※この作品はR-18です。

転生先は日本の軍人一族でした。   作:白狼悠

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13話 着任と過去

佐世保に着任して一週間。

「艦長、また速度が遅れています! これでは隊列から外れます」

副艦長・鷹取美月の声は冷たく、鋭い刃のように突き刺さる。

 

「分かっている。だが海況を考えれば――」

「言い訳は不要です。海は言い訳を待ってくれません!」

副艦長・水城美月の態度は、相変わらず冷たい。

いや、冷たいどころか、南極大陸で全裸にされている気分だ。

……想像するなよ? こっちもダメージがでかいからな。

 

近海哨戒任務の一週間も、彼女の氷壁はびくともしない。

ただの無口美人ではなく、トラウマに根ざした頑丈な鉄壁。

――艦長とはいえ、新参者が手を出して壊せるものではない。

 

だがその夜。

機関長・榊原琴葉と水雷長・風間志乃が、敬一に真相を語ってくれた。

 

かつての艦長。

彼はまるで歴史に残る悪政の権化のように、副艦長を痛めつけた。

 

嵐の夜でも命令を押しつけ、失敗すれば「疫病神」と罵る。

わずかな指示の遅れで懲罰、徹夜の文書作業。

宴席では無理やり酒を飲ませ、倒れた姿を嘲笑する。

 

……いや、そこまでやる?

もう艦長じゃなくて鬼教官だろ。しかも教育の成果ゼロのタイプ。

 

誰も彼女を庇えず、美月は孤立し、自分を「艦に必要ない人間」と思い込んでしまった。

 

――なるほどな。

牙を剥かれても仕方ない。

犬に噛まれた子が犬嫌いになるように、艦長嫌いになっただけだ。

 

その夜、敬一は美月の部屋を訪れた。

「前任艦長のことを聞いた」

そう告げると、彼女の肩が震えた。

 

「……なら、お分かりでしょう。私は艦長を信じません」

 

「だろうな」敬一は頷いた。「でも、俺は違う。少なくとも、お前を責めたりはしない」

 

その瞬間、氷が崩れた。

美月は涙をこぼし、声を震わせて叫ぶ。

「……もう嫌なのです! 責められるのも、笑われるのも……私はただ、時雨を守りたかっただけなのに!」

 

敬一はそっと抱き寄せた。

彼女は泣きじゃくり、やがて力尽きて眠る。

 

――そう、またしても俺の胸の中で。

 

そう、覚えているだろうか。

実もかつて、俺に抱き着いて泣いたことがあるのだ。

つまり俺は、短期間で二人の女性に泣きつかれているわけだ。

 

……うらやましいだろ? 読者諸君。

だが勘違いするなよ。

現実は涙と鼻水で制服がびしょ濡れになる地獄だ。

甘美なシチュエーションどころか、クリーニング代がかさむんだよ。

 

それでも――彼女たちが少しずつ心を開いてくれるなら、この濡れ具合も悪くはない。

……いや、やっぱりハンカチは大量に持ち歩こう。

うんそうしよう

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