しかし「シュウジが結ばれるべきなのは、薔薇のララァ」と思い、失恋したと思い込んでいたマチュは彼の思いに応えることができずにいた…。
そんな二人のまえに"コチラの世界のシュウジ・イトウ"が現れる。
彼は、「マチュのために世界を書き換える」と彼女を連れ去り…
すれ違いを乗り越えて結ばれるシュウジとマチュのお話
唇に感じる柔らかな感触。
リンゴのように真っ赤な皮膚の下に感じる血流の脈動。
隙間なんてできないように抱きしめた身体から感じる心臓の鼓動。
それら全てが僕の心を掴んで離さない。
もっと、もっとと欲しがる欲望に突き動かされるように、自分の舌を彼女の口の中へと
ねじ込もうとして、小さな掌に胸を押されて拒絶の意思を伝えられた。
「んぅ‥‥‥‥ごめん、シュウジ‥‥きょう、はここまで…。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥うん。」
「ごめん…。」
名残惜しさを隠しきれない僕に、マチュが謝罪を重ねて…
彼女にそんな思いをさせた自分に歯痒さを感じながらも、なんとか笑顔を作る。
「気にしないでいいよ、マチュ。…じゃあ、おやすみ。」
「うん、おやすみ‥‥シュウジ。」
一日の終わりを告げる言葉を送り合って、自室として与えられた部屋に入る。
"向こう側"からなんとかコチラに帰って来た僕には、当然戸籍もなければ宿のあてもなかった。
そんな僕を、マチュとニャアンは迷うことなく自分たちの家に住まわせてくれたのだ。
「‥‥‥‥‥‥はぁ…。」
二人の優しさに助けられていながら、深いため息が口から出てくる。
‥‥どうすれば、マチュに信じてもらえるだろうか。
僕が好きなのは、ララァではなく…マチュだということを。
僕が"向こう側"から、この世界に‥‥マチュと巡り合えた世界に帰って来た理由はたった一つ。
マチュが好きだからだ。
僕は彼女が好きだ。一緒に居たい。‥‥できることなら、"一緒に居る"以上の関係になりたい。
その一心で帰って来た僕を見たマチュは、開口一番にこう言った。
『ララァは一緒じゃないの?』
最初、マチュもララァのことを心配してくれているのだと思っていた。
愛するヒトがいなくなった世界を、それでもと強く生きていく彼女のことを。
だけど‥‥
『会いに来てくれてありがとう。私もニャアンも大丈夫だから、シュウジもララァと幸せにね…。』
そう、今にも泣きそうな声で必死に笑顔を創るマチュに、……ハッピーエンディングにはまだ辿り着いていないことを痛感したのだった
「……マチュ。」
彼女の心には、確かに僕への好意がある。
けれど、それに負けないくらい‥‥【僕とララァの幸せ】を願う気持ちもあるのだ。
僕とララァが好きだから、マチュは僕を遠ざけようとしている。
「………きょうも、ダメだったなぁ。」
一度交わしたのだから、二度も三度も同じ。
そんな理屈で押し切られてしまったキスを、今日も拒めなかった。
いつか必ずシュウジと再会すると決意したのは、私がシュウジのことが好きだから。
優しい彼が安心してララァの傍にいられるように、強くなった私を見せて安心させたかったから。
今でも思い出せる…雨の中を無我夢中で走った夜を…シュウジとのキラキラが私だけのモノではないと思い知った日を‥‥
胸が張り裂けそうなほど痛かった。
本当に張り裂けて死んでしまうんじゃないと思うほど、苦しかった。
けどシュウジはもっと痛くて、苦しかったんだ。
ララァのために、何度も何度も世界を壊したシュウジ。
ララァの心を守るために、ララァを殺さなければならなかったシュウジ。
どれだけ苦しかっただろう。
どれだけ悲しかっただろう。
それでもシュウジはくじけなかった‥‥ララァのことが好きだから。
その思いは報われなければならない。
シュウジは幸せになるべきであり、シュウジを一番幸せにできるのはララァなんだ。
わたしじゃないんだ。
だから、私はシュウジを"向こう側"に送り返さなければならない。
笑顔で、「ララァと幸せになって」と送り出してあげなければいけない。
だけどシュウジは今もコッチの世界に残っている。
