【スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました】
・アズサ・アイザワ
「おぬしは死んだ」
異空間の中に1つだけある椅子に座っている老人もとい神がのほほんとした雰囲気で男はそう告げた。
「え、あの……すみません。あまりにも唐突で理解が追い付きませんでした。もう1回言ってくれますか?」
「おぬしは死んでしまった。26年間嫁どころか彼女もできず、両親も他界していたおぬしは誰に看取られることもなく病死してしまったのじゃ」
神に言われて男は思い出し、涙が出そうになる。あまりにも、あまりにも悲しすぎる最期だった。あのときの自分は自宅で1人、寂しさに涙しながら事切れたのだと。
「そう、ですか……死んじゃったんですね……僕……」
「うむ。嫁どころか彼女もできず、社畜として生きてきたおぬしの人生はあまりにも悲惨なものじゃった」
「2回も言わないでください……別の意味で悲しくなります……。それで、僕はどうなるんです?」
「すぐに生き返らせよう。じゃが、元の世界に生き返らせることはできない。そういうルールなのじゃ」
ルールであればしかたない。しかし問題はどこに生き返らせられるかだ。
「じゃあ、僕はどこで生き返らせてもらえるんです?」
「おぬし、生前はたしかアニヲタじゃったな?」
「あ、はい、そうですけど……」
男のアニヲタ度は極度と言えるもので、自宅はアニメやゲームのグッズでいっぱいになっていたほどだ。まあ、それが彼女ができなかった要因の1つではあるのだが……。
「でも、それがなにか?」
「そんなおぬしにピッタリの世界がある。そこは本来交わることのないありとあらゆる女の子たちが共存している世界なのじゃ」
「ありとあらゆる!?」
思わず身を乗り出す。当然だ。これはアニヲタからしたら聞き逃せないことなのだから。
「そんな、夢みたいな世界があるんですか!?」
「ワシは神様じゃぞ?神がウソをつくなどあってはならんからな」
「なるほど……」
納得して乗り出していた身をもどす。
「それと転生には特典がつく。特に嫁も作らず社畜として生涯を終えた者には特別な待遇がされる」
「特別な待遇ってなんですか?」
「特典というのは転生者の望みをかなえることなのじゃが、本来それは1つだけ。じゃが、その者には3つの望みが叶えられるのじゃ」
「……太っ腹ですね」
「己を犠牲にして社会のために働いた者に対するせめてもの労いじゃ」
といっても男は好きでそうなったわけではないが、せっかくなので厚意に甘えることにした。
「望みってなんでもいいんですか?」
「もちろんじゃ。神に不可能なことはないのじゃ」
「じゃあ……」
男はノートを開くと、神に見せる。そこにはイラストといっしょにそのイラストのものであろう設定が事細やかに記載されていた。
「これは……なんじゃ?」
「僕が昔書いてた小説の主人公です。1つ目は僕をこのキャラで転生させることです」
「なるほど……承知した。では、その書かれているキャラで転生させよう。もちろん、それに書かれているものを転生先に反映させたうえでな。2つ目は?」
「僕、誰にも看取られないまま病死しましたよね?あれを経験するのは二度とごめんなので、不老不死にしてください」
「承知した。それなら若い体で転生したほうがよいじゃろう。16歳でどうじゃ?」
「現代でいうと高校生くらいか。はい、それでお願いします」
「ふむ。ではその年齢で転生させよう。3つ目を言うがよい」
「いえ、僕の望みは以上です」
「ん?」
神様が首をかしげる。
「以上、なのか?」
「必ず3つ要求しなきゃいけないわけじゃありませんよね?今言ったのだけで十分です」
「……おぬし、非モテだったのじゃろう?」
「あなたが知るとおり、僕は26年間嫁も彼女もいない独身でしたね」
「なら、モテたいと思うのが普通じゃろう?」
