

 

 

 その後血生臭い“紆余曲折”を経て、沙耶は無事五車の保護下におかれた。

 

 

 

 そして現在、沙耶はさくら先生の家へ居候している。さくら先生は「えー何でよー!? ふうま君ちで預かればいいじゃん!」と渋ったらしいが、最終的にはアサギ先生が総隊長権限で押し切った。

 

 

 

「居候がいるのに男を自宅に呼んだのか……」という非難には、先生は強く「No」と答えるだろう。

 

 実際いつもの彼女なら今この家にはいない筈だし、俺も説明を聞いてそう思ったからお誘いに乗った。

 

 

 

 どういうことかというと、この沙耶という女は見た目通り勝手気ままで、家で落ち着いて暮らすというのができない性分なのだ。

 

 

 

 米連の研究施設から脱走したのも良心の呵責などではなく、実験ばかりで外出はおろか他人とのお喋りすら碌にできない毎日に飽き飽きした、というのが最大の理由らしい。

 

 退屈を嫌い、一所に落ち着かず、一旦夢中になると他のことが目に入らなくなる。まるっきり猫みたいな奴だ。

 

 一応今俺たちがいるこの家を自宅と認識してはいるみたいだが、では実際週の何日この家に帰ってきているのかといえば、恐らく多くても3日といったところだろう。

 

 

 

 それ以外の日はどうしているのかというと、町内で目を付けた“友達”の家に転がり込んでいるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 生物兵器となるべく作られただけあって、沙耶NEOは闘争と殺戮を何より好む。

 

 五車に来たばかりの頃は、“遊び甲斐”のある相手を見つけては手当たり次第にちょっかいを出していた。

 

 流血沙汰となって、さくら先生と被害者家族が揉めるという、割と洒落にならない事態にもなったことがある。

 

 

 

 そんな過激で残酷な性格なら、あっという間に敵視され孤立する──かと思いきや、意外と仲の良い人間はすぐできていた。

 

 バトルジャンキーなシリアルキラーという割とどうしようもない性を持つ沙耶だが、そんな彼女だからこそ放っておけない、というお人好しも結構いたということだ。

 

 

 

 米連やアスカを敵に回してまで彼女を助けた俺が言うのもなんだが、この町は親切な奴が多過ぎる。

 

 対魔忍とは人に牙を剥く魔を倒す正義の味方である、というパブリックイメージに照らし合わせるならむしろ自然なことというべきなのかもしれないが、理想と現実は乖離するのが世の常でもある。

 

 

 

 しかし実際この町には正義感が強い上に、沙耶と“遊べる”だけの実力者がざらに住んでいる。

 

 さらに言えばそんな真面目な奴らの中でも、問題行動を起こす者や、集団に馴染めない者を正すのが自分の使命だと確信している存在、所謂「委員長キャラ」は特に沙耶との相性が良かった。

 

 

 

 それは、彼女が根っからの“悪人”ではなかったというのも大きな理由だろう

 

 

 

 確かに沙耶は常に戦える相手を物色し、他人を傷つけると興奮するヤバい女だ。

 

 だが戦闘時以外の沙耶は言動こそ物騒だが、性根は素直で無垢な少女そのものであり、キリングマシーンとなるように苛烈な意識矯正を受けていたとは思えないほど、人格自体の破綻は見られない。

 

 

 

 実際、他人に注意されれば割と言うとおりにするし、驚いたことにやり過ぎた相手には頭を下げて謝罪し、町中で戦ってものを壊してしまった時は頑張って直そうともする。

 

「あーあヒマ、誰か殺したいなあ」とかいう独り言を結構な頻度で呟いてはいるが、外見の怖さを乗り越えて話してみれば案外「カワイイ女の子」って印象を受ける奴だ。

 

 

 

 ……いや、勿論趣味嗜好の時点で、一般社会の基準では完全にアウトである。

 

 “意外と”可愛いところがあったとしても、沙耶が監視や制限も無く伸び伸びと生きていてはいけない存在なのは変わらない。

 

 

 

 まあそんな理由で、沙耶の周りには彼女がやり過ぎないように見張り、大事になる前に制止し仲裁するタイプの女―男は下心丸出しなので全員瞬時に蹴散らされている―がよくいるようになった。

 

 

 

 特に「喜瀬蛍」と「紫藤凜花」はお気に入りのようで、蛍先輩からは暴れるたびに折檻と説教を喰らい、凜花先輩には 煙遁の術であしらわれつつも可愛がられているようだ。

 

 前者はともかく、後者がこういう対応をするのは意外だった。案外子どもが好きなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ―で、その沙耶は今日の昼頃、蛍先輩と遊んでいる事をさくら先生に連絡した。

 

 監視をしやすくする為に持たせている携帯を使い、彼女がさくら先生宛に電話を掛けてくる時はいつもその話であり、先生はこの時点で察しがついた。

 

(あ、今日は蛍ちゃんちに泊まるんだな)、と。

 

 

 

 事実、今までこの電話をした沙耶は、そのまま遊び相手の家に転がり込んで一晩過ごすのが定番だった。

 

 一言も伝えずにそうしていたんだ。今日みたいに「夕飯だけもらった後帰ってくる」というなら、沙耶の方にそう連絡する義務が生じるだろう。

 

 

 

 少なくとも、いくら「家に帰ってきたら知らぬ間に家主が男を咥えこんでいたから」といっても、世話してくれている人間を拘束して相手の男を辱める権限なぞ、この触手女に与えられる道理はない……筈なのだが、

 

 

 

「ふうまもさぁ、何か私にいうことない? この前凜花に聞いたよ、むかし間男は逆さ吊りにしてちんこを焼きごてで潰されたんだって。やっちゃうよ沙耶、めんどいから焼かずに刺すけど」

 

「怖いわ! ってか間男じゃねえよ、お前と先生は夫婦じゃないだろうが!」

 

「そうだそうだ、どっちかっていうと沙耶ちゃんがお邪魔虫……んぐぅ!」

 

 

 

 口にまで触手が巻かれ、さくら先生がもごもごとしか声を発せられなくなった。

 

