※この作品はR-18です。

少女X家庭教師X依存   作:霧里

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眉熱に溶ける

 

いつもの通学路。いつもの昇降口。いつもの教室。

 

何も変わらない。

 

そのはずだ。

 

なのに、他人の視線が気になってしょうがなかった。

 

「おはよう」

 

教室の扉をくぐると同時に、朝の挨拶に迎えられる。

友人というわけじゃない。社交的なクラスの誰かが、分け隔てなく接してくれたというだけ。

 

けれど、私は上手く言葉を返せなかった。

 

いつもより輪をかけて、酷い態度を取ってしまう。

 

変わらない。そのはずだ。

 

彼女たちにとって、私はクラスメイトの一人でしか無いし、もっと言えば教室の隅に溜まっている埃みたいなものだろう。目立たないようにやり過ごせばいい。

 

なのに。出来なかった。

 

ビクっと肩をすくめた私は、逃げるようにその場を立ち去ってしまう。

教室の奥へ。背中を撫でる視線から逃げ出した。一言でいい「おはよう」と返せば誰も気にはしないのに。

 

「どうしたんだろうね?」

「さぁ? いつもあんな感じじゃない?」

「そうだけどさー」

 

囁き声が耳に障る。

 

悪目立ちをしてしまった。幸いにも、それ以上気にかけられる事もない。

変に絡んでくる子がいなくて本当に良かった。彼女たちの無関心さが頼もしい。

 

授業が始まっても、先生の声は耳に入ってこない。

静かな時間。自分の鼓動の音だけがずっと頭に響いてる。気が気じゃない。

息苦しい。もしかしたらこの音ですら、誰かに聞かれているんじゃないか。

漏らした吐息の熱さを 気取られたりはしないだろうか。

 

「篠宮さん……篠宮さん?」

「あっ、えっ、はいっ……!?」

 

先生の呼ぶ声に、はっとなる。

慌てて顔を上げた私は、勢いのままに立ち上がってしまった。

スカートの端から指が離せない。胸の前で手を握って、恥ずかしさにただ耐えた。

股下に風が通うたび、心臓が飛び出しそうだ。何も言い出さない私に、少しずつ周りからの視線も集まってくる。

 

お願いだから、私を見ないで。

 

クラスからの視線に晒された私は、まったく動けなかった。

そんな はずはない。まだ、バレてはいないはず。自分に言い聞かせるのがやっと。

 

「体調が悪いんですか? 座っていいですよ。辛いなら、いつでも保健室に行ってくださいね。じゃあ、後ろの……」

 

丁寧にスカートを折り曲げながら席につく。布の端が椅子に引っ掛かりはしないかと、後ろが気になって仕方がなかった。周囲からの視線が散っていく中、悠真だけが私を見つめていた。気にかけてもらえる。普段なら嬉しいはずなのに、今はダメ。

 

目を逸らす。

 

彼の表情を見てられなかった。おかしいのは私の方。

彼はただ、心配してくれているだけなのに。見ないで欲しい。そんな価値なんて私にはない。いや、もうそんな程度の価値しか無いのかも。

 

視姦されている。

 

視線が胸元を撫でた。そんな気がしただけ。勝手な言いがかりだ。思い上がりも甚だしい。肩をすくめて縮こまる。その場から逃げ出したかった。見られるほどに、彼からの視線を強く意識してしまう。

 

授業が終わった途端、彼は私に話しかけてきた。

 

椅子を引いて立ち上がり、近づいてくるまでの僅かな時間。何を言われるかもわからない。一歩、一歩と、聞こえる足音。立ち止まらないで……。俯いたまま強く願った。彼の影が私に落ちる。心臓が止まってしまいそう。

 

何処かに呼び出されたらどうしよう……。

 

皆の前で晒し者にされるかもしれない……。

 

そんなこと彼がするはず無い。でも、もし……。最低な妄想が、甘美な魅力を放った見えた。違う。最低なのは私の方だ……。だって、彼は最初から何も変わっていない。

 

「大丈夫か? 篠宮。体調が悪いなら保健室とか……」

 

ただ、心配してくれただけ。優しいんだ。でも、その優しさは私にとっての未練にしかならない。

 