シュウジが、わたしのことを…好きと、言っている、から…
好き
たったその一言で、私の決意は容易く揺らぐ。
抱きしめてくれる温もりを、触れ合う唇を受け入れてしまう。
それを授かる資格を持つのは私ではないというのに。
「‥‥しっかりしろ、アマテ・ユズリハ‥‥!」
鏡に映る自分へ怒りを込めて睨みつける。
強くなると、守られる必要のない"ニュータイプ"になると宣言したではないか。
ならば、今度こそ拒むのだ。
『来ないで!』
シュウジを
『向こう側に返って!』
私に、好きだと言ってくれる最愛の人を
『ララァと幸せになって!!』
マチュが行ってしまった。
この世界で生まれ育った"シュウジ・イトウ"のところへと…。
僕の手を…振り払って。
確かに届いた。
確かに掴んだ。
その手を振り払って、マチュは僕ではない"僕"のところへと言ってしまった。
(僕の…思い違いだったのだろうか…。)
好かれていると思っていた。
両想いだと思っていた。
彼女から読み取れる心には、確かに僕への愛情があると…。
(けれど。)
よくよく思い直せば、心当たりは山ほどある。
僕との出会いで、マチュが失ってしまったモノ。
励んできた勉学を、その先に会った将来を、生まれ育った故郷を、大切な…家族を。
全部全部、僕がきっかけとなって失ったモノだ。
僕と出会わなければ、僕がいなければ、マチュは平穏に…幸せに暮らせていたのだ。
"アイツ"の言う通り、僕はマチュに出会うべきじゃなかったんだ。
マチュが出会うべきだったのは…きっと"アイツ"の「シュウちゃんっ!!!」
響いた叫び声に、思考の海から引き揚げられる。
うなだれていた顔を上げてみれば、目の前にいたのは…
「しっかりして…!おねがい…!!」
「……ニャアン…。」
もう一人、僕という疫病神に振り回された少女。
僕に惑わされ、僕を追いかけて、心無い人間たちに兵器の一部にされかけて…それでも僕を連れ戻そうとしてくれた女の子。
マチュにとっても、僕と並ぶもう一人のMAV。
「はやく…はやくマチュをたすけにいこうっ!!」
「…マチュを、たすけに…。」
「そうだよ!きっとマチュもシュウちゃんを待ってるよ!」
「‥‥そんなはず、ないよ。」
「っ!?なんで、そんなこと…!」
「マチュは…強いから…。僕を必要としていないから…。」
目線が再び床へと下がる。
現実を直視できない僕の心に従うように。
彼女は言った。守られなきゃいけないなんてニュータイプではないと…守られる必要のないくらい強くなると。
それはつまり…彼女は僕を必要としていないということだ。
僕にはマチュが必要なのに…マチュには僕が必要ないんだ…!
「マチュは最初からずっと強かったでしょ!!!」
どこか怒りさえ感じさせる声にハッとする。
もう一度顔をあげれば、大粒の涙を流しながらも、しっかりと僕を見据えるニャアンがいた。
「マチュはずっと強かった…私なんかよりもずっと…。そんなマチュを、強いシュウちゃんがいつも守っていた…それが、それが!私の知ってる二人だよ!必要なんかなくても、マチュを守るのがシュウちゃんでしょ!!」
…そうだ、その通りだ。
初めてあった時からマチュは強かった。
傷ついても、くじけずに前に進み続ける強さを彼女は持っていた。
僕がララァを守ろうとしたのは、彼女は守られなければならないと、彼女が弱いと思い違いをしていたからだ。
マチュの時は違う。
僕がマチュを守ろうとしたのは、僕がマチュのことが好きだからだ。
ひとりぼっちの僕の前に現れた、向こう側が見えるマチュを、僕の力になろうとしてくれるマチュを、僕にキラキラした笑顔を向けてくれるマチュを!
僕が好きになったから!僕はマチュを守りたいんだ!!
「ありがとう…ニャアン…目が覚めたよ。」
「シュウちゃん…!」
「力を貸してくれ。今度は僕とMAVを組んで…マチュを助けに行こう!」
「うんっ!!」
マチュ。僕はきみを追いかけるよ。
例え君が僕を拒んでも、僕は必ず君のもとにたどり着いてみせる。
例え君が僕を嫌っていても、君から自由を奪おうとする連中から君を守る。
僕が…マチュのことが好きだから‥‥!!