 いよいよ孤立無援となった俺に向かって、沙耶が腰に手を当て立ったまま顔を近づけてくる。

 

 

 

「そんな態度取っていいのー、ふうま? この事を他の人にバラしたら、いったいどーなるのかな?」

 

 

 

 くひひ、と可憐ながらも邪悪な笑い声を浮かべる沙耶。

 

 

 

 普段は「カワイイ女の子」だと言ったが、殺し合いをしている時と、こういう悪ふざけをしている時の沙耶は正に“悪魔”と呼ぶにふさわしい振る舞いを見せる。

 

 人の弱みに付け込んでマウントを取る様には、ベテラン虐めっ子の風格さえ漂っている。

 

 

 

 事実今の状況下において、俺の立場は非常に弱い。

 

 いくら姉公認の仲(なし崩しにだが)であり、他と比べて“そういう関係”に寛容的な五車にあっても、教師と生徒の姦通は立派なスキャンダルである。

 

 

 

 おまけに俺は忍法も使えないのに、いきなり新設部隊の隊長に任命された「目抜け」であり、さくら先生は俺を大抜擢した五車学園校長の実妹である。

 

 俺たちの関係が漏れた時、一体何人の純朴な奴が俺の“裏口就任”を疑わずにいてくれるだろうか。

 

 

 

 下手をすればアサギ先生の進退にも関わる重大事である。

 

 俺が望んで始めたことで彼女に迷惑はかけられない。万難を排して流出を防ぐ責任がある。

 

 

 

 それはつまり、この関係をネタに脅されれば大体従わざるを得ないということだ。

 

 沙耶がこの事情をどこまで認識しているかは不明だが、脅迫している以上俺とさくら先生の肉体関係が“良くない”ことだと分かっているのは確実だ。

 

 

 

 ちなみに沙耶を救出した俺や、五車に来てから今日まで面倒を見ていたさくら先生の破滅は、即ちそのまま彼女の立場が悪化することも意味するのだが、多分そこは理解していないだろう。

 

 

 

「……何をすれば許してくれるんだ。三回転してワンと鳴けばいいのか」

 

 

 

 そう答えると、沙耶には首を傾げられた。どうやらこのウィットな返しは伝わらなかったらしい。

 

 

 

 ここで最低なりに開き直って「俺がどこで誰を抱こうが勝手だ! 文句があるなら勝負しろ!」くらいの啖呵を切れれば恰好はつくのだろうが、生憎俺は勝ち目ゼロの戦いはしない主義だ。

 

 そして、俺にはさくら先生との関係以外に、沙耶に対して強く出れない理由がもう1つあった。

 

 

 

「……ふうまさあ、この前私のこと好き勝手に犯したよねえ、さくらとこういう関係なのに」

 

 

 

 今一番聞きたくなかったことを言いながら、沙耶が俺の膝に足を乗せる。

 

 それだけで情事を強制的に中断させられた敏感な肌が、大げさにびくっ、と反応を返す。

 

 

 

「私、別にさくらには怒ってないよ? 『ただいま~』って言ったの無視されたのには、ちょっとムカッてきたけどさ。ここさくらんちだし、誰とナニしようが私の邪魔じゃなければ別にいいよ。……で、も」

 

 

 

 首元に冷たい感触がはしり、火照りを冷ます以外の理由で汗が俺の頬を伝う。

 

 いつの間にか首筋に沙耶の触手が回され、獲物を嬲るように首筋を先端でちろちろと撫でられる。

 

 その気になればいつでも頭を串刺しにするなり、締め付けて頸椎をへし折るなりできる体勢というわけだ。

 

 

 

「あなたは話が別だよね~♪ 私に内緒っていうのも、私が住んでるこの家で留守中にっていうのも駄目じゃん。私、仲間外れにされるのも隠し事されるのも嫌いなんだよね~。2人共知らなかったみたいだけど」

 

「……お前以外とスるときは、一々許可を取れとでも?」

 

 

 

「他の女とされるのは嫌い」、とは言わなかった。

 

 つまり沙耶が抱いている怒りの焦点は「俺がさくら先生とセックスしたこと」ではなく、「沙耶に内緒でセックスしたこと」にある、と推測できたからこそ、俺はこんな軽口を返した。

 

 

 

「え~何それ。毎日ふうまから『今日誰々とエッチするんだけどいいかな?』ってメッセージくるの? ……ぷっ、あははははははは、何それ面白~い!! ……あ~でもいいや。後でウザくなりそう」

 

 

 

 勝手にウケられて勝手に冷められた。

 

 一笑い起こして場も和むかな、なんて期待も少しはしたが、俺もさくら先生も拘束は解けてない。

 

 

 

「そうじゃなくて、もっとシンプルな提案だよ。つ~ま~りぃ……ま・ぜ・て♡ってこと」

 

「……ああ、そういうことか」

 

 

 

 ここまでの流れで何となく予想はついていたが、いざ言われるとここまでげんなりするとは。

 

 俺も大概好き者だが、嬲って足蹴にしてきた相手と3Pするような非常識さは持ち合わせていない。

 

 

 

「さくらもいいよねぇ? ここ……まだ物足りないって感じだしぃ」

 

「……? おい、何を……」

 

 

 

 沙耶は俺の首に1本、さくら先生の拘束に3本の触手を使っている。

 

 そして残り2本で先生の脚を広げて地面から浮かせ、その濡れに濡れた外陰部をはっきりと見せる。

 

 いつもながら見事なコントロールだが、不穏なものを感じた俺は声で沙耶の意志を問いただそうとする。

 

 

 

 しかしその言葉を言い終わる前に、沙耶はとんでもないことをやらかした。

 

 最後に残った一本の触手を、躊躇うことなくさくら先生の淫裂に突き込んだ。

 

 

 

「……!! ンンッ、ングゥ──ー!!」

 

「おい馬鹿ふざけっ……っ!! くそっ!」

 

 

 

 俺が立ち上がって止めようとするも、踏みつけと首の触手でいとも簡単に押さえられてしまった。せめてもの抵抗と思い両手で触手を引き剝がそうとするが、案の定びくともしない。