「そうですね。モテまくって女の子とキャッキャウフフしたいですね。ですが」
「ですが?」
「そういう願望って自分が努力してこそできることだと思うんです。それ以前に能力で人の心を変えるのは人としてよくないと思いますし」
「……なるほど」
納得したように神はうなずく。
「じゃが、そういう願望はあるのじゃな?」
「そりゃ男なら誰もが夢見ることですから。モテない人なら尚更です。ところで男が複数の女性をはべられるのって僕がいた世界では煙たがられるんですけど、転生先の世界ではどうなんですか?」
「そういうことはないな。あの世界では一夫多妻制が認められておるからな。まあ、スキルを使わないとなると女をはべらせられるかどうかはおぬしの努力次第になるが……本当によいのか?」
「構いません。ちなみに転生先にスマホはありますか?」
「ああ。あっちでもおぬしがいた世界同様、スマホが普及しておるからな」
神は立ち上がり、男に歩み寄る。
「では、転生作業に入るとしよう。目を閉じるがよい」
言われるまま、男が目を閉じると、神は開いた手を男の頭部にあてがう。
「おぬしのようなやつは初めてじゃ。思い通りにできる力をやると言っているのに、それを望まぬとは」
「死んだ母さんが言ってたんです。努力することを怠るなって。そんな力を手にしたら、きっと努力することをやめてしまうと思いますから」
「それを忘れなければきっとおぬしは幸せになれるじゃろう。神であるワシが保証してやる」
「神様のお墨付きならまちがいないですね」
転生作業の影響なのか、話している内に眠気が襲ってきた。だが、それでも男は神の声に耳を傾け続けた。
「そろそろ転生先じゃ。ワシはここからおぬしのことを見守っておるから、なにかあればワシを頭の中でイメージするがよい。そうすればワシとテレパシーで会話できるでな」
「はい、わかり……ました……」
眠気がもう限界に達してきた。神の声もだんだん遠くなってきた気がする。
「健闘を祈っておる。幸せになるがよい」
神のその言葉を最後に男の意識は途切れた。
―――――
「……」
意識が徐々に覚醒していく。それを証明するかのように瞼を持ち上げると、青空が見えた。そこにいる雲の群れも自由気ままに泳いでいて、とても気持ちがよさそうだった。
(転生、したのかな……?)
空にむけて手を伸ばしてみる。だが、そのときおかしなことに気づいた。手が異様に小さいのだ。
(あれ……なんでこんなに小さいんだ……?)
自分は16歳の体で転生した。だが、今自分が見ている手はどう見ても赤ん坊の手だった。そのとき男は思った。自分は今赤ん坊ではないか、と。
【お~い、聞こえるか~?】
頭の中に聞き覚えのある声が響く。神だ。
(ちょっと神様どういうことですか!?16歳の体で転生させてって言いましたよね!?これどう見ても赤ん坊じゃないですか!)
【いや~すまんすまん。いつも赤ん坊の姿で転生させてるからついまちがえてしもうた。ついでに不老不死の付与も忘れてしもうた】
まちがえすぎだろ、とは思ったが、不老不死が付与されなかったのはよかったかもしれない。今の体で不老不死を付与されたらずっと赤ん坊の姿になってしまう故。
(どうするんですか!?こんな体じゃなにもできないんですけど!?)
今男がいるのは緑が一面に広がる高原。見たところ危険な生物はいなさそうだが、赤ん坊1人ここに置き去りにされては死を待つばかりだ。
【大丈夫じゃ。こういうときは都合よく誰かが拾ってくれるものじゃ】
(そんな都合のいい展開なんt―――)
「あれ?赤ちゃん?」
男の声をさえぎるように少女が聞こえてきた。男はもしやと思いながら声がしたほうに視線をむけると、大きな三角帽子に黒い衣をみにまとった少女がいた。山へ行った帰りなのか、背中には薬草が多く積まれたかごを背負っている。
(やっぱりアズサだ!アズサ・アイザワだ!)