「いてて…。」
イズマ・コロニーにあるビジネスホテル。
その一室で、腫れあがった顔を少しでもマシにしようと冷やす。
そう、僕は今イズマに…マチュのふるさとにいる。
『そういえば言い忘れていましたね。取り消されましたよ、マチュ君の指名手配。ついでにシュウジ君のものも。』
"青い薔薇"を巡る戦いが終わって数時間後、ヒゲマンと名乗る(名付け親はマチュらしい)ジオン軍人がさらっと言ってきた。
マチュに関してはわかる。彼女の(コッチに帰って来てから聞いた)テロリスト容疑はそもそもが冤罪なのだから。
だが僕に関しては紛れもない事実だ…今思うと我ながらなんとも身勝手な振る舞いをしたものだが。
『軍警が追っている"マルモ"は情報がほとんどない…いわば正体不明の存在なのです。言い換えれば、"シュウジ・イトウの戸籍"という正体を得た君は自然と容疑から外れるというわけです。』
僕の疑問を読み取ったヒゲマンが答える。
マチュが誰かに頼んで用意した僕の戸籍‥‥なるほど、用意してくれたのはこの人だったのか。
と、なれば…
『マチュ。』
『‥‥いいの?』
『会いたいんだろう?僕も会いたい…マチュの、家族に。』
そうした経緯で僕らはイズマに…マチュの親御さんに会いに行くことになったのだ。
『アマテ…アマテッ!!」
『おかあ、さん…お母さん!』
バチンッとなった張り手から間髪入れずに抱きしめ合う二人。
失われてしまったマチュの大切なモノ…それが一つ、取り戻された。
‥‥取り戻したのが僕ではない、というのが情けないところだが。
『…それで、あなたたちは?』
『えっと…僕はシュウジ・イトウといいまして…』
重要なのは第一印象、そう思ってできる限りの礼儀正しさで好きな人の親に自己紹介しようとしたが
そこからが修羅場だった。
『おまえの‥‥おまえのせいで!アマテは!!』
考えてみれば当然の話である。
大切に育ててきた娘が、浮浪者そのものな男と出会ったために道を踏み外した。
親の目線で立てば、とても許せる者ではないだろう。
『どうも初めまして。私、ジオン軍に属するヒゲマンという者でして…。』
ひとしきり殴られた僕と、僕を介抱してくれるマチュとニャアンをしり目に、ここでもヒゲマン名義の軍人が名乗り出る。
結果は、ミンチよりはマシ…というべき有様であった。
民間人であるはずの娘が軍事行動に巻き込まれた。
この一文だけで、さもありなんというものだ。
『あんたたちに、ウチの敷居を跨がせないわっっ!!』
快く受け入れられたニャアンを除いて、僕らはズタボロのまま外に放り出され、心配してくれたマチュが手配してくれたビジネスホテルに泊まることとなったのだ。
ちなみに泊まったのは僕だけ。
ヒゲマンは「これでも忙しいので」とどこかに行ってしまった。シップだらけの顔で。
「ああ…マチュ…。」
青薔薇の時と比べれば、距離という呼べるほどにも離れていない。
というのに、僕の心の中は雨模様だ。
隣にマチュがいない、ただそれだけで心がドンドン沈んでいく。
せめて次会った時に彼女が心配しないようにと、未だに腫れが引かない顔を冷やし続けるのだった。
「大丈夫かな…シュウジ。」
「あれくらいでへこたれるようなら、ウチの娘に相応しくないというだけの話よ。」
シュウジが心配な私の独り言に、お母さんが辛辣なコメントをかけてくる。
今私はお母さんと一緒に料理をしている。
ユズリハ家特製グラタンを伝授してもらっているのだ。
私が小さな頃から食べていた大好物を、シュウジにも食べて欲しいと…あわよくばシュウジにも好きになってもらいたいなと。
私の好きなモノが、シュウジの好きなモノになってほしい。
「‥‥‥‥アマテ、ちょっとだけ、お母さんの話を聞いてほしいの。」
シュウジにはお肉多めのほうがいいかな、なんて思いながら稼働中のオーブンを見てる私に、お母さんが話しかけてくる。
振り返れば、真剣な顔で私に向かい合うお母さん。
「これからする話はアマテにとって不愉快な話かもしれない。それでも、どうか最後まで聞いてほしいの。」
「…聞くよ。」
カネバンの連中がシュウジの情報を売り飛ばしたと知った時点で、私がシュウジを追いかけてイズマを飛び出そうとするのは確定事項だっただろう。
シュウジがいなくなってしまう…そう思った当時の私は、全てを引き換えにしてでもシュウジと一緒にいたかった。
だから何があっても…お母さんとケンカしなくても、結果は変わらなかっただろう。
…そう、何も変わらない。
「もう逃げないよ、私。ちゃんと向き合う。お母さんと…話する。」
変わらないけれど、話せばよかった。
ちゃんと話して、少しでもお母さんを安心させてあげればよかった。こんなに心配させてたなんて思わなかった。
イズマに戻れないと知った時はカケラも後悔しなかった私は…今日、お母さんの涙をみて初めて後悔した。
もうこんな思いはしたくない。お母さんにさせたくない!