 

 先生の絶叫も聞く耳もたず、ジュプ、チュグゥ、ズズッ……と水音と軽い摩擦音を奏でながら、触手は先生の膣内に侵入していく。

 

 

 

 一見スムーズに入っているようだが、沙耶の触手は張型じゃない。

 

 鋼板すら貫通し、人間を抱えて投げ飛ばせる程のパワーを持った兵器である。まかり間違っても女性器に突っ込むなんて蛮行が許されていいわけがない。

 

 

 

 大体触手の先端部は鋭い刃状になっていた筈だ。

 

 操縦者がどれだけ力加減をしようが、膣内部で動かせば膣襞や子宮口をズタズタに切り裂くだろう。

 

 

 

 目を伏せたくなるような惨状を想像し、全身から血の気が引くのを実感したところでしかし、俺はさらなる違和感に気づいた。

 

「待てよ、だったら入れた時点で既に手遅れのはずだよな?」と。

 

 

 

 明らかにさくら先生の膣口は触手の直径よりも小さい。だからどんなに愛液が滴っていようが、ねじ込まれた時点で大出血が起きて然るべきだというのに、今もってその様子はない。

 

 いや、そう言えばいきなりの事で動揺してしっかり形を確認できなかったが、先生に突っ込まれた触手は他と形状が違った様な……。

 

 

 

「えへへー。何ふうま、さくらのアソコがバラバラになると思った? ざんね~ん、今ナカに入れたのは特別製なの。先っぽが他のコと違ってね、こう丸くなってて、しかもゴムみたいに柔らかいの」

 

「な、何でそんなモンが……」

 

 

 

 沙耶のジェスチャーを交えた説明を聞き、俺は納得するどころか疑問が増えた。

 

 彼女の触手は米連製のワンオフ装備で、五車に来てからもメンテこそされているが基本はそのままである。

 

 俺の記憶では先端の形状は全て同じものだったし、そんな改造を施されたなんて話も聞いていない。

 

 

 

「にひひ、実はキリューにお願いしてみたの。あんまり五車の人たちと遊ぶ時にケガさせてばっかなのもあれだし、

 

 あんまり痛くない感じにできないかな~って。ね~これ見て、いい感じなの♪」

 

 

 

 聞きたくなかった事実を告げ、沙耶はさくら先生の胴体を縛っている一本の先端をこちらに近づけてくる。

 

 見てみると、確かに先端部分が刃でなく黄色い球体で覆われている。しかも先端だけではなく胴の部分も、表面の素材が同色の何かに変わっている部分がある。

 

 

 

 改造を受けた部分は、他の触手より2周り以上細く、他とは全く違う柔軟な素材で覆われている。

 

 形状のイメージは、刀身を丸ごとスポンジで包んだ竹刀、といったところだろうか。

 

 

 

 触手の元を目で追うと、どうやら装置の下部から出ている2本だけがこうなっているらしい。

 

 根元から途中までは他と同じ形状なのを見るに、どうやら本体を削り表面を柔らかい素材で覆うことで、殺傷性を抑えつつ装置へ収まるように調整したようだ。

 

 

 

 表面を触ってみると、先端も胴もゼリーのような手触りがする。指で押すと簡単に凹み、放せばすぐ元に戻る。

 

 本体が包まれているため芯の感触はあるが、不思議なことに触手本来のゴツゴツした硬さは一切感じない。

 

 その理由はおそらく、触手本体と柔らかい皮膜の間に2,3㎝くらいの厚みで満たされているジェル状の物質だろう。ヒット時の衝撃を抑えるための緩衝材ということだろうか。

 

 

 

 

 

 確かにこれなら万一急所を殴られても、対魔忍の肉体ならば死ぬことはないだろう。桐生博士の仕事らしい、妙に凝った仕上がりだ。

 

 だが、それだけに俺の不安はより強くなった。あの変態が善意のみを理由として、この手の依頼を引き受ける訳がない。何か悍ましい探求心に満ちた、邪悪な仕掛けが隠されているに違いない。

 

 

 

「ングっ!? ふ、ふう、ほぁに、こへぇ! オフッ、ンンン、ンンンンン~……!」

 

 

 

 と、さくら先生の声色が微妙に変わった。

 

 さっきまでは苦悶と恐怖のみが籠っていた喘ぎ声が、今は急に困惑を含む甘い音に変わり始めた。まるで、本物のバイブを突っ込まれた時のようだ。

 

 

 

「あー、効いてきた? ……いや何でもね? この中に溜まってるのが特殊な媚薬らしくて、ゴムのとこが濡れるとちょっとずつ溶けて染み出して来るんだって。だからまあ、オマンコの中に突っ込まれればそうなるよね~って」

 

 

 

 沙耶は、新しく買ってもらった玩具を友達に自慢するかのような口調でそう言った。

 

 あの変態マッド野郎、やっぱり“こういう使い方”を想定した改造をしてやがった。

 

 紫先生にチンコロして八つ裂きにしてもらおう。俺は脳内でそう固く決意した。というか、沙耶の方も確信犯じゃねえか!

 

 

 

「んん! んんぐぐ、ぁあしぇ、んんん~!!」

 

「……う~ん。多分放せって言ってる? やだなあ、そんなのダメにきまってるじゃん♪ 何せ……」

 

 

 

 沙耶はサディスティックな笑顔のまま触手を伸ばし、さくら先生をベッドまで運び押し倒す。

 

 そのまま先生の脚を開かせたまま、背中から下だけを浮かせた体勢―所謂まんぐり返しをさせた。

 

 すると触手の動くスピードが上がり、ぐちゅぐちゅと、攪拌された水の音がより大きくなる。

 

 

 

「お楽しみは……これからなんだから♪」

 

 

 

 ぐちゅうっ、と一際大きな音が鳴り、触手がもっと先生の奥へと埋まっていく。

 

 

 

「ンムッ、ンンンンンンンンンンン~~~~~~!!!」

 

 

 

 依然口を塞がれたまま、さくら先生はあらん限りの力で絶叫した。

 

