ヘキュバとの学園性活2 ―ヘキュバのいる休日― 作:黒瀬夜明 リベイク
教室のドアを開けた1人の少女は、瑠斗とぬいが良く知る人物だった。月明かりに照らされ、そこに立っていたのは私服姿の「夏河遥奈」だった。瑠斗は自分が全裸であることも忘れて、思わず驚きの声をあげた。
「な、夏河!?」
「………」
だが遥奈からの返事はなかった。ただ黙って、目の前にいる瑠斗とヘキュバとなったぬいを見つめていた。慌てた瑠斗は、言葉になっていない台詞を吐き散らしていた。
「こ、これは!その、あのだな!えっと…」
すると遥奈は少し悔しそうに口を開いた。
やっぱり明智くん。姫崎さんと付き合ってたんだ
「や、やっぱバレて――ん?夏河、今なんて言った?」
「え?明智くんと姫崎さん、付き合ってるんだね。って言ったけど?」
遥奈の言葉に、瑠斗の思考が一瞬フリーズした。そしてすぐさま、脳みそをフル回転させて、夏河の言葉について考え始めた。
(え、ちょっと待て。夏河の奴、今『明智くんと姫崎さん、付き合ってるんだね』って言った!?何でそんな事が言える!?意味わかんねぇよ――)
「クスクス!」
すると、目の前のぬいがいつもと同じように笑い出した。付き合い始めてから、何度も聞いた瑠斗を面白がる笑い声だ。
「ひ、姫崎さん?」
困惑する瑠斗の眼が、ぬいの顔を覗き込む。するとぬいは、悪戯っぽく口元を歪ませると、瑠斗に衝撃の事実を述べた。
「瑠斗よ、考えが鈍いんだな―――」
遥奈も私と同じ、幻魔なのよ
「……え?」
瑠斗は、鳩が豆鉄砲を食ったような拍子抜けした声をこぼして固まってしまった。
瑠斗が正常な思考を取り戻すのに、それから約10分の時間が掛かった。その間に瑠斗と繋がっていたぬいは、固まって動かなくなった瑠斗を教室の床に座らせると、人間の姿へと戻った。ぬいはそのまま服も着ずに、全裸のままだった。かく言う瑠斗は、膠着が溶けた後、とりあえずパンツだけは履いた。そして瑠斗が固まっている間に教室内へ入っていた遥奈は、瑠斗とぬいに視線を向けたまま無言で立っていた。するとぬいが口を開いた。
「まあ、積もる話になる。座って話しましょう」
「あ、ああ」「はい」
ぬいは全裸のまま、瑠斗はパンツ一丁、遥奈は私服姿のまま教室の床に座り込んだ。すると早速、瑠斗がぬいに尋ねてきた。
「姫崎さん。夏河も幻魔だ、ってどういうことだよ?」
「言葉のとおりよ瑠斗。遥奈は人の姿に化けて生活している幻魔。私と同じようにね」
瑠斗は遥奈の方を向いて、そうなのか?と尋ねると、遥奈は首を縦に振った。
「はい。姫崎さんの言うとおり、遥奈は『幻魔』です。隠していて、ごめんなさい」
「いや謝る事ないだろ。隠してて当然じゃないか」
瑠斗の言葉に、ありがとうございます。と遥奈は小さく微笑んだ。その微笑みに、一瞬だけドキッとする瑠斗だったが、ぬいはそんな瑠斗の事を内心でクスクスと笑っていたのだ。気持ちを落ち着かせた瑠斗は、遥奈に別の質問を投げかけた。
「夏河が幻魔だってことは分かったけど、具体的にはどんな幻魔なんだ?……と言っても、ヘキュバしか知らないけど」
「あ、はい。遥奈も姫崎さんと同じ『ヘキュバ』です!」
「え、同じだって?」
瑠斗の素っ頓狂な表情とは別に、遥奈の表情は真剣そのものだった。それに何処か、嬉しそうにも見えるのである。その答えはすぐに表れた。
「やっと、やっと明智くんに言えましたっ」
「え?何で俺に言えたことがそんなに嬉しんだよ?」
するとぬいが、横からクスクスと笑いながら言った。
「遥奈はな、瑠斗の事が好きだったらしいぞ?しかも、一目惚れだったみたいだな!」
「ひ、姫崎さん!恥ずかしいから言わないでください!」
顔を真っ赤に染めて慌てる遥奈を見て、ぬいはまたクスクスと笑っていた。そんな遥奈に視線を合わせたまま、瑠斗は口を開いた。
「俺に一目惚れしたは良いけど、自分は幻魔だから、人間の俺とは結ばれる訳ない。そう思ってたってことなのか?」
遥奈は顔を真っ赤にしたまま、首を縦に振った。それを見た瑠斗は一言、そっか。と呟いた。そしてぬいの方に向き直ると、徐に訪ねた。
「なぁ姫崎さん。夏河の奴も、俺たちの輪に加えていいか?」
「え?」
瑠斗の提案に、遥奈は思わず顔を上げた。遥奈の目に映った瑠斗の顔は、真剣そのものだった。どうやら本気で遥奈のことを、この秘密の輪に加えようと思っているようだ。瑠斗はぬいに、反対されるかもしれないと思っていたようだが、それは杞憂に終わることになった。ぬいは優しい微笑みを浮かべて言った。
「元々そのつもりでここに呼んだんだ。私はこの時代を生きる内に『幸せを共有すれば、より幸せになれる』と知ったからな。反対するつもりはないわ」
「本当ですか、姫崎さん―――」
「ただし!」
ぬいの言葉に、飛び付くように身体を前のめりにした遥奈を、ぬいの大声が遮った。そしてぬいは、いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべて瑠斗の左腕に抱き着いた。
「瑠斗は私のものよ♡幸せは共有するが、独占はさせないわ」
「え、あ、ああ?」
突然の事で理解が追いつかない瑠斗は困惑顔でぬいの顔を見下ろした。いつになく勝ち誇ったようなぬいの顔がそこにはあった。すると遥奈は、ぬいの挑発(?)に乗ったのか、キリッとした目つきで口元に笑みを浮かべ、ぬいに言い放った。
「遥奈、全力でお相手します!」
「クスクス!正妻ヘキュバである私を、そう簡単に超えられると思わない事ね?」
瑠斗の腕に強く抱き着いたぬいも、何故か熱を燃やしていた。そんな2人を見て瑠斗は苦笑いを浮かべるしかなかった。
(…て、あれ?今姫崎さん、『正妻ヘキュバ』って言ったか?)
「ヘキュバとの学園性活3」に続く