アニメを見ていたから彼女のことは知っている。彼女は“スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました”というライトノベルが原作のアニメに登場するキャラクターもとい主人公だ。高原に住んでいることから“高原の魔女”という異名を持ち、300年スライムを倒し続けた結果、レベルMAXとなったある意味伝説の人物だ。
「なんでこんなところに赤ちゃんが……?あるのは毛布入りのかごと……手紙?」
手紙を広げてみると、そこには“拾ってください。名前は日向陽月です”と書かれていた。
「これ、捨てられたってことだよね……どう見ても……」
アズサは考え込むようにしばらくうなり声をあげるが、やがて頭をかきながら“ほっとくわけにはいかなよね”と言ってかごを持ち上げた。
「キミ、行くとこないんでしょ?ウチで保護してあげる」
こうして、男もとい日向陽月は高原の魔女アズサに保護されることになった。身寄りがなかった彼をアズサは優しく、温かく育ててくれた。でも、育てられてばかりじゃいられない。少しでも彼女に恩を返したかった陽月は6歳となったころ、魔法で洗濯しているアズサに声をかけた。
「ん?どうしたの陽月」
「僕も、お姉ちゃんのお手伝いがしたい」
「お手伝い?」
「うん、たとえば……今やってるお洗濯とか」
アズサの家には電化製品がないので、洗濯には水を入れた木製のかごの中に洗濯物を入れて洗うというひと昔前の洗い方をしている。だが、普通にそれをやると時間がかかる。なのでアズサは水につけた洗濯物を風魔法で洗濯機のように回した後、風魔法で洗濯物を浮かせて脱水させるという方法を取っているのだ。
「うーん……それはうれしいけど、普通にやると時間かかっちゃうからなぁ……」
「だからお姉ちゃんのやりかたでやるよ」
「え?」
キョトンとするアズサをスルーして、洗濯かごの前にかがむ陽月。両手を突き出し、意識を集中させる。洗濯機の頭の中でイメージしつつ、両手に魔力を送り込む。すると水は風に操られ、洗濯機のように回り始めた。
「次は脱水か。それ!」
風で洗濯物を打ち上げ、踊らせるように操りながら脱水していく。アズサは開いた口がふさがらなかった。それはそうだ。6歳の子どもが魔法を操っているのだから。
「あとは干せば終わりだね」
「……すごいね。陽月魔法使えたんだ……」
「お姉ちゃんが使ってるのいつも見てたから」
「マジで……?陽月ってもしかしてーーーいや、まあいいか」
魔法が使えるのは設定によるものなのだが、アズサ自身は詮索しないことを決めたようだ。隠し事をしたいわけではないが、今はありがたい。
「じゃあ、遠慮なく手伝ってもらおうかな。1人より2人のほうができること増えるしね」
「うん!まかせて!」
こうして、アズサの手伝いをすることになった陽月はいろんなことを学んだ。料理、掃除、洗濯といった家事全般。運動の一環でアズサのスライム討伐に付き合うこともあった。子どもが魔物討伐なんて危ないと最初アズサは心配していたが、アズサが同行してるおかげで危険な事態になることはなく、身体能力も徐々に上がっていった。
学校にも通うことにした。名は
家族も増えた。レッドドラゴンのライカ。スライムの精霊のファルファとシャルシャ。エルフのハルカラ。幽霊のロザリー。ブルードラゴンのフラットルテ。マンドラゴラのサンドラ。大所帯になってにぎやかになった高原の家で過ごす日々は楽しくて、社畜として生きることしか知らなかった陽月にとっては毎日が新鮮だった。
そして月日が流れ、10年の時が過ぎた。
『ハッピバースデートゥーユ~♪ハッピーバースデートゥーユ~♪』