 すると、先生の身体に巻かれていた通常の触手たちも縛り方を変えた。

 

 

 

 1本はそのままお腹に巻きついたまま、2本目は手を頭の上に持っていきつつ縛り、3本目は胸に絡みつつ乳首を先端で弄りだした。

 

 先生はほぼ上下逆さまの体勢になりながら触手が身体中に纏わりついているせいで、まるで触手型のエロ下着でも着せられているかのような格好になる。

 

 

 

「ン……♪ さくらのナカ、ぬるぬるで……ズポズポ入っちゃう……んぁっ、乳首もこ~んなピンッってして……何時間ふうまとシてたの? ……はぁ、中に入ってるこのドロドロ……さくらのじゃないよね? うわ~、すごいエッチ……」

 

 

 

 沙耶も触手越しに、さくら先生のいやらしいひくつきや情事の跡を確かめて感じているようだ。

 

 触手5本を駆使し、先生の身体全体を淫らに弄びつつ、両手で自らの胸を揉み股間を摩っている。

 

 

 

 ジャプ、シュル、ジュルリ、ブチュッ……と、触手が肌に触れて淫唇をなぞり、膣襞を抉る音が響く。

 

「んっ、あっ、あっ……」という微かな喘ぎ声、「んんっ! ん~~~!」というくぐもった叫びがそれに混ざる。

 

 

 

 触手プレイに悶える褐色美女と、その触手を操りながら息を荒げてオナニーする美少女。

 

 図らずも、どんな裏風俗でもお目にかかれないような高度なSMレズプレイを間近で見物することになった。

 

 だが蚊帳の外に置かれた俺としては、この幸運を喜んでばかりもいられない。

 

 

 

 触手はスキンで保護された部分だけでも、先生の身長を優に超える長さがある。確かにあの柔軟性ならば、加減を間違えて腸がぶちまけられる可能性は低いだろう。

 

 だがそれにしても、沙耶の行為が乱暴であることは変わらない。改造触手の直径は他と比べて細くなっているとはいえ、一般的なディルドよりは遥かに太いのだから。

 

 

 

 今、さくら先生のマンコ内部は相当な力で押し広げられているはずだ。たとえ触手から染み出した媚薬の効果で痛みや圧迫感より快感が勝っていたとしても、その負担は無視できるものじゃない。

 

 故に俺は沙耶に対し、せめてこの乱行だけでも止めさせるよう説得を試みた。

 

 

 

「……なあ、もう前戯は十分じゃないか? こっちも結構辛いし、そろそろ本番に行かないか?」

 

 

 

 生唾を飲み、もう辛抱堪らないという口調で沙耶に“次”の行為をさせてくれと懇願する。

 

 我ながら半分演技じゃないのが度し難いが、せめて俺だけでも自由にならなければ事態を好転させられない。

 

 

 

 望まぬ触手プレイを受けているさくら先生には申し訳ないが、ここは場の雰囲気に乗ったふりをして様子を窺う以外に手はない。

 

 触手に仕込まれた媚薬というのがどれくらいの強さかは分からないが、沙耶の隙を見てさくら先生の拘束を解けばまだ攻守逆転の目はあるだろう。俺だけでは、沙耶を止めるなど不可能だ。

 

 

 

「え~? あんなに出したのにまだ物足りないんだ? ……うっわ~、もうそんなビンビンにしちゃって恥ずかし~♪ さくらがあんなになってんの見てコーフンしたんだ? ふうまってば、ヘンタ~イ♪」

 

 

 

 うるせえ! 誰のせいでこうなったと思ってんだ! 

 

 そう怒鳴りたい気持ちを堪え、さも図星を指摘されたかのように言葉を詰まらせ、気まずそうに横を向く。

 

 沙耶を油断させるには、可能な限り奴の思い通りに事を運び調子に乗らせなければならない。

 

 

 

 だが、このまま沙耶のいいようにされっぱなしで終わるわけにはいかない。

 

 俺はともかく、彼女の世話をしてくれているさくら先生の株をこれ以上下げる訳にはいかない。

 

 

 

 必ずどこかで反撃し、大人の威厳というものをこの淫乱ピンクに嫌という程分からせてやる。

 

 その為なら、一時の恥辱くらいは何でもない。

 

 

 

「ハメたいんでしょ? んひひ、い~よ♪ た・だ・し──」

 

 

 

 沙耶はそう言うと、ずっと俺の膝の上に置いていた左足をスス、とスライドさせ股間に近づける。

 

 肉棒まで脚が届いたかと思うと亀頭を軽く足先で弾き、そのまま脚で扱くのかと思いきや更に上へと持っていき、いきなり胸板を足蹴にして正座中の俺を床に倒した。

 

 

 

「ぐふぅ……!」

 

 

 

 急に動いても喉が絞まらないよう、ちゃんと触手の長さは調節してくれたようだ。

 

 それはありがたいが、この展開は非常にまずい。自由になった脚部と腕に力を入れて立ち上がろうとするが、その前に沙耶が俺にのしかかって動きそのものを封じてきた。

 

 

 

「ふうまが挿入れるのはぁ~……こっち♪」

 

 

 

 ずぷぅ、と沙耶のマンコが俺の淫棒を咥え込んだ。反応する暇もない程の早業だった。

 

 指や舌で慣らしていないにも関わらず、産道やラビア、クリトリスまで濡れ切っていた。

 

 どうやら傍目から見た以上に、俺たちへの責めで欲情していたらしい。

 

 

 

「んん、はぁ~♪ やっぱりこのチンポ、いい~! ……あ~、もうビクビクしてる。まだ膣中に挿入れたばかりなんですけど~? ホントしょうがないなぁ、このそーろーチンポは♪」

 

「だれ……が、早漏だっ……!」

 

 

 

 沙耶の煽りに反論しながらも、俺は内心で自分の不甲斐なさを噛みしめていた。

 

 事実として軽く5、6発は射精した後にも関わらず、こいつの膣内に挿入した瞬間に暴発しかけたからだ。

 

 

 

