【スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました】
・フラットルテ
魔物討伐を終え、陽月は依頼主が住む村にもどってきた。依頼主は畑仕事で生計を立てている村人。討伐対象はホーンウルフ。角を生やした狼の姿をしているそいつは群れで行動している。そこから培われた統率力は目を見張るものがあり、陽月も手を焼いた。しかし彼らを放っておけば畑が荒らされ続け、依頼主の家計は火の車となってしまう。というようなことを依頼書に書いていたので、陽月も引き受けるに至ったというわけだ。
「本当にありがとうございます!これで畑を荒らされずにすみます!」
「お役に立てたようでなによりです。畑仕事、がんばってくださいね」
今後の豊作を祈り、陽月は報酬とともに村を後にする。ネロで平原を駆け抜ける中、彼は気づいた。この近くに高原の家があることを。そこは自分を育ててくれたアズサが住む実家のようなもの。連絡は定期的にとるようにはしていたものの、城下町に住むようになってからは一度も帰っていなかったのだ。
「クエストも早く終わったし、顔でも出してみるかな」
そう決めてアズサに連絡を取ろうとスマホを取り出そうとするが、やめた。いきなり帰ってきておどろかせてやろうと考えたからだ。
「みんながどんな顔するか、楽しみだな」
方向を城下町方面から高原の家方面に変え、ネロを走らせる。それからしばらく走っていると、高原の家が見えてきた。陽月がここを出てからまだそんなに日はたっていない。だが、あの家を見るとなんだか懐かしい気持ちになった。これは帰省あるあるではないだろうか。
【コンコン】
中の人を呼ぶべく、ドアを軽くたたく。おそらく出てくるのはアズサだろう。陽月はそんな予想をしたが、実際に出たのはアズサではない。フラットルテだった。
「んぅ……いったい誰なのだ―――って、陽月!?」
陽月が来るまで寝ていたのか、寝ぼけ眼だったフラットルテ。しかし訪問者が陽月だとわかると、一気に覚醒。おどろき、半開きだった目を見開いた。こういうリアクションをさせるためにあえて連絡せずに来たのだが、家の中を見る感じフラットルテ以外は誰もいなかった。
「仕事終わりに近くを通りかかったから来てみたんだけど……姉さんたちは?」
「ご主人たちならベルゼブブに手伝いを頼まれてヴァンゼルドに行ってるのだ。だから今ここにはフラットルテしかいないのだ」
「そっか。今回はタイミング悪かったかな」
残念だが、しかたない。かといって、このまま帰るのはもったいない。そう思った陽月はフラットルテに1つ質問することにした。
「フラットルテは僕が来る前はなにしてたの?」
「えっと……昼寝してたのだ!」
「つまり、ヒマってことだね」
「そうともいうのだ……」
ドアを開けたときのフラットルテを見れば寝ていたことくらいはわかる。だが、誘うのにも流れというものがある。故にわかっていてもこのやり取りは必須だ。
「よかったらいっしょに出かけない?天気のいい日に昼寝して過ごすのはもったいないでしょ?」
「それなら、陽月と行きたいところがあるのだ!」
「いいよ。どこにでも付き合うよ」
「フラットルテが行きたいところはズバリ!ベヒーモスの住処なのだ!」
「……ベヒーモス?」
フラットルテ曰く、ここから数キロ離れた山の洞窟。そこにベヒーモスが住んでいるとのこと。聞いた話だとその肉は高級料理店で使われるほど美味なんだとか。なのでフラットルテも一度その肉を食べたいと思っていたのだが、中々キッカケがなくて狩りに行けていなかったらしい。
「最近住み着いたらしいのだ。まあ、ベヒーモスごときフラットルテ様だけでも楽勝なんだけど……陽月にも手伝わせてやるのだ!恋人特権なのだ!」