「平気……。ちょっと、うん。大丈夫だから。次、移動だよ? 先に行ってて? 私も後から行くから」

「でも……。あっ、いや、うん。分かった」

 

勘違い、してくれたのかな。全然そういうのじゃないのに。

彼の頬が赤くなる。心配そうな表情から一転して、気まずそうに目をそらされた。

デリカシーが足りないだなんて。教室の向こうで からかわれている後ろ姿が、随分と遠くに映る。

 

置いていかないで。

 

その言葉をぐっと飲み込んだ。

 

独りきりの教室で、私は座ったまま動けない。

 

「はやく、いどう……。はぁ……っ」

 

立ち上がろうとして、足に力が入らなかった。太ももが擦れた拍子に、甘やかな痺れが私を包む。

 

この感覚を、私はよく知っていた。

 

1日中。朝からずっと。他人の視線を感じてた。

もし、気づかれたら。見られてしまったら。思えば思うほど、何気ない視線に舐められるようだった。

 

私を見つめる彼の視線を思い返すだけで、肌が火照ってしまう。

顔が熱い。汗ばんだ肌に、ブラウスが纏わりついて気持ちが悪い。

心も、体も縛られる。まるで変態みたいだ。肌着も、下着も、なにも着けないで。

制服の下は丸裸。そよぐ風にも心臓が高鳴った。後ろに誰かが立つだけで、冷や汗が吹き出しそうになる。

 

もう、我慢できない。

 

1日や2日ならまだ。それが3日、4日と続くと辛くなる。

 

「一日、下着を着けないで過ごしてごらん?」

 

そんな事出来るわけがない。否定した私に、先生がそれ以上求めてくることはなかった。最初は耳に残る程度。囁くような先生の言葉は、次第に頭の中で大きくなる。どんなに耳を塞いでも聞こえてきた。

 

「あぁ……今日も着けてるんだね」

 

落胆はされていない。むしろ、からかわれているような雰囲気さえあった。

家に帰ると、先生はスカートを捲るように要求してくる。

私はそれに逆らえない。恥ずかしさと、悔しさと、僅かな期待を込めて、下着を晒す。

 

でも……。

 

先生は触れてくれなかった。

 

肩を抱かれることも。手を重ねることも。キスだって。

最初に出会った頃よりも距離が遠い。今までのことが悪い夢だったのか、私を乱暴に抱くことだってしなくなった。その代わりに、嗅ぎ慣れた母の香水の匂いを強く感じるようになる。

 

一体なにが楽しいの?

 

裸がみたいって言うなら、いくらでも見せるのに。先生になら私はいつだって。

指先が私を撫でた。甘い痺れに誘われる。じぃんっと、響く快感が悩ましい。

ほんの手慰みだった。気まぐれに指が動いただけ。

 

「ぁぁぁ……っ」

 

熱い吐息が口から漏れる。響いた声に慌てて周りを見回した。

もう、授業が始まってしまう。クラスの皆は次の教室に移動してしまって、残っているのは私だけ。

 

そういう日なんだ。

 

勘違いしてもらえたのが良かったのか、そっと距離を置かれたまま取り残される。

廊下にはまだ人の気配がするけれど、それも時間の問題だった。

 

♪♪♪♪

 

授業の始まるチャイムの音。程なくして人の気配は静まり返る。

隣のクラスから聞こえてくる教師の声だけが、唯一の雑音になった。

 

ダメだ。

 

こんな所で。

 

私は、何を……。

 

でも、ちょっとだけ。言い訳なら、次々と浮かび上がってきた。

いまさら誰かが戻ってくるもないだろう。少し気分を落ち着けたら、今日は早退してしまおう。誰かに見つかる前なら。授業中の今ならきっと、バレることも無いはずだ。

 

我慢できない。

 

一度でも、求められる心地よさを知ってしまえば、独りで慰めるのは あまりに虚しい。それでも、いい。触れたい、触れられたい。意地を張るのも限界だった。

どうにかして昂りを抑えないと、もう一歩だって歩けない。不意に出来た空白。

人目の途絶えたこの瞬間は、あまりにも魅惑的に過ぎた。

 