 沙耶のマンコはさくら先生と違い、膣壁が吸盤みたいにペニスへ吸いついて蠢き、射精させるために休みなく刺激を与えてくる。どこまでも残酷に精を搾り取るその様はまるでサキュバスのそれだ。

 

 

 

 ……いや、俺自身には淫魔の知り合いはいても、まだ彼女たちと閨を共にした経験はない。あくまで伝聞や文章に基づく推測に過ぎないが、この無邪気さ故の残忍な搾精はそう例えるに値するだろう。

 

 沙耶にとっては殺戮も強姦も“遊び”でしかない。こいつに良心はあっても常識はないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ……という規則的なピストン音と、ジュル、チャプッ、ズリュ……と、濡れたモノ同士が擦れ合う音が寝室中に響く。

 

 

 

 太い触手を嚙まされ、「んぐ、んぐ」とくぐもった喘ぎしか漏らせないまま凌辱されるさくら先生と、一方的な膣の暴力に膝を屈し腰を震えさせる俺。

 

 情けないが今の俺たちは怪物に饗された生贄同然だ。最早威厳もへったくれもない。

 

 

 

「んっ……だいたい、さぁ……! 一緒に住んでる私が『ただいま』って帰ってきてさ、返事もせずにこそこそしてるって酷くない? 不安になって中に入ったらさぁ、2人して慌てて着替えてるし。そんなの見せられた私の気持ち分かる? ねえ?」

 

 

 

「そ、れは、悪かった……だが、ちょっとやり過ぎじゃないか? 大体お前っ……俺らに会うなりなんつったよ?」

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 丁度風呂から出るタイミングで沙耶の帰宅を察知した瞬間、俺と先生は軽いパニックに陥った。

 

 俺なんか酷いものだ。とにかく服を着て、ただ家で晩飯を頂いてゲームしてたって風を装う、という結論を出して動き出すまでに、脱衣場でたっぷり5秒はフリーズしていた。

 

 

 

 だが偽装工作は間に合わず、2人して着替えながら寝室に向かっていた所を触手女に発見された。

 

 2,3秒間ほどのきまずい沈黙の後、

 

 

 

『あー! 見ぃちゃった見ぃちゃった♪ ウワキ現場はっけーん!!』

 

 

 

 それが、俺たちと廊下で出くわした沙耶の第一声だった。

 

 同居人の情事を見てショックを受けている奴のリアクションか、これが? 

 

 

 

 せめて言い訳だけでもとさくら先生が何事か話そうとした瞬間、問答無用とばかりに触手が彼女の身体にまとわりつき、そのまま寝室へ連行された。

 

 

 

 そして始まったのが、この触手をふんだんに使った拘束調教のフルコースというわけだ。

 

 確かに俺たちの対応も悪かったし、沙耶が怒る理由は正当だ。

 

 

 

 しかしその後の所業を加味すれば、善悪の収支はチャラどころか沙耶側のマイナスだろう。

 

 許可なく桐生博士の改造を受けたり、いつも碌に連絡もせずに他所で寝泊まりしていることを含めれば、逆にこっちが沙耶をお仕置きする権利さえあると思う。

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 とはいえ、俺がその権利を主張するのは現状不可能と言っていい。

 

 

 

「あっ! うん! はぁっ……ふうま、イキそう? このザコザコおチンポ、もうビューってしちゃう? 生意気マンコに扱かれっぱなしで、情けない負け犬の射精しちゃうの? うっわ~……キモ♪」

 

「グッ……ふざ、け……うぁっ!」

 

「あっあっあっ! ほらふうま、ちんこの先っぽチュコチュコ吸うよ? ここ弱いんでしょ? ……それともこのまま私の子宮ガシガシついて、よわよわ精子いっぱいかけちゃう? この前みたいにさぁ!」

 

 

 

 沙耶は俺の乳首を抓みながら扱き上げ、腰のグラインドと襞のバキュームを更に激しくする。

 

 全力疾走でもしたかのような息の荒さからして、言葉ほど沙耶の方にも余裕はないのだろうが、虚勢すら満足に張れない今の俺ではその弱みを突くことさえ覚束ない。

 

 

 

「あー、私もイキそ……ねえまた私の膣中に出す? それとも全部飲んだげよっか? このくっさいキンタマでできたクソザコザーメン、全部無駄打ちしてごっくんしちゃう? ねえ、どっちがいいのぉ?」

 

 

 

 腰を上下だけでなく前後にも揺らしながら沙耶が尋ねてくる。

 

「イキそう」とか言っておいて、随分と上から目線で提案してきやがる。

 

 

 

 どうやら沙耶はすっかり“勝ち”を確信しているらしい。これから好きなだけ腰を振りたくって性欲を満たしつつ、俺が情けなく吐精して悔しがる様を存分に鑑賞しようって腹だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 だが残念だったな沙耶、調子に乗れるのはここまでだ。

 

 俺に跨って暴虐を尽くす悪魔娘の腰を掴み、“その瞬間”を待つ。

 

 

 

「ぐっ……そうだな、俺は……」

 

「うんうん、俺は? …………あ、あれ? 何か、身体が……」

 

 

 

 俺は……「俺だけ」では、沙耶を懲らしめることができない。

 

 だが幸いなことに、俺には心強い味方が一人いる。

 

 

 

 下ネタとコイバナが大好きで、酒乱でズボラで能天気だが、ことこういうシチュエーション―いい気になって無防備を晒した魔族女の動きをこっそり封じたい時には、無類の頼もしさを誇る対魔忍がここにいる。

 

 その名を、井河さくらという。

 

 

 

「──ふっふっふ~……。よーくも好き勝手やってくれたなぁ。でも、ふうま君に夢中で私の縛りが緩んだのに気づかないとは迂闊だねえ、沙耶ちゃん?」

 

 

 

「さ、さくら……? わっ、何これ……え、影ぇ!?」

 

 

 

 見ると、黒く平面状の物体―沙耶自身の影が体まで伸びてきて、足にしがみ付いている。

 

 だが見た目通り足を取られているだけでない。手や頭、触手までもが一切の動きを封じられている。

 

 これこそ影を操り敵を攻撃する、さくら先生の忍法だ。

 