「わかったよ。どこにでも付き合うって言ったのは僕だからね」
「よし!そうと決まれば早速出発なのだ!あ、でも……」
気合いを入れるように腕を掲げたフラットルテ。と思えば急にもじもじしだした。いったいどうしたのだろうかと陽月は首をかしげる。
「フラットルテ?」
「えっと……いつもだったらフラットルテが変身して飛んでいくんだけど……その、陽月にお願いがあるのだ……」
「お願い?言ってごらん」
「陽月……この前バイクを買ったって言ってたよな……?」
ネロを譲ってもらった日。チャットでそのことを高原の家のメンバーに伝えていたのだ。ネロの画像付きで。
「陽月が持ってるバイクに……乗せてほしいのだ……」
どうやらそのときフラットルテはネロのデザインに一目惚れしたようで、次陽月が来たときは乗せてもらおうと思っていたのだ。
「そういうことならお安い御用だよ」
懐からカプセルモードのネロを取り出し、スイッチオン。放り投げてカプセルモードからバイクモードに変形させる。
「お~!これがバイクというものか!実物はさらにカッコいいのだ~!」
瞳を輝かせてテンションを上げるフラットルテ。その姿はまるで少年のようだった。
「でも、珍しいね。バイク見てテンション上がる女の子は滅多にいないから」
「実はずっと夢だったことがあるのだ。フラットルテに彼氏ができたら、その……彼氏が運転するバイクの背中に乗ってみたいって……」
「ならその夢、彼氏として叶えてあげないとね」
言いながら、陽月はネロにまたがる。
「さあ、乗って」
「では、お邪魔します……」
緊張しつつも、陽月の後ろに横向きで乗る。落ちないように抱き着きながら感じる陽月のぬくもり。女性みたいな顔立ちに反して自身よりも広い肩。それらと至近距離で触れ合ったことで、フラットルテの鼓動は徐々に早くなっていった。
「みんながいなくてよかったのだ。こんなの、みんなの前じゃできないのだ……」
たしかに普段のフラットルテを考えればこういうことは言いづらいだろう。陽月は納得したように“なるほどね”と言いながら、アクセルを回した。
「じゃあ、しっかりつかまっててね?」
「絶対、離さないのだ……」
「よし、じゃあ行くか」
そう言ってふたたびアクセルを回すと、陽月とフラットルテを乗せたネロは走りだすのだった。
―――――
「不器用だったあの頃はどうしようもなくて 想い伝えられないまま過ぎゆく時に埋もれてく Oh Friend My Friend~♪届きそうだけれど My Friend~♪」
ベヒーモスの住処にむかう最中。フラットルテは上機嫌に歌っていた。その辺で拾った木の棒を振りながら。
「フラットルテ、その歌……」
「これはフラットルテが今ハマってるアニメの主題歌なのだ!主人公が操るドラゴンがカッコいいのだ!」
詳しいことは省くが、そのアニメにはブルードラゴンが出てくる。彼女もまたブルードラゴン。故にそのドラゴンにシンパシーを感じたのだろう。しかも主人公のパートナーという好待遇つき。ハマらない理由がないというものだ。
「それけっこう昔のアニメだよね?僕も昔見てたよ」
といっても高原の家にテレビはないので、スマホでだが。
「なら今度いっしょに見るのだ!大きくなってから見ると子供のころとはまた違った視点で見れると思うのだ!」
「そうだね。フラットルテの話聞いてたらまた見たくなっちゃったよ。今度鑑賞会でも開こうか」
「それいいのだ!全話見るまでフルマラソンなのだ!」
ちなみにそのアニメの話数は1期と2期を合わせたら102話。つまりフルマラソンしたら死亡確定ということになる。だが、それを言えば興ざめすることもまた確定。故に陽月はそのことは言わないことにした。