「せんせいが……悪いんだから」

 

相手にされない不安と、触れてもらえない不満。抱えた欲求に下腹が重くなる。

自意識過剰だ。誰も私のことなんて、言うほど他人は周りを見ていない。

悠真だってそう。目の前で、私が何も着けないでいるのに気づきもしなかった。

それでも、見られるんじゃないか。思うだけで堪らなくなる。誰かに私を見て欲しい。小さな小さな欲求は、こんがらがって性欲と絡み合う。

 

変態……。

 

自分で自分を罵倒する。

 

肌が火照る。羞恥心じゃない。もっとその先の色に染まっていた。ダメなのに。

でも指が止まらない。完全にスリルがリスクを上回る。

 

最初はただ撫でてみただけ。

 

触れるよりも まだ軽い。なのに指先はヌルリと滑って、浮かんだ雫を拭い去る。

ゾクゾクした。気持ちがいい。快感に脳が焼かれていく。

こんな所、誰かに見られたら。ううん、見て欲しい。こんなエッチな私を見たら、先生は絶対我慢出来ないはずだ。

 

例えば、先生が家庭教師じゃなくて、私の担任だったりしたら……。

教室で自分を慰めてる私を見たら、どうするんだろう?

 

つい、指に力が入った。

 

ヌチュっ……と指先が、温もりに包まれる。

抵抗なんて無い。中はもう しとどに濡れそぼっていた。先生のに比べたら、私の指なんて小指くらいのものだろう。

 

くちゅり……。

 

聞こえた音に、目の前が白む。

運動場から聞こえてくる生徒たちの歓声。音楽室から響くピアノの伴奏。

ふいに、聞き慣れた出席番号を呼ばれた気がして背筋が伸びた。

ガタっと椅子が鳴って縮こまる。隣の教室からだ。立ち上がった誰かが、教師に促されるまま教科書をなぞり始めた。

 

息を殺して、気配を探って、誰も来ないことにホッとする。

バクバクと音を立てる心臓をなだめながら、見上げた時計にはまだ余裕があった。

授業が始まってまだ10分と経っていない。その余裕が、私の警戒を解いていく。

 

もうちょっと、後ちょっとだけ……。

 

このままじゃ終われない。

 

「せ、んせぃ……。だめ、こんな、とこ……だれか、きちゃっ……っ♥」

 

募り積もった不満は、僅かな妄想さえも甘い毒に変えていく

そう、教室だって構わないはずだ。先生に抱きすくめられた私は、強引に体を弄られるの。大きな男の人の体に、押しつぶされそうになりながら私は喘ぐ。乱暴に胸を揉まれて、太い指に中を掻き乱されるんだ。

 

恥ずかしくて、痛くて、怖くて、でも……。

 

この瞬間だけは、私を見てもらえるから。

 

それが余計に空しい。誰も見てくれない、見てもらえないのにこんな事。

胸元に隙間風が入り込む。冷えた心を体の熱で誤魔化すように、行為にのめり込む。

 

「あっ♥ はぁっ、はぁっ、ふぅっ……んっ、はっ、あぁ……♥」

 

わざとらしかった声色も、次第に生々しくなっていく。指で私を擦るたび、体から力が抜けていった。甘い痺れが背筋を伝い、腰が勝手に揺れ始める。

開けた胸元に手を忍ばせた。優しくは出来ない。膨らみに沈ませた指で揉みしだく。こんな所見られたら……。想像した自分の姿に魅せられる。

 

「わた、わたしは……わるい、こ、です。教室で、一人で……なぐさ、ううん。おなにぃっ……して。してましたぁ……あぁぁ♥」

 

いった、いっちゃった。

 

エッチなことしながら、エッチなこと呟いて。私……ダメになる。

だって、先生が。先生だったらきっと……。「どうして欲しい?」って、そう言うから。

 

ゆっくりと足を開かされるの。太ももの内側を撫でられながら、先生の手のひらが近づいてきて。でも、触れてくれない。懇願するように先生を見つめても、優しく笑みを返されるだけ。

 

やだ、やだ……。

 