 

 

「にゃはは~、これぞ“影遁・影縛り”ってね~。実はこういうの、あ~んま得意じゃないんだけど……―」

 

 

 

 さくら先生はそう言いながら、影を操って沙耶を俺から引き剥がし、自分の前に立たせる。

 

 そして動けない沙耶の背中から抱きつき、お返しとばかりに指で乳首を捏ね繰り回す。

 

 その目はさっきまでの沙耶に負けず劣らず、嗜虐的な光を放っている。

 

 

 

「くっ、うぅ……! ……え、ちょ、待って何それ!? やめっ「待ちませ~ん♪ そぉ……れっ!」! ひぐっぅ……!!」

 

 

 

 制止を完全無視したさくら先生は両手で沙耶の腰を掴んで固定し、何かを彼女のマンコに突き入れた。

 

 俺からは沙耶が壁になって全体が見えないが、それはさくら先生の股間から伸びているように見える。

 

 もちろん、先生はふたなりじゃない。

 

 

 

「……ペニスバンドですか。触手から抜け出して何を探してるかと思いきや……」

 

「あはは~、ごめんね待たせちゃって。ホントは触手突っ込まれた時点で反撃したかったんだけど、小競り合いになって、ふうま君怪我させたらまずいと思ってさぁ。沙耶ちゃんに見られてちゃ、ああいう風に……」

 

 

 

 そこでさくら先生が後ろを指さしたので、俺もそちらに目を向ける。

 

 先生の背後にあるベッドでは、先ほどまでと同じように1人の女が触手責めにあっている。

 

 

 

 だが、さっきまでと決定的に違う点が1つある。その“女”は先生のような日焼け肌を通り越し、頭から煤を被ったかのように全身が真っ黒で、時折靄のようにフォルムが揺らめいている。

 

 当然、これもさくら先生の仕業であり、影から自分そっくりの分身を作り出し、操ることができるという術だ。

 

 

 

「分身と入れ替わるタイミングもなかったしねー。……さぁて、どうしてくれよっかなあ、この性悪娘はさぁ」

 

「……っ!」

 

 

 

 さくら先生が沙耶の顎を掴んで舌なめずりをすると、沙耶は分かりやすく動揺していた。

 

 その時“影遁・影分身”が解除され、さくら先生を象った影人間は消滅した。

 

 突然責める相手の姿が消えた触手たちは状況が掴めないのか、所在なさげにその場でくねくねしている。

 

 

 

 

 

 

 

 “影”を操ることができるさくら先生は、沙耶が自分への注意が逸れたのを見てまず“影分身”を生み出し、自分は影に逃れることで分身と位置を入れ替えた。

 

 

 

 そして“影分身”が自分の身代わりになっている隙に、こっそりと部屋の隅へ移動して諸々の“道具”を取り出した。

 

 そして今、傍若無人な触手娘に対し、このように万全の状態で反撃を開始した―と、こういう流れだ。

 

 

 

 俺が沙耶の注意を引いたのを察知して、さくら先生はすぐさま動いてくれた。

 

 お陰で俺が情けなく暴発する前に、この悪戯好きな触手女を捕らえられた。

 

 

 

「ひぎっ! やぁ、あん、あぅ、んあっ! さ、さくらぁ、はげ、し、いぃ……ああんっ!」 

 

「はぁん? なーにしおらしくなってんのさぁ! やられた分は、きっちり返させてもらうから……ねっ!」

 

 

 

 一転攻勢は成功した。今さくら先生は沙耶をベッドに手をつかせ、後ろから犯している。

 

 パンッ、パンッ、パンッ……と尻に打ち付けられる音と、濡れそぼったヴァギナから零れるジュプ、ジュル……という水音がハーモニーを奏で、只でさえエロティックなレズレイプの風景をより扇情的なものに仕立て上げている。

 

 

 

 溜飲の下がる眺めではあるが、さくら先生のバック突きがやけに手慣れているのが些か気がかりだ。

 

 

 

 さくら先生は受け上手なタイプだったと思うのだが、余程沙耶の所業に腹が立ったのか、それとも媚薬の効能で性欲が暴走しているのだろうか。

 

 それに、部屋にペニバンが常備してあるというのも知らなかった。もしや、そういうことをするパートナーがいたのだろうか。相手というのは、まさか……──。

 

 

 

「──お~いふうまく~ん、何ボサッとしてんのさ! まだヘバってないんでしょ? こっち来なって~」

 

 

 

 さくら先生の声でハッと我に返り、痺れかけの足を軽く揉んで立ち上がる。

 

 2人の所まで歩み寄ると、沙耶の触手制御装置を手で取り外す。

 

 沙耶の白い背中全体が露になると、すっかり魔族っぽい部分がなくなり、普通の女の子に見える。

 

 

 

「……なんか、随分手慣れてますね、さくら先生」

 

「え……? ああ、これ? いやー別に慣れてないよ。纏め買いセールの時に買ったはいいけど、使い道無くてさぁ。いくらキミでもこれ出したら引いちゃうかなあって思って、今まで見せなかったの。だから、実は今日が初使用」

 

「……まあ、俺にソッチの趣味はないですけどね」

 

 

 

 ケツ穴は入れるもので入れられるものじゃない。

 

 逆アナルの良さが全く理解できない俺にしてみれば、ペニバンを女に出されても困るのは確かだ。

 

 

 

「それと、な~んか沙耶ちゃんに責められんのはムカつくんだよね~。何だろう、妙に刺激が強いっていうか、頭の中がザワザワするというか……だから、こうして滅茶苦茶にやり返したくなるんだよ……ねっ!」

 

「な、何それぇ……!? んぁっ! あひぃ、んんっ……ああっ、はあああぁっっっっ!!」

 

「あ、イった」

 

 

 

 トドメに最奥を突かれた瞬間、沙耶の腰が軽く痙攣し、絶叫とともに顎が仰け反って天井に向けられる。

 

 それが終わると支える腕に力が入らないのか、ぽすっと顔をシーツに埋め肩で息をし始めた。

 

 

 