明かりを消し、ろうそくに火が辺りを照らしている高原の家からはアズサたちによるバースデーソングが流れていた。今日は陽月の16歳の誕生日。元いた世界の誕生日はもちろんあるが、この世界では陽月がアズサと出会った日もとい陽月が異世界転生した日を誕生日にしているのだ。
『ハッピバースデーディア陽月~♪ハッピバースデートゥーユ~♪』
バースデーソングを歌い終えると、陽月はケーキに刺さったろうそくの火を吹き消す。“おめでとう”と祝いの言葉とともに拍手が響く。
「あんなに小さかった陽月も16歳か。時間がたつのは早いね」
「アズサ様は薬草摘みの帰りに赤ん坊だった陽月様を拾ったのですよね?」
「うん。子育てとかしたことなかったから不安はあったけど、陽月が手伝ってくれるようになってからはむしろ大助かりになったよ」
「少しでも助けになりたかったんだ……姉さんの」
「陽月……」
感動したのか、アズサが涙ぐむ。
「もう、泣くなんて大げさね」
「だって、陽月がこんな立派な子に育ってくれたんだって思うと、うれしくて……」
「それも姉さんのおかげだよ。本当に感謝してる」
神の手違いで赤ん坊として転生した陽月だったが、今はそれすら感謝している。なぜならその手違いがあったからこそ、陽月はアズサやみんなと出会うことができたのだから。
【ようやく16歳になりおったか。待ちくたびれたぞ】
頭に神の声が響いてきた。しばらく連絡はしていなかったが、そろそろ来る気がしていたので、驚きはしない。
(おひさしぶりです。神様)
【ワシの手違いでこうなってしまったが、おぬしが16となった今、ようやくこれをおぬしに与えることができる】
それは本来、16歳の体とともにもらうはずだった2つ目の特典。そう、不老不死だ。
【こんな形になってしもうたが、ワシからの誕生日プレゼントじゃ。受け取るがよい!】
(それ付与するとき、派手なエフェクトとか出ませんよね?人前なのでエフェクトなしで付与してもらえます?)
【承知した。はあっ!】
こうして、地味な形で不老不死が付与された。実感はわかないが、ここは神を信じることにしよう。
「陽月の兄貴、さっきから黙ったままですけど、どうかしたんですか?」
ずっと黙っている状態だったせいでみんなが怪訝な表情でこちらを見ている。これはマズいと思い、陽月は慌てて笑顔を作る。
「いや、なんでもないよ。それよりライカの作ったケーキおいしいね!これならいくらでも食べられちゃうよ!」
ごまかすようにケーキを食べていく。ケーキはオーソドックスなショートケーキだが、甘い生クリームにふわふわのスポンジがたまらなく美味い。
「初めて作ったのですが……陽月様のお気に召していただけたようでなによりです……」
そう言って、赤く染まった頬を手で隠す。その表情はまさに恋する乙女そのものだった。
「みんな、ありがとう」
生誕したこの日を祝福してくれるみんなに、陽月は笑顔で礼を言うのだった。
―――――
にぎやかな誕生日パーティーも終わり、陽月は今アズサの部屋にいた。大事な話があるからと陽月がこの部屋に訪れたのだ。
「どうしたの?大事な話があるって言ってたけど」
「うん……僕、この家を出ようと思うんだ」
前振りはまどろっこしいので、単刀直入に言う。これはつまり自立するという意味なのだが、アズサは顔色一つ変えなかった。
「おどろかないんだね?」
「……いつか、そんな日が来るんじゃないかって思ってたから。でも、どうしてそう思ったの?」
「僕にとって姉さんは恩人で、尊敬できる人で、敬愛すべき人だと思ってる。でも……」
「でも?」
「だからこそ、いざってときは頼ってしまうんだ。姉さんがいるから大丈夫って。それ自体は悪いことじゃないけど、このままじゃきっとずっと姉さんに頼りきりになる。僕はそんな人間にはなりたくなんだ。だから……」