子供をみたいに首を振った。それでも先生は何もしてくれない。

辛いの、切ないの。ああ、そうだ。先生に教えてもらったんだ。息を呑んだ私は、魔法の呪文を口にする。

 

「おねがい、します……」

 

指の根本まで埋まってしまった。ガタっと椅子が跳ねた。

やめて、そんなにしたらバレちゃうから。そう言っても、先生はやめてくれないんだ。それどころか、慌てる私の姿を愉しむように、もっと激しくするんだろう。

 

ああ、でも……。

 

一本じゃ足りない。物欲しさに堪えきれず、二本目まで咥え込む。

それでも届かない。大事なところに、一番触れたいところに。先生が欲しい。

もう誰だって。泳いだ腰がズルっと滑った。椅子から落ちそうになって、机にしがみつく。

 

酷い有様だ。

 

溢れた愛液のせいで、スカートも椅子の上もベチャベチャだった。

弾んだ胸の膨らみの先で、乳首が物欲しそうに揺れている。

 

こんなの見つけたら、先生がほっとくわけがない。指が伸びて、乳首を転がされる。私がむずがるのを見計らって、きゅっと摘まれるんだ。

 

「あっ……♥」

 

響いた嬌声に、教室の静けさが波打った。

隣のクラスまで聞こえたりはしなかったろうか。息を呑んで、気配を伺うその間も……先生は動きを止めてくれない。

 

「だ、め……まって、せんせ、今……は……ダメ。バレ、ちゃ、ほんとにダメなのに」

 

指が止まらなかった。

 

くちゅり……くちゅり……。

 

水音が大きくなる。

 

太ももの裏に濡れたスカートが張り付いた。汗を吸ったブラウスに肌色が浮かびあがる。頭がぼぅっとするの。気持ちいいこと以外考えられない。内から湧き上がる快感に沈んでいくみたい。

 

気持ちいい、気持ちがいい……。

 

中で先生のが大きくなる。奥を突き上げられるたび、椅子が音を立てた。

ガタっと鳴り響く音に、だけど快感が上回る。揉みしだかれた胸が熱い。

快感から逃げようする私を先生は離さない。より強く掴まれて、オモチャみたいに使われるんだ。

 

全部、全部が遠のいていく。

 

頭が真っ白になって、何もわからない。

もしかしたら大きな声をあげちゃってたかも。そのうちに誰かがきて、わたし本当に終わっちゃうんだ。

 

それも、いいのかな。

 

教室でオナニーする変態女。なんでもない私だって、少しくらい誰かの記憶に残りたい。あはは……そんな顔しないでよ、悠真。あなただって、別に私の何でもないじゃい。

 

でも、先生は違うんだ。

 

私にこんな恥ずかしい思いさせて、平気な顔するの。

平気な顔してお母さんと抱き合って、ほんとに最悪。あんな女、いなくなればいいのに。私だけ、先生は私だけのもの。先生だけが私を気持ちよくしてくれるの、愛してくれるんだ。

 

だから、だからね?

 

ほら、みて、みて……っ。

 

「あっ、ぁぁぁっ……!? つぅ、ふぅっ、んっ……! ふぅ、はぁ……ゃっ♥」

 

指先が締め付けられた。ざわめく腟内が、奥へ奥へと波を打つ。

誘い込むように。でも、いつまでも満たされない。ピンっと、伸ばした指先は空振ったまま。

 

だらり……。

 

胸元から手が落ちる。絶頂の熱が遠のくと、中から指が抜け出した。

隙間から濁った愛液が溢れ出す。絶頂の後、放心したまま私は動けない。

気持ちは良かった。けれど、物足りない。自暴自棄と言えたならまだ可愛い方。

実際はもっと酷い。破滅願望みたいな衝動が渦巻いていた。

 

誰か、来ないだろうか……。

 

疼く下腹をそっと撫でる。いっそこのまま、滅茶苦茶に犯されたい。

ぼんやりと教室の扉を見つめた私は、心の何処かでそんな事を願っていた。

 

 

****

 

お節介だ。それも、悪い意味で。

 

次の授業が始まっても、彩花は教室に来なかった。

きっと、保健室で休んでいるんだろう。もしかしたら早退したのかもしれない。

男の俺には言いづらいこともある。ましてや、一度手を放した俺に頼るなんてな。

 

