※この作品はR-18です。

GANTZ〇(マル)―もう一つのGANTZ―   作:闇の戦士

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46「武器庫」

 灯りが消えた暗い見知った教室。窓の先から月明かりだけが室内を照らす。

 東森学園——3-D教室。教壇の上には黒い球が存在していた。

 黒い球の名はGANTZ(ガンツ)と呼ぶ。誰が呼び始めたのかは不明。それでも、この黒い球に呼ばれ、生死をかけた地獄のゲームをしなくてはいけなかった。

 

 丸は、手を強く握りしめる。五体満足の身体。

 今回のミッションで負傷した身体は、転送されれば元の状態へと戻る。精神的疲労以外、ミッション前と同じだと言えるだろう。

 次々に目の前で、メンバーが転送されてくる。

 佐里がまず丸を見つけ、胸の中に飛び込んだ。胸板を通して、弾力のある柔らかい胸の感触が伝わった。

 

「丸くんっ! 良かった!」

 

「佐里ちゃんも生きてて良かったぜ。ごめんな、今回は守ってあげられなくて」

 

「うん……怖かったけど、でも、丸くんがいなくてもあたし頑張ったんだよ……! あたし……!」

 

 丸の胸に額を押し付けて、埋まる勢いで抱きしめる力が強まる。おっぱいの感触が、強くなって嬉しい。

 顔を覗き込むと、佐里が涙を流している。今回のミッションが相当恐ろしく、苦労したのだ。

 こういう時、丸はおそらく刈谷や神崎のように甘い言葉や気が利く言葉を投げられない。代わりに、優しく佐里の肩を抱きしめた。

 

「行こうとしたんだけど、余裕がなくてさ……夏目や神崎が守ってくれたか?」

 

「なんとか……平気だよ、丸くんがいつもあたしのことばっかり守ってくれるなんて……そんなの、ズルいもん。だから、丸くんは好きなようにして」

 

「……できる限りは、守るようにはするぜ? 佐里ちゃんには死んでほしくない」

 

「ありがと……丸くん」

 

 丸に自分の事はもう守らなくていい、というようなニュアンスに聞こえる。しかし、それでいながら助けてほしいという思いもそこに含まれている気がした。

 一瞬微妙に困ったその丸の回答に、佐里は少し嬉しそうに微笑んだ。どうやら正解の言葉だったらしい。

 女の扱いはめんどくさい。身体がエロく、エッチなことができるから苦労してめんどくさい女とも関わるのだ。エロい痴女の佐里ちゃんが好き。丸にとって、佐里が死んでほしくないのは正直に言って、エロいことができるからに過ぎなかった。

 

 こんなことを他のメンバーの前でしていれば、神崎や星野が「恋人?」と口にするのも無理はない。

 丸は変な視線を感じ、神崎や星乃に向く。

 

「……何見てるんだ、神崎」

「月川クンと佐里ちゃんは付き合っているのかい?」神崎は実に単刀直入だった。

 

「はぁ? 付き合ってはねえよ?」

「……うん、まだ」

 

「そうか……勘違いしちゃったよ。まるで恋人の空気感だからね、ごめん」

 

 神崎は素直に謝った。

 何というか、イケメンだから憎むべきなのに、完全に憎めない奴だ。だが、イケメンだ滅べ。と丸は口の中で呟く。 

 セックスを一回しただけで恋人になるのか? 付き合ったことが経験がない丸からしてみると、分からなかった。

 

 その間に残りのメンバーが転送されて、教室に全員揃う。

 改めて丸はその顔ぶれを見渡す。

 華凛、ろっく、千春先生、佐里、刈谷、夏目、圭介、ぺっとぼとる、藤堂、神崎、星乃。そこに丸を含めて12名。ミッション前と比べて、2名死んでいる。

 そう二名。たかが、二名。今回の凶悪なモブ星人の特性と強さにしては、善処した方だ。

 一歩間違えれば、あと数人どころか全滅していてもおかしくなかった。それほどの敵。丸は戦ってみて、その絶望感を大きく感じた一人だった。

 しかし——華凛は、とても喜んだ顔をしていなかった。逆、歯を食いしばって、俯き、悲し気な顔。

 それでも、丸は笑った。

 

「良かったな、華凛。ほぼ全員生き残った! そんな顔してないで喜べよ」

 

「——駄目だ。二名も犠牲者が出た。けれど、心配するな月川……私はもう下を向かない。次は、全員で帰るのだ」

 

「分かってるじゃねえか。なら何も言わねえよ」

 

 銀色の剣が、錆びてしまわないかと懸念していたが、間違いで。

 その剣は、もはや多少の傷では、輝きを失わない。

 その銀色の輝きを向けられて、丸は目を細め、見返す。眩しい、その光が。この光をずっと見ていたい。丸は心の底からそう思った。

 