「それはそれとして、ほんとに楽しそうだね。なんかこう……いつも以上にはしゃいでるというか……」
「やっとベヒーモスを狩れると思うとウキウキが止まらないのだ!それに……」
「それに?」
「陽月とのひさしぶりのデート、だから……」
顔を赤くさせながら言うフラットルテ。普段とのギャップにときめきつつ、陽月は“そうだね”と言いながら目をそらす。フラットルテの言うデートは一般的なデートとは違うかもしれない。だが、これがフラットルテらしいと陽月は思っているのだ。
「ん?」
覚えのあるものを見つけて足を止める。ハッスルダケの群生地だ。少なく見積もっても10はあるだろうが、ここに住む動物か魔物が食べたのだろう。食いちぎられた跡がある。
(近づかないでおこう……)
幸いフラットルテは気づいてないので、陽月はこのまま通り過ぎることに。いずれハルカラあたりが回収しそうだが、流石に自分から回収しようとまでは思わなかったようだ。
「さて、ここがベヒーモスのいる洞窟か」
群生地からまたしばらく歩くと、洞窟の入口に到着。中からは獣臭い風が吹いていた。
「ああ、この匂いはまちがいなくベヒーモスなのだ」
フラットルテがくんくんと小刻みに鼻で空気を吸い込みながら断言する。陽月はそれを聞くと指先に炎を灯した。
「準備はいい?」
「無論なのだ。ひさしぶりの獲物に胸が躍るのだ!」
炎の明かりを頼りに洞窟の奥へと進んでいく。そうしてたどり着いた広い空間の中心。そこにはベヒーモスが眠っており、周囲には彼が食べたであろう食べ物の残骸が散乱していた。
「アレがベヒーモス……」
紫色の鱗に包まれた5mはあるであろう巨躯。頭部に生えた2本の曲線状の角に大きな牙を生やしたその姿は怪獣といっても過言ではなかった。
「噂以上に大きいのだ……。でもその分肉質も……」
ベヒーモスの肉質は体が大きい分硬く厚みがあるため、並大抵の攻撃は通らない。さらに攻撃が効かないことも相まって、逃げ足もかなり速い。そのため彼は捕まえにくいことでも有名だった。だからこそ高級食材としての価値が高いわけだが……。
「こっちには気づいてなさそうだけど……起きるまで待ってたら時間かかりそうだな……」
「待つ必要はなんてないのだ」
「え?」
フラットルテが右手を上げると、頭上に氷塊が出現。その状態で右手を振り下ろすと、氷塊はベヒーモスの頭上に落下した。そんなことをされば寝ていたベヒーモスも起きるというもので、怒りの咆哮を上げる。陽月はベヒーモスを心の中で謝罪しつつ、ブルームーンを召喚。彼の対処法を頭の中で構築していった。
「陽月、なにか作戦は?」
「あいつが物理に高い耐性があるなら、魔法攻撃で攻めるのが得策。だから―――」
【なに言ってんだ!俺様ならその耐性だってぶち抜ける!俺様の力を使え!】
たしかにカムイならそれも可能だ。だが魔法攻撃が得策と言った手前、今彼の力は使いづらい。ちなみにカムイとソーマの声を聞けるのは宿主である陽月だけとなっている。
【おまえにはこの前譲ってやっただろう。今回は僕に譲れ】
(そうだね。今回は王道の作戦でいきたいから、ソーマでいくよ)
【しかたねぇな……ここは譲ってやるよ!】
小会議終了。この間わずか数秒である。
「いくよ。ソーマ」
【深き眠りから目覚めし猛獣よ。我が力の前にひれ伏すがいい】
左手に青い竜の紋章を浮かび上がらせる。直後、青い光が陽月を包み込む。そしてその光が消えると彼は頭部が後ろ向きに曲がっている銀色の角を2本生やした竜の頭部を模した青いマスクが顔全体を覆い、全身にまとっている青い鎧にはいたるところに銀色の宝玉が埋め込まれ、背中部分には尻尾状のパーツが着いている姿に変貌した。月魔竜ソーマの力を解放した形態―――