それでもだ。

 

遠慮なんかしてたら、余計に彩花は遠ざかる。再び伸ばした手を、掴み損ねたままじゃいられない。ちょっと確かめるだけ。保健室と、教室と、何処かで倒れてなければそれで良い。

 

授業中。静まり返った廊下の途中。普段は他の生徒たちで賑わう中に、今は俺一人だけ。保健室にはいなかった。後は自分の教室を覗いたら授業に戻ろう。

 

「あっ♥ はぁっ、はぁっ、ふぅっ……んっ、はっ♥ あぁ……」

 

教室の扉を開けるその瞬間。囁き声に体が固まった。

他のクラスから聞こえてくる教師たちの声より明らかに小さい。ピアノの伴奏が止んでいなければ、最悪のタイミングで鉢合わせていただろう。

 

あいつ、こんなところで何やって……。

 

いや、違う。何を勝手に嬌声だと勘違いしてるんだ。

苦しくなって喘いでるだけ。その筈なのに、扉を開ける指が動かない。

頭を振って妄想を追い払う。そんな事を考えてしまう自分が恥ずかしい。

 

釘付けになってしまった。

 

教室の片隅で独り、物思いに耽る少女の姿。

 

艶めかしい肌色と、熱を孕んだ吐息を漏らしながら自分の体を弄っている。

「せんせい、せんせい……」虚ろに聞こえるその声は、誰かを呼んでいるようだ。

 

ぎゅぅっと、心臓を鷲掴みにされた。

 

その時、彼女が呼んだ名前は自分じゃなかった。そんな当たり前の事が、胸に突き刺さる。今まで何もしてやれなかったんだ。想われることが無いなんて当たり前じゃないか。

 

それでもいい……。

 

そうだとしても……。

 

先生って誰だ?

 

彩花に浮いた話なんて聞こえてこない。見ている限りでは、特定の教師を気にかけている様子もない。きっと、そういうシチュエーションで自分を慰めているだけ。少しばかり突飛な妄想くらい、俺にも覚えがあった。

 

でも、やっぱり……ちょっと悔しいな。

 

その先生が何処かの誰かじゃ無いのなら、少しくらい意識されたいと思う。

 

ガタッ……。

 

何かを引っ掛ける音。それと同時に、浮ついてた嬌声が鳴り止んだ。

慌てて扉から手を離した俺は、壁に背中を押し付けたままへたり込む。

早く立ち去るべきだ。そう思っても、足は動かない。何処かで期待していた。

しばらくして、再びくぐもった嬌声が聞こえてくると、ますますその場から離れがたくなる。

 

まだ二人で遊んでいた頃。

 

彩花に異性を感じるようになって、多分それが俺の初めてだったはず。

その気まずさと言ったらなかった。彩花の顔を見るたびに、とんでもない罪悪感に包まれたのを思い出す。

 

丁度その頃からだ、すれ違うようになったのは。強引に連れ出そうとしても、手が出なくなる。自然と顔を合わせる機会も減っていって、気まずさに甘えた部分もあった。今まで距離が近すぎたんだ。周りと見比べたって、もう少し距離をとってもいいくらい。だから、これが普通だって自分の気持ちに蓋をした。

 

最低だ……。

 

分かっていても、自身に手が伸びる。今までずっと我慢してきたのに、急にこんなのを見せられたら堪らない。俺にだって欲はある。彩花の事が欲しい。

あの頃の俺には、湧き上がる感情の抑え方なんて分からなかった。それは、今も変わっていない。

 

膨らんだズボンの上から擦る程度。

 

廊下の真ん中で、チャックを下ろす度胸までは出なかった。彩花の痴態が目に焼き付いている。その姿は、今までのどんな妄想よりも俺を興奮させていた。

少女の裸体。晒された白い肌に浮かぶ桜色のぽっち。甘い声色に、何度も体を震わせて。その薄い唇から自分の名前が呼ばれる瞬間を想像する。

 

……悠真。

 