 丸は右腕を掲げて、華凛に掌を向けた。

 それを見て、少しだけ疑問な顔をした彼女だが、フと笑うと右腕を同じように出してくる。

 パチンと掌が乾いた音を鳴らして、二人の手が叩かれた。勝利のハイタッチ。

 

「ありがとう……月川が一人で戦ってくれたこと。皆を庇ってくれたこと」

 

「何でそれを……」

 

「荒井先生や、星乃に聞いた。それだけじゃない、皆、月川に感謝している」

 

 丸は何か慌てるように、周囲を見る。

 かかわりがない藤堂や、ぺっとぼとるは何のことか分かっていない様子だったが、それ以外の面子は全員頷くようにして、丸の事を見つめていた。

 そこには今回が初対面の神崎や星乃も含まれている。特に星乃は尊敬や憧憬に似た視線だ。

 

「俺は……そんな、そんな人間じゃない……」

 

「月川?」

 

「華凛……俺は、お前みたいなリーダーでも、誰かに感謝されるような奴じゃねえ。今回は……たまたま、そうなっただけで」

 

「……フッ、たまたまか。た(・)ま(・)た(・)ま(・)、人を助けられるのか、だったら月川は凄い奴だ。私が、苦労して、何回もミッションを通して経験を積んでもなお、たまたまでは人を助けることが出来ない……私の全霊を持って当たったとしても、難しいことなんだぞ。月川……」

 

「たまたまっつーか、俺だって全力だった。本当は、一人で戦った方が楽だぜ……」

 

「それでも、そんな月川が一人でも多く生き残らせる為に動いてくれて、戦ってくれて感謝する。月川がいなければ、きっとここにいる誰かが欠けていただろう。月川、お前がいるから私は全力で戦える。私は思うんだ、こういう人間こそがもしかしたら誰かの希望成り得るのではないかと、な」

 

「————」

 

 今までこんな人間がいたか?

 自分に素直に、本気で感謝してくれる人間なんて。

 少なくとも丸はそんな経験がない。今では——ガンツに呼ばれてから、少しずつ丸の何かを変えていく。

 もしかしたら、丸の生きる世界はここなのかもしれない。

 ここだったら、誰かを救えて、感謝されて、尊敬されるような人間に変われるのだ。

 

 ——ちげえよ、華凛……お前が、お前こそが希望だ。お前がいるから、俺は戦える。

 

【それでは、採点を始めます。】

 

 黒い球のディスプレイに白く光る文字が表示される。

 丸からガンツへと皆の視線が変わり、複雑な恥ずかしさから逃げられた。あのガンツの中にある銀髪の女性が、空気を読んで丸を助けてくれたなんて、妄想だろうか。

 意識を切り替え、丸は黒い球を見た。

 

「採点か」

「そのようだな、今回はかなりの数が撃破出来た。点数に期待が出来るぞ月川」

 

 丸と華凛が嬉しそうに話す。

 

【上村圭介:0点。現在2点。探偵の小さな助手。】

 

「あれ……ぼく一体倒したのに......0点?」

「圭介が0点だと? 確かにオレも傍で倒したところを見たぞ」

「でも、0点……。助手って、刈谷兄ちゃんが探偵だから?」

「そうかもな。しかし、おかしいな……」

 

【刈谷赤:0点。現在9点。】

 

「オレもか!? 五体以上は倒した気がするが……まさか、増えた個体は0点なのか?」

「まだ分かんねえだろ、とにかく他のも早く出せガンツちゃん」

 

 刈谷の出した仮定が本当だとするなら、今回のミッションは理不尽かつ点数的にも美味しくないかなりしょっぱいものになる。

 丸がガンツを促すと、答えたようにまとめた得点配分リザルトを出した。

 

【宮崎佐里:0点。現在4点。今回は漏らさなかったようです。】

 

【荒井千春:0点。流石に足手纏い過ぎます。死んだ方が良いかもしれません。】

 

【山田弥勒:3点。現在25点。後、75点終了です。少しだけ褒めてあげます。】

 

【夏目月渚:0点。現在1点。】

 

【東森華凛:8点。現在56点。後44点で終了です。味方を庇いながら、これは凄いですよ】

 

【月川丸:10点。現在34点。後、66点で終了です。この元の点数は、他のチームのモノですか?】

 

【神崎蒼真:0点。イケメンマザコン。】

 

【星乃ミユ:0点。足手纏い2。】

 

【藤堂誠司:0点。元自衛隊って、そんなに誇れるものですか?】

 

【佐島友長:30点。現在33点。後、67点で終了。ラッキー男。】

 

 