「僕が突っ込む。フラットルテは合図をしたらトドメをお願い」
「承知したのだ!」
それぞれ役割を確認し合うと、陽月が先陣を切って駆けだす。ベヒーモスはそれを迎え撃つように巨大な腕を振り下ろす。陽月はそれを横にかわした後、高くジャンプ。同時にセレーネの刀身に魔力をまとわせ、斬撃をベヒーモスの頭部に振り下ろした。しかし……。
「ッ!硬い……!」
ベヒーモスの頭部は予想以上に固く、まるで鋼鉄の鎧を着ているような感覚だった。それでもなんとか傷をつけようと力を込めて押していく。だが、ベヒーモスの方もされるがままではない。陽月に反撃しようと腕を横に振った。
「
ベヒーモスの頭部が下に向いているのを利用し、陽月は下顎目掛けて三日月状の魔力の刃を射出。直撃を受けたベヒーモスは悲鳴とともに後ろによろける。陽月はその隙を見逃さず、“Buster”と発声。その音声を認識したソーマはひとりでに縮めた刀身が前側に倒れ、銃形態のバスターモードへと形態変化した。続けて全身を青く輝くオーラで包みながら銃口に魔力を集約していくと、銃口が発光。それが合図として、陽月は引き金を引いた。
「
集約された魔力が青い砲撃となり、銃口から一直線に放たれる。それはよろけていたベヒーモスの顔面に直撃。大ダメージを与えることに成功する。この攻撃が致命傷となったのかベヒーモスはよろけだす。あとひと押しだ。
「フラットルテ、今だ!」
「よし!フラットルテの一撃を喰らうのだ!!」
合図を受けたフラットルテは駆け出し、ベヒーモスに拳を腹にたたきこむ。ベヒーモスは苦しそうな咆哮をあげた後、ドスンと大きな音を立てて倒れた。しばらく様子を見たが、動く気配はない。どうやらフラットルテの一撃がトドメとなって絶命したようだ。
「ふん、口ほどにもないヤツだったのだ」
「うん。流石のベヒーモスも
「なんなのだそれは?」
「この形態の固有能力だよ。魔力の消費量が上がる代わりに魔力を用いた技の効果をあげられるんだ」
フラットルテに説明後、形態を解除する。
「じゃあ、ベヒーモスも倒したことだし、早速解体して調理しようか」
「ここで?炎魔法で焼くのか?」
「それでもできるけど、肉焼き機があるから、それで調理しようか」
「そんなものがあるのか!?よし!解体するのだ!」
というわけで、解体作業開始。ベヒーモスが大型の魔物ということもあって、食べられる部分が多くあった。解体後、持ち帰る分はアイテムボックスに保管した。あとでアズサたちに振舞うためだ。
「陽月~♪早くお肉食べたいのだ~♪」
フラットルテは既に焼きたての肉を想像しているのか、無邪気に飛び跳ねていた。陽月はそれを微笑ましいと思いつつ、アイテムボックスから肉焼き機を取り出す。それは鉄製の台座に先端が分かれた2本の支柱が刺さっているシンプルな構成となっていた。
「お~これが肉焼き機か!」
「僕がサバイバル用で使ってるヤツだよ。これさえればいつでもどこでも肉が焼けるよ」
「それは画期的なのだ!早速焼くのだ!」
「了解」
台座にスイッチを入れて点火。次に付属品であるハンドルを骨付きの肉にハンドルをつけて支柱にセット。続けてハンドルを回すと台座から軽快な音楽が流れ始める。
「なんか音楽が流れてきたのだ!?」
「肉が焼かれはじめると音楽が鳴る仕組みになってるんだよ」
言いながら、音楽が止まる。それから少しすると肉がこんがりとしたきつね色に焼きあがる。ベストタイミングだ。
【上手に焼けました~♪】
ベストなタイミングで肉を支柱から離すと、台座からそんなアナウンスが流れる。ベストタイミングで肉を離すと、流れるアナウンスだ。
「はい、どうぞ」
焼けた肉をフラットルテに差し出す。フラットルテは嬉しそうに“ありがとうなのだ!”と言って受け取ると、がぶりとむしゃぶりつく。