「ふ~っ……うーん、クリに当たって気持ちイイことはいいんだけどなぁ……。やっぱ双頭ディルドの方が良かったかなあ……」

 

 

 

 じゅぽっ、という音を立てて沙耶の膣からシリコン製の人工ペニスを引き抜き、竿の部分を撫でるさくら先生。

 

 どうも中の感触が分からないまま女を犯したと言う事実に、あまりしっくりきた感じはしていないようだ。

 

 

 

 俺は生まれた時からペニスと育ってきた男の1人だが、もしここの感覚が一切なくなったら……と想像すると確かにぞっとする。

 

 人生を儚むほどの絶望……まではいかないが、今みたいにセックスを楽しめないのは間違いない。

 

 

 

「ペニバンにもあるんじゃないですか? 責める側にも張型が入るタイプとか、バイブ機能ついてるやつとか」

 

「セール品になかったんだよねぇ~。態々定価で買うのはちょっとアレだし……。ま、いっか。ふうま君はどうする? 場所代ろうか? それともぉ……私と続きする?」

 

 

 

 さくら先生はそう言いつつ、俺の肉棒を撫でさすり、尿道口を親指で擦る。

 

 細められた目つきといい手つきといい、完全にヤる気満々の態度だ。膣内にかけられた媚薬のせいもあって、まだまだ挿入られ足りないらしい。

 

 

 

 実を言えば、俺も射精前に抜いたままのせいで結構疼きが残っている。

 

 だが流れから言えば、これを解き放つ相手はさくら先生ではないだろう。

 

 

 

「いや~、折角だからこいつで色々試しましょうよ。道具はまだあるんですよね? この際ですし、あるもの全部使っちゃいません?」

 

 

 

 俺の提案に、さくら先生は意味深な笑みを浮かべ、

 

 

 

「えぇ~全部ぅ~? いやいやそんな、沙耶ちゃん壊れちゃうってぇ……もー、ふうま君たら鬼畜なんだから~♪」 

 

 

 

 と言いつつ、追加の道具を取りに行った。

 

 あくまで俺に乗せられた形にしたいんだろうが、スキップまでしたら本音がバレバレである。

 

 

 

 

 

 

 

「はひぃ、んふぅぅっ、あはあぁぁあぁっっ! も、もうゆるひれぇ……んぶっ!」

 

「おいおい、『混ぜて』っていったのはお前だろう? だったら最後まで、付き合ってもらう、ぜっ……!」

 

「そーそー。私たちこっからが長いんだかんね~。オールナイトは覚悟してもらわないと……んっ、いいよそこ……もっと激しく舐めて……ああいいっ、沙耶ちゃん上手っ……んっ!」

 

 

 

 そこからは、沙耶の望み通り夜明けまで3Pが続けられた。

 

 提案されたときは呆れていたクセに立場が上になるとノリノリなあたり、俺たちも相当現金だ。

 

 

 

 俺がバックでアナルセックスをしつつ前の媚肉をバイブで抉り倒すと、さくら先生はベッドに座りながら、ペニバンを外した秘裂を沙耶の口元へ近づけ、半ば強制的にクンニリングスをさせる。

 

 

 

 ジュルジュルと陰唇を舐めまわし、足元に愛液溜まりをつくらんばかりに溢れる蜜を啜る沙耶。

 

 困惑と悔しさで瞳に涙を浮かべているものの、舌遣いは以外に丁寧で的確に敏感な部分を刺激している。

 

 

 

 2穴を掘られつつそれだけの愛撫ができるのだから、大した奉仕精神の持ち主と言わざるを得ない。

 

 ペチャ、ピチャ、チュル……と舌が膣内の襞を刮ぐ度、さくら先生はピクン、と腰を震わせている。

 

 

 

「んっ…そういえば聞き流してたけどさぁ、ふうま君沙耶ちゃんとヤったの?」

 

「あ、ええ……何か俺が外で本読んでたら、いきなり迫ってきまして。どうも誰かから噂を聞いたらしいんですよね。俺があちこちで女に手を出してるって」

 

「噂、ねえ……んっ。で、どんな風にしたの? もしかして、そん時に触手プレイに目覚めた?」

 

「目覚めてません。そん時はメンテだったみたいで、今みたいに装置は外してました。バトルできないんで暇だったから、態々俺を探してちょっかいかけてきたんでしょう。……まあ装置なしでも力はそのままですから、そのまま強引に外でさせられたんですけど」

 

「え~それはよくないなぁ。ダメだよ沙耶ちゃん、ふうま君とするならせめてどっか屋内じゃないと。今彼は隊長さんなんだから、他の人にそういうとこしてるの見られたら問題になるんだからね! 分かった?」

 

 

 

 いや場所の問題じゃねえし、あんたが言っても説得力全然ねえよ! 

 

 ツッコミが喉まで出かかったが、言えば話をややこしくするだけだと気づき、慌てて飲み込むことにした。

 

 

 

「ぷぁ……んむ、はい……ごめん、なさい。はぁっ、んはぁん、はぁぁん……これ、からは、さくらの家でする……」

 

「え、ここ? …ん~まあ、モノ壊したり大声出さなきゃ……うん、いいよ」

 

「ちょっと、いいんですかそんな許可だして!?」

 

 

 

 舌奉仕を一旦やめ、しおらし気な口調でズレた謝罪をする沙耶。

 

 それを受けて、自宅をヤリ部屋扱いすることを実質許可したさくら先生。

 

 思わずツッコんでしまったが、果たして本気なのか? 