「……そっか」
納得したようにつぶやくアズサ。そのときの彼女は笑っているものの、さびしさをまとっていた。
「子はいつか巣立つって言うけど、こんなに早く来るなんてね。陽月は私が思っていた以上に大きくなってたんだね」
「反対、しないの?」
「するわけないじゃない。弟が自分から成長したいって言うなら応援するのが姉ってものでしょ?」
言いながら、アズサが陽月の隣に座る。
「ずっと思ってたの。どうしてキミがあのとき捨てられてて、小さいころから魔法が使えたのかって」
今まで詮索しなかったが、アズサは薄々気づいていたのだ。陽月が何者なのかを。
「それで私、思ったの。陽月、キミは…………異世界転生したんじゃないかって」
「……」
時が来たら話そうと思っていたが、先に言われてしまうとは陽月も思っていなかったらしい。しかし、もう時が来たと判断したのか。陽月はこの世界に来るまでの経緯をアズサに話した。そしてすべてを聞き終えると、アズサは“やっぱりね”と納得したようにつぶやいた。
「あのときは転生した直後だったんだね。でも、赤ちゃんで転生するなんて……」
「本当は16歳の体で転生する手はずだったんだけど……手違いでああなっちゃったんだよ。だからあのとき、姉さんが通りかかってくれて助かったよ」
「流石に捨てられた赤ちゃんを見捨てるなんてできなかったから。まさか私の他に異世界転生した人がいたなんて思わなかったけど……」
「なら僕ら、異世界転生仲間だね」
陽月の言葉にアズサは“そうだね”と言ってほほ笑むと同時に陽月の頬に手を添える。いきなりのことに陽月は驚きはしたが、払いのけるようなことはしなかった。
「姉さん……?」
「陽月が異世界転生仲間ってわかったら、親近感わいちゃった」
「それは僕もうれしいけど……顔、近くない……?」
「近くで見ると陽月って綺麗な顔してるよね。これも教育の賜物かな?」
少女を思わせる幼い顔立ち。1本に結わえた肩くらいまである金髪。サファイアのようなブルーの瞳。それは陽月自身が描いたイラストをもとになっているものの、お世辞抜きで美形と呼べる風貌だった。
「ねえ、陽月」
「なに……?」
「陽月が家を出たら次いつ会えるかわからないじゃない?だから、今のうちに伝えたいことがあるの」
「伝えたいことって……?」
とは言うものの、なんとなく陽月にはわかっていた。彼女がなにを伝えようとしているのかを。
「私、陽月が好きだよ」
突然の告白。それは陽月にとって前世を含めた初めての告白だった。顔の温度が徐々に上がり、胸の鼓動もエンジンがついたように加速していくのを陽月は感じた。
「姉さん、あの……」
予想外の展開に言葉が詰まる。前世は自分が告白する側だったのに、今では自分が告白される側になっている。ここに転生する前、陽月は神にモテたいとは言った。だが、この世界に来て初めて告白してきた人が義理とはいえ姉だとは予想がつかなかった。
(……でも)
イヤではない。むしろうれしかった。相手が敬愛する姉なら、尚更。だが、思っているだけじゃダメだ。アズサは自分に想いを伝えた。ならば自分も答えなければならない。そう思いつつ、陽月は頬に添えられたアズサの手を取った。
「陽月……」
「ありがとう、姉さん。姉さんの気持ち、すごくうれしいよ。僕も、同じ気持ちだったから」
「……じゃあ」
「僕も好きだよ。姉さんのこと。姉としてじゃなく、1人の女性としても」
「っ!」
腕を首に回されたと思いきや、アズサとともに体をベッドに倒される。アズサとの距離がさらに近くなって、陽月の心臓の鼓動が早くなる。
