※この作品はR-18です。

少女X家庭教師X依存   作:霧里

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繋がれた鎖

 

学校の玄関。

 

彩花が靴を履き替えていると、後ろから声を掛けられる。

 

「おはよう、篠宮」

 

慣れ親しんだ声。けれど、記憶よりも低くなった声。

咄嗟に名前を呼び返そうとして、口ごもってしまう。彼をなんて呼んで良いのかわからない。「悠真」口癖のように、名前を呼びそうになった。

 

廊下の片隅に張ってあった私の似顔絵。

 

窓ガラスに映って見えた今の私より、少し幼く見えた。

それが手癖だったのかは分からない。あるいは、彼の中にいる私が当時のまま、幼いままの私だったのかも。けれど一つ。分かったことがある。「佐藤 悠真」ああ、そうだ。似顔絵の下に書いてあった彼の名前。それを目にすると同時に、忘れていた記憶が浮かんでくる。

 

男女の区別なんてしなかった頃。

 

それとなく意識し始めた頃。

 

クラスの子達に冷やかされて、ケンカをしていた事もあったっけ?

 

懐かしむ反面、恨めしくも思う。

 

どうして、私の手を離したの?

自分だけ他の子と遊んで、楽しそうにして。私はどんどん一人になるしか無くて。

ああ、違う。彼はちゃんと誘ってくれていた。「一緒に遊ぼう」「一緒に帰ろう」断ったのは私の方。最初は、小さな意地っ張り。「友達」だと言われたのが少し面白くなかった。「勉強しないと」「急いで帰らないと」そう言って、彼から逃げたのは私の方。

 

一人になって、いつも振り返るんだ。

 

追いかけてきてくれないかと期待してる内に、思い出は記憶の底へ埋もれていく。

 

甘えん坊。あの頃から私は何も変わってない。

母に甘えられなくなって、彼に甘えるようになって、それがダメなら今度は先生。

それで、何か一つでも解決したことなんて無いのに。

 

彩花と悠真。昔みたいに名前で呼び会えない。篠宮と佐藤。それが今の私達の正しい距離感だ。同情か、お節介か。美術室で声を掛けてくれた時だって、一人ぼっちの私を見かねたに違いない。

 

「うん。おはよう、佐藤くん」

 

その瞬間の彼の顔を、私はまともに見ることが出来なかった。

 

 

****

 

「食べないのかい?」

 

差し出されたショートケーキを前にして、彩花はスカートの端を握りしめた。

なにかに耐えるように。勇気を振り絞るように。けれど、言葉は声にはならなかった。

 

先生とおしゃべりする時間。

 

甘いケーキと、楽しい会話。

 

ずっと、ずっと、待ち望んでいたもののはずなのに。

 

心がドキドキしてた。

 

恋の音色とは違う。胸を占めているのは、言葉にならない不安だけ。

この不安を口にしたら、全部終わってしまうんじゃないか。見ない振りをする。

今までだってそうしてきた。母と何をしていたって私には関係がない。

少しでも、先生が私に構ってくるなら。最後に私を選んでくれるなら、そう決めたはずなのに。

 

思い出さなきゃよかった。

 

どうして、もっと早く声を掛けてくれなかったの?

 

未練が後ろ髪を引いていた。

きっと未だに、私は彼のことが……。こんなことになる前なら、もっと素直になれたはず。でも、そんな未来は自分で潰してしまった。今の私は、彼に合わせる顔がない。

 

まだ、お腹に違和感が残ってる。

 

それを、意識すればするほど、自分の情けなさや、彼への申し訳なさに胸が締め付けられるようだ。だから、だから、だから……。はっきりさせないといけない。

先生の気持ち。私のことを本当はどう思っているのか。

 

あんな風にされたのに、まだ信じるの?