「おお!これはなかなか美味しいのだ!さすがは高級食材なのだ!これならいくらでも食べられそうなのだ!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
フラットルテから出る言葉にお世辞はない。心の底から出た言葉だ。だから陽月も素直に喜ぶことができるのだ。
「今度はフラットルテが陽月に焼いてやるのだ!」
「そう?じゃあ、お願いしようかな」
先ほどの陽月と同じようにハンドルに肉をセットし、回していくフラットルテ。その動作に合わせて音楽がふたたび鳴り響く。
「音楽を聴きながら肉を焼く。こんな楽しいものを作ったやつは天才に違いないのだ~♪」
流れる音楽に合わせて顔を左右に揺らすフラットルテは誰が見ても楽しげだった。見ているだけでほっこりするそんな彼女を見守りながら、肉が焼けるのを待つ。
「音楽が鳴り終わった後に肉をあげるんだっけな……よし、今なのだ!」
「あ!ダメ!まだ早い!」
「え?」
音楽が鳴り終わった直後に肉を支柱から上げるフラットルテ。台座から鳴るブザー音。実際の肉も生焼け状態でとても食べられるものではなかった。
「ああっ!?失敗してしまったのだ!」
「初めてだからしかたないよ。もう一度やって見せるからよく見てて」
ショックを受けるフラットルテを慰めつつ、陽月は新しい肉を回し始める。
「肉は音楽が終わってから少し間を置いてから上げるんだよ。慣れてきたら徐々に肉を回す速度を落としてね」
「おお……勉強になるのだ!」
話している間にちょうどベストタイミングで肉を支柱から上げることに成功。台座からはふたたび“上手に焼けました~♪”のアナウンスが流れる。
「じゃあ、さっきのを踏まえてもう1回やってみよう」
「よし!今度こそ成功させてみせるのだ!」
新しい肉を肉焼き機にセットし、2度目の挑戦。目を閉じて音楽に耳を澄まし、タイミングを待つ。そして音楽が終わると数秒過ぎたところで、目を見開く。
「今なのだ!」
タイミングを見極めたフラットルテが肉を支柱から離す。すると台座から“上手に焼けました~♪”のアナウンスが流れた。上げられた肉はこんがりとしたきつね色をしている。ベストタイミングである証だ。
「できた……できたのだ!」
こんがり肉を持ち上げ、嬉々とした表情を浮かべるフラットルテ。こんなことで喜ぶなど単純だ。中にはそう思う人もいるかもしれない。だが、こういう小さなことでも喜べるのは生きていくうえではとても大事なことだ。人それぞれと言われればそれまでだが、少なくとも陽月はそう思っている。
「呑み込みが早いね。もうできちゃうなんて」
「おう!もう何回だって焼け……る……」
フラットルテの顔がだんだん赤くなる。いや、それだけじゃない。息も荒くなっている。
「フラットルテ……?」
「陽月ぃ……なんか体が熱いのだぁ……」
その場に肉をポイっと捨て、フラットルテは服に手をかける。なにをするのかと見ていた陽月だったが、すぐに目をそらした。それもそのはず。フラットルテが服を脱ぎ始めたのだから。
「ちょっと!?なんで脱いでるの!?」
「だってこんな熱いの耐えられないのだ……」
「それにしたってなんで僕の前で!?」
「陽月なら見られても問題ないのだ」
問題はある気はするが、今のフラットルテにそのツッコミは無駄だろう。それに反射的に目をそらしたものの、陽月は美少女の裸を独占している。そう思うとだんだん優越感と幸福感に包まれ、そらしていた顔をもどしていた。
「陽月……」
フラットルテに押されたことで体を後ろに倒される。今のフラットルテは明らかに発情しており、陽月を食いそうな勢いだった。しかし、なぜ彼女はこうなってしまったのか。陽月は考えるが、原因はすぐわかった。ベヒーモスの肉だ。