「ね、姉さん……!?」
「家を出たら次いつ会えるかわからないって言ったでしょ?なら、今のうちにやっておこうと思って」
「な、なにを……?」
「セックス」
「!!??」
顔の温度がさらに熱くなる。意外だった。アズサはそういうのに興味がない思っていたからだ。
「でも僕……シたことないよ……?」
「だからだよ。陽月はこれからもっとたくさんの女の子と関わっていくんだと思う。そうなると、私以外の人とも付き合うようになって、ヤることになるわけでしょ?だから今のうちに初めてをもらっておこうと思って」
「でも、姉さんはいいの?初めての相手が僕で……」
「いいと思わなかったらこんなこと言わないと思うけど?」
「……そうだね」
アズサの言葉に苦笑した後、陽月は自身の初めてと引き換えにアズサの初めてをもらうことにした。
「わかったよ。姉さん」
アズサは陽月が承諾したのを聞いて微かに微笑むと、そっと陽月の頬に唇を寄せる。触れるだけの優しいキス。それがきっかけとなり、2人の距離はさらに縮まる。
「ふふ……じゃあ陽月の了承も得たところで……♡」
そう言いながらアズサはゆっくりと陽月の服に手をかけた。ボタンを1つ1つ外す動作さえも妙に艶めかしく感じられ、陽月の心臓はさらに高鳴る。
「姉さん…… もっと、ゆっくり……」
「大丈夫だよ。私が全部教えてあげるから」
アズサは微笑みながらそう答えると、くるっと体勢を変えて陽月の上に覆いかぶさる。とおもえば深い口づけが交わされ、お互いの吐息が混じり合う。
「んっ…… んぅ……♡」
舌が絡み合い、唾液が交換される音が部屋に響く。初めてのキスに夢中になりながらも、陽月はアズサの指が自分の肌を這う感触に身を震わせていた。
「姉さんっ……」
「なに?はずかしいの?」
「そりゃそうだよ……初めてなんだから……」
「じゃあ、お姉ちゃんに身をゆだねて?」
アズサは陽月の耳元で囁くと、そのまま首筋へと舌を滑らせた。柔らかい舌の感触と熱い息遣いに、陽月は全身が粟立つのを感じる。
「ぁっ……!」
小さな悲鳴のような喘ぎ声が漏れてしまい、陽月は慌てて口を塞ぐ。しかしアズサは止まらず、陽月の反応を探るように指と唇で刺激を与え続ける。
「気持ちいいんだね。もっと感じてみて」
アズサは陽月の下半身に手を伸ばし、固くなったものを布越しに撫でた。羞恥心と快感。その狭間で揺らされながら、陽月はビクッと腰が跳ねらせた。
「姉さ……そこ……っ!」
「ん?ここがどうしたの?」
わざと焦らすような動きで円を描きながら撫で回すと、陽月は堪えきれずに身を捩った。その様子を楽しそうに見つめながら、アズサは徐々にその手を下着の中へと侵入させていく。
「熱くなってるね……陽月のココ♡」
直接触れられた瞬間、陽月の全身に電流のような快感が走った。アズサは肉棒を優しく握りしめると、上下に動き始めた。
「あっ……はぁっ……!!」
「いい声。もっと聞かせて♡」
指の腹で先端を擦りながら、もう片方の手で睾丸を転がすように弄ぶアズサ。その巧みな指使いに翻弄され、陽月の理性は徐々に溶けていくのを感じた。
「姉さん……だめっ……出ちゃうから……っ!」
「出していいよ。お姉ちゃんが全部受け止めてあげる♡」
追い詰めるように激しくなっていく手の動きに耐え切れず、陽月は勢いよく射精してしまった。
「いっぱい出たね。でもまだこれからだよ♡」
アズサは妖艶に微笑みながら陽月の肉棒を咥えると、ねっとりとした舌遣いで舐め上げる。口内で温められ、吸われるような感覚に再び昂っていくのを感じつつも、陽月は必死に抵抗しようと試みる。
「ちょっ……待ってってば……!」
「待たない♡」
陽月の懇願を無視し、アズサは喉奥まで飲み込むと、頭を上下に動かし始めた。