 全ての点数が配られ、モブ星人の点数が明らかとなる。

 ろっく、華凛、丸、ペットボトル。点数が高い順である。それ以外は全て無得点。

 丸が自分の点数とコメントを見て、首を傾げる。

 

「俺の点数は、10点か……ないよりはいいけど、これどうやってカウントしてるんだ? 本体はやってないしな……後、山梨チームだぜガンツちゃん」

 

「私が8点か。今回の点数配分が分からないな」

 

「おいらも3点あるお。でも、あれだけ倒して3点って……おいら30体以上やったのに。でもガンツ様が褒めてくれたからよしとするお」

 

「私も50体以上から数えてないが……かなり殺したと思う」

 

「俺もたぶん、合体した分数えれば100体以上やったんじゃねえか」

 

 点数があった人の言葉を聞いて、刈谷が「そうか」と呟いた。

 

「何か分かったか? 刈谷」

 

「分かったよ、おそらくモブ星人の10体単位ごとで1点配られる計算じゃないかな」

「そういうことか! 100体ぐらいやった俺は、10点ってことか」

「じゃあ私は80体ほどは殺れたようだな」

「えぇ~? 二人とも倒し過ぎだってぇ。おいらも30体やったから、頑張ったもんねぇ……レモンたん」

 

「しかし……」と言いながら、刈谷がぺっとぼとるの顔を見る。

 

「佐島……まさかキミが本体を?」

 

「そうっス! 本体がなんなのか知らないっスけど、自分一体倒したっス! 凄いっスよね!?」

 

「ぺっとぼとる! お前のおかげか! 助かったぜ! マジで!」

 

「月川さんが褒めてくれるとか、頑張った甲斐あるっスよ! 次も期待してくださいっス! 自分戦えるっス! もう余裕っスから、スーツあれば! ふふん」

 

 本体を撃破し、調子に乗っているぺっとぼとるのことを刈谷が苦笑いする。

 それでも全員から感謝の言葉がぺっとぼとるに送られた。

 

「やっぱ、良いことってするもんスねえ。星乃ちゃんも生きてるし……」

 

「ありがとうございました……ぺっとぼとるさん!」

 

「へへ……もっといってもいいんスからねえ~」

 

 ズルいと丸が腹を立て、女にモテ始めたぺっとぼとるの脇腹に肘を当てて、「ぐぇ」という情けない声が漏れた。

 

「100点は超えなかったな……今回超えるかと期待したんだが」

「たしかにそれは残念だが、多くのメンバーが生きて帰ってきただけでも良しとしよう」

「そうだな……次、また稼げばいいか」

 

 黒い球の灯りが消え、もはやミッションは終了し、解散となった教室。その中で、丸が「あ」と言葉を発し、思い出したようにガンツの画面に向き直った。

 

「ガンツ、武器庫の一覧を見せてくれ」

「武器庫? それは何だ?」

「華凛知らなかったのか。ガンツにはな、武器庫っていう点数と交換できたりするシステムがあるらしい」

「そんなものが。100点を取ることだけに意識を取られていたのか、私は......。だが、月川、それをどこで知った?」

「うん? あー、山梨チームってとこでミッションこの前行ったんだけど、そこでな」

 

「は?」

 

 華凛が口をぽかんと開け、唖然としたような顔をしている。

 よほど丸の発言が有り得ないものだったのだろうか。

 

「山梨チーム? 他の県にガンツが同じく点在しているのは知っているが、月川もそこに呼ばれたのか?」

「そうだけど? なんか、駅で呼ばれて」

「何故、それを私に言わなかった?」

「だって、聞かれなかったし」

 

 珍しく、華凛が額に手を当てて難しい顔をしている。

 それが少しだけ面白くて、丸は笑う。

 

「ちなみに……、どんな星人と戦ったんだ?」

「ポセイドン星人。たしか再生持ちで、水がある限り倒せない奴だったんだよな。アイツはやばかったぜ……牛尾ってめっちゃ100点武器とか、飛べるスーツあったりしてすげえ女の子がいてさ!」

「よく戻ってこれたな……」

「まあな、だって死ねないだろ、お前がいるのに」

 

 丸のその言葉に、一瞬華凛の頬が赤く染まった。

 

「そ、その武器庫とやらを今から見るんだろう。早く見よう」

「あ、そうだったぜ。武器庫の話だったんだ」

 

 【武器庫ですね。了解しました。では、どうぞ。】

 

 【近接武器】

ガンツクロー   20点

ガンツチェーン  25点

ガンツハンマー  30点

ガンツアックス  30点

ガンツランス   30点

 

【遠距離武器】

Xショットガン 25点

ガンツボウ    30点

ガンツブーメラン  15点

 

【拘束・罠】

ガンツマイン   15点

ガンツビーコン  20点

ガンツネット   25点

 