(でも……)
ベヒーモスの肉に媚薬効果があるなんて聞いたことない。だが、フラットルテが発情したのはどう見てもベヒーモスの肉を食べた後だ。だとすれば、ベヒーモスの肉が外的要因によって媚薬効果を得てしまったと考えるのが妥当だろう。
(……そういえば)
ここに来る途中、食いちぎられたハッスルダケの群生地を見つけた。アレを食いちぎったのがベヒーモスだとしたら、彼の体に媚薬効果が付与されたのにも納得がいく。
「えへへぇ……陽月ぃ……♡」
舌を出して甘い声を出した後、フラットルテが陽月の唇を奪う。それも普通のキスではない。舌を絡ませる濃密なものだ。あまりの気持ちよさに意識が飛びそうになりながら彼女を抱き返し、舌を絡み返す。こうなってしまった以上、発散させなければもとにはもどらない。それにここは森の奥にある洞窟。しかもさっきまでベヒーモスの住処だったところだ。そんなところに近づく者はまずいないだろう。それに……。
(フラットルテの身体、キレイだな……)
少女らしい細身のある体。それは薄暗い洞窟でもしっかり見ることができた。だが見るだけでは発散はできないので、陽月はまず彼女のおっぱいを優しく揉みほぐす。柔らかなふくらみに沈む指。張りがあって弾力もあり。ずっと触っていられそうなぐらい気持ちよかった。
「あっ……♡んんっ♡」
ジャブ程度の愛撫だったのだが、今のフラットルテにはそれすらも感じてしまうのだろう。ビクビク震えながら声を漏らした。
「んぅ……陽月ぃ……そこぉ……♡」
フラットルテが反応した箇所。もとい乳首をピンポイントで責めていく。そうしていくうちに彼女の息遣いは荒くなり、肌に汗が噴き出す。しかも愛撫され続けたことで体が一瞬とはいえ、硬直。脱力したように身を預けてきた彼女の下腹部を見てみると、そこはぐしょぐしょに濡れていた。イッたようだが、フラットルテは満足していないようだ。息を荒くしながら陽月の股間をまさぐり始めた。
「ちょっ!?」
「はやく……ほしいのだ……♡」
膨らみを大きくしたそこにフラットルテがニタリと笑いながらチャックを降ろす。立派なモノにうっとりしつつ掴むと、そのまま激しく手を上下に動かしていく。あふれ出す我慢汁。滑りが良くなったことでさらに動きが加速。まるでマッサージを受けているような感覚。それはとても気持ちが良く、自然と腰を動かしてしまうほどだった。加えてフラットルテが先端を舐めたことで限界を迎え、彼女の顔と手を白く汚した。
「すごいでてきたのだ……♡」
フラットルテが顔についた精液を舐めとり、飲み込む。
「ん……すごいおいしいのだ♡」
「そんなおいしいものじゃないよ?それ」
「そんなことないのだ!陽月のならもっと飲みたいのだ♡」
ふたたび精液を絞り出さんとするフラットルテを陽月は手で制す。そしてカウンターのごとく彼女の秘部に手を伸ばした。先ほどの手コキによる興奮で彼女のそこは洪水状態。しかも軽く触れただけでぐしょぐしょになってしまう。指を動かしていけば面白いように反応してくれるフラットルテ。その様子が愛おしくなって、陽月は彼女と唇を重ねた。今度はこちらから舌をねじ込んでいき、彼女の口内を蹂躙していく。
「あっ……♡んんっ♡」
たがいの唾液を交換し合い、舌と舌を絡ませるディープキス。同時に膣内に入れた指の動きを激しくさせる。フラットルテはその快楽に耐えかねたのだろう。体が痙攣して大量の潮を吹き出す。だが陽月はそこで満足せず、彼女のナカに自身のイチモツをねじ込んだ。
「ふあっ♡」