あの頃のように。その続きがあったならと。

滲んだ先走りが、とうとうズボンにまで染み出してきた。下から上に扱くたびに押し出されてくるようだ。ビクビクと腰が震え上がる。心臓が早鐘を打って、下腹で生まれた熱が全身へと回ってきた。

 

吐息が熱い。

 

頭がボヤける。

 

衣擦れの音に、水音が絡みだした。膨らんだ射精欲に操られ、撫でる指先に力が籠もる。「あやか……」呟くだけで達してしまいそうだ。扉の向こうにいる彼女の様子にも、余裕がなくなってくる。

 

せめて、一緒にいけたらな……。

 

相当に気持ちが悪い。他人の自慰を盗み聞きしながらだなんて。バレたら、きっと軽蔑される。でも射精の直前で、そこまで考える理性は残っていなかった。

 

せんせい、せんせい……。

 

熱を上げる嬌声に心が締め付けられた。

 

誰だよ、そいつ。どうせなら、俺の名前を呼んでくれたら良いのに。

そうしたらきっと、その時はきっと、俺は我慢できなかっただろう。教室の扉を開けて、驚く彼女を抱きしめる。そのまま無理矢理にも、していたかもしれない。

 

そう、ならなくて本当に良かった。彩花を傷つける事がなくて、本当に……。

 

「あやか……っ!」

 

彩花の嬌声に合わせて、自身を強めに擦り上げたその瞬間。

ドバっと、吐き出された精液が下着に阻まれた。濡れぼったい水気に股間が満たされる。「くぅぅ……っ」声を抑え込む。仄暗い快感は、それでも今までのどんな行為よりも最高に気持ちが良かった。

 

「はぁっ……ふぅっ、んっ……ふぅ、はぁ……ゃっ♥」

 

どうやら、向こうも終わったらしい。

快感の残響が響く中。すっかりと、気の抜けてしまった声だけが聞こえてくる。

 

そろそろ授業が終わる頃だろうか?

 

にわかに隣の教室が騒がしくなってきた。

早く、何処かにいかないと。射精の直後の気だるい体を持ち上げた直後。

 

「ぇ……」「っ……」

 

気づかなかった。完全に注意が散漫になっていた。

ふいに教室の扉が開く。彩花と目が合った瞬間に、今まで考えていた事の全部が吹き飛んだ。

 

艶の残った頬。ブラウスから肌色が透けて見えた。主張するように膨らんだ頂上は淡く色づいていて……。何も、着けてないのか?今朝から様子がおかしかったのも、そのせいで?

 

なんで、そんな……。

 

居た堪れなかったのか、憐れんでしまったのか。心配していた自分が馬鹿みたいだ。落とした視線の先に見えてしまった。揺れること無く、太ももに張り付いたスカートの裾。その内側から、つぅっと流れ落ちていく雫を目で追いかけてしまう。

 

何より匂いだ。

 

甘い。鼻をくすぐる少女の香りに、男がくすぐられる。

 

それと比べて自分はどうだ。対して違わないじゃないか。

獣じみたイカ臭さ。股間から沸き立つ精の匂いは誤魔化しようもない。彼女も気づいたんだろう。すんっと、小さく鼻が動く。一瞬、驚いた顔をしたかと思えば、すぐに目を逸らされた。

 

その匂いの意味を知っている。

 

そんな風に見えた。

 

妄想の産物だと思っていた先生の影が、輪郭を伴い始める。

何も言えない。問い詰めて何になるっていうんだ。お互いにそうだ。見なかったことにする。それが一番のように思えた。

 

「あの……私、帰るから。ごめんね、佐藤くん」

「あぁ、うん。気をつけて……ごめん」

 

何に、謝ったんだろう。

 

♪♪♪♪

 

チャイムの音に背中を押されて、逃げていく彼女を追いかける事もできない。

佐藤くん……。呼ばれた苗字に拒絶された気がした。伸ばそうとした手が泳ぐ。

湿ったままの指先に気づいて、掴みどころを見失う。指の隙間からすり抜けていくようだ。残ったのは喪失感と、股間にへばりつく気持ち悪さだけ。

 

遠のいていく彩花の背中を、ただ見送るしか出来なかった。

 




ここで襲えてたら、ワンちゃんあったかもしれないのになぁ。お可哀想。
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