 

違う。そうじゃない。信じるしか無いんだ。

彼の気持ちには応えられない。父はいないのと変わらない。母はもう邪魔なだけ。

先生の情に縋るしか、心持ちを保てない。それが例え、野良猫にエサを上げる程度の情だとしても。

 

「どうして、ですか?」

「なにがだい?」

「……」

 

不思議そうな顔。変わらない。いつもの優しい声音とともに、首を傾げて。

それでも私が無言でいると、小さなため息と共に、先生の顔から表情が抜けていく。

 

「照れ隠しだよ。そう言ったら信じるかい?」

 

こぼれた涎を拭うようだった。

持ち上がる口角、唇を舐めた舌先の動き。獲物を見定めるような眼光が私を射抜く。

 

「信じます……。先生が、そう言ってくれるなら、私は」

 

嘘つき。

 

私も、先生もだ。それくらい分かる。

けれどもう、他にどうしようもない。先生からの愛情が欲しい。まるで甘いケーキみたい。味をしめてしまった。刷り込みだと分かった今も、その美味しさが忘れられない。

 

「こっちにおいで」

 

手招きされる。

 

ベッドの縁に腰掛けた先生は、ズボンのジッパーに指をかけた。

微かな金属音が耳に障る。ゆっくりと広がっていく その隙間。暗がりから まろびでたソレから慌てて目を逸らす。

 

足が動かない。どうしていいか分からなかった。

 

お尻は椅子に張り付いたまま。急にそんなのを見せられても困る。

 

「ぁ……ゃだっ……!?」

 

動こうとしない私に痺れを切らしたのか、急に手首を掴まれた。無理矢理に引き込まれる。傾いていく体を止められない。ゴンっと、膝が床にぶつかり、鈍い音が部屋に響いた。

 

手と足を床に付けて、四つん這にされる。

先生の前に ひざまづいた私は、もはや奴隷のようだった。

 

掴まれた手首に指が食い込む。大人の人の、男の人の太い指と大きな手。

それに比べたら、私の手首なんて枯れ枝と変わらない。振り回された木の棒のように、気まぐれ一つで簡単に折れてしまいそうだ。

 

繋いだ鎖を引きずるように、体が先生の方へ引きずられる。

抵抗しようと身を引いても無駄。せいぜいが散歩を嫌がる子犬の有り様にしかならない。

 

「出来ないかい?」

 

声色は優しいのに。きっと以前の私なら、素直にそう受け止めていた。

「いやだ」って言えばやめてくれる。先生は、私に乱暴なんてしないと本気で信じてた。

 

けど、今は……

 

「できない」確かにそう言えばやめてくれるんだろう。

けれど、そこまでだ。言うことを聞かない女なんて必要ない。先生にとってはそう。私の価値はそこで終わってしまう。最後に一度、掃き捨てにされれば良いほうだ。

 

顔が良くて、気遣いも出来て。どうしているかは分からないけど、お金だって持っている。それでモテないはずがない。代わりなんていくらもある。

今この家にだって。私がダメといえば、その足で母の所に向かうんだろう。

 

それは、それは……それだけは。

 

嫉妬か、愛情か、執着なのかも分からない。

 

ただただ不愉快だった。

 

ここにきて、また母の面影がちらつくのか。

遅れてきた反抗期。真っ当な家族の形をしていれば、そんな風に笑われることも出来たのだろう。

 

私の中から出ていって。

 

かさぶたを剥ぐような胸の痛みに顔を顰める。傷痕を隠すために傷口を増やす。

痕跡の一つも残したくなかった。先生は私のものだ。時間も、友達も、幸せも、散々私から奪ったのだから、一つくらい くれても良いでしょう?