「ありがとう…アマテ。」
アマテ、あなたは強い子よ。なにか問題にぶつかっても、ちゃんと自分で考えて行動できる子。
あまり傍にいてあげられなかったけど、これは自信をもって言える。あなたは強い子だって。
だから心配なの。
この先、あの男との生活でトラブルが起こった時に…自分ひとりで解決しようとするんじゃないかって。
自分の力で乗り越えようとすることは立派な事よ。
けど…誰かと一緒に生きていこうとするなら、それだけじゃダメ。
一生のパートナーと決めた人間と生きてくなら、その人を"頼る"ということを覚えないといけない。
感謝の気持ちを忘れずに、力を貸してもらいなさい。
もちろんアマテが頼られる側になったら、全力で助けてあげなさい。
一人で抱え込まずに、抱え込ませずに、一緒に背負うの。
それが…愛する人と一緒に生きるということよ。
「もしあの男が拒絶しようものなら、すぐに帰ってきなさい。いつだって迎えれるように準備しておくから。」
「もう、大丈夫だってば!ああ見えて、いざという時には頼りになるんだよ、シュウジは。」
「だといいんだけど…。」
いまいちシュウジを信用してくれないお母さんだけど…今の話はまさに私にとって必要なものだった。
コッチに帰って来た時からシュウジは、私たちの関係を前に進めようとしてくれていた。
ララァに遠慮して…いや、ララァ以上にシュウジを幸せにできる自信がない私に「一緒に前に進もう」と手を差し伸べてくれた。
けれど、強くなると宣言した私はその手を取らなかった。
シュウジに頼ってはいけないと、手を引かれなくても一人で進まなければいけないと。追い越すくらいの勢いで走っていかなければと。
そうじゃなかったんだ。
頼って良かったんだ。その手を取って良かったんだ。
私がするべきだったのは、差し出された手を取って…シュウジの隣に並んで、一緒に歩いていくことだったんだ。
それを…お母さんが教えてくれた。
「なんか…凄いなぁ。お母さんって。」
「もう…いきなりどうしたのよ。おだてたって何もでないわよ。」
「だってそう思ったんだもん。」
「フフ…昔からよく言うでしょう?」
母は強しだって…そう言って笑うお母さんは、私なんかまだまだ追いつけないくらい大人だった。
愛する人と共に生きて、産んだ命に責任をもって育んできた大人の女性だ。
『今日、私どこかで泊ってくるから。』
マチュを引き留めようとするご両親をなんとか宥め、土下座して、ようやく地球に…僕らの家に帰ってきた途端にニャアンが言った。
突然の発言にWhyが出る前にニャアンはこう続けた。
『今晩、ふたりっきりで過ごしてね。』
ニッコリ笑って、僕たちを置き去りにするニャアンの言葉に…それがどういう意味を含んでいるかわからないほど僕らは子供ではなかった。
「‥‥もう、元通りだよな…?」
そして現在、僕は鏡を見ながら最終チェックを行っていた。
念入りに冷やした甲斐があったのか、腫れていた顔は元の大きさにと戻っているようだ。
…まさか僕が身だしなみを気にするようになるとは、マチュといると驚くことばかりだ。
そのマチュは今…お風呂に入っている。
『先に、お風呂に入って…ベッドで、待ってて…。』
リンゴのように真っ赤な顔でそう言ってくるマチュの可愛らしさに、「一緒に入ろう!!」と喉まで出かかった言葉をなけなしの理性で飲み込んだ。
まだ早い。がっついていると思われたくない。
身体だけが目的の男、なんて勘違いされたら僕は生きていけない。
「…お~い、ハラヘリムシ~。」
「あ、マ…チュ……。」
蚊のような音量の声で寝室に入ってくるマチュを視界にいれた瞬間、脳内が真っ白になった。
下着姿のマチュがそこに立っていた。
もう一度言おう、下着姿のマチュだ。
クラバにいた頃に比べれば、身体のラインが浮き出る服装に隠されていた布。
それが今、僕の目の前に…!