「うぁっ……やばぃってそれぇ……っ!」
強烈な快感に襲われ、腰が砕けそうになるほどの衝撃を受ける。陽月は何とかそれから逃れようとするも、アズサの力強い腕でガッチリ固定されていて、全く身動きが取れなかった。腕力にはそれなりに高いほうだと自負しているが、レベルMAXのアズサの前には無力だった。
「ふふっ♡可愛い♡」
そう言うとアズサは口から離し、今度は竿全体を舐め上げたあとに亀頭部分を強く吸ってきた。
「ひぅ……んんっ!!」
「陽月のコレ。ビクビクしてる♡そんなに気持ちいいの?」
「うん……すごく……」
「よかった♡」
嬉しそうな笑みを浮かべるとアズサはふたたび肉棒を口に含み、ゆっくりと抽送を始めた。
「あっ……ねえさん……だめぇ……またイッちゃうからぁ……っ!」
陽月の言葉などお構いなしにアズサは抽挿を繰り返し、ジュポッジュポっといやらしい音を立てながら頭を振っていく。そのあまりの快感に耐えきれなくなった陽月はアズサの口内へとふたたび精を放ってしまった。
「はぁっ…… はぁっ……」
陽月は荒い呼吸を整えながらぼんやりと天井を見つめていた。体中の力が抜けきってしまい、起き上がる気力すら残っていない。そんな陽月を見下ろしながらアズサはニコリと微笑みかける。
「ふふっ♡いっぱい出したね♡」
「姉さん……ダメって言ったのにぃ……」
「キミが可愛すぎるのがいけないんだよ?」
意地悪そうな笑みを浮かべるアズサ。それを見て陽月は自分の敗北を悟った。今主導権は完全に姉のアズサにある。陽月はこれからされることを想像し、背筋にゾクリとしたものを感じた。
「さてと♡」
アズサは妖しい笑みを浮かべながら陽月の両足を開き、間に自分の体を割り込ませてきた。そして陽月の目の前に秘部を晒すような格好になると、それを指で左右に開き始めた。
「ほら見て?陽月のせいでこんなになっちゃったんだよ?」
ピンク色の花弁がヒクつきながら蜜を滴らせている様を見せつけられ、陽月は思わず目を逸らしてしまう。しかし、アズサはそれは許さないと言わんばかりに陽月の顔面に跨るようにして股間を押し付けてきた。
「ダメだよ♡ちゃんと見て♡」
そう言いながらアズサは自分の陰核に触れると、指先で軽く弾くように弄りはじめた。その刺激によって溢れ出した愛液が糸を引きながら垂れ落ちてくる光景に興奮を覚えつつも、陽月はどうすればいいのかわからず戸惑うことしかできないでいた。
「あははっ♡すごい量出てる♡陽月のせいなんだから責任取らないと♡」
アズサはさらに強く陰茎を扱き上げると、今度は自分の膣口に宛がって一気に根元まで飲み込んだ。
「んっ……♡入ったぁ♡」
陽月の肉棒を受け入れたことで満たされたように幸せそうな表情を浮かべるアズサ。だが、すぐにその表情は一変した。
「はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡」
陽月の上で激しく腰を振り始め、貪欲に快楽を求め続けた。パンッ!パチュンッ!!グチョッグチャッヌプッ!!!という卑猥極まりない水音と肌同士がぶつかる音が部屋中に響き渡る。だが、それでもなお2人は止まることはなく快楽を享受することに没頭していたのだ。やがて限界を迎えた陽月が3度目となる射精を行うと同時に絶頂を迎えてしまい、そのままぐったりとしてしまう。
「すごく気持ちよかったよ♡でも、夜はまだ―――」
「アズサ様!!!!!」
アズサの声をさえぎるように大声が聞こえてきたとともにドアが勢いよく開かれる。声の主はライカで、彼女の背後にはファルファ、シャルシャ、ハルカラ、フラットルテがいた。みんなドア越しに聞いていたのか、顔を真っ赤にしている。
