傷つき、外の世界に連れ出されてなお"自由"になれない少女のために
少年は海を目指す
マチュが最初から"カバスの館"のような娼館にいたら…というifの世界線です。
冷たい体温に祈りを捧げて ☆
「じゃあ…じゃあ、私を"買った"のも!ガンダムに言われたから!?」
大声を出す気なんて無かった。
高熱を出しているシュウジの負担になるようなこと…するつもりなんて無かった。
それなのに口が勝手に開き、肺から空気が吹き出していった。
「…マ、チュ…。」
呆然とした様子のシュウジから、自分の名前が聞こえる。
終わりだ…なにもかも、終わりだ。
こんなつもりじゃなかった、こんなはずじゃなかった。
飛び出てしまった言葉を無かったことにはできず、後悔だけが頭の中をグルグル回り、心臓が凍りついたかのように動きを弱める。
シュウジの事を、純粋に心配していたのかと問われれば、答えはNOだ。
シュウジの役に立ちたかった。私のことを"買って"良かったと、思ってほしかったのだ。
そこにあるのは好意だけでなく『これからもこの生活が続く保証』という汚らしい打算だ。
でも、それもこの瞬間終わりを迎えた。
シュウジにとって命ともいうべきガンダムを、非難するような言葉を浴びせたのだ。
間違いなく…愛想をつかされただろう。
いやだなぁ…はなれたくないなぁ…まだ、なにもかえせてないよぉ‥‥
心の中で、まだ小さな子供の私が駄々をこねる。
確かに、離れなければならないとしても、私の"代金"を少しでも返すべきだろうと、大人になってしまった私が呟く。
今の私にあるのはこの"身体"だけだ‥‥今からにでも路地裏に、そう考えた時だった。
「ダメだよ。」
一言、言い終わる前に抱きしめられる。
決して痛みを感じない程度に、しかし決して身動きを許さないほどに、抱きしめられている。
まるで私が"シュウジのモノ"であるかのように……それを許されているかのように…。
「シュ、ウジ…あの、わたし…。」
「マチュのからだ…つめたくて、きもちいい‥‥。」
ほわほわとした声が耳元で囁かれる。
気づかぬうちに血の気が引いた身体は、高熱にうなされる彼にとっては心地よい体温だったようだ。
いいの?まだ、ここに…シュウジのそばにいていいの?
湧き上がる疑問に答えが欲しくて、おそるおそる両手をシュウジの背中に回す。
いいんだよ、そんな声が聞こえたかと錯覚してしまうほど、私を抱きしめる腕の力が強くなった。
(ああ、だめだ…。とまって、おねがいとまってよ…!)
泣きそうな思いで、息を吹き返し脈打つ鼓動に訴える。
これ以上体温を上げないで、せめて今夜だけは冷たい身体を保たせて。
だって
だって…
だって!!
シュウジがようやく…私の"身体"を求めてくれたんだ!!!