 

 

 

「いや~マズイはマズいけど、もうエッチしちゃったし。ふうま君ちは絶対ダメでしょ? 時子さんがいるし」

 

「え、いやそりゃまぁ、そうですけど……」

 

 

 

 我がふうま家の執事にして、俺の姉代わりとも、母親代わりとも言えるふうま時子。

 

 あいつが今のこの様を見たら何て言うだろうか。まあ、間違いなく怒りはするだろう。

 

 

 

 彼女は家族の中でも、俺の素行には人一倍厳しい。何かにつけ俺に当主らしい振る舞いを求めて口煩く説教を述べるだけでなく、俺の小遣いを含め、ふうま家の財産一切をきちんと管理している。

 

 そんな品行方正を旨とする生真面目な執事が、こんな危険極まる女との性的関係、まして同棲など認めることはないだろう。

 

 

 

 “今の同居人”がウチに来た時も、時子が事情を理解してくれるようになるまでは大分揉めたのだから。

 

 

 

 時子に関してもう1つ言うなら、俺と寝た後も全く態度が変わらないのには驚いた。

 

 彼女と近い立場にいるふうまの女、例えば災禍は明らかにスキンシップの回数が増えたし、天音なんか翌朝の浮かれっぷりはこっちが恥ずかしくなるくらいだった(その後時子にマウント取りに行って一悶着あったらしい。俺は関わりたくなくて離れていた)というのに、だ。

 

 

 

 

 

 まあ、あの時は少々気まずい初体験だったのは間違いない。珍しいくらい時子が疲れた様子だったので、それを労わるという口実で俺から迫ったからだ。

 

 時子も嫌ではなかっただろうが、心から悦べる心境とはいかなかっただろう。

 

 日々執事としての責務を抱えながらも、俺に対しては絶対に弱いところを見せまいと四六時中気を張っていたのだから。

 

 

 

『──今日のことは、どうかお忘れください……──』

 

 

 

 事を済ませて同衾する際、眠る前に時子がそう俺に言っていたのを思い出した。あれは主君に情けないところを見せてしまった、自分への戒めでもあったのかもしれない。

 

 

 

 事実、翌朝俺が起きた時既に時子は寝床の中におらず、昨夜何事もなかったかのように朝食を作っていた。

 

 俺も彼女の意を汲み、その時はいつも通り接した。

 

 

 

 とは言え俺は釣った魚には存分に食わせてやる主義なので、その後何度か時子を誘っている。

 

 勿論仕事がある時は言わないし、時子の方も口ではいつも断りつつ俺を窘めているが、顔から悦びを隠しきれていない。

 

 

 

 結果的に“同居している男女としては”まあまあ適切な距離感と言えるだろう。

 

 “姉弟”としては……知らん、興味がない。

 

 

 

 

 

 

 

 ふうまが女好きの家系であり、俺がどういう意図で女性と接しているかは時子も承知している。要は節度を守れているかどうかが問題なのだ。

 

 そして厄介なのは、今の俺は主観的に見てもヤバい程ハメを外しまくっているということだ。

 

 

 

「まだ時子さんには言ってないんだよね? 私やお姉ちゃんとこうなってること……」

 

「ええ……あいつのことだから何か勘づいてるかもしれませんけど、俺に何か言ってきたことはないです」

 

「ふーん。……沙耶ちゃん、分かってると思うけどふうま君や私とこうなったことはぜぇっっっったいに内緒だよ? もし漏らしたら……そん時はこんなお仕置きじゃすまないかんね」

 

「ぺろ、ちゅる、くちゅ……う、うん。分かった、内緒にする」

 

 

 

 さくら先生の舐め犬と化した沙耶が、いつになく弱弱しい返事を返す。

 

 さっき「バラすぞ」と脅された身としては簡単に信じられんが、さくら先生の気迫に押されているところを見ると、年上の同性には弱いのかもしれない。

 

 それとも影で動きを操られ、好き勝手にぶっ通しで犯されるのは相当堪えたのだろうか。

 

 

 

 どちらにしても、この隙に厳然たる上下関係を叩きこめば、俺も沙耶からナメられなくてすむかもしれない。

 

 俺はこれをチャンスと感じ、改めて強く腰を振り沙耶の体内を侵略し始めた。

 

 

 

「んひぃ! ああ、ふぁっ、んはあぁっ! ふ、ふうまぁ……そこ、は、げ、しっ、んはああぁんっ!」

 

「んぅっ!? にひひ、ふうま君はげしー♪ もう我慢できなくなったかなぁ? んんぅ、そこ、もっと……!」

 

 

 

 上の口をマンコで塞ぎつつ、下の口をチンポとバイブで攪拌する。

 

 ぐちゅり、じゅくっ、じゃぷっ……と淫らな音を立て、マンコと尻穴の両方で生殖液が掻き混ぜられ泡立つのが見える。

 

 

 

「くっ……ほら、一回射精すぞっ……!」

 

「んちゅうっ! ぷちゅっ、んはぁっ……い、いいよ、ふうま。中に、沙耶のアナルマンコの中に……せーえきいっぱいぶっかけてぇ……んんぁ、イく、イクイクイクぅっ! ああん、はぁあぁぁぁぁぁぁあああ~~~!!!」

 

「んんんっ! わ、私もイキそ……んんっ、んいいっくぅ~~! ……ああんっ!!」 

 

 

 

 直腸の奥にまで届く熱烈な射精をかました瞬間、沙耶とさくら先生もほぼ同時に達した。

 

 プシャアッ、という噴射音をシンクロさせ、2人ともに小便のような潮を吹いていた。

 

 

 

「はぁーっ……はぁーっ……はぁ……上手だよ~沙耶ちゃん。ふうま君もいっちゃった?」

 

「ええ……。じゃ、次はどうします? ローションとか蝋燭とかありますけど、使います?」

 

「ん~まぁ、そこらのヤツはおいおいね。えーとね、私一回やってみたかったことあるんだ~…んひひ、こ・れ♪」

 

「あぁ……“産卵プレイ”ってやつですね? じゃあ折角ですからお2人一緒にどうぞ。先生も自分で試してみたいでしょ」

 

「あ、いいの? じゃあお願いしよっかなぁ♪ んふふ、じゃ、仲良く並んでシよっか、さ~やちゃん♪」

 

「え……ええ? な、何その丸いの? そんなのオマンコに入れるの……? ひゃっ、冷た……っ!」

 

 

 

 恐らく、朝になればこれからの事を考えて憂鬱になり、もう何度目か分からない後悔をする羽目になるだろう。

 

 だがまあ、今はそんな先の事を憂う必要はないだろう。

 

 何せ“夜”はまだ、これからなのだから。

 

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