※この作品はR-18です。

転生先は日本の軍人一族でした。   作:白狼悠

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11話 余韻

朝食の席。湯気の立つ味噌汁と焼き鮭の香りが、普段ならば心を落ち着かせるはずだった。

だが今日ばかりは違う。

食卓に並ぶ料理の数々は、まるで処刑台に並べられた道具に見えた。

 

俺と実は正座したまま、俯きながら箸を持つ。

顔は真っ赤で、互いに視線を合わせることすらできない。

――昨夜の出来事を、両親に知られている。

その事実が、鮮明に意識にのしかかっていた。

 

「ほら、敬一。そんなに固くならなくてもいいだろう」

父・一郎は口元をにやけさせながら、鮭をほぐす。

「なに、昨夜はずいぶん元気だったようだからな。体力はしっかり残ってるはずだ」

 

「父上っ……!」

思わず声を荒げる。だが、抗議すればするほど、自分の首を絞めるのは分かっている。

顔の熱が収まらず、耳まで赤くなっているのが自分でもわかる。

 

母・蓮華はお茶を注ぎながら、柔らかい笑みを浮かべる。

「まあまあ、一郎さん。ほどほどになさいな。……それにしても実ちゃん」

蓮華の視線が横に座る実へと移る。

「こんなに朝から可愛らしく照れて……。ふふ、昨日のことが相当楽しかったんでしょう?」

 

「~~っ///」

実は耐えきれず、顔を両手で覆った。

耳まで真っ赤に染まり、声にならない声を洩らす。

 

――俺は悟った。

敵は親。味方もまた親。

だが今この瞬間ばかりは、どちらにも立ち位置を定められない。

恋人を守ろうとすればするほど、自分が追い込まれる。

そして黙っていれば、実が茶化されてしまう。

 

「……父上、母上。度が過ぎますぞ」

精いっぱいの敬語で、顔を真っ赤にしながら口を開く。

「実は……その、まだ子供です。孫がどうのなど、早すぎます」

 

「まあ、そうかもしれんな」

父は頷きながら、わざとらしくため息をつく。

「だがな、男なら責任を持たねばならんぞ。昨夜のようにな」

 

「っっっ……! 父上ぇぇぇ!!」

俺は箸を強く握りしめ、思わず卓に置いた。

「その話はやめてください! 実に恥をかかせるような真似を!」

 

「け、敬一……」

実が驚いたように俺を見る。

頬は赤いが、その瞳にはわずかな安心の色が浮かんでいた。

 

母は微笑みながら、軽く肩をすくめる。

「ふふ、いいじゃない。あんたがそれだけ実ちゃんを大事に思ってるってこと。お母さんは安心したわよ」

 

――親というものは、時に最強の敵であり、同時に最強の味方でもある。

逃げ場などない戦場で、俺はただふてくされることしかできなかった。

 

「……もう、朝飯がまずくなる……」

ぽつりと呟き、顔を背ける。

すると父と母は顔を見合わせ、声を立てて笑い出した。

 

「はははっ! まあ、仲良くやれよ、二人とも!」

「そうそう。若いうちは恥ずかしいくらいがちょうどいいのよ」

 

――こうして俺の尊厳はまたひとつ削られたが。

隣で実がこっそり袖をつまんで微笑んだことで、救われた気がしたのもまた事実だった。

 

甘くて、気まずくて、そしてどこか幸せな朝食。

俺たちの日常は、こうして少しずつ、愛おしいものへと変わっていくのだ。

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