 

「どうしたら……良い、ですか? 私その……初めて、で。だから」

 

声が震えていた。

 

先生の口元が歪んで見える。

 

興味は持って貰えたみたい。今この瞬間に捨てられることはないはずなのに、どうしてか胸がざわついた。安心するよりも、不安が大きい。

お腹に残る違和感が、ジクジクと疼く。脳裏に浮かぶ光景は、犯されている自分の姿だ。

 

初めてだった。

 

睡眠薬か何かのせいなんだろう。目が覚めた後も、何も分からないまま。

ただ、熱い。快楽に心が溶ける。先生に抱かれている強烈な事実だけがそこにあって、夢なんだと納得してみれば、すんなりと体は落ちた。

 

終わってみれば後の祭り。

 

その瞬間に、途方もない消失感に包まれる。

 

失くして、失くして、きっとまた失くすんだろう。

これは警告だ。無意識に身を守ろうとして、太ももを引き寄せる。

けど、そこにはもう守るべきものなんて残ってない。失くした実感が無いから、心がまだ納得してないから。

 

だったら今ここで、帳尻を合わせればいいじゃない。

 

悪魔が囁く。なのに、私を引き止めるはずの天使の声は聞こえない。

漫画のようにはいかないんだな。自嘲ですらない。諦観が笑みに変わって滲み出す。

 

手を引かれるまま体を起こされ、無理矢理に引き寄せられる。

 

饐えた匂いがした。下着の中に籠もっていた汗の匂いにむせ返る。

顔を背けようとしても、抑えられた頭は動かせない。視線の端で揺れる影を、視線で追ってしまう。忌避感と、興味と、綯い交ぜなった感情は泥のように濁っていた。

 

熱く、濡れて、張り付くようだ。

 

頬に押し付けられた肉感に、顔が引きつった。

思わず出そうになった悲鳴を無理に飲み込む。

 

濡れそぼった肉の棒を、何に例えていいのかも分からない。

舌を出す ヘビにも思えたし。蜜に濡れた めしべのようにも思う。

膨らんだ亀頭。血管の浮き出た陰茎。そんなの知らない。男の人のものなんて、まともに見たこともない。

 

なのに……

 

それを目にした途端、頬が熱くなった。全身がむず痒くなって、お腹の疼きが強くなったみたいだ。そそり立つ男性器に、頬を擦られる。上に、下にと、繰り返される内、微かな水音が響き出した。やがて、塗りつけられた欲望が滴を作り、首筋を撫でるように流れ落ちていく。

 

指先で撫でられるような甘酸っぱさ。微かな快感に体が震える。

 

大きく息を吸い込めば、その匂いが直接鼻についた。

男の人の匂い。その獣の臭さに目眩がする。胸が苦しい。自分の体が使われている恐怖。それよりも、強く求められる高揚の方が何倍も強い。そこに自分の価値を見いだせて、心底安心する。薬なんか飲まされなくたって、とっくに私の理性は壊れていた。

 

「咥えてごらん?」

 

頬が先走りに塗れる頃には、彩花は抵抗することさえやめていた。

言われるままだ。薄く開いた唇の隙間を、亀頭の先が撫でていく。先端から溢れた先走りが、少女の唇を艶めかしく彩った。

 

頭を撫でられ、髪を梳かれる。

 

耳をくすぐられて、頬を撫でられた。

 

たったそれだけで、僅かに残っていた忌避感すらも溶け去った。

鼻先を掠める亀頭を前に喉が鳴る。それでも鼓動は落ち着かない。頬の裏、舌の隙間から次々と涎が溢れだす。

 

独りでに、口が開いていた。

 

唇の隙間を分け入って、先生が中へと入り込んでくる。

 

塩気と生臭さ。

 

決して美味しいものじゃない。けれど、分かってしまった。

ソレを咥えた瞬間に、先生の吐息が僅かに乱れる。口の中で大きく波打つ脈動は、更に熱を上げていく。

 

気持ちがいいんだ……

 

私の口で、先生が喜んでくれている。

 

上目遣いに顔色を伺うと、常にはない笑顔で笑いかけてくれた。

嬉しい。私が欲しかった笑顔だ。でも、それがどうしてこんなにも虚しいんだろう。

 

「ほぅ……。結構、いいじゃないか。彼にも、やってあげていたのかな?」

「……っ」

 

じわり……涙があふれそうになった。

 

そんなこと。そんなの。思い出せさないで。

 

