最終巻No.431の続きを、命削って全力で書いたらこうなった 作:練乳グラブジャムン
No.475 予想外(R-18)
※SIDE 緑谷
お互いの抱擁で、もうこれ以上ないくらい密着してるのに。
もっと、もっと、近付きたいと思ってしまう。
もっと。
もっとほしい。
もっと麗日さんを感じたい。
心の底から湧きだしてくる、強烈な欲求。
唇を重ねたまま、少しだけ舌を出す。
その柔らかい唇の味を知りたくて。
同じ気持ちだったのか、お互いの舌先が、つん、と触れた。
ぬめり、とした感触に、舌先から痺れるような心地よい感覚が全身に走った。
驚いて、とっさに顔を離す。
麗日さんの半開きになった唇が、艶めかしくて、もっとほしいと囁いているようで。
すぐにもう一度唇を重ねた。
一緒に舌を出して、お互いに、ちろ、ちろ、と舐めあう。
濡れた舌先が触れあうたび、首の後ろまで痺れるような甘い刺激が広がる。
まるで口の中が性感帯になったみたいに。
麗日さんの唾液が甘くて、ずっと味わっていたくなる。
「ん……んむ……んん……」
麗日さんの口から、少しだけ甘い声が漏れる。
顔を斜めにずらして、更に深く唇を重ねる。
唇の柔らかさ、鼻先から出る甘い吐息、甘美な唾液の味、舌先で感じる心地よさ。
その全てが極上の幸福感を与えてくれる。
この全部が麗日さんだと思うと、たまらなくて。
とんでもなく甘美な味わい。
神さまが、あらゆる奇跡を束ねて作り上げたんじゃないかと錯覚する。
「んん……んちゅ……ぅん……」
下腹部に血流が集中する。
衣服に押さえつけられて、痛みすら感じる。
抑えきれないほどの劣情が全身を駆け巡る。
それでも絶対に乱暴はしない、したくない。
麗日さんを傷つけるなんて、絶対に許されないことだ。
お互いに呼吸が苦しくなって、一緒のタイミングで、顔を離す。
つーっ、と、唇の間を透明な糸が引いた。
僕と麗日さんの唾液が混ざった橋。
薄暗闇の室内でも、何故か光を反射して、煌めいて見えた。
「あ……はぁ……はぁ……」
麗日さんの、熱を帯びた吐息。
こんな素敵な子とキスできて、この上なく幸せなのに。
もっと麗日さんを感じたい。
もっと触れ合いたい。
どうすればいいかも分からないまま、身体の奥が熱くなってくる。
傷付けちゃいけない。
そう思いつつも、そうするのが自然なようで。
背中に回した手が動き、茶羽織の襟に、そっと指がかかった。
麗日さんが、羽化する蝶のように、両手を伸ばして背に反らす。
いとも簡単に、茶羽織がするりと床に落ちた。
手のひらに、茶羽織のゴワゴワした感触が消え、浴衣のサラサラとした手触りに変わる。
麗日さんの身体の柔らかさが、浴衣の薄布一枚向こうから伝わってくる。
「ぁ……はぁ……ぁぁ……」
麗日さんの呼吸が荒くなる。
僕の身体にくっつこうとするかのように、自分の身体をくねらせる動きが、どうしようもなく艶めかしい。
浴衣越しに身体をさすりながら、何度目か分からない口づけを交わす。
離れたくない。
もっと、もっと触れ合いたい。
この薄い浴衣すら、二人を隔てる壁のようで、邪魔に思えて仕方がない。
「う……麗日さん……」
「はぁ……デク君……」
もうお互い、子供がいたっておかしくない年齢だ。
分かってる。
これ以上触れ合っていたら、もう、そういう事をしてしまう。
いいんだろうか。傷つけたくない。
たまらなくなって、麗日さんを抱きしめる。
麗日さんの顔が、僕の顔のすぐ隣に来る。
「ごめん、これ以上もう……我慢、出来なくて……だから……」
嫌なら、離れてほしい。拒んでほしい。
「はぁ……はぁ、デク君……」
耳元で、囁くように、甘い声がする。
「……好き」
「――っっ!」
自分の下腹部が跳ねた。
抱きしめたまま、腕を下ろしていく。
腰に巻かれた、その帯に触れる。
帯にそって手が動き、結び目にたどり着く。
帯の蝶結びの、先端に指が振れた。