陽月が入ってきたのを感じ取ったのか、フラットルテは恍惚な顔をしている。今にも達してしまいそうな雰囲気だ。しかし、彼女よりも先に限界を迎えることは許されない。先にイケば早漏のレッテルを張られる。それは女性にとって萎えるポイントだ。陽月はこれまでの経験でそれを学習したのだ。
「んっ……♡陽月ぃ……♡」
蕩けた顔で名前を呼びながら腰を動かすフラットルテ。陽月も負けじと動きを合わせる。たがいの欲望がぶつかり合い、結合部からは蜜が溢れてくる。絶頂が近い合図だ。
「陽月ぃ……もうダメなのだぁ……♡」
「うん……僕もそろそろ……!」
「きてぇ……♡いっぱい……欲しいっ♡」
その言葉と同時に2人の動きは加速。フラットルテの一番奥に届くように思い切り突き上げると、彼女も同じように強く締め付けた。そして次の瞬間、なにかが弾けたように力が抜け落ちる。だがそれだけでは終わらず、何度も痙攣しながら長い時間をかけて大量の欲を吐き出した。
「んん……♡すごかった……♡」
すべてを出し尽くした後、フラットルテの中から陰茎を引き抜く。栓を失ったことにより溢れ出てくる白濁液。それが地面に広がり、シミを作る中、フラットルテは荒い呼吸を整えようとしていた。
「フラットルテ……大丈夫?」
「……大丈夫なのだ♡」
彼女の目はまだ淫らな光を宿したままだった。それを見て取った陽月はふたたび彼女を押し倒した。ハッスルダケの効果はまだ継続したまま。ならもっと発散させる必要があると考えたからだ。
「陽月……この格好は流石にはずかしいのだ……」
両足を開かれたフラットルテ。はずかしいと言いつつ、入口は準備万端と言わんばかりに濡れていた。陽月はそこへ自身の剛直をあてがい、挿入する。
「んっ♡」
ゆっくりとナカに入ってくる異物。それが根元まで入り切った後、陽月はピストン運動を始めた。徐々にスピードを上げていきながら、パンッという音とともにフラットルテの控えめなおっぱいが揺れる。目の前に広がるエロティックな光景に陽月の興奮はさらに高まる。
「陽月ぃ……♡激しいのだぁ……♡」
「こうしないと発散できないからね。それにこうされるの、好きでしょ?」
「うんっ……♡だから、もっとして欲しいのだ♡」
フラットルテの望み通り、より一層強く打ち付けていく。その度に彼女の体が跳ね上がり、嬌声が上がる。結合部からは水音が漏れ出し、たがいの性感を刺激していく。
「あぁ♡だめっ♡そんなに強くされたら壊れちゃうのだぁっ♡」
言葉とは裏腹にフラットルテは歓喜しているように見える。いや、実際に喜んでいるのだろう。陽月が与える快感を享受するべく、自ら腰を動かしているのがその証拠だ。
「ふぁっ♡あっ♡そこぉ♡すごいのだ♡」
膣壁を擦り上げるように突いていくと、フラットルテの反応が変わった。どうやらここが弱点のようだ。重点的に責め立てるべく、角度を変えながら陽月はそこを激しく突き続ける。そうすると限界が来たのだろう。彼女は体を仰け反り始める。陽月もそれで限界が来ていることを察し、腰を激しく動かしていった。
「ひゃっ♡だめなのだっ♡そんなにされたらすぐイっちゃうのだぁっ♡」
「いいよ……一緒にイこう……」
フラットルテの最深部に届くよう力一杯叩きつけた後、ナカに欲望をぶちまける。それとほぼ同時に彼女は盛大に潮を吹き出しながら達した。しかしそれだけでは終わらない。射精後の余韻に浸る間もなくふたたび動きだすと、フラットルテは驚いたように声を上げた。
「ちょっ♡待つのだぁ♡今敏感になってるからぁ♡」
「ごめん、まだ出したりなくて……!」
謝罪しつつも動きを止めることはなく、むしろ先程よりも激しくなる一方だった。あまりの衝撃に思考能力が低下し始めたフラットルテ。そんな彼女に対し容赦なく追撃を加える陽月。体勢も正常位から騎乗位へと移行。下から突き上げるようにして責め立てていく。