【防御】

ガンツシールド  30点

ガンツバリア   50点

 

【情報】

ガンツスマートフォン 20点

ガンツドローン    50点

 

【移動】

ガンツワイヤー  15点

ガンツアンカー  20点

 

【消費】

スーツ補修剤   15点

強制帰還装置   100点。

 

 

 展示された武器庫の一覧に、目を奪われる二人。

 丸と華凛が何かしようとしているのを見て、残りのメンバーが集まってくる。

 

「丸っち、なにそれえ」

「あぁ、ろっく。これ武器庫って言うんだって。点数と交換できるみたいだぜ」

「まじぃ? へぇ、いろんなのがあるんだお。おいら25点あるから、買えるのあるねぇ。じゃあ、おいらこれにしよっかなあ」

「おい待て——」

 

 華凛の止めようとする言葉を無視して、ろっくは指で画面に触れ、選択していた。

 『Xショットガン』25点の遠距離武器枠の一つを。ろっくの所持点数全てを払って、だ。

 

 特に黒い球から武器が出るわけでもなく、隣の教室からガチャリという音がした。

 

「ろっく、良かったのか?」

「うん。悩んでたんだよね。遠距離はさ、Xライフルガンがあるからいいけど、近距離の対応にさ遅れることがあって。そこにXショットガンさ」

「なるほどな。ろっくが強くなったわけか」

「まだ使ってみないと、分からないお」

「それもそうか」

 

 華凛がこの会話を、信じられない目で見ていた。 

 特に簡単に武器と点数を交換したろっくを見て、驚いている。

 

「なにぃ? 華凛様」

 

「——その25点の意味が分かってるのか? 山田は……」

 

「うーん? 敵倒した報酬?」

 

「ち、違う。そういうことを言っているんじゃない。その25点があれば、今後あと75点取れば、ガンツから解放されることができたんだぞ!?」

 

「あ~……確かに、それもそうだねぇ。いつかこの25点があればなあって、後悔する時がくるかもなぁ~。でも、Xショットガンが役に立って、それがおいらの命を救うかもしれないし、必要な経費と思えばいいお」

 

「山田……君は……」

 

「それに、おいらも付き合うって決めたんだお。友人の丸っちが、100点取って強い装備取って、残って戦うってそう決めたならさぁ、おいらもそれに付き合うのが、友と書いて、ダチってヤツだお!」

 

「ろっく、お前……デブで変態だけど、良い奴だよ」

 

「デブと変態は余計だお」

 

 普通、何度もミッションを経験すると、あの恐ろしい戦場から一刻も早く抜け出したいと思うのである。

 全ての死亡者を復活するために、残って戦い続けると誓っている華凛ですら、それがなければ解放されたいと思ってしまうのだ。それを、友達が出掛けるから付き合う、そのような感覚で戦場に残り続けようと言っている。

 

「じゃ、俺はこのガンツワイヤーってのにしよ。本当はガンツアックスとかも欲しんだけどな。ま、ガンツソードあるし」

 

 丸もろっくと同じように、画面を指で押す。すると、丸の所持していた点数が15点消費された。

 

「月川! お前もか……」

「俺はいいだろ、武器強くする予定なんだしな。機動力に困ってたし、これで多少は動ける」

「そうだったな。少し動揺しすぎた。だが、確かに今後生存者をより多く帰ってこさせるためには、装備の強化も考えるべきなのかもな」

「そうだぞ、華凛なんか守りたいんだったらよ、このガンツシールドとかいいんじゃねえか」

「ガンツシールドか……悪くないな」

 

 華凛は暫く悩んでいたが、覚悟を決めるように画面に指を触れさせる。

 点数が消費され、56点から26点に。

 

「隣の教室行こうぜ。多分そこに武器庫がある」

 

 丸の声と共に、三人は隣の教室に移動する。

 3-C。その教室に四角い大きな箱があり、すでに開いていた。

 その中に、Xライフルガンに似てるが形が違うXショットガン、リング型のガンツワイヤー、黒い小さな円盤——おそらくガンツシールド。

 

「おぉ、すげえな。これ腕に装着させるみたいだな。ガンツワイヤー。このまま両手空いてるし、ガンツソードとかも持てるってわけか。買ってよかったぜ」

 

「いいねぇ、このフォルムぅ……ショットガン、やっぱ拡散銃だよねえ」

 

「これが、ガンツシールド——」

 

 三人は、新たなそれぞれの武器、道具を手に入れた。

丸は腕に装着された黒いリングを見つめた。

 

 ガンツワイヤー。

 

 次の戦場では、こいつが自分の命を救ってくれるかもしれない。

 

 ——いや。

 こいつで、今度は誰かを救ってやる。

 

 




モブ星人終了──!
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