麗日さんの手は僕の背中に回されたまま、その顔も僕の隣にあるままだ。
耳元で、もう一度、麗日さんが囁いた。
「……大好き」
「――ぁっ!」
股間が更に跳ねる。抑えつけられすぎて痛い。
我慢しなきゃという理性がぶっ壊されて、蝶結びの先端を、ゆっくりと引っ張った。
結び目が解かれ、麗日さんの帯が、ただ腰に巻きついたままになる。
少しでも動いたら、そのまま落ちてしまいそうな状態。
「麗日さん……ごめ……もう……ほんとに……」
そっと動いた麗日さんが、僕の正面に顔を持ってきた。
とろん、とした顔のまま、そっと、瞳を閉じてくる。
「っっっ!」
耐えきれなくて、その唇を奪った。
麗日さんの腕が、僕の背中を撫でまわしてる。
何度も身体を密着させてくれて、その胸の柔らかさが、浴衣越しに実感する。
股間の膨らみが、密着した身体に潰されて、絶対にバレてることを痛感して。
唇を離し、愛しいその顔を視界におさめる。
「――っ……はぁ……ほ、ほんとに……これ以上は…………傷つけちゃう……からっ!」
目をきつく閉じ、奥歯を噛みしめる。
きっといま自分は、切なくて苦しくて堪らないって顔をしてるだろう。
実際そうだ。
もう我慢の限界なんだ。
本当に、もうこれ以上は無理だ、我慢できなくなる。
やめるならここが最後だ、まだ間に合う。
絶対に、絶対に、何があっても大事にしたい、大好きな女の子。
酷い事なんて絶対したくない。絶対に傷つけたくない。世界一大切にしたいんだ。
「……デク君の……いじわる」
「は……?」
上目遣いで、切なそうな顔で、僕を見上げる麗日さん。
「……じらして……私に、言わせようとするの……ずるい」
「~~~~っ!」
声にならない悲鳴が漏れる。反則的な可愛さ。
じらしてる? そんな余裕があるもんか。
この浴衣を、いますぐ力任せに引きちぎりたいのを、死ぬ気で抑えてるんだ。
この衝動を口に出したらどうなるんだ?
いいのか、そんなことして。
でも、もう、抑えておくのは限界で、どうしようもなくて……
「君と…………麗日さんと、したい……」
「うん……ありがと……私も、デク君と……したいよ……?」
恥ずかしそうに笑ってくれる。反則だって。
「その……帯……」
「うん……デク君が、取って……」
「……いいの?」
「自分じゃ、恥ずかしくて……取れへん」
麗日さんの顔が羞恥に染まっている。
可愛すぎる。
僕の背中に回された手に、少しだけ力が入っている。
緊張してるんだ。そう思った。
帯を落とそうとしていた手を離し、頭を抱き寄せ、そのまま髪をなでる。
サラサラとした感触が、指の間を流れた。
「……麗日さん」
「なぁに……?」
「大好きです」
「うん……私も」
「本当に……本当に、好きなんだよ」
「私も……大好き」
「だから、その……麗日さんを傷付けたり、怖がらせるようなこと、絶対に、死んでもしたくない」
それだけは分かってほしくて。
「うん、知ってる。ありがとう……大丈夫、傷ついたりせえへんよ。だから……して?」
「……ごめん」
「……悪いことしてないのに、謝っちゃ、だめやん」
「じゃあ……ありがとう」
「うん。大丈夫。デク君なら、大丈夫やから」
その優しさが嬉しかった。
本当にいい子だって実感する。
少しだけ、身体を離す。
切なそうに、待っているかのように、うっとりとした麗日さんの顔。
そっと、腰の帯に触れる。
引っ張ると、もう何の抵抗もなく、するりと流れて、床に落ちた。
麗日さんの、首元にある浴衣の襟に手をかける。
さっきの茶羽織のときと同じように、背を逸らしてくれる麗日さん。
親指を、襟の下に潜り込ませる。
素肌の感触が親指に伝わる。
そのまま、左右に開くようにして。
全身を包んでいた浴衣が、はらりと床に落ちた。
肩に手を置き、少し離れて、その肢体を視界に収めて、
――時が止まったように思った。
「え……なに、これ……すっご……え? 可愛すぎ……」
自然と言葉が漏れた。
天使の羽衣か?