「どう、かな…。」
感想を求めるマチュ。
つまり、この下着は僕に見せるのを前提にして手に入れられたということで。
「んむぅっ!?」
もう理性の限界だった。
僕よりもずっと小柄な身体を抱きしめ、己の口を彼女のソレへと押し付ける。
そのままの勢いで舌で舐めれば、かつては固く閉ざされていた唇が開かれて、その先へと招かれる。
「「ん…む、んぅ…。」」
じゅぶじゅぶと音が鳴るくらいに、互いを貪り合う。
零れた唾液が洗われたばかりの身体に落ちて、ようやく僕らは一旦離れた。
「…ゴメン、つい…。」
「…いいよ。シュウジになら、いい…。キスも…それ以上も…。」
潤んだ瞳で、上目遣いで僕を求めてくるマチュに、またしても理性が搔き消えそうになる。
落ちつけ、僕‥‥!
今からする行為は、女の人にとてつもない負担をかけるものなんだ。
だからこそ、男側には慎重さが求められるんだ‥‥!
「じゃあ…脱がせるよ。」
「うん…どうぞ…。」
私の了承を得たシュウジの手が、下着へと伸びてくる。
私が脱がせてほしいと言ったのだ。
最後の一押しを、シュウジに押してほしくなったから。
「えっと…こう、か…?」
恐る恐る、といった手つきでブラのホックを外すシュウジの様子に、コレが初めてなんだと実感する。
‥‥わたしが、シュウジのはじめてのおんなになるんだ…!
「マチュ…足あげてくれる?」
「ん…。」
とうとう一番大事な場所を守っていた布が取り除かれる…他でもない、シュウジの手で。
─ゴクリ─
唾液が飲み込まれる音が響く。飲み込んだのは果たしてどちらか。
「‥‥脱いで。シュウジも、はやく。」
「あ、ああ…そうだね。」
普段からは考えられないほどの勢いで服を脱ぎ捨てるシュウジ。
細身に見えながら引き締まった身体。
そこでも一際目を引くのが…
「わ、ぁ…。」
雄々しくそそり立つ、シュウジの分身。
シュウジ以外の男の人なんて知らない私だが、これは…中々、ご立派な…。
「マチュ…?」
「え、あ…じゃあ、始めよ…っか?」
「うん…。痛かったら、言ってね?」
そこから僕らはお互いの身体を触り合った。
密かに目を惹かれていた柔らかな胸を揉みしだけば、彼女の掌がコチラの胸板を撫でさすてっくる。
やわやわと尻肉を撫でた手がゆっくりと秘所へと向かえば、ほっそりとした指先が僕の先端へと触れられる。
これから先に備えて、決して痛みを与えないようにと指で刺激する僕。
先端から根本、その下にある袋を優しく撫でまわしてくれる彼女。
「はぁ‥‥。」
何度目かの嬌声がお互いの口から零れていく。
たまらない。
僕の手が動くたびに、彼女の手が触れてくれるたびに、固く緊張していた僕らの身体がほぐれていく。
じくじくと熱を帯びるように快感が身体の奥底に溜まっていく。
「マチュ…そろそろ…。」
「うん…きて…。」
トロトロとした蜜が溢れてきたマチュと血流が限界まで流れ込んだ僕。
いよいよ、身体を重ねる時が来た。
僕たちが…結ばれる時が。
「いくよ‥‥!」
あてがった肉棒をぐっと押し付ける。
少し抵抗を感じながらも、彼女の身体へと入り込んでいく僕の分身。
暖かくヌルヌルとした快感に、砕けそうになる腰に喝を入れて押し進む。
ギュッと眉間にしわを寄せるマチュだけど、まだ痛みを我慢できる段階のようだ。
「ぐぅっ!」
そう思っているところに、なにか壁にぶつかったような感触が伝わり、マチュが痛みに声を上げる。
マチュの、純潔だ。
「シュウジ…いいよ…!」
先を促す彼女に、僕も覚悟を決める。
とてつもない激痛を、愛する人に与える覚悟を…!