「あっ♡すごっ♡深いのだぁっ♡」
「こうされるのも気持ちいいでしょ?」
陽月の問いかけに対し、頷くことで肯定するフラットルテ。それを見て彼は満足げに笑った後、ふたたび抽送を開始。膣内で暴れ回る肉棒。その存在感に圧倒されながらも必死に耐えようとするフラットルテだが、それも長くは続かなかった。
「ふぁ♡またっ♡イクっ♡イグゥッ♡」
プシャァーと噴水のように大量の飛沫が飛び散る。同時に陽月も限界を迎え、大量の精を放出した。たがいの性器が繋がったまま絶頂を迎え、全身から汗が吹き出るほど激しいセックスを終えた後、ふたりはぐったりと地面に寝転ぶ。
「はぁ……はぁ……陽月の……すごく大きくて逞しくて気持ちよかったのだ……♡」
息も絶え絶えになりながらもフラットルテは幸せそうな笑みを浮かべている。そんな彼女を見て愛おしくて、陽月は彼女の額に軽くキスをした。
「体の火照りは収まった?」
「ああ……なんとか収まったのだ……」
「それはよかった。まさかヤることになるとは思わなかったけど」
セックスはどこに潜んでいるかわからない。この世界に転生してから、陽月はつくづくそう思っている。
(そういえば……)
陽月らがここに来る前、ベヒーモスはハッスルダケを食べていた。媚薬効果が発動したということはハッスルダケが消化しきれていない証拠。なので食べてからそれほど時間はたっていないはず。なのにベヒーモスは発情している様子を見せなかった。いったいなぜなのか。陽月の中で疑問が浮かぶが、当の本人はもういない。つまり、今それをたしかめる術はないということだ。これは後でハルカラに聞くのがいいだろう。
「そうだ。ベヒーモスの肉は―――」
「フラットルテが食べた肉、ご主人たちにも食べさせるのだ♡」
処分しようかと言いかけた陽月に先手を打つようにそう言ったフラットルテ。もちろん、フラットルテもそれがどういうことなのかは理解している。だからこそ持ち帰るのだ。
「陽月、今日はウチに泊まってほしいのだ」
「元からそのつもりだったけど、アレを持ち帰ったら……」
十中八九、発情するだろう。そして朝までセックス三昧になることは目に見えている。高原の家を出ると決めた日。童貞卒業とともにロザリーとサンドラ以外とセックスしたが、アレはかなりハードだった。人数が多いうえにみんな体力が一般人と比べ物にならない高いため、中々バテない。しかもそんな彼女たちを1人で相手したので、終わったころには一歩も動けなくなったことを今でも覚えている。
「陽月は体力お化けだから大丈夫なのだ♡それにハーレムセックスは陽月の好みだろ?」
「それは、まあ……」
それに関しては否定できない。実際ハードだったのは事実だ。しかし当時は―――いやもちろん今もだが、美少女たちを独占していることに幸福感を感じていた。天国という言葉では言い表せないほどに。陽月が非モテ時代を経験しているとなれば、尚更だ。
「わかったよ。体力はあのときよりはついてるはずだしね」
「それでこそ陽月なのだ!えへへ、夜が楽しみなのだ♡」
覚悟を決め、陽月はベヒーモスの肉を高原の家に持ち帰った。そして……。
「陽月~♡今夜は寝かせないからね~♡」
「さっきから体が熱いんです♡陽月様、鎮めていただけませんか♡」
「体が熱くなったらエッチするといいんだよね?だからお兄ちゃん、エッチしよ♡」
「シャルシャも……エッチしないと……溶けちゃう……♡」
「陽月さ~ん♡ハッスルダケ仕込みました?今あなたとヤりたくてたまらないんですけど♡」
朝までオールすることになるのだった。ちなみにハルカラ曰く、ベヒーモスは物理攻撃だけじゃなく媚薬にも高い耐性があり、媚薬効果を検証する実験体としてよく使われるんだとか。