それが見たときの印象だった。
どこかの女神様でも顕現したんじゃないかと錯覚する。
セクハラだとか何だとか、考えることも出来なかった。
言葉にせずにはいられなかった。
何か考える暇すら許さない、それほどの美しさ。
胸元は、幾重もの白花に覆われて、二つの双丘が隠されている。
胸下からのびる半透明のレースが、健康的なお腹と、腰の下、お尻までを薄っすら覆っている。
下腹部は、胸元と同じように幾重もの白花に覆われ、腰横に伸びた紐が結ぶ形で留められていた。
女性の下着がどういうものかは知っている。
TVのCMでも流れてくることがあるし、デパートとか歩いていれば、そういう店先で、嫌でも目にすることがある。
でもいま、麗日さんが着けているような、こんな下着は見たことが無い。
浴衣の下から、なんで、こんなものが出てくるんだ?
……やっぱりこれって夢じゃないのか?
だとしたら最高に幸せな夢だ、何があっても絶対に覚めるな。
もしいま自分を叩き起こす奴がいたら生涯恨むと思う。
「……麗日さん……すごく、すごく綺麗だ…………え……やっば……」
あまりに凄いものを見ると、人間は語彙力を失うというが、まさにそれを実感している気分だ。
瞳を潤ませた麗日さんが、ぽふ、と僕の胸に頭を押し付けてきた。
「これね……買うの……着るのもやけど。すごく……すごく、恥ずかしかったんよ」
何の話だろう。
買うのも着るのも恥ずかしい?
じゃあ買わなければいいし、着なければいいだけじゃないのか?
「でもね……デク君に、ガッカリされたくなくて」
ガッカリってなんだ?
どんな格好してたって、麗日さんの身体だぞ?
ガッカリなんてするわけない。
「……キレイだねって、褒めてほしくて」
滅っ茶苦茶に綺麗だ。
どんなに言葉を尽くしたって褒めきれない。
「だからね……頑張ったんよ?」
顔をあげて、僕を見つめてくる。
ぽろりと、瞳から涙が零れていた。
「綺麗だよ……滅茶苦茶、可愛い。本当に、本当に綺麗だ。可愛すぎて、もう……たまんない」
「……よかったぁ」
胸が締め付けられる。
ああ、やばい。
なんて愛おしいんだろう。
そっと、身体を離す。
「は……恥ずかしい……っ」
麗日さんが、両手で自分の身体を覆ってしまう。
片手は胸元を。もう一方は下腹部を。
そんな仕草すら、可愛らしい。
「……これ、僕のために着てくれたんでしょ?」
「……うん」
「じゃあ……見せてほしい」
「……ぅん」
両手が、おずおずと、退けられる。
「……本当に綺麗だ……すごい。もう……表現できないくらい」
「……ありがと……」
そこで、ふと思いつく。
「ねえ、麗日さん、個性使って。ちょっとだけ、浮いてもらえる?」
「ん……?」
麗日さんが個性を使い、その身体が重力を無視して、ふわりと宙に浮く。
手を繋ぎ、ふわふわと漂う麗日さんを見つめる。
引き締まった綺麗な手足。
薄暗闇の中、純白のレースがふわりと舞い、その美しい肢体をより魅力的に魅せていた。
ああ、やっぱり。
思った通りだ。
「麗日さん……空から舞い降りた、天女みたいだ。世界一綺麗だ」
褒めてほしいと。
がんばったんだと。
だったら、思ったまま全部伝えよう。
「恥ずかしいの、頑張ってくれたんだよね。ありがとう」
ふわふわと浮かぶ彼女の手をとり、引き寄せる。
個性の解除された麗日さんの身体を、もう一度抱きしめる。
「僕のために着てくれたんだよね……ほんともう、死ぬほど嬉しい」
買うのも着るのも恥ずかしかった、って。
何故そんな思いをしたのか、僕は知らない。
それでも、僕のために頑張ってくれたっていう、そこだけは理解できて。
「麗日さんより素敵な女の子なんて、この世にいない。どんな人より綺麗だ。誰よりも可愛い。本当にありがとう」
「ぁ……ぁぁ、よかったぁ」
にっこりと、笑顔を浮かべてくれた麗日さん。
天使が微笑んでくれたようで、本当に愛しくて。
もう一度、優しくその唇を奪った。
―――― to be continued