愛してほしかった。一番になりたかった。
忠誠心は、いつからか恋慕へと変わり、へし切長谷部の心を蝕む毒になる。
「主」
「なんでしょう?」
詠子が振り向く前に、背後から彼女を抱き締めた。
「お慕いしております……」
「まあ。嬉しいですわ」
詠子は、そっと長谷部の腕に手を添える。
「……俺を、主の恋刀にしてくれませんか?」
「長谷部、わたくしの部屋へ来てくださいまし」
「……はい」
審神者の私室にて、ふたりきりになった。
「貴方は、わたくしの何だったかしら?」
詠子は、鋭くも慈愛に満ちた目と声色で尋ねる。
「貴方の臣です」
「そうですね。ですが、わたくしの唯一の存在になりたいと?」
「申し訳ありません……」
「まるで駄犬ですわね。わたくし、そのようなものに授ける寵愛は持ち合わせてなくてよ?」
「出過ぎた真似をしました。お赦しください…………」
長谷部は、詠子の前に跪き、頭を垂れた。
「よろしい。赦します」
「ありがたき幸せ」
「うふふ。可愛いですねぇ」
女は、長谷部の頭を撫でてから、立つように命じる。
「貴方は、良い刀ですから、特別なご褒美をあげましょう」
「褒美……?」
「はい」
詠子は、自分の着物の袖に口付け、それを長谷部の唇に当てた。
「あ、主…………」
長谷部は、真っ赤になり、言葉を失う。
「あらあら。こういうものが欲しかったのでしょう? わたくしの長谷部」
審神者は、妖艶に微笑んだ。
それから。長谷部は、一日を上の空で過ごした。
「長谷部くん、どうしたの?」
燭台切光忠が心配そうに訊く。
「な、なんでもない……!」
その晩。長谷部は、半ば物置きになっている部屋で、こっそりと自慰をした。
自分で後ろを弄り、荒く息をする。
「あっ♡ あるじ♡」
詠子に抱かれた時を思い出しながら。彼女の指先を思い出しながら。主の香りを思い出しながら。
「あ、あ♡ すき♡ すきです♡」
やがて絶頂を迎えて、下着に射精した。
「はあ……は、あ…………♡」
息を整えようとする長谷部。
しかし、詠子のことを思うと、下腹部が疼いた。
気付けば、長谷部の手は再び後孔に伸びている。
「あ♡ あるじっ♡」
指で拡げ、ナカを刺激し、長谷部の体は先程より熱を持つ。
「主に全て捧げます♡」
情欲に身も心も焼かれながら、譫言のように呟いた。
一方その頃。詠子は、いつものように近侍を快楽調教していた。
近侍になると、主に抱かれるというのが、八幡城での暗黙の了解である。
近侍の順番が回ってくるのを待てなかった長谷部は、四回後ろで自らを慰めた。
こんなことを主に知られたら、また駄犬と言われてしまうかもしれない。
頭の片隅にそんな考えが過ったが、指を動かすのを止められなかった。