「みんな、やっと来たんだ」
「姉さん、気づいてたの?」
「私がセックスを持ちかけたあたりから人の気配がしてたから」
魔女は人の気配にも敏感なのか、アズサ自身が鋭いのかは定かではないが、どちらにしても流石である。
「ズルいですアズサ様!1人だけ陽月様とセックスして!私だってシたいのをガマンしてたのに……」
「ママ!ファルファもお兄ちゃんのこと好きなんだよ!?なのに抜け駆けなんてズルいよ!」
「シャルシャも……兄さんが、好き……」
「まさかお師匠様に先を越されるなんて……でも、責められてる陽月さんの声、かわいかったです~♡」
「フラットルテも陽月が好きなのだ!ご主人のことも大事ですが、これだけは譲れないのだ!」
一斉に告白されて陽月の頭が混乱する。アズサだけでもおどろいたのに、5人まとめて告白されるとは……これではまるで……。
(ハーレム、じゃないか……)
みんな今までそんな素振りを見せていなかったので、陽月自身は好意を持たれていたことにまったく気づいていなかった。いや、ライカはわかりやすかったので薄々気づいてはいたが……。
「やっと言ったね。告白した甲斐があったよ」
「え?」
「みんなが陽月のこと好きなのは気づいてた。でも、今の関係を壊したくないあまり想いを伝えられなかった。違う?」
『……』
黙って目をそらすライカたち。どうやら図星のようだ。
「だから、ご主人が……?」
「今しかないと思ったのは事実だけど、私が告白すればライカたちもその流れに乗って告白できる。みんな依存の作戦だったけど、成功したようでよかったよ」
「アズサ様、我らのためにそこまで……」
「当たり前でしょ?私は陽月のことも大事だけど、ライカたちだって大事な家族なんだから」
アズサの言葉にライカたちは涙ぐむ。アズサは“大げさだなぁ”と苦笑しつつ、陽月に視線をむける。
「ほら陽月。みんなに返事しないと」
そうだ。自分は告白された。ならば彼女らにも答えないといけない。
『……』
緊張した面持ちで陽月を見てくるライカたち。でも、陽月の答えはもう決まっている。
「僕は、ライカたちのことも好きだよ。姉さんもみんなも大好きで、大事な家族だから」
「本当、ですか?」
「こういう場面でウソは言わないよ」
これは正直な陽月の気持ち。この気持ちにウソ偽りはない。
「じゃあ、シャルシャたちのことも……愛してくれる……?」
「もちろんだよ。僕は好きだって言ったんだから」
「じゃあ、それを今から証明してもらいましょうか?」
「え?」
アズサの言葉に体が固まる。同時に嫌な予感が陽月の中でよぎった。
「姉さん、証明ってまさか……」
「もちろん。これからここにいるみんなでセックスしましょう♡」
やっぱりだった。さっき初めてを経験したばかりだというのに6人まとめてはハードすぎるのでないか?陽月はそれを抗議しようとしたが、そんなのとても言える雰囲気ではなかった。なぜなら……。
「陽月様とセックス……♡」
「うれしいな~♡大好きなお兄ちゃんとエッチできるなんて♡」
「……ファルファも♡」
「もううずいてしかたありません♡陽月さん、早く抱いてください♡」
「陽月はフラットルテがいっぱい気持ちよくしてやるのだ♡」
いままでガマンしていたからか、飢えた獣のような目つきで陽月に迫ってくるライカたち。美少女たちが迫られるのは男からしたらご褒美でしかないと陽月は前世では思っていたが、ここまでくると恐怖を感じてしまう。
「み、みんな?」
「私たちの愛、しっかり受け止めてね♡始め♡」
アズサの合図とともに野獣は解き放たされ、獲物に一斉に襲い掛かった。野獣たちに貪られながら、獲物は思った。ハーレムは最高だ!!と。