─ブチッッ!─
「ッッッ!!ぐっ…う、ああぁぁぁぁ!」
文字通り身体を引き裂く痛みに悶えるマチュ。
それをもたらしたのが自分だという事実を受け止めて、せめて少しでも痛みが紛れるようにと…僕は彼女を強く抱きしめた。
─ギュウゥ…─
いつか、身体を包んだ感触を感じる。
別離の悲しみに暮れる私を癒し、前に進む力を与えてくれた抱擁の感触を。
(シュウジだ…。いま、わたし…シュウジとひとつになってるんだ…!)
なんて不思議な人なんだろう。
まるで魔法のように、私に必要なモノを与えてくれる最愛のヒト。
今だって、痛みに苦しむ私を抱きしめて守ってくれている。
よかった…シュウジがこの世界に来てくれて本当に良かった…!
この世界が、私とシュウジが出会うためにあるのなら…私はシュウジと共に生きていくために産まれてきたんだ…!
「はぁ…はぁ…いい、よ。動いて…!」
大丈夫。
あなたがいてくれるなら、私はなんだって乗り越えられる。
頭を撫でてくれたシュウジが、ゆっくりと動き出す。
─ズリュゥ─
「ぐぅううっ…。」
今度の痛みは我慢できないほどではない。
シュウジもそれをわかってくれているんだろう、頭や背中を撫でさすりながら、身体を重ね続けていく。
「マチュ…マチュ…マチュ…!」
私を求める声に、どんどん熱が籠っていく。
もうすぐなんだね。
いいよ…私を全部あげるから…シュウジの全部をちょうだい‥‥!!
「「ああっ…!」」
身体の奥に、熱が注ぎ込まれるのを感じる。
シュウジを、私が受け止めている。
今…私はシュウジのものになって、シュウジは私のものになったんだ。
(あれは…。)
キラキラとした粒子が流れる空間。
その"向こう"に一組の男女が抱きしめ合っている。
一人は…きっと生涯忘れることは無いだろう。僕と同じ姿、同じ顔そして同じ苦しみを背負う…いや、僕が背負わせてしまった男。
もう一人は小柄な長い黒髪の少女。
男の身体に隠れて見えないが、わかる。きっと彼女が"向こう側"の…
─ギュ─
突然誰かに手を繋がれる。
隣に目を見やれば、優しく微笑む最愛のヒト。
(よかったね。)
声に出されない想いが伝わってくる。
そう…本当に良かった。
彼は彼女を除けば唯一、僕の苦痛を知ってくれている人間だから。
それが彼の望んだものではないけれど…だからこそ、彼には幸せになってほしい。
(大丈夫だよ。)
そうだね、もう大丈夫だ。
僕が君に出会えたように、彼も出会えたんだ…彼だけの"マチュ"に。
「んん…。」
遠くから鳥のさえずりが聞こえる。
コロニーでは聞くことが出来なかった音に、意識が覚醒する。
目を開ければ、こっちをじっと見つめてくるシュウジ。
「‥‥なに?」
「可愛いなぁって。」
優しい表情は、かつてイオマグヌッソで見たものと同じだ。
あの時もひとの寝顔を堪能していたのか、このハラヘリムシは。
「身体、大丈夫?」
「大丈夫。心配しすぎだって。」
昨日の行為の影響を気遣われる。
正直にいうと、まだ痛い。けど私は本当に大丈夫なのだ。
「辛くなったら言うから、その時はおねがいね。」
「まかせて。なんだってする…僕はマチュが好きだから。」
ドストレートにぶつけられたLOVEに、思わず顔に熱がこもる。
本当にこいつは…私の欲しいものがなんだってわかるんだから。
「愛してるよ、マチュ。幸せになろうね…僕たち一緒に。」
これから先もきっと、私たちは困難に晒されるんだろう。
この世界はまだ"ニュータイプ"に優しくないから。
それでも乗り越えていける。私には…シュウジやみんながいてくれるから。
返事代わりのキスをする私を、シュウジは優しく抱きしめてくれるのだった。