「あははっ。ごめんごめん。彼とは何でも ないんだもんね?」

 

なんでもない。そのはずだ。

付き合ってたわけでもなければ。友人としての縁も、この間まで切れていた。

でも、それに頷いてしまうのは……。ズキリと胸が痛んだ。まだ心のどこかで未練が引っかかっている。

 

今ならまだ、引き返せるんじゃないか。

 

遅れてきた天使の囁きに、舌の動きが止まってしまった。

 

「ほら、ちゃんと咥えて。もっと舐めるんだ。そうだね、飴玉を転がす見たいにさ?」

 

けれど、先生は私の葛藤を許さない。

 

腰を入れられ、亀頭の先が喉奥を掠める。

反射的にエヅイてしまった。脳裏を過った彼の顔は霞んで見えて、すぐに先生の色に塗り替えられる。忘れたくはない。けど、支えにするには脆すぎる。

 

どうして、どうして、どうして……

 

恨み言? それを言う資格なんて私にはないのに。彼がちゃんと私の手を掴んでくれていれば。私がもう少しだけ素直だったら。きっとこんな風には、まだ別の道だって。

 

「んっ……ちゅっ、ぱっ。はぁ、ぁっ、つ、んっ、ふぅ、んふぅ……はぅ、あっ」

 

ベッドの前でひざまづいた私は、先生の体に手を伸ばす。

腰に手を添えて、股間に顔を寄せて、必死に縋り付いた。口の中で先生が膨らんでいく。大きく震えるたびに、亀頭の先から汁が零れる。気持ちがいいんだ。喜んでくれている。ぽっかりと胸に空いた穴を埋めるため、鼻息を荒くした私は亀頭にむしゃぶりつく。

 

そう、飴玉を舐めるみたいに。

 

溢れる汁を唆るみたいに。

 

髪を撫でていた先生の指が力みだす。

両手で頭を抱えられて、股間に強く押し付けられた。

 

「やっ!? あっ、せんせ……っ。まっ、ちゃんと、する、から……くるし、こわぃの、つよくは、だめっ……。やだっ、んっ、けほっ! あ、あっ……」

 

くすぐったいより、もはや痒い。無数の陰毛に口の周りを引っかかれた。

口は塞がれ、鼻もつぶされ。呼吸もろくに出来ないまま、先生の動きが熱を上げる。なんとか隙間を作ろうと、両手に力を込めてみても、先生の手は振りほどけない。むしろ、余計に力はまして、亀頭が何度も喉奥を突いてくる。

 

余りの息苦しさに身を捩った。暴れた足が床を叩くたび、心が冷える。

こんなに音を立てたら、母がくるかもしれない。こんな所を見られたら、母に何をされるかもわからない。

 

「せんせっ、やめ……音が、やだっ! おかあさっ、バレ……ちゃっ、んっ。ふっ、ぁっ。はふっ、はぁぁっ、んんんぅ……!!」

 

抵抗する私を黙らせるように、先生は亀頭を突き上げた。

喉が塞がれる。声が出ない。鼻息ばかりが荒くなる。アゴがはずれてしまいそう。

パンパンに膨らんだ肉棒に、口を強引に開かされる。

 

その瞬間だった。

 

ゾッとするような獣の臭さに、頭の中が白く染まる。

塩気が強くなったかと思えば、それを押し流すほどの苦みが口の中に広がっていく。濃くて、重たい。粘つく塊。唾液じゃない。飲み込み損ねた鼻水のような気持ち悪さに、口内が汚されていく。

 

「けほっ、あっ、はっ、んっ、はっ、けほっ……!!」

 

吐き出そうとして、頭を抑えられた。

 

直接に喉奥に流し込まれる。

 

ごく……ごく……っ。

 

飲んでも、飲んでも、飲みきれない。

塊が喉にへばり付いて仕方ない。なのに、次から次へと流し込まれる。

完全に溺れてしまった私の意識は、次第に遠のいていった。

 

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