※この作品はR-18です。

シュウマチュ短編集   作:ニドラン

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物心ついた時から"館"に囚われた少女
傷つき、外の世界に連れ出されてなお"自由"になれない少女のために
少年は海を目指す

マチュが最初から"カバスの館"のような娼館にいたら…というifの世界線です。


(私・僕)だけの場所 ☆

草木も眠る丑三つ時、目が覚めてしまった私は赤く塗装された金属の塊をよじ登る。

人型のソレの胸部に位置するコクピット…開け放たれたハッチの向こうで彼が、シュウジが眠っていた。

 

『僕はいつもここで寝ているから。』

 

そういってトレーラーに存在する唯一のベッドを私に譲った彼。

最初は私に気を遣ってくれているのだと思い、「別に私は床でいい」と「ベッドはシュウジが使って」と訴えたが

コクピットでスヤスヤと眠る彼を何度も見て「ああ、ここが一番落ち着いて眠れる場所なのだな」と納得した。

そう彼はここが一番落ち着くのだ。

 

温もりを持つ私の隣ではなく、冷たい金属の塊であるガンダムの中が…シュウジにとって安らぎの場所なのだ。

 

突き付けられた現実にギュウッと唇を噛み締める。

悔しい、悔しいとモビルスーツに嫉妬する自分のみっともなさに涙が出てくる。

滲む視界のなか、細心の注意を払ってモビルスーツから撤退する。

安らぎの場所になれないなら…せめてシュウジの安眠を妨げることだけはしたくなかった…。

 

 

 

 

 

 

「今日は一緒に寝ませんか…今日は一緒に寝ませんか…。」

 

鏡に向かってひたすらに予行練習をする。

かつて娼館にいた頃は息を吐くように言えたセリフは、シュウジのまえでは喉から先には飛び出してくれなかった。

それを乗り越えようと、練習に励むこと一時間…そろそろ覚悟を決める時だろう。

 

「………よし!」

 

パチンッと頬を張り、意気揚々と自室を飛び出す。

目指すは決戦の場、シュウジが寝床とする赤いガンダムのコクピットだ。

 

「シュウジ……まだ、起きてる~~~?」

 

蚊に掻き消されそうな音量で、ガレージの入り口から呼び掛ける。

返事はない。

深呼吸を三回、コクピットを目指す。

 

「…いた。」

 

返事がないことから察してはいたが、もう眠りについていたようだ。

もっと早く行動に移すべきだった。

後悔するも、ここで引き下がるわけにはいかない。

朝焼けに照らされる海に溶かされた心が、もっともっとと私を急かす。

シュウジを、求めてやまない心が。

 

「おじゃましま~す。」

 

先ほどよりも更に小さな声で、コクピットに入り込む。

こうなれば気づかれないように、コッソリ同衾してしまえ。

そして朝になったら、驚くシュウジに「これからは一緒に寝よう…?」とねだるのだ。

我ながら完璧な作戦だ、と自画自賛している…その時だった。

 

「へ?」

 

間の抜けた声が口から出ていく。

コクピットハッチが閉じたのだ。

間髪入れず、驚く私の身体を何かが引っ張り込む。

 

「捕まえた。」

 

耳をくすぐる、愛しい声。

聞こえてくるだけで、私を幸せにしてくれる…世界でたった一人だけのヒト。

顔を向ければ、暗闇のなかでもハッキリとわかる。

 

「マチュ。」

 

ニッコリと笑うシュウジがいた。

 

「今日は一緒に寝ようか。」

 

これは決定事項とでもいうように、腕の中に閉じ込められる。

 

(きっと、私はこれからずっとこうなんだろうな…。)

 

私の心を先読みして叶えてくれる…そんな魔法使いのような"恋人"に白旗を上げて

世界でも最も安らぐ場所で、私は眠りに落ちていった。

 

 

 

また一つ、勇気を振り絞ってくれた愛しい彼女。

この温もりを手に入れるならば、それ以外は何もいらない。

彼女に出会うまえから、僕はずっとずっとこうだったんだ。

だから、君もそうなってくれてもいいだろう?‥‥‥‥マチュ。

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